2013年2月25日月曜日

映画「ゼロ ダーク サーテイ」



これほど後味の悪い映画も他にない。
2001年9.11の主犯をオサマ ビン ラデインと決めつけ、CIAがSEALS(米海軍特殊部隊)を使い、彼の居場所を突き止めて暗殺するまでの過程を描いた映画。独善的で一人善がりで、正義の名を借りた容疑者への私刑と虐殺を正当化する。彼らは、ガードマンも持たず、無抵抗の武器を持たないラデインを一方的に殺害した。
ビン ラデインの急襲作戦に ゴーを出したオバマ大統領は 共和党にも出来なかったことをやった、この結果を高く評価されて、超保守、愛国支持者まで味方にしてしまった。容疑者を逮捕、捜査、尋問することもなく、主犯と断定し、深夜闇に紛れて、襲って殺すという、警察も行政も裁判制度もない私刑処分をしたのは、アメリカという世界一権力を持ち、法も民主主義も持たない無法国家だ。こんなことが まかり通るなんて。

いまだ、9.11については「アルカイダという有名だが実態が把握されていない組織による犯行ではない、」とする知識人も多い。一般に報道されていることが、事実ではなく、9.11直前に巨額のドルが、ウォールストリートで動いたことや、少なくとも、ペンシルバニアの飛行機事故は 爆弾犯によるものではなかったという目撃者や関係者が多いことや、誰一人として犯行を公に認める声明を出していないなどなど、わかっていないことが多い。未解決事件なのだ。
CIAやアメリカ政府が作り上げたお話ではなく、客観的な事実を私たちは、知る必要がある。

上映に先だって、アメリカ国内でも上院議員のジョン マッケイン、カール レヴィン、ダイアン フェインステインらが この映画はアメリカ政府に 人々の誤解をもたらす恐れがあると声明を出した。人権擁護団体も、映画のトップシーンで CIAが捕虜を虐待するシーンで、これらが国際法違反であるという理由で抗議声明を出した。
パキスタンも この映画は、購入せずパキスタン国内では上映できないようにした。前代未聞の形でパキスタン政府を無視してパキスタン国内で、アメリカ政府が介入、軍事行動をとったことで、政府も不快と遺憾を表明した。また映画のなかで、一般のパキスタン人がアラビア語をしゃべっている。パキスタン人は、ウルドウー語か、パシュト語を話す。また映画では、一般人がHUMMUSという、ひよこ豆とごま油のペーストを食べているが、トルコ人と違って、パキスタン人は、これを食べない。パキスタン文化に無知で、基本的知識さえ欠如しているため、このフイルムはパキスタン人にとっては悪い冗談でしかない、とパキスタン人コラムニストが語っている。

監督:キャサリン ビグロウ
キャスト
マヤ  ;ジェシカ キャステイン
ジャステイン ;クリス プラット
ストーリー
2003年CIA分析官、マヤらはアルカイダのリーダー ビン ラデインを探し出すために、パキスタンに派遣される。ここでありとあらゆるテロリスト容疑者へ拷問をして、情報を得る。何日も食べさせず、眠らせず、ぶんなぐり、水攻めや性的拷問 何でもありだ。ビン ラデインは腎不全を患っている。常に 腎透析できる施設と医者を必要としているはずだ。当初からCIAは、顔の割れている アルカイダ ナンバー2のアブ アラハドを、追っていたが、その写真の顔は彼の弟で、すでに死亡していたことがわかった。ありとあらゆる手段で、アブ アラハトを追う。クエートのプリンスに、アルファ ロメオをプレゼントする代わりに、彼の母親の電話番号を手にする。そこから不審者をあぶり出し、ついに顔のわからなかったアブ アラハドがパキスタン国境ちかくで ある家に出入りしていることを突き止める。屋敷には数人の男女が子供たちと住んでいる。CIAの長官は、屋敷の男女は ドラッグ デイラーだと決めつけて、まじめに取り合わない。マヤは辛抱強く 監視して、この屋敷に住むのがビン ラデインに違いないことを 確信して、仲間を説得する。遂に、2代のステルスヘリコプターで、SEALSの面々が 夜間屋敷を急襲。側近の男女たちを、手あたり次第に次々殺していって、泣き叫けぶ子供たちに、ビン ラデインの部屋かどうかを確認したうえで、中に居た無抵抗の男を 殺害。何発もの銃撃をしたうえで、ラデインと確認する。というストーリー。映画の中では少なくとも ラデインとされる男以外に3人の男女を殺害しているが、実際はどうだった、誰にもわからない。

SEALSの元隊員マット ビソネットが、ペンネームでこの作戦の内幕を克明に描いた本を出版。これが映画の参考になっている。マット ビソネット自身が、ビン ラデインに銃弾を撃ち込んだそうだ。
SEALSはアメリカ人にとってはヒーローだが、本来は名前も顔もわからない秘密の存在だ。国のために自己犠牲の精神で特殊作戦を戦い、戦果を一般人に知られることはない。退職後も彼らは どんな作戦に従事したか、家族にも語ってはならないことになっている。この愛国の戦士の名前と顔が 表に出るときは、死んだときだけだ。
例えば、2006年イラクで銃撃戦の最中 窓を破って手りゅう弾が飛んできた。一瞬のスキもなくマイケル モンスール隊員は手りゅう弾の上に覆いかぶさり 体で爆発を受け、他の仲間たちの命を救った。2005年アフガニスタンでSEALSのヘリコプターが40人のタリバンに囲まれた。米兵全員が負傷、マイケル マーフィー隊員は覚悟を決め、電波の通じやすい広場に走り、全身に銃弾を受けながら無線で友軍の救助を依頼しながら絶命した。ニュースウィークによると、己の命を捨てて仲間を助けることがSEALSの伝統だそうだ。これも、アメリカ人の自画自賛で、マット ビソネットの自伝や、この映画などが、契機になってSEALSに入隊したいと思う人も多いのだろう。

映画の中で、CIA分析官マヤが 自分の生活とか、趣味とか男遊びとか酒やドラッグなど見向きもせずに仕事にうちこんで、それがなぜかというと、9.11が動機になっていることは、わかる。事実こうした職員も多かっただろう。また、SEALSの隊員どうし 互いに命をあずけ合った仲間と仲間の友情も、本当のことで、実際にあるだろう。
しかし、映画を見ていて、一瞬たりとも共感できるシーンがない。正義はどこにいったのだ。こんなことをアメリカという国が大手を振ってやっている。許されて良いことではない。