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2020年4月8日水曜日

殺すな、ステイホーム



オーストラリア政府からのメッセージが携帯電話に送られてきた。
Stay home this Easter and help save lives. Only leave for what you really need : exercise, work, medical and care. (今年のイースター休暇の間家に居なさい。そのことによって他の人々の命を救いなさい。外に出るのは、エクササイズ、仕事、医療といった必要最低限の外出にとどめなさい。)
3月中旬から毎日、一日も欠かさずトップニュースで、眉に皺をよせたモリソン首相は国民に向かって発言を続けている。今日は、ご丁寧に携帯にメッセージだ。

4月7日現在オーストラリアでのCVID19による感染者は、5910人、死亡者48人(死亡者の3分の1がクルーズ船の乗客)
オーストラリアでは3月22日段階で、トラベルバン、海外渡航禁止、海外からの旅行者入国禁止、国境封鎖、州境封鎖、必要以外の外出禁止、レストランカフェはテイクアウェイのみで顧客営業停止、演劇やコンサートなどのイベント禁止、映画館、展覧会ギャラリー閉館、宗教上の集会禁止、教会のミサ禁止、人と人との間隔を1.5メートル以上にとる、などが決まり、当初学校とチャイルドケアは、閉まると医療従事者が出勤できなくなるので開けておく方針でいたが、学校でもチャイルドケアのスタッフの中からも発病者が出てくると、学校はすべてオンラインで行われるようになり、チャイルドケアも部分閉鎖された。これらの決定は3か月から6か月間続くと予想されている。

カンタスエアラインは、このため2万人の従業員をレイオフ、職を失った人々は数えきれない。政府はGDPの15%に当たるに、130兆ドルを使って失業者対策に当たると発表した。失業者または職場待機になった人々は、パートタイム、フルタイムに関わらず、5月から月に$3000の政府からの生活補助が受けられる。(2週間ごとに$1500)。オンラインで MY GOVERNMENTにアクセスすると、政府による支援が必要かどうか判定されて、お金が振り込まれることになっている。
また4月3日になって、政府は留学生はすべて自分の国に帰ってほしい、という呼びかけがなされた。大学、語学学校、中高校がいつ再開できるか見通しがたたない現状で、オンラインで続けられていた講義はすべてキャンセルされた。学生は週に20時間働くことができるが、レストランなどの職場が閉鎖されている間、部屋代や授業料を稼ぐことができないからだ。また永住権が審議されて出るまでの間、ブリッジングビザで滞在している人々も、同じ理由で自分の国に帰国するように勧告された。

生活レベルでは、学校にも教会にも、図書館にもコンサートにも、美術館にも行けなくなって、文化的な場所から一切遮断されてしまった。エクササイズを奨励されているが、夫婦や家族3人までならば、外に出てジョギングしても良いが、公園でベンチに座ったり、ついでにテイクアウェイしたコーヒーで、外で談笑してはいけない。海辺を走っていて、足が痙攣をおこしても、ベンチでゆっくり回復するまで休んでいられない。テイクアウェイコーヒーで、偶然昔の友達に会ってしまっても、お喋りできない。開いているお店は、薬屋、スーパーだが、食料品の買い物にも、入場制限があって入り口で待たされる。人々は、1.5メートルの間隔を開けて買い物するようにガードマンや警官に監視され、支払いの段になったら、現金は許されずカードだけ。家族で外出するにも必要最低限の外出しか認められないので、頻繁に車を警官に止められて職務質問される。
こうした社会生活上の規制は、解釈によっては、内容が異なってくるから、みんな混乱している。その場の取り締まり警官が不機嫌だと、酷い目にあうかもしれない。せっかく道路がすいているので18歳の女の子が、母親について路上運転の練習をしていたら、必要最低限の外出ではない、という理由で罰金$1500取られた、という気の毒な家族の話がニュースで報道されていた。
従わないと罰金$1500か、身柄拘束6か月。とても厳しい。

罰則付きの強制ではないが、政府からの強いアドバイスというかたちで、「70歳以上の老人、60歳以上の既往歴のある人、50歳以上のアボリジニ先住民族は、家に居ることを強くアドバイスする」とも言われている。
自分は70歳になったばかりの新老人、しかしフルタイムで働いている。COCD19の最前線、フロントライナーのヘルスワーカーだ。医療通訳や、修学旅行の付き添いもなどもやってきたが公立病院でナースを務めた後、今の施設で勤務し15年経つ。オーストラリアでナースの資格を取ってみて良かったことは定年がなく、何歳になっても誰も年齢など聞かないことだ。差別禁止法によって就職するときに年齢や出身によって差別されてはならない、ことになっている。自分よりもずっと年上で知識豊富で決断力があり、人柄もよく誰からも信頼されているナースが沢山いて、最前線の医療で働いている。そんな人たちと知り合うことができただけでも本当にオーストラリアで働いてみて良かったと思う。オーストラリアのナース免許証は、英国でもカナダでもアイルランドでも、シンガポールでもドバイでも通用する。明日にでもそういった外国に行って、今日から働くこともできる。要求される質は高いが、社会的地位も高いのでやりがいはある。ただ、いまはやりがいどころか、やることが多すぎて、CVID19のプレッシャーがものすごく強すぎて、つぶれそうだ。

新しいCVID19 のワクチンが実用化されるまでに、最低15か月かかると言われている。
こんなに時間がかかるのは、新ウィルスに免疫がつくのかどうか、まだわからないからだ。「集団感染」といって初めのうちは、どうせ国民の60%が感染するなら放っておいて自然免疫がつけば、それで働けるようになって経済的損失を抑えられると、当初言っていた英国やドイツは、すぐにこの説を引っ込めて、急いで国をシャットダウン国内封鎖し、外出禁止に切り替えた。自然免疫そのものに疑いが出てきたからだ。
一度CVID19に罹患した人は、必ず自然免疫がつくのかどうか、まだわかっていない。また免疫がついてもその免疫が、何か月くらい維持できるのか、わかっていない。
インフルエンザの場合、それが流行する前に、A型とかB型など予想される流行型のワクチンを注射するが、効果は6か月しか効果がない。注射しても6か月以降は感染する。また結核のワクチンであるBCGは、20年弱しか効果がない。だから年をとった人や、HIVに感染した大人が結核に感染して、エイズでなくて実は結核でたくさんの人が亡くなったのだ。一度かかれば生涯免疫がつく病気は、そう多くない。

だから外出禁止、自宅隔離なのだ。爆発的に発病者が増え続け、病院がパンクしそうな今を選んで発病しないように。急いで死んではならない。家でおとなしくしていて、仮に発病しても自宅で休んで回復するように体を休めておくように。仮に病院に世話になる状態になっても病院に余裕ができるときに、行けるようにすべきだ。今死ぬな、あとでゆっくり死ね、と言うと目をつりあげて怒る人もいるだろうが。今は家にいてCOVD19 をもらわないように、知らずにもらっていて、体の弱い人にうつして殺さないように、と言っているのだ。弱者を殺すな。国の経済が破綻しても、どんなに企業が倒産しても、GDPの15%とりあえず無くなっても良い。会社が倒産しても、国が破滅しても、とにかく生きろ。生きて人を殺すな、家に居ろ、と政府が言っている。全く正しい。

歌っているのは、「THE ROSE」