第1位: 「愛と狂気のヴァイオリニスト パガニーニ」
第2位: 「ウオーターデバイナー」
第3位: 「アンブロークン」
第4位: 「博士と彼女のセオリー」
第5位: 「バードマン」
第6位: 「ブリッジ オブ スパイ」
第7位: 「ミッションインポッシブル ローグネイション」
第8位: 「エベレスト」
第9位: 「ジュラシック ワールド」
第10位:「ザモスト バイオレンス イヤー」
第1位: 「愛と狂気のヴァイオリニスト パガニーニ」
監督:バーナード ローズ
ヴァイオリンを弾く人で二コロ パガニーニが嫌いな人は居ないだろう。彼が作曲した複雑で技巧的で高度なテクニックを要する曲の数々は、魅力に満ちていて嵌り込むと容易には出てこられない危険性に満ちている。彼は沢山作品を作曲したのに、他人にコピーされるのが嫌で自分で、楽譜を焼却処分してしまったり、謎に満ちた人生を送り、正しい評価を受けることもなく、悪魔扱いされて孤独と貧困に責められながら短い生涯を終えた。こんな伝説に満ちた天才パガニーニの半生を描いた作品だから哀しみに満ちている。
パガニーニの数々の作品を演奏するデヴィッド ギャレットが、華麗で繊細な演奏をたっぷり見せてくれる。ギャレットは、パガニーニの底なしのような孤独が良く似合う、魅力的なヴァイオリニストだ。この気鋭のヴァイオリニストがものすごいスピードで難曲をこなす様子は、まるで魔法をみているようだ。 長髪で背が高く美しい顔をしたギャレットが、ジョン レノン風の丸い黒メガネをかけて、長いコートを着ていると、それだけで「悪魔」の様相をおびてくる。
映画の中で、ギャンブルも、女遊びも、ドラッグも大好きな破滅型パガニーニが、カードで負け続け、無造作にストラデイバリウスを賭けて、それを失ってしまうシーンに胸がつぶれる思い。処女に恋をして、想いが届かない傷心の思いのたけをヴァイオリンにぶつけるシーンも、印象深い。産業革命でロンドンが大気汚染のスモッグに覆われていて、それに慣れないパガニーニが咳き込むシーンが痛ましい。晩年の車椅子に座り、背を向けてうなだれる姿も忘れ難い。光と影、明と暗を、効果的に映像化するカメラワークが古典映画に風格を与えていて、秀逸だ。バックに流れるパガニーニの作品を演奏するギャレットの澄んだ音の連なりに心を奪われる。
モーツアルトを描いた映画「アマデウス」、シューベルトを描いた「未完成交響曲」、偉大な音楽家を描いた作品は、どうしてこうも哀しいのだろうか。後からきてその偉大さが理解され、正しく評価されるまで、何と音楽家たちは前衛として苦しみの多い生を生きなければならなかったのだろう。
第2位:「ウオ―ターデヴァイナー」
監督主演:ラッセル クロウ
作品の詳しい紹介と映画評は2015年1月11日に書いた。
オージーを代表するラッセル クロウが主演監督したこの作品を観ると、オーストラリアへの理解が深まる。第一次世界大戦でトルコ軍と激戦になった、ガリポリがテーマ。オーストラリアからはるばる母国英国に忠誠を示すために英国軍として出兵していたオーストラリア軍が、英国軍の誤った作戦のために大きな被害を受けた。これが英国からオーストラリアが真に独立して、自分の国のアイデンテイテーを築く切っ掛けになった、このガリポリの激戦を描いた作品。ガリポリで3人の息子を全員亡くした農夫が、妻の自殺を契機にガリポリに息子の遺体を探しに行くお話。内容の悲惨さに反して、映画は明るくユーモアがあって、トルコの色彩豊かな風景と人々の明るさに満ちている。
無骨で無口なもっさりしたオージー農夫を演じるラッセル クロウが、とても良い味を出している。この泥臭さは、アメリカ人やイギリス人には出せない。全くもってのオージーマッチョの味だ。とても良い映画だ。灼熱下、青い空のもと、堅い赤土を掘り起こし井戸を一心に掘る男を、賢そうなブルーヒーラー犬が、横でじっと見つめている。その印象深い最初のシーンから、この映画が大好きになってしまった。
第3位:「アンブロークン」
監督:アンジェリーナ ジョリー。
作品の詳しい紹介は、2015年1月24日に書いた。
第2次世界大戦にシンガポール陥落後、日本軍が、外国兵捕虜を残酷に扱ったということで、いったん日本では上演されないことになったが、後で限られた劇場で上演されたことで、話題になった作品。一人の男の、スポーツマンとして折れることのない精神を描いたヒューマンな作品だ。実話だが、映画のモデルとなったマラソンオリンピアンが、映画の完成を楽しみにしながら、完成前に高齢で亡くなったことを、交流があったアンジェリーナ ジョリーが嘆いていた。
同じように南京虐殺を描いた、チャン イー モー監督で、のクリスチャン ベイルが主演した映画「フラワー オブ ワー」も、日本での上映が止められたが、とても良い作品なので残念。このような映画は、日本でこそ上映されて、若い人々に観られるべきだと思う。
第4位:「博士と彼女のセオリー」
監督:ジェームス マーシュ
作品のストーリーと映画評は2015年2月28日に書いた。
現役で、しかも常に脚光をあびている天才的物理学者を演じるというのは、とてもチャレンジなことだ。この映画の良さは一にも二にも、エディ レッドメインが演じたことによると思う。本当にチャーミングな役者だ。
第5位:「バードマン」
監督:エマニュエル ルベッキ
映画評は、2015年5月31日のブログに書いた。
気鋭の監督による実験的な作品。長廻しカメラで役者を追廻し失敗の許されない舞台で演じるようなプレッシャーをかけまくって作られた、斬新な作品。実験としては成功している。とてもおもしろい映画だった。主演のマイケル キートンが良い。
第6位:「ブリッジ オブ スパイ」
監督:ステイブン スピルバーグ
脚本:コーエン兄弟
1963年に実際あったことを映画化した作品。ハリウッドの「良心」を代表する役者、トム ハンクスを主演にして、彼の良い味を引き出している。ひとりの弁護士が、アメリカ国内で逮捕された東側スパイの弁護をひきうけたことを契機に、冷戦下の米ソ間の政治にかかわることになってしまう。一方東側にスパイ容疑で拘束されているアメリカ軍パイロットの釈放を求めて、捕虜交換の交渉をするために弁護士は、冷戦下のベルリンに飛ぶ。無力でごく普通の家庭人の弁護士が、スパイであろうが人は人権を守られるべき存在だという信念を、ときの流れや世論に逆らってでも曲げないでがんばる姿に、思わず声援を送りたくなる。当時のアメリカに、こんな骨のある弁護士がいたことに、驚かされる。政治権力や、銃を持った人達に対して、それを持たない一介の弁護士が、自分自身の恐怖心を戦いながら、弁護士として何ができるのか。人間には、武器を持たずに どんなことが可能なのか、するどく訴えかけてくる。とても良い映画だ。ベルリンの東西を分断していたグーリ二カー橋上での捕虜交換のシーンは緊張が張り詰めているが、美しいシーンで忘れ難い。
第7位:「ミッションインポッシブル ロークネイション」
監督:クリストファー マッカリー
映画紹介は、このブログの2015年8月22日の日記で書いた。
ダニエル クレイグの007シリーズ「スペクター」の方が、このトム クルーズの「ミッションインポッシブル」よりも観客動員が多くて興行成績も良かったそうだが、私はこちらの作品の方が好きだ。まず残酷シーンで首が飛んだり、血しぶきを浴びたり、拷問シーンでじっとり悪い汗をかいたりしないで済んだし。終始ポップコーンを食べながら観られたし、、。こういう大型アクション娯楽映画は、子供と並んでワーとか、ギャーとか言いながら楽しんで見られなければいけないんじゃないかと思う。
第8位: 「エベレスト」
監督;バルタザール コルマウクル
映画評は2015年11月29日に、このブログで書いた。
過酷なエベレスト登山の挑戦するからには、ひとつの間違いも許されない と言う見本をみせてくれた。たくさんの有名俳優を使って、危険な現地撮影に成功している。撮影隊の苦労を思うと、高い評価をしてあげないと可哀想だ。
第9位:「ジュラシックワールド」
監督:コリン トレボロウ
ジュラシック シリーズの4作目。1993年、1997年、2001年、2015年と、ジュラシックものが続いてきたが、いつも同じテーマで、同じ内容を繰り返しているだけの様な気がしてならない。ステイブン スピルバーグの第1作目の意表を突いた発想、冒険と恐怖感、そして興奮が、あまりに抜きんで優れて居たので、それ以降の作品がみな2流に見えてしまう。役者や新しい車や施設を出して来ればいいと言うもんじゃない。3頭の孤児の恐竜が、仲間を殺されて復讐するところも、気丈で美女の経営者と荒くれ男との関係も、はじめから先が読めてしまってつまらない。続作をいくつも観るより1993年作、リチャード アッテンボロウの第1作を繰り返して見る方が余程面白い。
第10位: 「ザ モスト バイオレント イヤー」
監督:J C チヤンド―ル
1981年のニューヨークのお話。抑えた色調、1930年代風のマフイアの親分といった強面だけど、よくみるとイケメンの男が苦労しながら自分の富を築き上げていく。たくさんの裏切りに出会うが微動もしない。確固とした自分のビジネスへの自信とゆるぎない経営戦術、畏れない身構え。小さな裏切りに会っても諦念と愛情でしっかり妻を支える男気。
バイオレントとタイトルにあるので、いつ銃撃戦が始まるのか、彼がどんな目にあうのか、美人の奥さんがどんな酷いことをされるのか、可愛い無防備な子供に何が起きるのか、どきどきしながら映画を観終わるまで緊張が解けない。上手だと思う。映画作りに長けた監督の手法に脱帽。