2007年1月3日水曜日

映画 「バベル」


映画「バベル」を観た。
モロッコと、東京と、メキシコの3箇所で 同時に進行する それぞれ3つの物語が、実は 日本人旅行者が残してきた1丁の猟銃によってひきおこされる事件として全部が 関連してくる。見終わった後、思わず「だからいわんこっちゃない、成金日本人 世界中でトラブルの種ばらまいてくるんだから!」と言ってしまった。

ひとつの銃がモロッコの貧しい砂漠地帯で、わずかな草を求めて羊を移動させて生きる養羊家にとって 狼から羊を守るために必要な生活手段にもなれば、イスラムパワーのテロ嫌疑の元にもなる。日本人同様 金と暇をもち余し あれきたりのヨーロッパ旅行に飽きたアメリカ人は異国情緒を求めて古代遺跡のある砂漠にも、人里はなれた高地でもどこにでも行きたがる。そこが政治的に危険地域でも宗教的紛争地でもおかまいなしだ。そんな 電話もネットも通じない僻地を旅行する若い夫婦の心に安定はない。二人の子供との絵にかいたような幸せは、外観だけで、夫婦の絆は実にもろい。

東京で、昔 狩猟を楽しんだ後 猟銃をガイドにあげてきた男の妻は ろうあの娘を遺して自殺したばかりだ。娘は、大人になりかけているが、ろうあであるハンデイー、母に捨てられた気持ち、母を死なせた父への怒り、誰も、自分をわかって抱きしめてくれないという孤立感からぬけられない。

モロッコで銃による事故にあったアメリカ人夫婦の子供たちを世話しているメキシコ人家政婦は、息子の結婚式のために メキシコに帰らなければならない。夫婦の帰国が遅れて、ほかにだれも子供達を世話してくれる人がいないので、子供達を連れて、メキシコに帰る。行きは よいが 帰りが怖い。違法移民のメキシコ人が、アメリカ人の子供たちを連れて、アメリカに再入国する国境は 死を要求するほどに高い。貧しいメキシコ人移民の労働力なくして世界一豊かなアメリカ人の生活はありえないのに、何十年もアメリカで違法移民として働き、メキシコに残してきた家族の生活をささえてきた家政婦を アメリカ国境警備隊は法の名のもとに意図も簡単に見殺しにする。

バビロンの塔を 人は神のいる天にまで届かせようと,建てた。人間とは神を恐れぬ 愚かな生き物だ。神のいない人間社会では、誰一人として、幸せではない。いつも、死ととなりあわせだ。

現代社会を厳しく 切り取って見せた映画だ。良い映画だ。

ブラッド ピットも、ラリア人のケイト ブランシェットも 私の好きな俳優だ。三度のメシよりも演じるのが好き というブランシェットは、どんな端役でも 力を抜かずにきちんと演技していて好ましい。おととしのアカデミーで、主演女優賞を「アビエーター」で取ったのは 嬉しかった。 この映画の中で、キャサリン ヘップバーンの役をやったんだけど、身のこなしから、話し方、顔の表情まで オオー!!と思うほど 本物のヘップバーンだった。本当の顔は全然違うのに、映画の中ではで、へップバーンとしか見えない。これはすごかった。演技とはこういうことができるんだ、と感動した。ヒース レジャーとの主演で、ボブ デイランの一生を映画化する作品の撮影に入っているといわれている。楽しみだ。