2011年12月4日日曜日

2011年に観た映画ベストテン




2011年も終わりに近付いてきたので 今年一年に 自分が観た映画のベストテンを書いてみる。今年の6月に、上半期に観た映画のベストテンを書き抜いてみたが その時点から余り変わらない結果になった。後半期に 良い映画にめぐり合えなかった。良いといわれる映画はアカデミー賞をねらって、映画会社が1月前後に集中して 公開するようになったからかもしれない。

映画作りのテクニックが進んで、CGを駆使して臨場感あふれるロボット合戦も、何千人もの戦闘場面も、人が飛んだり空を蹴って走ったりするシーンも簡単に作れるようになってきたが、「アバター」で開発されたモーションキャプチャーのテクニックが さらに進化して動物の動きが より自然の動物そっくりに映像化できるようになった。代表的な作品が「猿の惑星 創世記 ジェネシス」で、これは素晴らしい、革命的なテクニックだ。

また、ハイビジョンフイルムで ライブのオペラが 映画館の大画面で観られるようになったことは 嬉しいことだ。ニューヨークやロンドンに飛んで、一流の歌手が歌うオペラの高価なチケットを買って、正装して観に行かなければ見られなかったオペラが 映画館でポップコーンとコーク片手に観られることの嬉しさは例えようがない。過去10年 オーストラリアオペラの定期公演を いくつか観るために 毎年千ドルを費やしてきた。換気の悪いオペラハウスに行くたびに風邪をひいたり、階段の多いオペラハウスで オットが喘息発作を起こしたり、行き帰りの夜の運転でハラハラしたりしてきた。もうオペラハウスには、昼間の公演があるときだけしか 行かないかもしれない。

2010年に観た映画のベストテンは、「終着駅トルストイ死の謎」、「剣岳 点の記」、「アバター」、「インセプション」、「シャッターアイランド」、「ゴーストライター」、「ソーシャルネットワーク」、「リミット」、「インヴィクタス 負けざる者たち」、「ドン ジョバンニ」の10本だった。
今年の10本は、以下の通り。

1位:「英国王のスピーチ」  1月23日に映画評を書いている。
2位:「ザ ファイター」   1月25日
3位:「127時間」     2月24日
4位:「ヒア アフター」   2月15日
5位:「作者不詳 シェイクスピアの匿名作家」11月22日
6位:「オレンジとサンシャイン」6月14日
7位:「ノルウェイの森」   6月27日
8位:「鉄コン筋クリート」
9位:「ドライヴ」      11月14日
10位:「ミッション8ミニッツ」5月11日

1位「英国王のスピーチ」
吃音障害をもった英国キングジョージ5世が 失敗を重ねながらも、スピーチセラピストの力を借り、立派な演説ができる様になるまでの過程を描いた作品。主演のコリン ファースがアカデミー主演男優賞、脚本家が脚本賞を取った。コリン ファースが良かったが それを引き立てたジェフリー ラッシュも演技では秀逸。20年以上 脚本をあたため続けてきた脚本家のスクリプトがよく出来ている。作品として とても完成度の高い映画だ。

2位「ザ ファイター」
元ボクシングチャンピオンだったが 今は麻薬中毒で飲んだくれの兄が 弟のコーチとして弟を成功させることで 弟も自分も救っていく というお話。なんと言ってもクリスチャン べイルのように 捨て身とも言える役者根性で 役になりきる役者を他に知らない。アカデミー助演男優賞を取ったが 彼の演技はアカデミーなどという商業主義的なスケールを とっくに超えている。立派な役者だ。

3位「127時間」
単独登山中に落石に手を挟まれて、身動きが出来なくなり、自ら腕を切り落として生還してきた登山家 アーロン ラストンを描いた作品。ジェームス フランコの 画面から飛び出しそうな元気な若々しさと、ロックンな音楽とが合って、とても良かった。青い空と赤い岩山のユタの自然の美しさに目を瞠った。

4位「ヒア アフター」
大切な人に死なれたり、死に直面した人が どう生に立ち向かって生きて行ったらよいのか3人3様の 心の傷と心の再生が描かれている。クリント イーストウッドの計算しつくした作品作りと、マット デーモンの誠実な人柄を表す演技がマッチして 忘れられない作品になった。

5位「作者不詳 シェークスピアの匿名作家」
シェイクスピアの名で 沢山の戯曲や詩を書き残した作家が 実はエドワード デ べラ伯爵ではないか という推測に立って シェイクスピアの一生を描いた作品。エリザベス1世と秘書官セシルとべラの関係など、歴史的に実に興味深い。また、バネッサ レッドグレープ演じるエリザベスと ライズ イファンのべラが素晴らしかった。

6位「オレンジとサンシャイン」
両国の合意によって 戦前から1970年代に至るまで、13万人もの イギリス人の孤児や親に見捨てられた子供達が オーストラリアに船で移民させられて、教会施設や孤児院で強制労働を強いられたり 性奴隷として虐待されてきた。恥ずべき両国の歴史を明るみに出した力作。犠牲者の現在までの姿をドラマにした作品だが、映画が始まってから終わるまで、見ている人々のむせび泣く声と泣きじゃくる声が絶える事がなかった。映画ばかりでなく、それを観ていた人々の姿も忘れられない。

7位「ノルウェイの森」
村上春樹の小説を ベトナム出身アメリカ人のトラン アン ユン監督が映画化した。高校時代に自殺してしまったキズキと恋人と僕。生と死と、残された者の心の再生が、美しい詩的な映像で語られる。原作のイメージに、とても近い。映像がポエテイックで美しく、音楽も良かった。

8位「鉄コン筋クリート」
漫画家 松本大洋の漫画を 英国のマイケル アリアス監督がアニメーションで映像化した。漫画を読んでいて イメージしたものと ほぼ同じ映像ができていて、兄(クロ)と弟(シロ)との会話がとても自然で良かった。この人の漫画が 大好きだ。

9位「ドライヴ」
ハリウッドのスタントマンが ドライバーとしての腕を買われて強盗の逃走を助けて金を稼いだりしている。ニヒルで何の希望もない孤独な男が シングルマザーと出合って恋をする。ライアン ゴスリングが とても味のある男を演じていて良い。ハッピーエンドにならないところが良い。

10位「ミッション8ミニッツ」
人の脳は死亡する直前8分間の記憶が 死後もしばらく残っている。その8分間に別人の脳がトリップして入り込むと その人の8分間を体験することができる。8分間のうちに爆弾を仕掛けた犯人がわかれば 事前にテロによる大量殺人を食い止めることが出来る。アフガニスタンで脳死状態になったパイロットが何度も何度も8分間のトリップに駆り出されて 犯人探しをさせられるというストーリー。ジェイク ギンホールが好演。手足を失い戦死したはずの軍人が 軍の実験のために死ぬことさえ許されないで 利用される。残酷で 優れた反戦映画になっている。
以上の10作品だ。