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2016年10月2日日曜日

オーストラリアの野鳥の様に

    


オーストラリアには800種以上の野鳥が生息する。
シドニー北部のノースショアと呼ばれる地域に20年近く住んで、最近そこから30分ほど西に行ったシドニー北西部に引っ越してきて、朝晩聞こえてくる野鳥の声が変わっていたことに気が付いた。以前のアパートはすべての部屋が、遊歩道のある林に面していたので、いつも煩いくらいに鳥たちがさえずってくれた。          

多くの野鳥の名前は 私にはわからないが、一番多かったのがマグパイ(magpie)日本名カササギツエガラス、隊長は20センチくらいで首のまわりを白くした小型カラスみたいな姿。小柄のくせにギャーギャー叫びまわってうるさい。それを大きくしたカラウオン(currawong)と呼ばれるフエガラスは、日本のカラスサイズで、野鳥を虐める人が居ないので全然人を恐れずに歩道橋の手すりなどに止まっている。マグパイは育児中は神経質になっていて、アパートのバルコニーの手すりに来て、バルコニーのソファでせっかく昼寝している我が家の猫クロエに向かって、けたたましい声でギャーギャー声で「ここに敵が居るぞ、あやしい奴がいるぞー!」と100メートル四方に聞こえる音量で警報を発して、クロエがこそこそ家の中に避難するまでそれを続ける。迷惑だ。

手の届く距離の、バルコニーの手すりに飛んできて、静かに地面を見て動く虫がいないかどうか観察しているのは、クッカバラ(kookaburra)日本名ワライカワセミだ。20センチくらいだが体の大きさの割に頭も嘴も大きくて、羽毛がふわふわで愛らしい。ブルーが勝った白色の胸に背は茶色、近所で見かける野鳥の中で一番可愛い。名前の様にカッカッと人の笑い声のような鳴き方をする。

バルコニーで猫と、まったりしていた時に、極採色のレインボーロリキート(rainbow lorikeet)ゴシキセイガインコが普通に飛び交っていて、ボトルフラワーの実をついばんでいったのには驚いた。真っ青な頭、グリーンの背、オレンジの胸というカラフルで美しい鳥が、動物園や東南アジアの森でなく、シドニーの住宅地に普通に生息していることには感動した。

ワイルドターキー(australian wild turky)までも普通の人々が暮らす場に共生していて、どこででも闊歩しているのには、まいった。雄は首に極彩色の袋を持っていて気味が悪い。でかい。こんな奴の肉はクリスマスでも食べたくない。私の腰の高さの身長で、ひょこひょこと歩き回って、私が野良猫に餌をやるのを見ていて、しっかりそのエサを猫の目の前でさらっていく。脅かすと近くの樹に飛んでいって枝に止まって人が去るのを待っている。
だいたいバードウオッチって、日本では小鳥ばかりではなかったか。こちらの野鳥はみな大きいので望遠鏡など要らない。

ノースショアからシドニー北西部に引っ越して来て、前よりもごたごたした下町風の街並みに移った。バルコニーに出ると、相変わらずマグパイが飛んできて、愛猫クロエがせっかく陽の当たる場所で昼寝しようとしているのに、ギャーギャー騒ぎ立ててくれる。それと、マグパイのギャーギャー声をさらにグエ―ギョエーガガーと書いてみると怪獣の様な声で鋭く鳴くコカトウ―(cockatoo)日本名キバタンが、ここではとても多い。30-40センチと大きく真っ白な体に黄色い冠を持っている。寿命は70歳と言うから,うるさいだけでなく貫禄もある。近くにパラマッタリバーと言う大きな河があるので、そのあたりを根城にしているのだろう。うるさくて、全然可愛くないが、日本ではペットとして大事に飼育されているそうだ。

それと前のアパートでは見たことがなかったガラ―(galah)日本名モモイロインコを屋根の上でよく見る。ピンク色の胸にグレーの背をもった大きめのハトかと思っていたら、インコと言う名の付くオウムだそうだ。ピンクとグレーのツートンカラーが美しい。ここでは野生だが、飼育されたものが日本では人気のペットだそうだ。人懐こいので可愛がられるだろう。

テレビでフットボールやサッカー中継を見ていると、緑のグランドに試合中でもたくさんの真っ白なコカトウ―や、アイビス(トキ)がグリーンの上で、虫をねらってたくさんやってきているのがわかる。試合で得点をめぐって緊張が高まっているときに、大きな野鳥や、ワラビー(小型カンガルー)や、大型のゴアナ(オオトカゲ)が試合を邪魔することも多い。こんなときスポーツアナウンサーは、あわてずに「ローカル(地元民)も応援に駆け付けました。」などと言って笑わせてくれる。

引っ越して目にする野鳥の種類も変わったが、住む人間も変わった。以前は北部のスノービーの住むアパートだったから、クラシック音楽愛好者や、ピアノを持つ人も多く、アパートではいつもピアノやフルートの音が聞こえてきた。私も普通に、朝からバイオリンやギターを弾いていた。また、ノースでは道は譲り合い、人とすれ違う時には微笑みを交わすのが普通。老婦人の中には、昔のイギリスからの良き伝統どおりに首飾りに帽子をかぶってデパートに来る人も多かった。最近裕福な中国人が土地を買い占めて、人種が変わってきているが、それでもノースの文化的様相は変わらない。

移ってきたところは基本的にはプアホワイトの土地。昔からオージー保守派の住んできた土地で、地価が安かった時期に大量のインド人など東南アジア人が移民してきたところだ。ショッピングセンターに行くと、若い子連れのインド人ファミリーが多く、あまり身だしなみを気にしないプアホワイトの老人たちばかりに出会う。プアホワイトの顔つきは、ノースのホワイトと全然違う。人と会っても笑わない。だいたい移ってきて8か月経ったが、クラシック音楽の音が聞こえてきたことがない。
日曜日にバイオリンを弾いていたら、翌日となりのインド人のおばさんに興味津々と言う顔で、「あなたギター弾くのね。」と話しかけられたが、そのついでに「お金貸してくれる?」と請われた。こわい。
楽器の音が全然聞こえてこない場所で、すこしだけ遠慮っぽくバイオリンとギターを弾いている。ギャォーギャーンゲャーと、100メートル四方に届くボリュ―ムで遠慮なく鳴きさけぶコカトウ―やマグパイがうらやましい。

写真はオーストラリアワイルドターキーと、コカトウ―