2009年5月27日水曜日

映画「X-MEN オリジンズ ウルバリン」


映画「X-MEN オリジンズ ウルバリン」を観た。この映画、日本では 9月に公開されるみたい。

1963年に 原作 スタン リー、作画ジャック カービーによってマーベルコミックから刊行されたコミックを映画化したもの。 X-MENシリーズは アメリカンコミック史上で 第一位のベストセラーだ。コミックブックだけでなく、映画、テレビアニメ、と対戦格闘ゲームなど、多くの派生作品を生み出した。

この映画は 107分。南アフリカ出身の ギャビン フッド監督。
お話は、前3作の前に さかのぼってくるもので、筋としては ウルバリンの過去と、彼がX-MENの一員になるまでを描いた作品だ。 

「バットマン」も 3作 作られて人気が出てから「バットマン ビギンズ」といって、バットマンの子供のころの生い立ちや バットマンになる契機が語られて それをクリスチャン べールが演じてとても良かった。
トーマス ハリスの「羊達の沈黙」、「ハンニバル」も、映画化され話題になってから、ずっと後になって「ハンニバル ライジング」が 発表されて、迫害され薄幸だったハンニバルの少年時代や 血塗られた学生時代が 映画で描かれた。ハンニバル博士が決して 猟奇的な殺人鬼や、血に飢えた異常者なのではなくて、一人の人間として理解できるようになっている。 「BOURNE ULTIMATUM」も、シリーズで お話が終わった後で、主人公がどうして軍やCIAを敵にまわすことになてしまったのかが、わかる仕組みだ。 ヒーローの人気が出てから ヒーローになる前の過去の物語を映画化するのが 流行っているのか。

X-MENとは 突然変異によって超人的な能力をもって生まれたミュータント集団のこと。
超能力があるために 人類からは差別され、恐れられ 嫌われている。プロフェッサーX こと チャールズ エグゼビア教授は ミュータントが一般人と同等に、権利を認められ ミュータントが誇りを持って生きられる社会にするべきだ という考えに基いて 人類を悪の世界から守る為に X-MEN を組織した。

一方、マグニートは むかしはプロフェッサーXと親友だったが、ホロコーストの生き残りであり その過酷な経験から人を憎み、人類よりも優秀なミュータントは 人を支配してミュータントのための社会を作るべきだという信条をもっている。今回の映画では アクションが大盛り大サービスで、スピード感ある戦闘場面が圧倒的に多い。

ストーリーは
ウルバリンは病弱な少年だった。兄 ビクターと暮らしている。ある日 父親がアルコール中毒で粗暴な男に銃で撃ち殺される。それを見て 怒りにふるえていると、ウルバリンの手から爪が飛び出してきた。思わず爪で男を刺し殺してしまう。人を殺してしまったミュータントのウルバリンとビクターは、追ってくる人達から やっとのことで逃れる。ウルバりンは自分では知らなかったが、兄も自分もミュータントだったのだ。

二人は 国の為にアメリカ市民戦争を戦い、第二次世界大戦に従軍し、ノルマンデイー上陸で戦果を挙げ、ベトナム戦争では、今度ベトナム女性に乱暴をする米兵を殺して、またしても追われる身となる。 ふたりは 肉体再生能力があるので年をとらない。

ある日、秘密情報機関にリクルートされて、ほかに5人の特殊な超能力をもったミュータントたちと一緒に仕事をすることになる。ウルバりンは、超人兵士製造所で 絶対に 壊れることのない超金属アダマンチウムを全身の骨格に移植されてアダマンチウムの刃でできた爪を両手に持つことになった。これで自在に爪を立てれば 車でもヘリコプターでも簡単に潰せるように改造された。秘密情報局は 次々とウルバリンたちを 紛争地帯に送り込み 戦果をあげた。しかし、彼らの 一般人をも巻き込んで殺戮する残酷な兵法に嫌気が差して、ウルバリンは チームから脱退する。

ウルバリンは アラスカの山の中で林業従事者として働き 出会ったエマ フロストという女性と二人きりの 平和で普通の人と同じ静かな暮らしを営んでいた。しかし、チームに脱退は許されない。執念深い兄は エマを殺し 弟をチームにもどすように仕向ける。また、バラバラになっていた5人も それぞれ死の脅迫を受けて 戻ってくる。
仲間同士の激しい争いが繰り広げられ ウルバリンは情報局の本部に乗り込んでいって 司令塔を倒さなければ ミュータントどうしの戦いをやめることが出来ないことを知る。本部に乗り込んでいったウルバリンを待っていたものは、、、 という ストーリー。

XーMENは ヒュー ジャックマンの役者としての輝かしいデビュー作だ。このオージー俳優はXーMENを契機に ハリウッドのアクションスターとして成功、ミュージカル「オズから来た少年」で ブロ-ドウェイ進出、今年はアカデミー賞の舞台でホストという大役を務めた。長身、嫌味のない顔、厚い胸板、肉体派アクションもできるし、歌って踊って良し、スマートなプリンス役もできる マルチタレントの役者だ。同じオージー俳優のメル ギブソンよりも大型で 幅の広い俳優になるかもしれない。

XーMENのおもしろさは 色々なことのできるミュータントが 次々と登場して超能力をみせてくれることだ。いわば、「ドラえもんのポケット」。それぞれがみんな 人間の願望の現われかもしれない。
ウルバりンは 肉体再生能力で年を取らないし 怒ると両手から超合金でできた爪が出てくる。兄のビクターも、年を取らず、狼のように敏捷で、強力な爪を持っている。
プロフェッサーXは 今回の映画ではチラとしか出てこないが テレパシー能力があり、人の心を読んで 操作することが出来る。
サイクロップスは 両目から破壊光線、オプテイック ブラストを発射する。サングラスを外すと 見たものすべてを焼き尽くしてしまう。 悪者マグ二ートーは 磁力を繰り あらゆる金属を意のままにできる。核爆発でも壊れない電磁バリアを張ったり、地球の地殻変動や 火山の噴火も自由自在に起こせる。

今回大活躍の5人のうち エイジェント ゼロは狙撃手で、相手が何人でも 移動しながら確実に敵を倒し 的を外すことはない。ジョン ライスはテレポーターで、自分の体を消して 自由に移動テレポートすることができる。 傭兵 ワイド ウィルソンは 抜群の刀捌きで、飛んでくる銃弾でも矢でも鉄砲でも刀で弾き飛ばすことができる。  クリス ブラッドリーは 磁力があり電気がなくても電流を体から流して電気をつけたり、機械を動かすことが出来る。ガム ピットは 触ったもの すべてを爆発させることができる。
そんなそれぞれ超能力を持ったミュータント同士が 格闘する場面の連続だ。コミックが映画になり ゲームになって男の子達が夢中になって画面に釘付けになるのがわかる気がする。

戦闘の合間にも、ウルバりンとエマとのラブシーンや、情報局にリクルートされた仲間同士の友情、兄弟間の愛情と嫌悪も描かれている。
「スーパーマン」、「バットマン」、「スパイダーマン」、「ファンタステイックフォー」、「ハルク」、「X-MEN」、みな、コミックから映画化された作品だ。私が一番すきなのは、やっぱり 「スーパーマン」と「バットマン」だ。

それにしても どれもがみんな ユダヤ人が作者という事実、、これをどう捉えるべきなのだろう。

2009年5月15日金曜日

ラリアは秋




オーストラリア生まれの高校生の娘を持った 日本人の友人が「母の日」に 白い菊の花束を 娘からもらって くさっている。もう充分生きたじゃない と思わず自分の心境を言ってしまって もっとへこましてしまった。

白い菊の花を見ると 悲しかった肉親の葬式をイメージして線香のにおいまで感じてしまうのは 日本人だけらしい。 普段 シドニーでも 花屋で菊の花は余り見ないのに、母の日だけは、どの花屋も、白い菊の花束でいっぱいだ。菊は英語でクレサンチマムといい、最後のマムが 母親のことだから、母の日に贈る事になったらしい。母の日にカーネーションを贈るのは 北半球の限られた国だけなのかもしれない。

母の日には 娘達それぞれから花をもらった。ふたつの花束のバラが満開で部屋中に香りが漂っている。二人が自立して家を出て行って久しいが、彼女達が巣立っていく前に すでに一生分の親孝行をしてもらっている。娘達の成長が日々、嬉しく 笑い声が生きる活力となってくれた。娘達のおかげで半世紀余り 喜びに満ちて生きてきた。この世の どの母親より幸せだったと思うから、これ以上 辛気臭い親孝行は してもらいたくない。
もう 親など振り返らずに 自分たちの道をどんどん切り開いて 前に進んでいって欲しい と思う。

今は秋。ぶどう、柿、みかんが美味しい。
ぶどうは 大粒のグリーンの種無しと、小さめの赤い種無しが甘い。柿も、みかんも ものすごい勢いで移民して増えてきている中国人が栽培していて、この2,3年は普通の果物屋でも買えるようになった。

今年は 何十年ぶりかで「巨峰」を食べた。韓国人食材店で、見つけたもので、韓国人が自分の畑で栽培して 今年初めて実がなったのだという。普通のぶどうの5倍くらいの値段だったが 久しぶりに食べて感激した。日本で最後に巨峰を食べたのは 家族で沖縄に転勤する前、娘達が 保育園にいたこ頃のはなしだ。離乳食など何も食べてくれないくせに 巨峰ならば、皮をむいてやると いくらでも食べた。

その頃 病院の輸血科で、高速血液分離採血機を操作していた。白血病の子供たちに、血液提供者から 2000MLから4000MLの血液を採血しながら、血小板だけを取って、あとを体に返す、当時としては新しい治療に参加していて、病院ではこの機械を操作できる唯一のナースだった。 
秋に輸血学会があり、東欧のドクターたちや、地方からの医学関係者の前でこの採血機を 操作してみせることななった。機械を取り囲むように、見学者が立っているところを、緊張した面持ちで 血液提供者が到着した。さて、静脈に針を刺して、採血を始めますから ご注目ください、といって、針を入れる瞬間 ハッと皆の息を飲む音がして、人々の目が 私の手に釘付けになった。
てへへ、、、わたしの手の指の爪が真っ黒だったのだ。ちょっと前まで やんちゃ坊主が泥遊びしていて 手も洗わずに飛んできたみたいに。 ち、ちがいます。皆さん これは汚れではなくて 毎日 巨峰の皮をむいては うちの赤ちゃん達に食べさせてたのでーす。巨峰の皮のシブで爪が黒く染まってしまっただけで、手はちゃんと洗ってきれいです。などと、言い訳するのもシャクなので、そのまま 見学者達が私の爪の汚さに腰をぬかさんばかりにあきれているのを尻目に 仕事を続けた。
そんなこともあったっけ。数えてみると28年も前のことだ。 久しぶりに巨峰を食べて、うん、、、おいしい訳だ。

写真は住んでいるアパートの入り口。プラタナスの葉が 色付いて 落葉する冬を待っている。

2009年5月6日水曜日

映画「ディファイアンス」


アメリカ映画「ディファイアンス」、原題「DEFIANCE」を観た。
第二次世界大戦中、ナチドイツに占領されていたべラルーシュで、ナチと戦ったレジスタンス、ビエルスキー兄弟の実話をもとにして 作られた映画。
当時余り知られていなかった 歴史的事実がこうして映画となって世界中の人々に知られることになって 歴史が再評価されることは、価値のあることだ。人は過去から学ぶことができるからだ。手記を読み、映画を観ることによって その場に自分を置いてみて、人としての生き方を考えることができるからだ。
恐らく百人百様の戦争体験があり、人々に知られていない戦争秘話もたくさん埋もれているに違いない。戦争体験を持たない私達は 真摯な気持ちでそういった ひとつひとつの話に耳を傾けるべきだ。

今年に入ってドイツ ナチをテーマにした映画が 次々と公開されている。ケイト ウィンスレットが主演女優賞をとった「愛を読む人」(「THE READER」)、トム クルーズの「ワルキューレ」(「VALKYRIE」)、ジョン ボイン原作の「縞模様のパジャマの少年」(「THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS])、そして、このエドワード ズウィック監督による「デイファイアンス」だ。タイトルは しぶとい抵抗、とか、頑強な挑戦とか言う意味。この映画はリトアニアで撮影されたそうだ。

監督エドワード ズウィックは 1999年に「ブラッド ダイヤモンド」で、シエラレオーネの内戦と、それに群がるダイヤモンド密売人と死の商人を描いた。まさに何故アフリカで内戦が止まないのか、何故人々が飢えるのかを 問い正していくと 必ずぶち当たる先進国の利益とエゴを描いた力作だった。
その前は「GLORY」で、アメリカ市民戦争で、使い捨てにされていった黒人兵を描き、「COURAGE UNDER FIRE」では、湾岸戦争の不条理を描いた。一環して戦争と人をテーマにしている監督。私は大好き。

監督:エドワード ズウィック
キャスト
トゥビア :ダニエル クレイグ
ズシュ  :リーブ シュレイバー
アザエル :ジェミー ベル
ストーリーは
1941年 ナチドイツがべラルーシュを占領。次々とユダヤ人は、虐殺され、ゲットーに収容されていった。ビエルスキー家の両親は ドイツ軍の襲撃にあって 殺され、長男トゥビアの妻子も殺される。
ドイツ軍のユダヤ人狩りや そのお先棒を担ぐ地元警察の追求をかわしながら 4人の兄弟は、逃げ場を求めて リビクザースカの森で合流する。森には虐殺から逃れてきた生存者達があちこちで 彷徨していた。トゥビアは、そんな人々をまとめ、森の中で、コミュニテイーを作りあげる。

トゥビアの 指導力によって、食料を分かち合い、共同で仮小屋を建て、武器を手に入れて自衛する。兄弟は、ゲットーに侵入し、話し合いを持って 留まりたい人を残し、脱出希望者を手引きして森に救い出す。空からの爆撃に逃げ惑い、執拗に繰り返されるナチと地元警察によるユダヤ人狩りに抵抗しながら コミュニテイーをささえる。

長男トゥビアと、次男ズッシュとは 意見の対立があり、ズッシュは森の中で逃げ回るだけでなく 一人でもドイツ兵を殺し復讐する道を歩む。彼はロシアのレジスタンス軍と合流して、勇敢にドイツ軍と戦うことになる。
トゥビアは、次の弟、アザエルを右腕にして コミュニテイーの中の不満分子を押さえ 強力な指導力で住民達を守る。 アザエルの結婚、トビアの恋、などをまじえながら 冬の寒さや飢えをのりこえて3年余りの耐乏生活が続けられる。

メンバーは拡大していき 最終的には1200人のユダヤ人が生き延びることを成功させた。戦争が終わったとき べラルーシュの森から1200人のユダヤ人が出てきた という。

何といっても 007ジェームス ボンドのダニエル クレイグが良い。長男といっても 初めから家族やコミュニテイーのリーダーとして生まれてきたわけではない。たくさんの不幸を目の当たりにして傷つき、絶望を乗り越えた者が、徐々に人々の上に立つことを学んでいくのだ。トゥビアのリーダーとして悩むすがたが とても人間的だ。

弟のアザエルが、ういういしくて可愛い。映画「リトルダンサー」(原題「ビリーエリオット」)で、細いからだで バレエを踊っていた少年、あの映画から10年余り。
ここでは 父親を殺されて 泣きじゃくっていた少年が度重なるドイツ軍との交戦を経て、またコミュニテイーの難題のぶち当たりながら 男として 成長していく。後半では、顔つきまですっかり変わって 決断力のある一人前のリーダーに育っていく様子が 頼もしい。

当時 ドイツ軍と交戦していたロシア人パルチザンの獰猛 果敢な姿、しかし、その中にあってさえ 存在するユダヤ人差別にも、監督の目は見逃がさない。
とても良い映画だ。

2009年5月4日月曜日

映画「ドラゴンボール」







ハリウッド映画「ドラゴンボール」を見た。
1984年から1995年まで11年間にわたって少年ジャンプに連載された鳥山明による人気漫画だ。


集英社で単行本として新書版で 全42巻で出版されたあと、一回り大きなA5版で全34巻が出版された。発行部数1億5千万部、全世界で3億5千万部売れたそうだ。

ドラゴンボールが連載されていた その間は私達家族はフィリピンで暮らしていたので このコミックがテレビアニメとして11年間も続いて 平均20%の視聴率を維持していたということは、全く知らなかった。また、映画にもなっていて 東映漫画17作が上映されて 総動員数4900万人にのぼった。ビデオカセットが3万セット売れて、テレビゲームになったのは40本以上、これが150万本売れた。 アニメ「ドラゴンボール」はアメリカでもフランスでも人気番組になりフランスではアニメ放映中 テレビ視聴率87,5%まで記録し、鳥山明の名前は フランスで最も有名な日本人になったという。
「ドラゴンボール」の主人公は悟空、7つの黄金の玉を集めると どんな願いでもかなえられる。「西遊記」からヒントを得て 作られた作品。こんな日本の国民的人気もの悟空が ハリウッド映画になった。
キャスト
悟空:JUSTIN CHATWIN
亀仙人:CHOW YUN FAT
ブルマ:EMMY ROSSUM
ヤムチャ:JOO PARK
ピッコロ大魔王:JAMES MARSTERS
チチ:JAMIE CHUNG
ゴハン:RANDAL DUK KIM
スパイ マイ:ERIKO TAMURA
さてハリウッド版「ドラゴンボール」のストーリーは
悟空は ちょっと冴えない高校生。強くてかっこよい同級生達からは いじめられっこ。厳しく武道を教えてくれる おじいさんグランパ ゴハンから 学校で友達を相手に武道を使ってはならないと 言われているので、いじめられても 暴力をふるわれてもやり返すことができない。好きな女の子 チチのことも、遠くから見つめていることしかできない。

家に帰れば 毎日毎日、グランパ ゴハンの猛特訓が待っている。しかし長年の厳しい訓練のおかげで、悟空の実力は徐々にゴハンに近ずいてきた。 悟空は誕生日にゴハンから これは大切な宝だといわれて 黄金に輝く玉をもらう。しかし、その夜、悟空が家に帰ってみると、家は崩壊、全焼していて、ゴハンが家の下敷きになって 虫の息でいる。ゴハンは、死ぬ前に 悟空に、亀仙人と一緒に、黄金の玉を集めて世界征服しようとしている悪者と戦うように言い残して亡くなる。

旅立ちのしたくをしているうちに 崩壊した家に盗人が入る。やはり、黄金の玉を捜し求めている ブルマだった。話しているうちに 意気投合して悟空は ブルマとともに亀仙人を訪ねる。その途中 夜盗ヤムチャと出会い 仲間に入れる。ヤムチャはブルマに恋をする。一方、砂漠で悟空も、憧れの娘チチにであい、彼女がただの可愛い高校生ではなく 武道の達人であったことがわかり、ともに 敵と戦う決意をする。悟空 亀仙人、ヤムチャ、ブルマ、チチ、の一行は 行く手をピッコロ大魔王に阻まれる。悟空は黄金の玉を 狡猾に潜入したピッコロ大魔王のスパイで奪われてしまう。おまけに、ピッコロ大魔王との大決戦で亀仙人は殺されてしまう。

怒り狂った悟空は ピッコロ大魔王と戦ううち、自分が別の惑星に住む サイヤ人で 満月を見ると大猿に変身することを知る。変身するとピッコロ大魔王に限らず 敵味方関係なく すべての生き物を破壊殺生せずにいられなくなってしまう。 しかし、チチやブルマの前で、自分の本能に必死で逆らって、悟空はまたもとの悟空にもどる。 そしてピッコロ大魔王から奪い返した7つの黄金の玉で、神龍を呼び出して ひとつのお願いをする。それは自分の身代わりになって死んでしまった亀仙人を生き返らせることだった。  そして、願いがかなったとたんに、7つの黄金の玉は世界に飛び散って去ってしまった。 そこで、また振り出しに戻って、孫悟空、亀仙人、ヤムチャ、ブルマとチチは世界に散らばった黄金の玉を求めて 旅立つのだった。
というおはなし。

B級映画にはB級映画なりのおもしろさがある。 「縞模様のパジャマの少年」のような 重いテーマの映画のあとに、気晴らしになるし、演じている俳優の意外な顔が見られたりする。

この映画のキャストでは一番 名高いのは、中国人のチョウ ユン ファだろう。中国映画のヒーロー、日本でいう昔の三船敏郎だ。武術に長けて、人を統率し、徹底して自分の筋を通す男 かと思ったら お茶目で どこか間の抜けたところもあって可愛い。中国では国民的スターだ。「カリブの海賊」では ジョニー デップを相手に 怖い幽霊船のキャプテンになったし、ツァン イー モー監督の映画には、監督の奥さんゴング リーとともに、必ず共演している。

ブルマ役のエミー ロッサムは 映画では髪を染めているが、本当は22歳、金髪の美人だ。ミュージカル映画「オペラ座の怪人」では、か細いが、きれいな声で、怪人に誘拐されて幽閉される悲劇のオペラ歌手の役を演じていた。また、「ポセイドン」では、船が沈没して みんなみんな死んでしまうのに、勇気あるお父さんが命をかけて守った娘の役を演じていた。

主人公の悟空の役は、25歳のカナダ人、スタントマンをやっていて これが初めての主役だそうだ。青い目の悟空がカメハメハをやるところなど、この漫画のファンだったら怒るかもしれないが この映画はこれで良いと思う。

冴えない男の子が たった一人の保護者だったおじいさんを殺されて 敵に戦いを挑む途中で出会った人々と 硬い友情で結ばれて 一人前の男に成長していく。恋もする。自分がサイヤ人で 破壊を生きがいとする人種だったと、わかっても、自制して友達は裏切らない。この物語は、特別なヒーローのお話ではなくて、ごく普通の高校生の男の子が成長していく過程を描いたお話なのだ。洋風ドラゴンボールは これで良いのだと思う。これでよいのだ。

2009年5月2日土曜日

映画 「縞模様のパジャマの少年」


新しい ドイツ ナチをテーマにしたイギリス映画を観た。
原題「THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS」、邦題「縞模様のパジャマの少年」。日本では8月に公開予定されている映画。1時間34分。アイルランド人作家 ジョン ボインの短編小説を映画化したもの。ジョン ボインは1971年生まれの戦争を知らない 若い世代の作家だ。岩波書店から千葉茂樹訳で、本が出ている。

映画監督は、マーク ハーマン
音楽は ジェームス ホーナー
撮影はハンガリー ブタペストで行われた。
今年になって ナチズムをテーマにした映画が続いている。アカデミー賞受賞の「愛を読む人」、トム クルーズの「ワリキューレ」、それと、007ジェームスボンドのダニエル クレイグが主役を演じている「DEFIANCE」だ。どれもなかなか重いが 観る価値のある映画だ。

キャストは、
ブルーノ:エイサ バターフィールド 
シュメル:ジャック スキャロン
父親  :デビッド シューリス
姉   :アンバー ビーテイー
母親  :べラ ファーミ

ストーリーは
8歳のブルーノは 軍人の父親と、優しい母親と12歳の姉の4人家族で ベルリンに住んでいる。
戦争が始まっていて、大人たちの顔色は冴えないが 学校には たくさんの友達がいるから 毎日が楽しくてたまらない。ブルーノは、軍人の父親が 職場でどんな仕事をしているのか知らないが、男の子にとっては 父親はいつもヒーローだ。

ある日 父親が ベルリンから地方に転勤になって、家族そろって引越すことになった。ちょっと、寂しい友達との別れ、、、ブルーノは 田舎の新しい家に 慣れようとする。しかし、奇妙なことにブルーノの家は 他のどの家からも離れた森のなかにあり、高い鉄条網に張り巡らされ、門には24時間軍人が警備をしている。家には とても怖い父親の秘書も一緒に住んでいて、息が詰まりそうな 緊張した空気が漂っている。
ブルーノの部屋から背伸びをして 高窓から外を覗くと 遠くにスポーツ場のようなフィールドが見える。おかしなことに そこには沢山のパジャマ姿の人々が住んでいるようだ。台所を覗いてみると こんどは ズボンだけ縞模様のパジャマを履いて 貧しい身なりの年寄りが 下働きをしている。子供の目から見ても 異常に見える縞模様のパジャマ姿の人について 父親に聞いても 母親に問いただしても 大人たちは困った顔をして 話題をはぐらかせるばかりだ。 
引越しをして何が退屈か と言うと学校に行けなくなって、友達が一人も出来ないことだ。ブルーノは退屈で退屈で仕方がない。

4歳年上の姉は 父の秘書として家に居る 若いハンサムな軍人に恋をしていて、ブルーノをうるさがって、邪険にするばかりだ。彼女は自分の部屋にアドルフ ヒットラーの写真を張り、軍歌に心を躍らせて、秘書の後を追いかけてばかりいる。
ある日 家に誰もいないとき、ブルーノは 庭のブランコから落ちて、怪我をする。介抱して適切な傷の処置をしてくれたのは パジャマのズボンを履いた 台所の下働きをしている年寄りだった。傷の手当てをしてもらいながら、ブルーノは 男が 今はジャガイモの皮をむいているが 昔はドクターだったことを知る。
友達がいない、話し相手がいない、そんな中でブルーノの不満とやり場のない疑問は膨れ上がるばかりだ。

ある日、ブルーノは 物置小屋の小窓から 誰にも気付かれずに家の外に出られることを発見する。そっと 家の外に出てみると 外は美しい緑の林だった。縞模様の人々の居る方向に行ってみると 鉄条網のフェンスで仕切ってある その中に 男の子が座っていた。話しかけてみると、パジャマ姿の男の子は 自分と同じ8歳で、シュメルという子だということがわかる。シュメルはフェンスのなかで、人々が何をしているのか ブルーノには言わない。ブルーノは シュメルがユダヤ人だと 教えられるが それがどんな意味を持つのか わからない。ただ、引越し以来 初めて友達ができたことが嬉しくてたまらない。
ブルーノは次の日には チョコレートを持って、またその次の日には サンドイッチを持って シュメルに会いに来る。

ある日、ブルーノは自分の家の台所で、グラス磨きをさせられているシュメルを発見する。グラスの細かいところを磨ける小さな手が必要だったので 手伝いに呼ばれたものだった。いつものように、ブルーノはシュメルに お菓子を与える。それを 怖い軍人の秘書に 見つけられて詰問され、ブルーノは叱られるのがこわくなって シュメルにお菓子をあげたのは自分ではない シュメルが盗んだのだ、と言ってしまう。

翌日、ブルーノは卑怯だった自分を責めながら シュメルのキャンプに行く。シュメルは見るも無残に 殴られて怪我をしている。それでも、ブルーノが謝ると、許すと言ってくれたシュメルにブルーノは このたった一人の友達を もう二度と裏切らないことにしようと心に決める。そんなシュメルは、自分の父親が突然居なくなってしまったことを、とても心配している。ブルーノは、自分のために みんなと同じパジャマを持ってきてくれたら 鉄条網の下を掘って 下からキャンプに忍び込み シュメルと一緒に父親を探してあげようと 思い立つ。

一方、家庭では 母親は夫を信頼 尊敬してきたが 子供達を連れて引っ越してきたところが ユダヤ人収容所に隣接しているとは、移ってくるまで思ってもみなかった。また、無用意な秘書の言葉から キャンプの煙突から終始 煙が出て 嫌な匂いがするのは ユダヤ人を処分しているからだ ということを知ってしまう。妻は夫と対立して、そのような仕事をする夫と一緒に暮らすことはできない と主張する。そして、遂に子供達を連れて 別の土地に移り 夫とは別居することにする。ブルーノは また引越しすることを知らされて、シュメルにはもう 会えないことを知らされる。

出発の日の朝、シャベルを持って ブルーノは シュメルとの約束を果たす為に フェンスの下を掘る。子供が辛うじて通れる隙間ができると、ブルーノはシュメルが持ってきたパジャマに着替えて、二人でシュメルの父親を探しにキャンプの小屋から小屋へと、探索しながら走る。ある小屋では、沢山の男達が集められて何かを待っている。と、突然、軍人達に押し出されて、ブルーノとシュメルも 群集にもみくちゃにされながら コンクリートの部屋に追い込まれて、、、、。
というお話。

原作以上に 映画が とてもよくできている。音楽がめっぽう良い。音楽が映画の画面にぴったり寄り添って 効果的に観る物の視聴覚を興奮させ、喜ばせ 悲しませ 驚き 嘆息させて、すべてを経験させてくれる。映画の音楽がすごく良くて、映画を見ていて心地よい と心から感じたのは、最近ではクリント イーストウッドの「グラントリノ」以来だ。
最後の方の見ている人の不安感 恐怖感 そして、それが押しつぶされて 長い長い救いのない嘆きに変わるときに 音楽が心に響く。ジェームス ホーナーと言う人の音作りに、今後も注目していこう。

映画で秀逸なのは、8歳の子供の役者だ。くもりのない子供の瞳 という言葉があるが 二人の子供がまさに それだ。世界や自分のまわりで 何が起こっているのか わからないでいるブルーノの 子供の目に映る光景は、いつもおなかを空かしているシュメルであり、いつも嫌な臭いの煙を吐き出している煙突や 怖い顔の秘書であり、疑問と不安ばかりが増長していく。
ある日 家に軍人達が集まり 映写会をしている。ドイツが他国にむけてユダヤ人キャンプを様子を宣伝するためのプロパガンダというか、エクスキュースのフィルムだ。ユダヤ人はキャンプの中で、安全で楽しい生活を保障されている、家族は一緒で、良い食事を与えられ、サッカースポーツやゲームに親しみ、何不自由なくキャンプ生活をしている という映像だ。これを盗み見て、ブルーノは 嬉しくなって、思わず父親に抱きつくシーンが印象的だ。ブルーノにとって 父親はやっぱりヒーローだ。疑うことなどできない。

配役では、自分の任務に何の疑問も持たない、今までの歴史になかった特別の国 ドイツ帝国を作るという信念に凝り固まっている石頭の父親に、デビット シューリスは、適役だ。
ナチズムの正体を徐々に知ってしまい、良心の痛みから病人のように やつれていく母親役の、べラ ファーミガが とても良い。

そのとき、その場に居ると 人は外から客観的に 何が起こっているのかわからない。気をつけていないと 自分が踏みつぶしている生き物が 見えない。状況をみきわめて、何が起こっているのか 知ること。そんな中で さらに良心的に生きるということが、どんなに難しいことなのか、改めて思った。