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2024年11月17日日曜日

委縮する脳

人は、手術台に乗って腹を開けてみれば、肌の白い人も黒い人も、黒髪の人も金髪の人も障害者も健常者も、内臓はみんなおんなじピンク色。心臓の大きさも誰でもさほど変わらない。だから、人は外見でなく内面に価値がある。
そして
人は、病院で生まれ病院で死ぬ。だから、医療従事者は差別なく誰の命も等しく大切にしなければならない。
おまけに、
人は誰しも歳を取れば脳が委縮して認知障害をもつ。
これは
1977年にナースの資格を取って、74歳になる今も、医療現場で働いている私の日々感じている実感だ。
私の父は、70歳まで早稲田の政経学部で教壇に立って、学生達を本当に可愛がった。若い人から慕われて満足な人生を送ったと思うが、最後の頃は実在しない人と会話して、見えない人と一緒に幻の世界に入ってしまうことが多かった。壁に向かって大声で嬉しそうに会話したり笑ったりする姿は、なかなかの迫力だった。

その父を、自分の弟の息子だった故に、実子同様に育てた経済学者の大内兵衛は、あれほど学問の人で、敬愛される人格者だったのに、晩年はひとり、話しかけても答えず、1日中ただ座って目の前のテレビを見ているだけの人だった。

いま、高度医療つきエイジケアに勤めていて、職場にはアルツハイマー病、癌末期、重度障碍者、経管栄養、経管尿、人工肛門、腎臓透析、糖尿病など複数の診断名を持つお年寄りが50人いる。多くが80歳以上なので、18年間勤めてきた間、数えきれない入所者を見送った。入所者のほぼ全員が自分では食事と排泄ができない。そしてほぼ全員が認知症を発症していて異常行動も起こすことも多い。
認知症による問題行動、混乱、ヒステリー、徘徊、盗み、暴力、譫妄などは、そういう人がいるのではなくて、風邪や尿路感染や、鬱病などを契機に問題行動が出る。トイレに座り込んで便をこね回して遊んだり、他の入所者やスタッフを殴ったり、何でも口に入れてしまったりする異常行動は、一つ一つ対策を考えて対処する。

NSW のクーマという街の老人ホームで、95歳の入所者が2本の刃物を振り回して徘徊しているので、困ったスタッフが警察を呼んだ。やってきた警察官が抵抗するおばあさんにテーザー銃を撃って転んだところ、打ち所が悪くて亡くなった、という事件が起こった。裁判で係争中だが、一般世論は、屈強な警官が可哀そうな年寄りを殺した殺人事件として報道されている。が、事はそれほど単純ではない。認知障害で譫妄を起こしている人は、予想外の暴力性と、普段の姿からは想像できないほど、何かに取りつかれたような強い力がある。その怖さは経験しないとわからない。
ただ今回の事件では、老人ホーム入居者が、簡単に台所に忍び込んで刃物を持ち出せた、ゆるい管理だったことは、責任を問われなければならない。95歳のおばあさんは以前も老人ホームを抜け出そうとして、止めようとした職員にけがをさせている、という。よほど家に帰りたかったのだろう。もっと家族も年寄りと、入所について密に話し合うべきだったろう。ただ家に帰りたかっただけのおばあさんも可哀そうだが、テーザー銃を撃った若い警官も、世間の非難を一身に浴びて気の毒だ。これがトラウマになって自分の人生を壊すようなことがないと良いと思う。

人は年を取り、様々な体の変化を体験する。自分が年を取り脳血管が詰まったり、脳神経の伝達に障害が出たり、脳が委縮したために、どういった症状や、異常行動が出てくるのかは誰にも予想ができない。
だから自分の脳がちゃんと働いてくれているうちは、そのことに感謝して、できるだけ良き人でありたいと思う。

ジャガランダが満開のシドニー、右がハーバーブリッジ、左がオペラハウス。



2024年11月16日土曜日

米国民主党の罪

爆弾を供給している国が停戦のために努力をしていると米国政府が言うのは真っ赤な嘘だ。
10.7以降、米国では本気で停戦のために1ミリでも、働きかけた人など居ない。皆無だ。
みなトランプを批判してばかりいるが、今の米国民主党政府が、この1年イスラエルのパレスチナへの侵略と虐殺を続けてきたのだ。米国は2016年覚書協定で、毎年イスラエルに38億ドルの兵器購入予算を送金してきた。また今年4月特別予算案が議会を通過すると140憶ドルの支援金が送られ、イスラエルの空は米国の防空システムによって守られてきた。さらに、バイデンはトランプに政権を譲る前に、戦況を良好にし有利な停戦に持ち込むため、さらなる軍事予算と武器を送ることを約束した。
今、レバノンにイスラエル軍が進駐し飛んでくるミサイルを、地中海に停泊する、米軍の空母がそれを撃ち落としている。シリアにもイランにもミサイルを飛ばしている。イスラエルは強固に米軍に守られ、領土の拡大とパレスチナ、アラブ世界の壊滅を目指している。

民主党が大統領選挙で負けたのは、海外での戦争ばかりに予算を向けて自国の労働者の生活を顧みない政府に労働者が希望を失なったからだと、バーニーサンダースは言ったが、そのサンダースも、アレクサンドラオカシオ コルテルも、カマラハリスも、イスラエルによるジェノサイトの切っ掛けになった10.7を、「イスラエルは自衛する権利がある。」と断言したことを忘れない。10.7のハマスによるアタックを「抑圧をはねのけるためのレジスタンス」ととらえるか「テロリストによるテロ行為」ととらえるかでイスラエルへの評価が180度変わる。
イスラエルに自衛する権利があるとするならば、4万4千人のパレスチナ市民を虐殺することがイスラエルの自己防衛なのか。国際法に違反して国連の支援要員やジャーナリストを狙い撃ちすることがセルフデイフェンスなのか。病院と学校をまずミサイルで破壊することがイスラエルの自衛行為なのか。レバノンにまで進駐してミサイルの雨を降らせ、領土を拡張することが自己防衛なのか。

爆弾を供給しながら停戦を唱える民主党に絶望した良識ある米国の人々は、トランプ政権になると世界一リッチなイーロンマスクの財力とハイテク技術の使って、さらに戦争が拡大して再び絶望することになる。
パレスチナは米国のユダヤ軍需産業の人体実験場だ。次々と武器産業は「自律型兵器」を開発して市民を殺害してきた。爆弾搭載ドローン、無人偵察機、遠隔操作ブルドーザー、ドライバー要らずの戦車、生体確認承ドローン、AI制御の銃、などなど自ら手を汚さずに最小限の人が最大限の市民を殺せる武器が次々と開発されている。イーロンマスクはさっそく次の武器開発に取り掛かっている事だろう。
軍拡は凄まじい勢いで進行している。

日本は米国から距離を置かなければいけない。



2024年11月13日水曜日

ヘイト シンボル法

豪国ではナチのシンボル鍵十字や、ナチ式敬礼を公共の場で示威することは法的に禁止されている。この「HATE SYMBOL LAWS」という法の違反者は拘束され、1年程度の実刑と23000ドル(230万円)の罰金が課される。
メルボルンで自称「ヒットラーソルジャー」と名乗る25歳の男性に1か月の実刑と罰金の判決が出た。本人は「控訴する、民主主義のこの国で言論と表現の自由は守られなければならない。裁判で戦うが自分は恐れず監獄にでも行ってやる」と息巻いていた。彼とその支持団体は、「WHITE MAN FIGHT BACK」(白人の男は戦う)という旗をかざし、歴史的事実であるヒットラーによるホロコーストを否定し、中国代表のシージンピンの写真を焼いて、気勢を上げている。ヒューゴボスがデザインしたドイツ軍の制服とチョーカーで一糸乱れず行進するナチの姿を夢見ていたのかもしれないが、それに比べようもなく、20人たらず黒ずくめの服にサングラスの男たちで行進というよりはショボくって、オージーっぽく朝の散歩といった感じで歩きはじめたとたんに警察に規制、解散させられていた。
もともと直立不動で右手を斜め前にあげるナチ式敬礼は、ローマ帝国のシーザーが始めたものだった。それをイタリアのムッソリーニが真似をして、またそれをヒットラーが真似をした。シーザーはルビコンを超え、今でいう仏国、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、ドイツ、スイスからドーバーを超えてブリタニアまで進攻して勝利をおさめ、ローマに凱旋した。シーザーは、この凱旋の先頭を、ずんぐり背で黒髪のローマ人ではなくて、青い目、金髪の背が高く立派な体のゲルマン人の騎兵を、先頭に立たせた。青い目、金髪、堅固な体つきのドイツ人はローマの時代から人気があったわけだ。
それにしても、ローマ時代でなく、太平洋戦争中でもない現在に、ヒットラーソルジャーと自称し、自分が選ばれた特別な存在だと思いこむ幼児性にはあきれる。ヒットラーのまねっこするのも勝手だが、他の人を攻撃したり口頭やデモストレーションで攻撃することはヘイトクライムで、立派な犯罪だ。「反共、移民排除、白人、男だけ」が優れているという選民思想は、社会の規範に沿わない。鍵十字やナチ式敬礼を禁止するのは公益にかなっていて正しい。

しかしそれよりも、ナチズムより強い民族意識と優生思想を持ったシオニズムとは、本当の差別主義でユダヤ人だけのものだ。ヘブライ人だけが神に選ばれた民族で救済されなければならないという選民意識は、他民族を差別し、他宗教信者を人扱いしなくても良いと理解されている。ナチの「ゲルマン民族純潔主義」の裏返しで、自分達だけが他とは同化できない「ユダヤ純潔主義」に固執する。ネタ二ヤフ政権は、ガザでジェノサイトを続け、ヨルダン川西岸を完全に侵略し、ゴラン高原を占拠し、レバノンを侵攻し領土を広げている。
政権をトランプに引き継ぐ前に、米国民主党政権は最後の大判振る舞いで最大限の武器をイスラエル軍に送っている。シオニズムというユダヤ人選民思想に基ずく他民族排除と、その攻撃的で暴力的な憎しみを、取り締まることができるのは、何なのだろうか。法でも、人の良識でもなく、やはり力しかないのだろうか。
「つきのさばく」を歌ってみた。
I an singing [ The desert under Moonlight]



2024年11月6日水曜日

トランプ再選

トランプが米国大統領に返り咲いた。
豪国労働党政府はパニックに陥っている。豪国の米国大使ケビンラッド元首相は、かねてからトランプのことをナッツ:下品でやな奴と公言していた。大使を退き上げ、交代することになるだろう。だいたいキャンベラにトランプと直接会って話をした政治家が居ない。トランプが以前大統領だった時、豪国首相だったのは民主党のスコットモリスン。豪国歴史の中でも最も不人気な首相だった。頭が良く弁が立ち、笑顔でべらべら残酷なことでも、人を傷つけることも平気で言える奴。国中がブッシュファイヤーで死者が出ていた時に、ハワイ休暇中で平気でインスタにVサインの家族写真を見せたり、コロナで過労死寸前の医療従事者を顧みることもなかった。トランプ勝利に沸くニュースをみながら、アルバニー二首相は、誰とでも仲良くできる、とか言っていたけど。

トランプ当選を一番心配していたのは、ウクライナのゼレンスキーだろう。トランプはNATOから脱退し、ウクライナの武器支援を止める。ウクライナの国土の20%はロシアのものになるだろう。
それよりも深刻なのは、米国内の移民追放だ。1100万人の米国内にいる違法移民が国外追放になる。米国の市民生活を支えてきた労働者が居なくなって、インフレも加速して米国経済はガタガタになるだろう。

日本では桜の季節が一番美しい、というならば、豪国ではジャカランダが咲き乱れる今が一番美しい時期だ。薄紫色の花がこんもりと咲いていて外出するのが楽しい。南米発祥の樹だが、むかしシドニーから600キロ離れたグラフトンの街に、移民によって持ち込まれた。小さな田舎町グラフトンには1700本のジャカランダが咲いているそうだが、一挙に広まって今ではどこでも咲いている。花が終わると葉がでてくるところも桜に似ている。
夜桜は美しすぎて妖気が漂う、というが、トランプの再現で世界中に妖気が漂ってきた。



2024年10月23日水曜日

赤狩りが始まっているのか

市民社会で赤狩りが、もう始まっているのか?
シドニーの公園の壁に「HAMAS」と落書きした人を、極悪犯全国指名手配のように、CCTV監視カメラが捉え警察が追っている。この人に心当たりがある人はすぐに警察に申し出るように、と今夜のニュースで報じられた。
人を殺したわけじゃない。傷つけたわけでもない。たかが落書きだ。これによってホロコーストを経験したユダヤ人が傷つくからだ、とアルバニー二首相は言う❓。オーストラリア政府は、米国に追随してパレスチナのハマスと、レバノンのヒズボラをテロリストグループだと断定した。
事実ではない。
ハマスはガザの人々が選んだ政府組織であり、ヒズボラはレバノンの最大軍事組織だ。それを他国、米国を中心とした西欧グループが勝手にテロリストと呼んでいる。
イスラエルと米国という世界最強最悪の無法者、世界の暴力団によってパレスチナ人は4万4千人の市民が命を奪われ、レバノンでは数千人が亡くなっている。
停戦を求めパレスチナ支援のデモが世界中で行われ、シドニーでは毎週土曜日にデモが行われているが、ハマスやヒズボラの旗を振った人は、テロリストであるとして警察が逮捕している。パレスチナに連帯を求め、旗を振ってどこが悪いか?しかし政府は、デモで逮捕された人が移民であった場合、永住権もビザもキャンセルして本国に強制送還するという。
昨日までイスラエル、パレスチナ1国2政府にすべきだと言っていたオーストラリア政府が、ネタニヤフと一緒になって、「最後の1人までハマス撲滅」を叫んでいる。イスラエルに停戦を求めていると、この1年間言い続けてきた米国民民主党も、共和党も、「ハマスとヒズボラ壊滅一掃」を求めて軍事支援を強化している。

かつて、湾岸戦争の時、米国の目的は、サダムフセイン大統領殺害ではなかった。イラクのオイルだ。それをいま米国はすでに手にしている。

かつて、リビア戦争で米国の爆撃の目的は、カダフィ大佐暗殺ではなかった。リビアのオイルだ。それをすでに米国は手にした。

かつて、シリア戦争の米国の目的は、アサド大統領を倒すことではなかった。シリアのオイルだ。アサドを倒さずとも米国はシリア領土の半分を侵略しすでに主要な油田を占有している。

そして今回のイスラエルに代行させている戦争の目的は、ハマスを倒すことだけではない。米国が武器支援する目的はイランのオイルだ。
米国が民主国家だなどと思ってはいけない。いつも暴力で世界の資源を奪ってきた。

「人々を受動的かつ従順に保つ懸命な方法は、議論の範囲を厳しく制限しながら、その範囲内で非常に活発な議論を許すことだ。」とノーム チョムスキーは言う。
トランプが勝つか、ハリスが勝つか、意味のない議論に熱中している間に、数えきれないパレスチナ人が殺されている。
どっちが勝っても、「さらなる大量兵器をネタニヤフに与えるのは、どっちか」、という違いに過ぎない。

旧い友達SUEMARRの作った「道路」を歌ってみた。

I am singing [ MICHI ] written by SUEMARR, my old friend.


2024年10月9日水曜日

黄色い旗を持て!

10月7日シドニーの真っ青な空に、沢山の黄色い旗がひるがえり、風に吹かれてはめいた。何も書いていない黄色い旗。
豪国ではイスラエルに停戦を求め、44000人余りの命を奪われたパレスチナを支援するデモが、毎週土曜日に各地で、ずっと行われてきた。
しかしイスラエルが本格的に戦線を拡大し、レバノンに侵攻し始めてから豪国政府は、ハマスとレバノンのヒズボラの旗を公共の場で持ったら、テロリスト組織の一員とみなして逮捕拘束し、豪国のビザをキャンセル、母国に強制送還する、と発表した。すでに逮捕者が出て警察で取り調べを受け保釈の身でいる。
これに抗議して、ヒズボラの旗でなく、黄色いが、何も書いていない旗を人々はもってデモをした。凄いパワーだ。勇気が出る。

1年前、2023年20月7日、パレスチナのガザで、ハマス政権の軍事部門は3000人の戦闘員をイスラエル領内に送り、1200人の土地占領者を殺し240人の人質を取った。
なぜか
パレスチナは1967年以来イスラエルの占領下におかれ、2007年パレスチナ自治区の民主的選挙によってハマスがガザを統治するようになってからは、この占領地が完全に高い塀で封鎖され、産業基盤が破壊され、水も電気も自由に使えなくなり、230万人の住民が、わずか365平方キロの土地で、貧困ライン以下の生活を強いられてきたからだ。土地を奪われ生活の糧を収奪され,、日々イスラエル占領者の暴力と嫌がらせを受けてきた飢えた人々の、これは反逆だった。
10月7日の越境攻撃を、イスラエル、米国、NATO加盟国、豪国はハマスによるテロだと断定したが、イスラエルという入植者による暴力と占領をはねのけるアラブ民族の反乱、天井のない監獄に閉じ込められてきた人々の自由と解放を求める行為だったと考える方が理にかなっている。

1周期を経て4万4千人のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺され、今も殺され続け、それを支援してきたレバノン人も数千人の死亡者が出ている。
イスラエル軍はまず病院と学校を破壊した。ガザに入ったジャーナリストを狙い撃ちして殺している。ジャーナリストだけで130人の犠牲者が出た。いまや、PRESS の防弾チョッキを着ていると狙い撃ちされるので現地に残っている記者たちは平服で活動している。国連の勧告も、国際刑事裁判所の命令もイスラエル政府は無視している。
イスラエルはハマスの政治局長、イスマルハ二ヤをイランで暗殺した。レバノンの宗教指導者、ハサンナスララをベイルートで暗殺した。
西側諸国はハマスとヒズボラをテロリストと言うが,、ハ二ヤとナスララの居場所を突き止めて暗殺するようなイスラエル秘密警察モサドを本当のテロリストというべきではないか。世界中に散らばるユダヤ資本の豊富な資金でイスラエル秘密警察は、どんな卑劣なこともできる。

ハマスに10月7日家族を殺されたり人質に取られたイスラエル人の話を報道で聞いて驚いたのは、これらの被害者の怒りがハマスではなく、イスラエル政府に向けられていることだ。銃を持った兵が侵入してくる恐怖の中で、鍵のかからない部屋のドアを開けられないように17時間ドアノブにしがみついて家族を守った父親。道路に死者が沢山倒れているのに、5時間も警察の出動が遅れたこと、ガザとの境界線で住む入植者の怒りは、イスラエル政府に向けられていた。彼らもまた政府の言う通り入植した普通の人々だったのだ。

ハマスとヒズボラの旗を持つことで、豪国警察に拘束され、ビザを奪われ、母国に強制送還になる危険を脅かされても、黄色い旗を持つ人々は居る。人類の歴史は抵抗の歴史だ。日本でむかしインターナショナルの歌が禁じられた。「立て」の「た」を言ったところで人々は治安維持法で逮捕された。しかし人々は歌詞を変えて歌うことを止めなかった。それも禁じられたら、こんどはハミングで歌った。ハミングも禁止されたら、肩を組んで心の中で歌うだろう。それをだれも禁止できない。

「インターナショナル」と「ワルシャワ労働歌」を歌ってみた。
I am singing [ INTERNATIONAL] and [ WARSZAWIANKA ]


2024年10月3日木曜日

イスラエルはレバノンから手を引け

脳の中で警報が鳴り響いている。この1週間でマスコミによる報道の色合いが変わった。
イスラエル軍によるレバノン空爆、ミサイル攻撃に加えて地上侵攻がすでに始まった。レバノンの国際空港は閉鎖された。米軍はイスラエル軍をサポートするために軍隊を送り、地中海に空母を据えて睨みを利かせレバノンからのミサイルを撃ち落としている。激しい爆撃の中を、ベイルートの20万人の市民は、ガザ市民同様、どこに避難しろというのか。

豪国政府は、レバノンへの戦争拡大に反対するデモで、ヒズボラとハマスを支持し、彼らの旗や写真をもってデモに参加した者は、テロリスト組織の者と断定して拘束し、豪国のビザをキャンセルすると発表した。
豪国は4人に1人は外国生まれ、豪国国籍を取らずに永住権を得て一生豪国に暮らす人の多い移民国家だ。日本は2重国籍を認めないから私も永住者、30年近く家族もみな豪国で暮らしている。日本には40年余り住んでいない。もし明日パレスチナ支援デモで、ヒズボラかハマスの旗を振ったら、ビザを奪われ40年余り住んだことのない、兄弟や親類も居ない日本に強制送還される。
ビザを取り上げられるということは移民にとって最も恐れることだ。戦火を逃れ命からがら難民となったアジアやアフリカから来た人々や、差別から逃れて移民してきた人にとって、もとの国に帰れ、ということは直ちに死を意味する場合もある。
即時停戦、戦線拡大反対を主張して、イスラエル政府にプレッシャーをかけてきたのは、国連がこの数か月やってきたことだ。世界中の心ある人々の主張してきたことだ。ハマスに連帯して旗を持って何が悪い?

世界の暴力団 米国とイスラエルが暴れ放題をやって、パレスチナ市民を4万4千人以上、レバノン市民を数千人殺して、まだ殺したりない。血に飢えた顔で米国は、「平和と民主主義のために停戦を求める。」と言い、言葉に反して武器をイスラエルに送り続ける。年間38億ドルの武器では足らず、追加予算で140憶ドルの武器を送る米国。
これをチャンスに、ユダヤを批判するものはすべてユダヤ人迫害主義者だと、主張してパレスチナ民族殲滅を、もう1年間も続けてきたイスラエル。イスラエルに「即時停戦、イスラエル軍撤退、パレスチナ自治区を取り戻し、自治政府を認定し、西バンクのイスラエル人セトラーによる土地を返還する」要求は国連が国際法に従って主張してきたことだ。理性を持つすべての人の主張ではないか。
さらにイスラエルは最もしてはいけないことをした。レバノンのシーア派宗教指導者ハサン ナスララを暗殺したこと。これはバチカンの法王を殺すようなものだ。ナスララという人々の心に支えになっている宗教のリーダーを殺したということは、軍のトップコマンダーを殺す以上の大きなインパクトを持つ。
ネタ二ヤフは昨日「今が古くからの敵を抹殺する絶好の時だ。」と言い放ったが、ユダヤ人の敵はイスラムではない。

ハマスはテロリストではない。パレスチナのガザ自治区で民主的に選ばれた政権だ。そして、ヒズボラも、テロリストではない。レバノンの軍隊の中で60%の多数を占める軍隊組織だ。
米国とイスラエルの張ったテロリストというレッテルを、そのまま信じてはいけない。
米国とイスラエルは、その血に染まった手を戦線から引け!

古くからの友人、吟遊詩人スーマ―作詞作曲の「夜明けまで」を歌ってみた。
I am singing [ TILL DAWN ] by SUEMARR.



2024年9月20日金曜日

戦争に暗躍する秘密警察

どうして北アフリカには象やキリンやシマウマがいないのだろうかと、ずっと不思議に思っていた。どうしてガゼルやライオンやピューマが、サバンナでくつろいでいるのを見るために、セレンゲテイまで行かなければならないのか、長い間疑問に思っていた。
それが、数千年前にローマ帝国がコロシアムで、グラデイエイターと戦う見世物のために、数千頭の野生動物が連れてこられて殺されたからだったと知って、強い衝撃を受けた。
紀元前700年代に狼に育てられたロムルスによって建国されたローマの物語、「ガリア戦記」のカイサルの目の覚めるような活躍、トライアヌス皇帝の物語に惹かれてローマ帝国が大好き人間だったが、一瞬でその思いが吹き飛んだ。

殺すのが大好きなヒト。殺すのを見物するのが大好きなヒト。

9月17日からレバノンの国中で、数百のポケットベルが爆発して死傷者4000余りが続出している。
あちこちで、ポケットベルが遠隔操作によって爆発し、レバノンのコミュニケーションシステムが破壊された。人の多く集まる市場で、祈りをささげるモスクで、学校で、日々働く人々のオフィスで、ポケットベルが爆発している。これからもっと死傷者は増える。
レバノンのヒズボラは人々に、外国情報機関にコントロールされる可能性のあるスマートフォンを避けて、ポケットベルを使うようにアドバイスしていた。数が月前にヒズボラが注文した数百個のポケットベルが手元に届くまで、税関でイスラエル秘密警察のモサドが、ポケベルを解体しリチウム電池を爆発物に交換し、それが暗号でメッセージが送信されたときに爆発するように細工した。英国の秘密エージェントMI-6も、これに加担したことを認めている。

ヒトは殺すのが好きだ。殺すのを見物するのも好きだ。

ゴリラは戦いが起きた時、殺し合わない。ボスのシルバーバックが両者の間に大きな体を割り込ませて、大きな目でじっと見つめるのだと言う。思慮深いゴリラに見つめられて両者は興奮が冷め、互いに敵意がなくなって、争ったことを恥じるようになるのだのだという。
なぜ、ヒトはゴリラ並みの知性と品格と良識をもてないのだろう。

Why there is no Elephants, Lions, Giraffes in the North Africa? Why I have to go South Africa to see Cheetahs, Leopards, and Panthers? I have been wondered long time. The answer is since before the Christian Era, Roman Empire abducted thousands, thousands animals, hunted, putting in small cages ,bring to Roma and forced to fight with Gladiators in Colosseum.
Human loves killing and human loves to watch killing. That is human history.
From 17 September hundreds pager devices exploded in Lebanon and more than 4000 people injured and some were dead.
Since several months ago Lebanon, Hizbulla had urged advised to people to avoid smart phone, which can be controlled by foreign intelligence services, and advised to use pagers to receive messages and alarm. Hizbulla ordered hundreds pagers from overseas, and during shipment to Lebanon, the secret services manipulated pagers.
Later manipulated pagers exploded and children's limbs blew up, driving Ambulance cars flied away to the sky, women shopping at market burned their faces, office workers lost their eyes, and 4000 people victimized.
The secret service MOSSAD and UK agent MI-6 involved in the affair, MI-6 told to media.
A human loves killing and loves to watch killing.
In the Gorilla society, they never kill each other and a big boss Silver Back used to stay between one and other while argument occur. The boss stay and gazes, stares each of them until they calm down and both are ashamed them selves.
Why human can not obtain humbleness, discretion, wisdom, modesty, and enlightenment, like a Gorilla.
I am singing [ Don't Look bank in Anger ]



2024年9月18日水曜日

おべんとう

豪国には給食と言うものがないから、子供たちは幼稚園から高校を出るまで学校にお弁当を持っていく。
お弁当の中身がピーナツバターを塗っただけの食パンだったり、ニンジンとバナナだったりすることで、日本から来たお母さん方はびっくりする。私も初めてバナナとリンゴを持って行く子を見て、上野動物園の飼育係が持っていたゴリラのランチそっくりだと思った。

写真はスーパーマーケットで売っているミニトマト、ミニキウリ、ミニキャロットの写真で、一口サイズなのでお弁当に最適だ。ヒトは社会的な動物で、男も女も社会に参加するようになったから、専業主婦という言葉は21世紀に死語になった。みんな忙しいからお弁当は簡単な方が良い。
お弁当というと優しいお母さんが毎朝作ってくれたお弁当に良い思い出を持っている人が多いかもしれないが、私の母は家事が大嫌いだった。母は子供の時から爺やと婆やに世話されて、2人の兄にチヤホヤと大事にされてきた。兄たちに両側から手を取られてベレー帽、ロングスカートにハイヒール姿の母が、銀座を闊歩する写真を見たことがある。父と一緒になって家事をすべて任されて、いつも機嫌が悪かった。その母は79歳で癌で亡くなったが、2か月違いで2人の兄も亡くなっていた。本当に仲が良かったのだ、だから兄達に両腕を任せながら幸せに旅立ったのだと思って、悲しくなくて、幸せな気持ちで見送った。

一方の父は、70歳まで早稲田の政経で教壇に立ち、「メシ食いに来い」と、どの学生にも声をかけていたから、家には書生のように半分住み着いているような学生が何人もいた。母が怒るわけだ。私は 小学校ではアメリカに押し付けられた脱脂粉乳のミルクとコッペパンの給食を食べていたが、中学になると、怒れる母のお弁当を持参することになった。
ある日、お弁当箱を開けると白いご飯の上に小さなコロッケがひとつ、その上を弁当箱の蓋をギュっと押し付けられて、破裂コロッケが飯の上で無残な姿でのびていた。それをみたガキどもが「大内の弁当すごい!」と騒ぎ出し、見物人数えきれず、、、。
運悪く翌週は課外学習で、お弁当は海苔巻きだった。きれいに細巻き干ぴょうを巻いたのを、切って器に入れてくれればよかったものの、シャレたつもりか竹の皮で包んであった。背負って走り回ったザックの中は洗濯機状態。前の姿が想像できないくらいに変形していた。それもなぜ忘れたのか、切っていない。長いままの細巻きのヒョロヒョロが、ザックの底で転がっていた。以来、「大内の弁当すごい!」は、半径50メートル内では有名だった。

今私が住むシドニー中心に、マーチンプレイスという日本でいう霞が関のようなビジネスオフィス街がある。そこに昼間だけ屋台の果物屋がいくつか店を出す。ボトルの水や果物のバナナや洋ナシやリンゴを1個ずつ売る。小さなパック入りのイチゴやスイカやパイナップルもある。ビシッと背広三つ揃いを着たビジネスマンが、パック入りのイチゴを買うなり、歩きながら食べる姿を見ると、健康的でいいなあ、と思う。子供も大人も健康的でいいなあ、と思うけれど、私は誰かが作ってくれたご飯を2段、海苔で2階建てにして、上品な出し巻き卵と佃煮が乗ったお弁当が食べたい。



2024年9月14日土曜日

スイミング効果

2年前に、職場で体重124キロのおばあさんの車椅子を押して、膝を骨折した。
重い車椅子の方向を変えようとして無理な動きをしたらしい。職場では、慣れないことをするからだ、看護補助を待たなかったのが悪い、そんなことで簡単に骨折する骨って、砂糖でできているのか、毎日骨折だねー、と散々こき下ろされて笑われて、しばらくふてくされていた。
リハビリに水泳が良いと言われて、6月の南半球では真冬だったが近所のジムの温水プールで泳ぎ始めた。

その水泳を今でも続けている。まる2年と3か月。
自分でもよく続けてきたと思う。久しぶりに水の中に自分を浸してみた時、自分の体が喜んでいるのがわかった。ヒトも動物も植物もみんな生き物は、海から来たのだ、と言うことが実感できる嬉しさだった。半分沈みながら、ゆっくり泳いでみると、だたそれだけで嬉しい。しばらく水の上で浮かんで大の字になって漂っていると、大地と水と空が実感できる。無限に体が自由になったようだ。時々自分がイルカになったり、アメンボウになったりする。
毎朝6時にジムが開くのと同時にプールに飛び込むと、そのうち朝日がゆっくり昇ってくる。ビル最上階にあるジムの良さだ。300メートルほどを1時間かけて泳いで、帰りは,開いたばかりのベーカリーでバケットか、クロワッサンを1個買って帰ってくる。
ジムで友達もたくさん出来た。早い時間に行くので、その頃に来る人々はジムで汗を流した後、あわただしく職場に向かう。中国人のIT、スリランカの会計士、フィージーのペンキ屋、オージーの障害児学校の先生、、結構深刻な社会問題を水の中で話したりもする。
これを書いていて、なんか自分がとても贅沢で、満足っぽい生活をしている、と感じる。怪我の功名というのか。74歳、現役のナース。こんな健康な生活がずーっと続けられますように、、、。

作詞作曲:福田満「うたと薔薇」を歌ってみた。
I am singing [ POET-ROSES ] written by MITSURU FUKUDA.



2024年9月11日水曜日

ソーシャルメデイアへの弾圧

デモに行こう、のアジビラをロウ紙に鉄筆で書いて謄写版で1枚1枚刷った世代だ。赤と黒の2色刷りに成功した時は嬉しくて嬉しくて、あの歩きにくい砂利の成城大の中庭を駆け回った記憶がある。
だから集まれ、とひとことメッセージするだけで一瞬に世界中に拡散されるというソーシャルネットワークのことはあまりよくわかっていない。
でも世界が変わり、地球上の富の半分は20数人の富裕者が所有している、と聞けば腹が立ち、GAFAが世界の富を握っている、と知れば不愉快きわまりない。

ロシア人でソーシャルネットワーク「テレグラム」所有者のパベル ドウロフ(39歳)がフランスで拘束された。
「テレグラム」は米国主導の西側ソーシャルメデイアと異なり、ロシアでニコライ、パベル ドウロフ兄弟によって作られたソーシャルメデイアで、今や月間10億人の利用者がいる。個人やグループでボイス、ビデオ、ファイルやメッセージをシェア出来て、20万人までのグループ活動を可能とする。2014年にロシア政府に個人情報の提供を要求されたが拒否したことで、起こりうる政府の圧力から逃れるために、ヘッドクオーターをUAEのドバイに移した。WHATS APP やLINEよりも安全性が高いのと言われるのは、メッセージやファイルが読まれた後、自動的に消去できるからだそうだ。いまロシアウクライナ戦の情報を報道する独立系ジャーナリスト達に、大いに利用されている。
パベルは、8月24日、自家用ジェット機でパリに着き、その場で逮捕された。当人はマクロン大統領に夕食に招待されていたのだそうだ。マクロンは、かねてからパベルにテレグラム社の本拠地をドバイからパリに移してほしいと提案していた。
パベルがロシアとUAEの国籍に加えて、フランスの国籍を与えられたのはマクロンによる好意(賄賂)のようなものだったろう。

パベルは、「違法取引をするプラットホームを管理している。それがチャイルドアビューズや、麻薬取引に悪用されている。」という理由で逮捕、起訴されたのち保釈されたが、今後取り調べが続き、フランスから離れられず、自宅のあるドバイには帰れない。
マークザッケンバーグや、イーロンマスクは、彼らのもつソーシャルメデイア利用者の個人情報に、CIAやM16や政府が検閲することに同意した。テレグラムが犯罪組織に利用されるリスクは、フェイスブックやインスタグラムやワッツアップやラインも同様だ。しかし国家がいつでも情報を引き出せる西側ソーシャルメデイアは野放しにして、思い通りにならないメデイアは潰そうとする。大国のエゴが、パベルへの弾圧という形で現れた。
ジャーナリズムが潰され報道の自由が名ばかりになった、と言われて久しいが、いまはパベルのもつソーシャルメデイアの受難を見守っていきたい。
Telegram Messenger owner Pavel Durov (39Y) Russian was arrested on August 24 by French police, when he stopped off his private jet that had landed in Paris. He lives in Dubai where he has Emirati citizenship.
He told he was travelled to Paris because he was invited dinner by French President Emmanuel Macron. Macron has been lobbying the entrepreneur to move his Telegram base of operation to France from Dubai, and Pavel was given French citizenship by Macron.
Telegram has grown worldwide nearly 1 billion monthly users, one of the major message apps and social media.
Pavel was charged complicity in crime ranging his social platform permits criminal organizations to trafficking drag and abuse children. The charge tells the owner of social network platform as being responsible for complicit in the content of the network is preposterous.
By content Western-base social media such as WHATS APP or LINE, FACE BOOK, INSTAGRUM or X ,Western controlled internet companies are allowing [ Back Door Access ] to supposedly private information for US and EU Authorities. The content of Western apps is also tainted with crime network and horrendously sordid material. That is why Mark Zuckerberg or Elon Musk never be arrested with same charges to Pavel.
In fact, Telegram is independent media network that is not controlled by Western regimes. Pavel is unable to leave France. and waiting the outcome of cybercrime investigation.
The Western authorities are killing free speech and independent social media.
I am singing [ I am a Rock ] by Simon & Garfunkel.



2024年9月9日月曜日

移民効果

移民、難民が他国に流入してその国の労働者の職を奪っている、という説が豪国では否定された。長いこと、戦争や経済的困窮によって移民してきた人々が、低給与でどんな悪い待遇でも働くので、国の若い人々の仕事を奪い失業率が上がる、という説が有力だった。そのため外国人労働者を差別し、忌み嫌う風潮があった。その最たるものは豪国の白豪主義だったし、ヨーロッパではいまも難民や移民を襲って命を奪ったり、迫害する差別が横行している。

昨年1年で豪国に移民してきた人は、留学生を合わせると、765、900人、人口2660万人の国で、これだけのひとが国境を越えて入国したため、豪国の失業率は、3.7%の下がって、2.5%の経済上昇がみられた。国銀は利上げを年末まで伸ばす予定だ。
世界的に不況にあえぐ米国金融業界に踊らされる世界経済の中で、インフレと物価高で、生活は苦しいが、労働者が増えたことにより移民による経済上向きの傾向は良い知らせと言える。
ヨーロッパや、米国では、毎日のように難民がボートや徒歩で渡ってきて、それを完全武装の国境警備隊が、暴力的に追い返したり、英国のようにルワンダに強制輸送したりしている。前大統領トランプは、米国メキシコ国境に壁を築いて移民難民排除を徹底し、自国保護主義を取ったが、ヨーロッパもそれに続いている。しかし、豪国のようにグローバルサウスから手に技術を持った人々を積極的に受け入れる政策は、経済力を高めるだけでなく、国力を強化している。

命からがら自分の生まれて育った国を捨てて、他国に逃れてきた難民を、良質の移民にするのは、ひとえに国の受け入れ態勢による。難民を、公的資金によって全国各地で語学教育と職業訓練を提供すれば、難民による都市への集中や、米国のような移民のスラム街への流入、犯罪の多発といった現象はくい止めることができる。

資本主義社会の当然の結果としておきて来ている気候変動と戦争、こうした人間の災難のなかで、その国が生き残れるかどうかは、その国力による。国力とは労働力のことで「人口」の多い国が強い国だ。また国力とはその人口を支える「農業」のことだ。しっかりした農業を基盤の持つ、人口を沢山抱えた国が生き残る。農業政策が疎かにされている日本の今の姿が残念に思える。移民をどんどん受け入れると同時に、農業を振興させてほしい。
I am singing [ THE BOXER ] By Simon & Garfunkel .





2024年9月3日火曜日

みんなお家に帰りたい

18年余りシドニーで、老人特別介護施設でナースとして働いている。癌末期、MS、アルツハイマー病、精神分裂病、人口経管栄養、筋ジストロフィ、人工透析、先天的身体障害など多種多様な患者をケアしている。ナースの仕事は主に、疼痛対策のモルフィネ投与、点滴注射、経管栄養、尿管管理、傷の手当などで、アシスタントナースが行う、食事、排せつ、シャワーなどの世話がスムーズにできるようにマネージする。それらを記録、報告するとともに患者家族との連絡も大切な仕事だ。
老齢の患者は、多くがアルツハイマー病や譫妄も併発していて異常行動が出る。歩き回ってじっとしていられない、スタッフや他の患者に暴力をふるう、机や家具をたたいて大きな音を出す、夜中じゅう意味不明の言葉を発する、着せてもすぐに裸になってしまう、食べ物を探してゴミ箱をあさる、性的な嫌がらせをする、など色々あるが、それを記録してスタッフと話し合い対策を考える。

この施設が病院と違うところは、ここが人生の終着駅だということだ。入口はあるが、出口は葬儀車の通用門だけ。どんなに華々しい豊かな人生を送った人も、つまずいて酒とドラッグでボロボロになった人も、お金もちも、貧しい人も、ハンサムで鳴らした人も、障害を持って苦労を重ねた人も、みんなみんな、カバン1つ持って入所してくる。
だからスタッフは、患者たちを自分の家族の一員のような思いで受け入れる。わたしが見送った人はの数は限りない。

すこし昔のことになるが、53歳で交通事故にあい、5歳以下の知能になってしまった人が忘れられない。もと農場主で大きな体をしているのに歩くのも走るのも、その表情も5歳の男の子のまま、わたしが出勤するのをドアのところで待っていて、入っていくと飛び上がって喜んでくれる。仕事中もずっと離れない。書き物をしていると、のぞき込む表情など5歳児そのものだった。眠れないときはベッドの横に座ってララバイを歌った。でもあっけなく感染症で遠くに旅立ってしまった。
歩行器でやっと歩けるおじいさんが、どうしても外出したいと言って聞かない。家族も友人もいない人なので、仕方なくスタッフの1人を付けて、思い通り外出させた。夕方おそく歩行器に2つの袋を下げて帰ってきた。うれしそうに1つの袋を別のスタッフ、もう1つを私に。中身はビスケットだった。そんなことのために大騒ぎを起こして街に行った優しいおじいさん。その頭の中では、自分が昔所有していた工場で、良く働いてくれる女工に甘いものを1つ、ご褒美に渡してやる、というような気持だったのだろう。

面会時間が過ぎると出入口に鍵をかけるが、それを見てパニックを起こす患者もいる。鍵をかけられ、閉じ込められて「もう家に帰れない」ではないか。みんな家に帰りたい。
それで私から鍵を取り返そうとした譫妄患者に、壁まで押されて首を絞められたことがある。また、何が契機か、怒って重いイスをかざしてスタッフを追い回す患者に手を焼いて警察を呼んだことも1度や2度ではない。済んでみれば笑い話だが、なかなかナースは危険な仕事でもある。

みんなお家に帰りたい、という。その家は、80歳90歳の患者たちが施設に来る前に住んでいたアパートや、結婚相手を失くして1人で住んでいた家ではない。自分が両親や兄弟と暮らしていた子供だったころの家だったり、結婚したばかりの幸せだった頃の家だ。だからみんな帰りたいお家はもうない。私にできることは、お家に帰りたいと泣く患者に「明日になったら一緒に行こうね。」「何色のお家だったっけ。」と話を聞いて、寝かしつける事だけだ。
わたしも、娘たちが独立して家庭を持ち、夫を見送り1人暮らしになって6年。東京から沖縄、レイテ島、マニラ、オーストラリアと移り住んできた。じきに老化して脳が委縮するだろうが、そのとき自分が帰りたい家はどこだろうか。願わくば、可愛がっていた沖縄生まれでマニラで逝った愛犬が,ちゃんと待っていてくれて迎えに来てくれると嬉しい。

I am singing [ Home Sweet Home] written by Henry Bishop.
Japanese lyric by Tadashi Satomi.





2024年8月22日木曜日

2人のアイリッシュアメリカン大統領

米国大統領の座には、歴代WASP:白人、アングロサクソン、プロテスタントが就いてきたが、例外が2人いる。
アイルランド人でカトリックのジョンF ケネデイと、ジョーバイデンだ。アイルランド人を理解することなしに米国を理解することはできない。
昨年、ジョーバイデンは初めてアイルランドを訪問したが、人々からは、「よくぞ、故郷に帰ってきてくれた。」と大歓迎された。ケルト文化を持ちゲーリックを話すアイルランド人は、その不幸な歴史ゆえ、世界中に散らばっている。アイルランドから遠く離れて異国に移民したその子孫の数は、本国の人口の10倍に上る。

ケネデイは1960年11月に大統領に就任すると、すぐにグリーンベレー(米国陸軍特殊部隊)を発足させてベトナムに送った。表向きはベトナムの共産化を止めるというものだったが、ベトナム戦争を開始したのは彼だ。米軍は1961年11月から南ベトナム解放民族戦線を壊滅させようと、ゴジンジェム大統領を傀儡政権化し、枯葉剤散布、ナパーム弾など重火器攻撃を始め、ゴジンジェムの民族主義が邪魔になると、クーデタをおこさせて彼を殺害、グエンカオキに首をすげ替え、激しい北ベトナムへの爆撃を初め、戦線を拡大した。
1975年3月、北ベトナム軍の大規模な攻勢により南ベトナム政府は崩壊したが、大使館の屋上からヘリコプターで逃亡する米国人や軍関係者の、惨めな敗残者ぶりは記憶に新しい。この戦争で米軍は300万人のベトナム人を殺し、31万人のカンボジア人、6万人のラオス人を殺し、当時徴兵制だった米国の5万8220人の若者の命を奪った。

2001年9月米国同時多発テロが起きて、主犯のオサマデインラデインを匿っていると言う理由で、米軍は、アフガニスタンへの空爆を開始した。ガ二傀儡大統領を立て、米国主導の西側国家陣営にアフガニスタンを引き入れようとしたが、米国の政治目的は完全に失敗した。
米軍の「撤収」というよりタリバン軍が勝利して進軍し、首都カブールに迫ってきたため、米軍は慌てふためいて逃げ出した。彼らは早々航空基地を閉鎖してしまったため、民間人も米軍が訓練したアフガン軍人もすべてが置き去りになった。米国がアフガン戦争につぎ込んだ費用は、2兆ドル(220兆円)2400の戦死者、米国民間軍事会社の戦死者は3800人を超えている。「撤収」時に2000の軍用装甲車、8万の各種車両、4機の軍用機、100のヘリコプター、60万の自動小銃、2千万の小銃弾、900万発の機関銃弾なども置き去りにされた。この逃亡劇でバイデン大統領と、オースチン国防長官は米国内で批判にさらされ辞職を迫られた。
2人の米国大統領は、野望を持って他国に介入し、それが負け戦になると傀儡政権も国民も見捨てて逃亡して来た。米国の歴史はその繰り返しだ。

日本は米国追従を止めなければいけない。
沖縄を環太平洋の最前線の基地にしてはいけない。
軍拡を止めて、軍縮を!
I am singing 「YOU RAISE ME UP 」






2024年8月11日日曜日

沈みゆくツバル

 ツバル(TUVALU)は、英国から1978年に独立したオセアニアの9つの島からなる立憲君主国家で、国王チャールス3世が統治する、ハワイと豪国の中間にある国だ。人口1万2千人、天然資源に恵まれず、人々は農業と漁業で自給自足の生活をしている。
2050年までに地球温暖化によって、サンゴ礁でできているこの島の50%が水没する。

私の住む豪国は移民で形作られた国で、第2次大戦前後は、英国、ギリシャ、イタリアなどから大量の移民を受け入れ、戦後は東欧、ベトナム戦では数万人のベトナムボートピープルを、「6.4」の後は、中国から香港の秘密ルート経由で数百人の活動家を受け入れてきた。
そしてこんどは、ツバルの全住民を豪国の市民として受け入れ、就業、教育、住宅などを提供するという合意をした。(2024年5月)とりあえず、年に280人ずつ受け入れることになった。すでに600人くらいの移民が移ってきて生活を始めているそうだ。

そのニュースを聞いて「よしよし、このような人道的な配慮は感心感心」と、思ったが、とんでもない。
豪国は、昨年米国、英国と3国(AUKS)で軍事同盟を結んだ。それに日本も加わることになっている。豪国はツバルの住民を全部受け入れたあと住民のいない島に、軍事レーダーの基地を置こうとしているのだ。住民のいない軍事基地に当然のことながら核も配備されるだろう。
米国は太平洋の島々に軍事基地を置き、戦争をいつ始めても本国は攻撃されることのない「平和」で「安全」な国で居続けることができる。地上戦が行われたことのない、戦禍の傷一つ持たない唯一の軍事大国だ。その米国を守るため、日本も太平洋の島々も、米国の前線基地、捨て石となる。それを見て豪国の友達は、自分の国は独立国じゃない。カンガルーがぴょんぴょん飛んでいる米軍基地に過ぎないんだよ、と言った。日本は独立国だろうか。日本国憲法よりも日米安保条約と、日米地位協定の方が、幅を利かせている国。国民の税金で米軍基地を置いてもらっている国。
ツバルの住民は、サンゴ礁の島で自給自足してきて、強く住民同士を支え合う文化を持った人々だろう。独特のツバル語を話す人々は、先祖の墓を大切に守り、生まれ育った土地を大切にしてきた人々だ。彼らの「平和」は、米国、英国、豪国の人々にとっての「平和」とは全く異なる存在だろう。

沖縄の八重山、馬毛島をはじめとする日米軍事基地化に反対!
豪国とツバル合意書に反対!
南太平洋の独立国の軍事要塞化、反対!



2024年8月7日水曜日

老人虐待

個人主義で権利意識が強く、自分の要求が通らないとすぐに警察を呼んだり、弁護士を付けて裁判を起こす欧米文化をもった豪国に、28年間住んでいる。
ここでの老人の権利は、日本から来た私の目には充分保護されているように感じるが、それでもまだ老人が虐待されているというレポートが政府に報告されてきて、エイジケアへの締め付けと管理が厳しくなる一方だ。
18年間、私立のベッド数50の高度医療付きエイジケアに勤めている。経管栄養患者、人工肛門、経尿管患者,、腎臓透析、癌末期、アルツハイマー、呼吸器閉塞、癲癇、精神分裂症などの患者がケアされている。ほぼ全員が食事、排せつを自分でできない。
日本の老人ホーム、ケアサービスでも働く人が不足しているが、ここでも人手不足は深刻だ。1日3交代で勤務を組んでいるが、スタッフの怪我や急病には、派遣会社に頼るか、今いるスタッフで穴埋めするしかない。過去2年半COVIDの間は、思い出すだけでゾッとするほど過重勤務で、自分が感染して死ぬかもしれないのに職場から離れられないストレスで、心身共に危機状態で働いていた。仲間に死者も深刻な病人も出た。今思うとこの時期私も精神に異常をきたしていたと思う。一番仲の良かったドイツ人のナースに死なれて彼女の葬式に取り乱して参加することができなかった。

老人虐待が社会問題になって患者の拘束が、もう何年も前に禁止になっているから、立てないのに自分は立てると思ってベッドから転落する患者には、ベッドを限りなく低くして、周りにマットを敷きつめ、ベッドで患者が動くとセンサーが鳴るようにして転落を予防している。ベッド柵も拘束の一種だということで、全国の施設でベッドに柵を付けることが禁止された。
ハイパーアクテイブで徘徊し転倒したり、暴力をふるう患者には、行動を制限する鎮静効果のある薬剤を使うが、これも家族が承諾する場合のみ投与できて、処方した医師は州政府に報告書を出し、毎月許可を得なければならない。
アルツハイマー病は脳が縮小して、せん妄や記憶障害が出るが、多くの患者はそれだけでなく癌の末期、うつ病、精神分裂病などを併発していて症状も人によって全く異なる。自分の便をこね回して顔に塗りつける人、歩行介助しようと手を出す恣意的に強く握って泣くまで放さず攻撃を止められない人、歩けなくても歩こうとして何度でもベッドや椅子から転落を繰り返す人。夜中じゅう叫ぶのを止められない人。
みんな自分に注目して優しくして欲しいのだ。
ストロークを起こした人は再発しないように血液をサラサラにする薬を服用しているので、出血しやすく簡単にアザができる。小さななアザでも患者家族が老人虐待だと訴えるので、発見したらすぐに、州の保険局に報告書を出す。アザひとつでも報告書、風呂場での転倒など、PCに列記する報告書は何十枚分にもなる。

これほど気を付けていても老人虐待を訴えたり、警察を呼ぶ家族が3か月に1件くらい起こる。しかし、大半の患者と患者家族はスタッフと仲良くなって、しまいには患者が亡くなるまで信頼関係で強く結ばれる。施設では、若いスタッフの教育、使いやすい設備充実など、もっと改善すべきところもあるが、人をケアする仕事に就いている人々は、人間への愛情を持った人々だと思う。

患者の人権を尊重し、それぞれの人の個性を生かし、命終えるまで患者の人としての尊厳を守る。そのために職場では最大限の努力をしてきたと思う。
人は年を取る。年を取れば脳は委縮する。それによって自分が将来どんな症状が出るのか、それを予想することはできない。
だから、生きて脳が正常に働いている間は、「他人を傷つけない」。「憎まない」、「殺さない」ということをみんながみんな日ごろ心がけたら良いと思う。