2008年6月24日火曜日

映画「モンゴル」



「上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白(なもじろき)牝鹿ありき。大いなる湖を渡して来ぬ。オノン河の源なるブルカン獄に営盤して生まれたるバタチカンありき。」-井上靖「蒼き狼」から。


独露映画。ロシアの映画監督 セルゲイ ボドロフによる2時間20分の大作、2008年 アカデミー外国語映画賞にノミネイトされている、チンギス ハーンの半生を描いた映画「モンゴル」を観た。
俳優:浅野忠信、KHULAN CHULUUN、HONGIEL SUN

映画では、チンギス ハーンの幼名 テンジンの9歳の頃から お話が始まる。
テンジンの父親は 部族の首長だが、約束をしていた部族とは別の部族から妻を娶ったので、そのどちらの部族からも恨みを買っていた。父は、息子を連れて 息子の妻を決めるための旅にでる。 部族の決まりどうりにテンジンの母が来た部族で妻を決めるところが、立ち寄った部族で、テンジンは一人の娘を気に入って、婚約を交わしてしまう。そのことで、父は他部族から、二重に恨まれて、遂に毒殺される。それを見た部下たちは、テンジンを首長とは認めず、財産すべてを奪い、テンジンを奴隷として、首かせ、足かせをはめて生きることを強制する。

その後、テンジンは逃亡に成功して立派な若者になり、若い部族の首長に出合って 彼と兄弟として生きる誓いをする。そして9歳のときに婚約していた妻、ボルテを迎え正式に結婚する。が、その日のうちにテンジンが嫁を迎える約束をして裏切られていた部族が襲ってきて 瀕死の傷を負い、妻を奪われる。テンジンは兄の力を頼って妻を奪い返すが、そのころには、もう妻には2人の子供ができていた。 テンジンは小さな部族を次々に制圧して自分の部族を大きくし、戦闘を繰り返しながら勢力をつけていく。
しかし、かつて父が持っていた部族と、兄の部族とが敵に回ったとき、そのモンゴルを二分する戦いに敗れ、奴隷商人に売り飛ばされて、カザキスタンで、牢に見世物としてさらし者になる。妻は、カザキスタンの商人に身を任せ、砂漠を越えて、テンジンを救い出す。
モンゴルに戻ったテンジンはそれからは、破竹の勢いで戦闘に勝ち進み すべての部族を飲み込み モンゴル帝国を統一する。と言うお話。

国家統一する前までのテンジンの若い頃のエピソードだ。 世界地図の半分を自分のものにした偉大な帝王のお話だから、英雄チンギス ハーンを見るつもりで この映画を観る人はがっかりするかもしれない。映画では、テンジンよりも、妻のボルテの方が、偉い。
9歳のテンジンに、自分をお嫁にして、と言って彼に決めさせたのは、ボルテだし、瀕死のテンジンの命を救うために 自らは留まって 敵の部族のものになる結婚直後のボルタは、りりしい。夫を牢から救出するのもボルタ。全幅の信頼を寄せて兄を疑いもしないテンジンに、「首長は一人だけ」と、裏切りを決意させるのも、ボルタ。この、凄腕の妻は、すべての部族を巻き込んだ戦闘で勝ち抜いて、妻のところに帰ってきたテンジンに、「あなたはモンゴル人、何をしなければならないか わかっているでしょう。」と言って 彼を送り出すのだ。二人の関係はモンゴルの乾いた空気のように、すごく乾いていて、湿ったところが全然ない。強さと強さとで、結び合っていて、強靭な信頼関係で成り立っている。強い男は 強い女が支える、ということか。

映画の戦闘シーンは凄い。馬を全力で疾走させながら 鎧で身を固めた戦士が 両手に2本の刀を振りかざして 敵に切り込んでいく。ちょっとでもバランスを崩して落馬したら、脊椎骨折で 即死だ。俳優も命がけだ。この映画 暴力場面が非常に残酷ということで、15歳以下の人は観られない。

実際のチンギス ハーンは、モンゴル帝国初代の王で、1206年から1227年まで在位した。中国北部から中央アジア、イランまで配下に置き、ユーラシア大陸全土に広がる大帝国を自分のものにした。ヨーロッパ、インドまで遠征する計画をもっていた。まさに、世界地図の半分を所有した。
無学な荒野の戦士が、大帝国を築き、文明を発展させたことは、脅威的だ。彼は 高度な製鉄技術を持ち、鋭利な武器や鎧を開発し、戦術に長けていた。それだけでなく 文字文化を導入し、翻訳活動を推進し、異民族の高度な文化を積極的に取り入れた。 マルコ ポーロとの交流も、印象深い。マルコ ポーロの伝記を読むと、年老いたチンギス ハーンが、マルコを自分の孫のように可愛がって、珍しい宝石や香料を与える様子が描写されている。 奥さんい操られるだけの夫だったわけではなくて、立派な指導者だったのだ。