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2012年9月17日月曜日

オーイ ヤッホー 島崎三歩さーん!!!

大好きだった漫画が長い連載を終えて、最終回を迎える時、読者は長いこと付き合ってくれた親しい友達に去られるような 深い悲しみと喪失感に苛まれる。石塚真一による漫画「岳」が、18巻で遂に終わった。もうこの続きがないのか と思うと大切な人を、又失ったような思いで悲嘆にくれている。  

私のヒーロー、島崎三歩は ヒマラヤのヒラリーステップで死んでしまった。二重遭難だった。 昔の仲間オスカーが率いるヒマラヤ登山隊が悪天候の中、遭難したのを、救助している内、長時間酸素なしで救助に当たらざるを得なくなって、意識混濁するなかを さらに無謀としか言いようのない救助に向かって命を落とした。 三歩は、常に、山に行っても絶対生きて帰ってくると、明言して遭難者の救助を行い、滑落や雪崩や凍死で助からなかった登山者も、自分の背中に背負って帰ってくる。氷のクレパスに落ちて、ザイルと滑車があっても救助できないような怪我人でも、自分の背中に縛り付けて背負って這い登ってくる。 彼は、どんな過失や 装備不全で遭難した登山者も、決して責めない。自分を責める遭難者に、「よく頑張った。」と、心をこめて言い、怪我が治ったら「また 山においでよ。もどっておいでよ。」と、言って送り出す。 ごっつい体に、子供がそのまま大きくなったような純真さで、山を愛する。山への畏敬の念と、登山者への無条件の愛情。どんなピンチでもあきらめない。吹雪に閉じ込められたら ただ無心で天候回復を待つ。決して恐怖に囚われない。もう、穂高岳の三ノ沢に住み着いている三歩は、自然児というか、山の一部のような存在だ。そんな男でも、8848メートルのヒマラヤで風速100メートルの強風とブリザードには 勝てなかった。

島崎三歩は 長野市北部警察署地域課、遭難救助隊を補佐する遭難防止対策の民間ボランテイアだ。 一緒に救助活動をしていた警察官の阿久津君が 落石事故に遭い、二度と自力で立つことが出来ない障害者になってしまった。彼の出会いや結婚、一人前の救助隊員に育つまでを、ずっと見守っていただけに、この事故は、三歩にとって、大きな傷となり、挫折感を植えつけた。仲間のザックに 遭難救助のような人のためではなく、いったん自分の山登りに戻ることを勧められて、三歩は北アルプスの山を降りて、ひとりローチェ登山に向かう。

ローチェ単独山はんを成功させると、今度は天候が予想外に崩れてきたヒマラヤに向かう。ヒマラヤには昔の仲間、オスカーを隊長としたグループが山頂を目指している。その中の一人、小田草介は むかし前穂高岳のシェルンドで滑落し瀕死のところを三歩に救助された過去を持っている。 オスカーを先頭にしたエベレスト隊は サウスコルキャンプ(7980メートル)から ヒラリーステップを越えて、最終アタックに成功(8848メートル)する。酸素ボンベの酸素が残り少なくなって、山頂から少しでも早く下山しなければならない隊に 予想外の天候悪化が襲い掛かる。しかも、午後になって山頂を目指して登ってくる 非常識なインド隊に 一方通行の道を譲らなければならず、待機を余儀なくされたオスカー隊にブリザードが襲いかかり、酸素が無くなる。ヒラリーステップで動けなくなった隊員とオスカー隊長を残して、小田草介が先頭に立って下山するが、草介は凍った稜線で滑落寸前。そこを、三歩に助けられる。

草介から得た情報で、三歩は次々と動けなくなった隊員を救助してテントに収容する。しかし、その前に新しい酸素ボンベを担いで救助にむかっていたピートは 雪庇を踏み抜いて転落。三歩は、酸素なしでピートを救助し、再びオスカーを救助しに山頂に向かう。しかし三歩は、すでに感覚は失われ、視力は無くなり幻覚か現実かわからなくなっていた。それでもまだ、残っているインド隊を救助しようと、、。壮絶な死。

以前、どうして山に登るのか と遭難救助隊の椎名久美に問われて、三歩は「山ではコーヒーが美味しいっしょ?」と答えている。そのコーヒーを三歩は、ヒマラヤの山頂で幻覚の中で飲んだ。 もう悲しくて悲しくて、たまらない。親しい友人を失ったような気持ち。
本当に良い山の本だった。三歩の生き方、山に向かう姿が、とてもよくわかる。ここで最終回になったことで どうしてこんな終わり方になったのか、、、と、アマゾンの読者からのコメントは 怒りと非難でいっぱいだ。でも、山に絶対はない。どんなに立派な山岳家でも命を落とすこともある。山の好きな人ならば、三歩の死は理解できる。この終わり方で良い。

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