映画にはビデオで観て 面白い映画と、絶対 映画館の暗がりで大きなスクリーンで見なければならない映画とある。日本映画は だいたいにおいて ビデオに向いている。じゅうたんに転がって、ポテトチップスにビールで、一人笑ぃ転げたり 泣いたりしても、誰にも迷惑がかかららない。日本に帰っていたのを、契機に ビデオで日本映画を観てみた。
「ジョゼと虎と魚たち」、吉永小百合と渡辺健の「北の零年」、寺尾聡の「博士の愛した数式」、伊藤英明と加藤あいの「海猿」、吉岡秀隆と堤真一の「ALWAYS 3丁目の夕日」、妻夫木聡と長沢まさみの「涙そうそう」、山崎勉、窪井洋介と紫咲コウの「GO」などだ。
このなかで、「GO」がとりわけおもしろかった。原作金城一紀、直木賞と取った作品。読んだ本がすごく面白かったので、それを元にした映画も そのとうり よくできていることを期待したが、この映画は原作に忠実で、おまけに良い俳優が脇を固めていて、とても良かった。主人公クルパーの父親の山崎勉を観ているだけでものすごく笑える。映画を観ていて何度もおなかを抱えて笑ってしまった。在日外国人の胸の痛み、差別を跳ね返すパワー、そして家族愛、それでいて全然どん臭くない。
思い切り明るく これほどまで人種差別の厳しい 閉鎖社会である日本で、からっと在日外国人の泣き笑いを書いたものは ほかになかったのではあるまいか。
北朝鮮出身の親を持つゴリゴリのマルクス主義者で北朝鮮の金日成主席を神ともあがめる父が 突然妻をハワイ旅行につれて行くために「転向」して金日成バッチを返還しに朝鮮総連に行く。総連でももう とっくの昔にそんなものは 時代遅れになっていたというのに。で、ハワイ旅行で 広い世界に目覚めた父は がぜんスペイン語を勉強し始めて、今度はスペイン旅行に行くのだ。在日外国人に限らず、井の中の蛙だった日本人が 広い世界をみて あわてふためく様子が笑える。
一人息子は天然パーマの髪が天に向かって爆発しているのでクルパーと呼ばれている。プロボクサーだった父に 小さいときから訓練されているから めっぽう喧嘩に強い。朝鮮中学をやめて、普通高校に移った時から、学校で韓国籍を笑われ、陰湿ないじめにあうが、みるみるうちに学校きっての喧嘩のチャンピオンになってしまう。暴力団総長の息子の鼻柱を折ったことが契機で暴力団にまで いちもくおかれて可愛がられる。別の高校で好きな子ができて、告白するが、彼女の、お父さんが朝鮮人の血は汚いんだって言うの、という言葉に ゆきずまってしまう。
青春の哀しさ、ひりひりする痛みがよみがえってくる。
「インストール」、「蹴りたい背中」の綿矢りさ、「夜のピクニック」の恩田陸、そして「GO 」の金城一紀など、10代でものを書いて 文壇で認められるようになった人々の その才能は並みではない。
とても良かったので、本を読むのも(講談社文庫)、映画で観るのも お勧めー。