ページ
▼
2009年12月5日土曜日
今年読んだ漫画と観た映画のベストテン
今年はよく漫画を読んだ。合計470冊ほど。
日本にいたら、もっとチョイスがあるから その倍は読んでいたかも。シドニーの人口は428万人、そのうち在住邦人は、2万人あまり。紀伊国屋と古本屋が2軒あるが、そこで、出回る僅かな本をかき集めたり、娘にアマゾンで手に入れてもらったりしながら読んでいるので限りがある。心に残った漫画を順番に言って見る。連載中のものも多い。もう出版されているのに、手に入らないでいるままのものもある。
第1位:「バガボンド」 1-30巻 井上雄彦 講談社
第2位:「モンスター」 1-18巻 浦沢直樹
第3位:「20世紀少年」1-22巻
「21世紀少年」上下2冊 浦沢直樹
第4位:「西洋骨董洋菓子店」1-4巻 よしながふみ 新書館
第5位:「神の雫」1-21巻 亜樹直(作)
オキモトシュウ(画)講談社
第6位:「聖おにいさん」1-3巻 中村光 講談社
第7位:「リアル」 1-8巻 井上雄彦
第8位:「ヒカルの碁」1-22巻 小畑健 (原作ほったゆみ)
第9位:「ダービージョッキー」1-18巻一色登希彦(原案武豊
第10位「日出処の天子」1-7巻 山岸涼子
「バガボンド」井上雄彦の描く絵の美しさは特別だ。「スラムダンク」でバスケットボールを追う少年達とともに成長し 年を重ねてきた井上雄彦が描く 清々とした男の世界。ただひたすら強さを求める宮本武蔵の 真剣で禁欲的な生きる姿が、求道僧のように思える。自分を痛み続けることで強い意志を身につけようとする 不器用で孤独な姿が心を打つ。作家はもう話を完結させ、脱稿したそうだが、永遠に 終わらないでいて欲しい作品だ。
「モンスター」の浦沢直樹は ストーリーの巧妙さ、入り組んだ人間関係を 社会的背景や時代背景のなかで うまく組み立てていく構想力をもった稀有な漫画作家だ。最後まで全く飽きない。最後の結論を 断定してしまわないで 読者の解釈に任せてくれるところが、しゃれている。読んだ人が自由に解釈して読み終えることができるのが気に入った。人に聞いてみると 全然ちがう解釈で読み終えた人が多かった。私は モンスターにとって、最初で最後の「敵」を処分したであろうモンスターの孤独な後姿を思って、いまだに涙が出そうになる。本当にすごい作品だった。
「20世紀少年」は とにかくおもしろい。「友達」は誰なのか、、、わからない「友達」を求めて 22巻まで読者を飽きずに引っ張っていく作者の力量には感心する。本当に最後まで友達がわからない。友達だと思い込んでいた確信がひとつひとつ壊され 予想がことごとく覆されていく過程で、夢中で読んでしまう。映画化されて、謎ときには役立つが おもしろさが半減した。漫画は漫画だけであって欲しかった。
ロックを歌う ひょうひょうとした浦沢直樹という作家に興味が湧いて「プルート」や「マスターキートン」を読んだが、おもしろいと思えなかった。この作家の良さは 話を広げていくところにあると思う。長編作家として成功するが、読みきりや短編には 彼の魅力は発揮されないように思える。
「西洋骨董洋菓子店」は絵がきれいだ。美しくて 嫌味のない個性的な男ばかりが沢山出てきて楽しい。ぺデファイルや 深刻な社会問題にも触れているのに オシャレな男達が、オシャレに生きていて素敵だ。少女漫画をばかにしてはいけない。
「神の雫」に はまってワイン通になってしまった人が沢山居る。
ワインの漫画も、甲斐谷忍 原作城あらきの「ソムリエ」1-8巻、松井勝法「ソムリエール」1-4巻、志水三喜郎「瞬のワイン」1-8巻と、20冊読んだが、そのあとで見つけた「神の雫」が ワインの形容の仕方において優れていて 楽しかった。神咲雫君と、遠峰青君とともに、実にたくさんのワインを味わった。ひとくち黄金の輝く雫を口に含むと そこはお花畑だったり 山の上だったり 子供のときの風景だったりする。味覚というものを 楽器に例えたり 太陽や風や風景に例えたりして形容する その多弁は表現が新鮮で 興味深い。偉大な父は 二人の息子達に、一体何を伝えたいのだろうか。
「聖おにいさん」については 10月22日の日記で書いたので繰り返さないが、とにかく笑える。ブッダの伝説のなかで一番現実離れしている話、生まれてすぐに立ち上がり7歩あるいて「天上天下唯我独尊」と言ったという話や、兎が自ら食料になったニルバーナの話などを、軽くギャグで笑って見せるところに良さがある。イエスも「とうさんが、、」とやすやすと言ってくれて、それだけで電車の中でも 仕事中でも私はひとり笑える。お気楽なブッダとイエスが仲良く暮らしている姿って、こんな しゃれた漫画を考え出した作家の才能に拍手せずにいられない。
「リアル」井上雄彦の絵にはいつも感動する。「スラムダンク」の登場人物の多様さがここで もどってきた。描かれたひとりひとりが抱える苦悩や痛みがサラリと語られる。これを読んでいて、登場人物のせりふひとつで、心の重しが取れる、、、そんな若い人も多いのではないだろうか。井上雄彦の絵は どの部分をとってみても 美しい。
「ヒカルの碁」、「ダービージョッキー」は、どちらも全く知らなかった世界を知るきっかけになった。作品の中で 本当に 自分が好きなものを見つけた少年達が 懸命に目標にむかっていく。何度も壁にぶち当たりながら 成長していく過程で、読者はともに一緒になって泣いたり笑ったりくやしがったりする。読み終ったあとの 爽快感は格別だ。
「日出処の天子」は 聖徳太子という 線香くさくて全然興味のもてなかった人に命を吹き込み 歴史をおもしろく解釈して見せてくれた。漫画でこんなことも出来るのかという可能性を改めて感心してしまった。絵がとても美しい。
映画は、劇場に足を運んで見た映画は、47本。心に残った映画から順にいうと以下になる。
第1位:「グラントリノ」 2月3日に映評をここで書いた。
第2位:「愛を読む人」 2月28日に映評
第3位:「バリボ」 8月20日に映評
第4位:「フローズンリバー」 3月3日に映評
第5位:「カチンの森」 6月20日 映評
第6位: 「天使と悪魔」 6月8日 映評
第7位:「稿模様のパジャマの少年」5月2日映評
第8位:「チェンジリング」 2月15日映評
第9位:「レスラー」 1月23日 映評
第10位「THIS IS IT」11月1日 映画評