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2013年10月22日火曜日
オットと名古屋へ
昨日一人でホテルから脱け出したとき、新幹線のチケットを買ってあった。名古屋に行くには新宿からでは東京駅より品川駅のほうが歩かなくて済むという。みどりの窓口は、いつも事務的だが親切だ。
3泊泊まった新宿のホテルを後にして、名古屋に向かう。大きなスーツケースは 名古屋から東京に帰ってきたときに泊まる、上野のホテルに宅配で届けてもらうので、2泊3日の名古屋には、小さなリュックサックひとつで向かう。息子に会うために。
この息子は、むかしむかしシドニーにワーキングホリデイで来た時に、病気で倒れて入院したときに付き添った。高学歴で、高収入の大企業をサッサとやめてサーフィンとサッカーをするためにシドニーに来た。背が高く、ハンサム、デイスクジョッキーなど、趣味も多岐に渡り、ちょっと甘えっ子のほかは、文句のつけようのない35歳の青年。こんな100点満点のような青年がいまだになぜ一人なのか合点がいかない。出来ることならば、本当に本当の母親になりたかった。
オットは新幹線に乗れるのが嬉しくて嬉しくてたまらない。朝から「わーい、わーい!!!」というはしゃいだオットの「心の声」が聞こえてくる。前回日本に来た時に、東京、京都間を乗ったときに、カートに飲み物やお弁当を乗せた売り子が来て、富士山を見ながらビールでお弁当を食べた感激を忘れていない。
ところが今回は名古屋までの自由席で、一番後ろの1号車。カートは前からくるという。1号車まで売りに来るのは名古屋に着くころでしょう と後ろの座席の人は言う。ホテルから新宿駅までオットを歩かせるのに駅から5分のところを30分かかった。そこから品川駅まで山手線に乗り、新幹線プラットフォームまで何とか歩かせるのに大汗をかいて、とてもお弁当や飲み物まで買って持つ余裕はなかった。車内で、5号車に自動販売機があります、という案内を見て行ってみたら、ぎょえー!ウォーターボトルだけの自動販売機だった。ありかよ!
ビールとベント―ボックスをひたすら待っているオットに、冷たいウォーターとリュックの底の底に残っていた1日前のぺちゃんこに潰れたクリームパンを食べさせる。空腹で不機嫌になったオットに、富士は見えるか、どころではない。
名古屋駅に着いた途端、駅ビルのなかにカフェがないかと探すオットの目が血走っている。私はきしめんが食べたい。味噌カツが食べたい。鶏手羽さきが食べたい。味噌おでんが食べたい。ひつまぶしが食べたい。スープスパゲテイが食べたい。お握りが食べたい。ういろうも食べたい。しかし、そのどれも食べられない。オットのために、見つけた駅ビルのカフェで、焼きたてのアップルパイを食べてコーヒーで一息つく。朝はトーストとコーヒー、昼はサンドイッチとコーヒー、夜はバーガーとビールで良いオット、何なら朝も昼も夜もサンドイッチで嬉しいというオット。何て奴と結婚しちまったんだ。全く腹が立つ。
息子と連絡がついて何年振りか、なつかしい息子がタクシー出迎えに来る。一緒にポルトガル料理屋へ。ますます立派になって、、、。名古屋で自立して生活している息子に こうして会えるなんて、何て嬉しいことだろう。息子がちょっとだけ触れる仕事の愚痴も、家族のことごとも、形の良い眉毛にカミソリでデザインを入れる独創性も、まっすぐ通った鼻筋も、力強い顎の形も、大きな手も、なにもかも嬉しい。生きて息をしていてくれて、それだけで嬉しい。私たち家族は、ワーキングホリデーで来たこの青年のことが本当に好きだった。シドニーに来たばかりで入院することになって、痛みをこらえて退院したときも、マンリーの海で溺れ死にそうになったときも、家探しや、職探しに苦労していた時も、忙しすぎてあまり力になってあげることができなかった。それが、いまは立派な職業人。眩しく見えるぜ!
次の日は名古屋城を見て、ノリタケガーデンを見る。昔は名古屋駅から名古屋城が見えた。大昔京都で逮捕されたドジな学生を身柄引き受けするために京都に向かう途中、名古屋駅から立派なお城が見えたので、いつか行ってみたいと思っていた。商業都市の中心名古屋は、今ではラシック、ナデイアパーク、名古屋パルコ、オアシス21、などなど超近代的な複合商業施設が林立している。美味しい食べ物屋さんも多い。高層建築のビルばかりで、もちろんもう駅からお城は見えない。
タクシーに乗って、昔は駅からお城が見えた、というと年配の運転手は、笑いながら肯定も否定もせず、「そんなときもありましたかねえ。」と感慨深げに言うだけだ。
夜、息子と観覧車に乗って、名古屋の夜景をながめる。
あとは焼き鳥屋で息子と一杯やる。味噌カツ、味噌おでん、ひつまぶし、手羽先、刺身、から揚げを次々と平らげる。名古屋のひつまぶしは、かば焼きを小さく切って載せたうな丼を、はじめは普通に食べ、2杯目にはネギ、ワサビ、ノリをたくさんかけて食べ、3杯目は混ぜ合わせた中身をお茶漬けにして食べる。うな丼を3回違った食べ方で楽しむ名古屋の名物だ。お茶漬けにする前に食べきってしまったので、あとでお茶を飲んだから、おなかの中でうまい具合に3杯目のひつまぶしをやっているはずだ。
頼もしい息子の腕で、タクシーにオットとともに押し込まれて、バイバイと、、、。遠ざかる息子の姿が小さくなっていく。ぼやけてよく見えないけれど。