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2011年7月4日月曜日
2011年 上半期 漫画ベストテン
今年に入って1月から6月までに読んだ漫画は70冊ちかく。
シドニーで 日本の漫画は手に入りにくく、雑誌連載で継続中の漫画は 単行本が出て、こちらに送られてくるまで待たなければならない。従って日本に居る人たちより ずっと遅れて読む。ベストテンの中には 新作ばかりでなく 松本大洋の「花男」のように 古本でやっと手に入った作品も含まれている。
ちなみに 2010年 一年間に読んだ漫画のベストテンは
「バガボンド」、「リアル」、「聖おにいさん」、「竹光侍」、「宇宙兄弟」、「神の雫」、「ちはやふる」、「リアルクローズ」、「きのう何食べた」、「海猿」だった。
第一位=「リアル」 井上雄彦
第2位=「聖おにいさん」 中村光
第3位=「宇宙兄弟」小山宙哉
第4位=「3月のライオン」 羽海野チカ
第5位=「情熱のアレ」 花津ハナヨ
第6位=「神の雫」オキモトシュウ 亜樹直作
第7位=「ジェラールとジャック」よしながふみ
第8位=「BAKUMAN」大場つぐみ
第9位=「舞姫テレプシコーワ」1-10巻 山岸涼子
第10位=「花男」松本大洋 1-3巻
第10位=「漫画で分かる心療内科」1-2巻 ゆうきゆう作 ソウ画
第1位の「リアル」
井上雅彦の「バガボンド」が止まっていて、ずっと気になっているが その分「リアル」が ゆっくりながら続いていて、井上ワールドの夢を見続けることができて幸せだ。彼の絵もストーリーもみんな好きだ。この人ほど 登場人物ひとりひとりに命を吹き込むことが上手な作家は 他に居ない。野呂明美が大好き。なにひとつ取り得がない。自分のせいで下半身麻痺になってしまった夏美を前にして、「どうして今までくすぶっていたんだ。どこまで行けるか確かめもしないで。」と、ひとり立ち上がる。登場するひとりひとりが困難を抱えて 実にリアルに燃えて生きている。とても励まされる漫画だ。
第2位 「聖おにいさん」
このおもしろさは巻を経ても 全然ダレない。何巻から読んでも いつでもおもしろい。ページをめくるごとに笑える。知識が豊富で才能ある作家だ。松田ハイツに住む「目覚めた人ブッダ」と「神の子イエス」が 下界で日常生活を送る。会話が実に冴えている。
楽器屋に入って、、、 カートコバーン愛用のムスタングギターや ジミヘンのギター、ボンゾのドラムを見せて、3人とも若くして突然亡くなった 天才は何故早く逝ってしまうのか、、、と嘆く店主に、ブッダは青くなり、そういえば「弁財天さん今年は天界で大きな音楽フェスやるって。」するとイエスが「気のせいだよ 偶然だよ。」と慰め「業界の黒い秘密に触れてしまいそうだね。」と、二人して口をつぐむ。で、ブッダが「弁財天さんがロックバンドで雷神さんにスネアドラム叩かせようと、」と言えば、イエス「ミカエル大天使さんはお兄ちゃんっ子だから ルシファーに影響されてデスメタルみたいな声で歌ってみたいとか、ラファエルがグレゴリー聖歌のテクノREMIXしたいとか、、」と応ずる。イエスがカラオケで森進一の「おふくろさん」を歌えば、ブッダは「それってアベマリアに相当するから まずいんじゃない?」などと言う。知識がないと笑えないが、とにかくおかしい。読んでいる間中 笑いが止まらないから、電車の中や、病院の待合室などでは絶対読めない。
第3位「宇宙兄弟」
読者はみんな 出来の悪いお兄ちゃんの味方ではないだろうか。優秀で心優しい弟、俗物で身勝手な両親の家族の中で、取り得のないお兄ちゃんが 頑張る様子に 心から応援せずにいられない。
第4位「3月のライオン」
不幸な過去を持つ高校生の主人公が 将棋の世界で生きる。悲しいことに慣れっこになってしまった小さな魂が痛々しい。読んでいるうちに いつしか彼に強く共鳴している。
第5位「情熱のアレ」
珍しい。女性向けの性教育になっている。無知な女より何でも知っている女の方が良いに決まっている。知らなければただの無知だが、知っていれば知識を生かすことも 知らないふりをすることも出来るからだ。
第6位「神の雫」
はじめの1-2巻に興奮して感動した読者の半分は もう飽きてこの漫画から離れてしまったのではないだろうか。この作者は 話を伸ばしすぎる。読者は疲れてきた。けれど最後の結末を見たいばかりに 読み続けている。神咲雫の勝負は もう28巻になったのに まだ半分の道のりだ。もんくを言いながら読んでいる。
第7位「ジェラールとジャック」
よしながふみの絵が好きだ。これはボーイズラブのこの作品、革命期のパリを背景にしていて それなりおもしろかった。この人の作品では、「愛すべき娘たち」、「1限目はやる気の民法」、「愛がなくても食ってゆけます」、「大奥」、「きのう何食べた」などを読んできた。なかでは「西洋骨とう洋菓子店」が一番内容も絵も良かった。これに勝る作品は他にない。
第8位「BAKUMAN」
二人の少年の漫画に対する熱が伝わってくる。漫画の作り方やデビューの仕方、漫画の成功の鍵を握るのが 編集者の能力次第だという内幕もわかって興味深い。ほかに漫画家を描いた島本和彦の「吼えろペン」1-13巻も たわいないが、おもしろく読んだ。
第9位「舞姫テレプシコーワ」
少女漫画の典型。バレエ漫画だが、映画「ブラックスワン」並みの怖さ、恐ろしさがあって、結構読ませる。
第10位「花男」
松本大洋の独特な世界が好き。この人の描く 本当に邪気のない、まっすぐ無邪気な男を愛さずにはいられない。
第10位「マンガで分かる診療内科」
心理士の心内療と看護士宮越あすなのコンビが バカバカしいギャグを連発しながら うつ病、ぺデファイル、幻聴、認知症、適応障害、パニックアタック、不眠症、といった病気をわかりやすく解説する。精神病や神経症に偏見を持っている人や 知識のない人には良い啓蒙書になっている。