2009年5月6日水曜日

映画「ディファイアンス」


アメリカ映画「ディファイアンス」、原題「DEFIANCE」を観た。
第二次世界大戦中、ナチドイツに占領されていたべラルーシュで、ナチと戦ったレジスタンス、ビエルスキー兄弟の実話をもとにして 作られた映画。
当時余り知られていなかった 歴史的事実がこうして映画となって世界中の人々に知られることになって 歴史が再評価されることは、価値のあることだ。人は過去から学ぶことができるからだ。手記を読み、映画を観ることによって その場に自分を置いてみて、人としての生き方を考えることができるからだ。
恐らく百人百様の戦争体験があり、人々に知られていない戦争秘話もたくさん埋もれているに違いない。戦争体験を持たない私達は 真摯な気持ちでそういった ひとつひとつの話に耳を傾けるべきだ。

今年に入ってドイツ ナチをテーマにした映画が 次々と公開されている。ケイト ウィンスレットが主演女優賞をとった「愛を読む人」(「THE READER」)、トム クルーズの「ワルキューレ」(「VALKYRIE」)、ジョン ボイン原作の「縞模様のパジャマの少年」(「THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS])、そして、このエドワード ズウィック監督による「デイファイアンス」だ。タイトルは しぶとい抵抗、とか、頑強な挑戦とか言う意味。この映画はリトアニアで撮影されたそうだ。

監督エドワード ズウィックは 1999年に「ブラッド ダイヤモンド」で、シエラレオーネの内戦と、それに群がるダイヤモンド密売人と死の商人を描いた。まさに何故アフリカで内戦が止まないのか、何故人々が飢えるのかを 問い正していくと 必ずぶち当たる先進国の利益とエゴを描いた力作だった。
その前は「GLORY」で、アメリカ市民戦争で、使い捨てにされていった黒人兵を描き、「COURAGE UNDER FIRE」では、湾岸戦争の不条理を描いた。一環して戦争と人をテーマにしている監督。私は大好き。

監督:エドワード ズウィック
キャスト
トゥビア :ダニエル クレイグ
ズシュ  :リーブ シュレイバー
アザエル :ジェミー ベル
ストーリーは
1941年 ナチドイツがべラルーシュを占領。次々とユダヤ人は、虐殺され、ゲットーに収容されていった。ビエルスキー家の両親は ドイツ軍の襲撃にあって 殺され、長男トゥビアの妻子も殺される。
ドイツ軍のユダヤ人狩りや そのお先棒を担ぐ地元警察の追求をかわしながら 4人の兄弟は、逃げ場を求めて リビクザースカの森で合流する。森には虐殺から逃れてきた生存者達があちこちで 彷徨していた。トゥビアは、そんな人々をまとめ、森の中で、コミュニテイーを作りあげる。

トゥビアの 指導力によって、食料を分かち合い、共同で仮小屋を建て、武器を手に入れて自衛する。兄弟は、ゲットーに侵入し、話し合いを持って 留まりたい人を残し、脱出希望者を手引きして森に救い出す。空からの爆撃に逃げ惑い、執拗に繰り返されるナチと地元警察によるユダヤ人狩りに抵抗しながら コミュニテイーをささえる。

長男トゥビアと、次男ズッシュとは 意見の対立があり、ズッシュは森の中で逃げ回るだけでなく 一人でもドイツ兵を殺し復讐する道を歩む。彼はロシアのレジスタンス軍と合流して、勇敢にドイツ軍と戦うことになる。
トゥビアは、次の弟、アザエルを右腕にして コミュニテイーの中の不満分子を押さえ 強力な指導力で住民達を守る。 アザエルの結婚、トビアの恋、などをまじえながら 冬の寒さや飢えをのりこえて3年余りの耐乏生活が続けられる。

メンバーは拡大していき 最終的には1200人のユダヤ人が生き延びることを成功させた。戦争が終わったとき べラルーシュの森から1200人のユダヤ人が出てきた という。

何といっても 007ジェームス ボンドのダニエル クレイグが良い。長男といっても 初めから家族やコミュニテイーのリーダーとして生まれてきたわけではない。たくさんの不幸を目の当たりにして傷つき、絶望を乗り越えた者が、徐々に人々の上に立つことを学んでいくのだ。トゥビアのリーダーとして悩むすがたが とても人間的だ。

弟のアザエルが、ういういしくて可愛い。映画「リトルダンサー」(原題「ビリーエリオット」)で、細いからだで バレエを踊っていた少年、あの映画から10年余り。
ここでは 父親を殺されて 泣きじゃくっていた少年が度重なるドイツ軍との交戦を経て、またコミュニテイーの難題のぶち当たりながら 男として 成長していく。後半では、顔つきまですっかり変わって 決断力のある一人前のリーダーに育っていく様子が 頼もしい。

当時 ドイツ軍と交戦していたロシア人パルチザンの獰猛 果敢な姿、しかし、その中にあってさえ 存在するユダヤ人差別にも、監督の目は見逃がさない。
とても良い映画だ。