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2009年7月25日土曜日

オペラ 「アイーダ」



今年の後期オペラシーズンが始まった。最初の出し物が ヴェルデイ 作曲の「アイーダ」。
豪華絢爛、大スペクタクル、どでかい規模でオペラのなかで最大のスケールのオペラだ。毎年 エジプトでは 本物のピラミッドを背景に 野外で上演されるこの「アイーダ」は エジプトの国の誇りともいえる。スエズ運河が開通したときの記念に 当時のエジプトが国の偉業を讃える為に 作らせたオペラだ。

そんなオペラだからか、今年のオペラオーストラリアの出し物の中で まちがいなく一番お金がかかっている。狭いオペラハウスの舞台を所狭しと、70人近いコーラスと、20人のバレエダンサーが 踊り 歌い とにかく華やかだった。オーケストラも入れると 総勢150人あまりになるだろうか。衣装が豪華で美しい。キラキラ ピカピカ。こんな服を着て おひめ様ごっこ やりたーい、と言う感じの衣装が次々とでてきて とても楽しい舞台になった。

指揮:リチャード アームストロング
監督:グレイム マーフィ
配役
エチオピア王女 アイーダ:タマラ ウィルソン (ソプラノ)
ラダメス将軍:ドングオン シン (テナー)
エジプト王ファラオ:デヴッド パ-キン (バス)
ファラオの娘、アムネリス:ミリヤナ ニコリック(メゾソプラノ)
エチオピア国王 アイーダの父:マイケル ルイス(バリトン)

ストーリーは
アイーダは エチオピア国王の娘だが、強国エジプトに捕らわれ 連れてこられて 奴隷にされている。しかし、エジプトの若い武将ラダメスと アイーダはひそかに愛し合っていた。ラダメスは エチオピア討伐の将軍に任命されて、戦場に行こうとしている。ラダメスが無事に 戦いに勝利して帰国すれば エジプト国王の娘、アムネリスと 結婚することになっている。アイーダは成就することのない恋と、自分の国の人々への祖国愛との板ばさみになって、苦しい思いをしている。

戦場に向かうエジプトの兵士達の男声合唱は素晴らしい。エジプトを讃える 勇壮な行進曲を 50人あまりのコーラスが力いっぱい歌う。

そしてラダメス将軍は 兵士達と共に凱旋してくる。エジプト国王ファラオも、王女アムネリスも 有頂天だ。ファラオの前に、捕虜となったエチオピア兵士達が引き出されてくる。そこで アイーダは、戦いに敗れ捕虜となった ボロボロの姿の父、エチオピア国王と 対面する。アイーダは、泣きながら 戦勝国エジプトのファラオに 父親の命乞いをする。ラダメス将軍も アイーダの気持ちを察して、一緒になって助命の嘆願をする。このときの5重奏が 美しい。ファラオ、ラダメス将軍、エチオピア国王、アイーダとアムネリスの5人が それぞれの気持ち おもいのたけを訴えるシーンだ。

期待どうりに命ながらえたアイーダの父は しかし密かに エジプト攻撃をするための兵士達を待機させていて、アイーダとラダメス将軍をそそのかして エジプト川の守備配置を聞き出して、一挙に攻撃しようとしていた。父の野望を知ったアイーダは、父親への愛情と、アムネリスと結婚してしまうラダメス将軍への愛情に引き裂かれて 打ちひしがれる。

そこにラダメス将軍が現れる。そして、アイーダに心からの愛を誓い ファラオにアイーダとの結婚を願い出るつもりだと言う。それを隠れて聞いていた、アイーダの父は、ラダメス将軍に、アイーダが本当に欲しいのならば 一緒に3人で逃げて エチオピアの王子として受け入れるから 警備配置を教えるように と迫る。いったんは 断るが、アイーダに、一緒に生きて欲しいと、言われて、とうとうラダメス将軍は 拒みきれなくなって逃げ道を教える。

こんなに愛しているのだから、、と、切々と歌い上げる 二人のデュエットが 泣かせる場面だ。
3人が逃亡の相談をしているところを ファラオに見つかって、ラダメスは、自分が盾になって、アイーダと父親を逃がし、自ら逮捕されて 反逆罪で死刑の判決を受ける。

ファラオの娘アムネリスは、裏切られたのに ラダメス将軍をあきらめきれなくて 助命を懇願するが、ラダメスは死を覚悟していて アムネリスを退ける。
ラダメス将軍が、自ら死を心に決めて、地下牢に向かっていくと そこには逃げ延びたと思っていたアイーダが待っていた。二人は永遠の愛を誓いながら静かに 息絶える。
というおはなし。
最後のデュエットは、とてもとても美しい。悲しい悲恋物語だ。

アイーダのソプラノを歌ったタマラ ウィルソンは 柔らかく透き通るような 豊かな声だ。かなり太め(体重100キロくらい)だったが、敵の武将を愛してしまった 可憐な娘の役を とてもよく演じていた。アイーダの恋敵 同じ男を愛するファラオの娘アムネリスを演じた ミリヤナ ニコリックは ベルグラードから来たセルビア人だそうだが 背が高く、抜群にスタイルの良い黒髪の美女で堂々としていて 声も良い。三角関係の頂点 ラダメス将軍 これが期待していたイタリア人の ロザリオ スピナが風邪でダウンして、急遽西オーストラリアオペラから借りてきたテナーに変わったのは、残念だった。でもそれなり声も良く それなりにハンサムで それなりに役をこなしていた。

ファラオのデヴィッド パーキンは 写真にもあるように、とびぬけて背が高く立派な体格。このファラオと 王女アムネリスとが並んで立つと エジプト王国の貫禄があって まさに適役だ。その威勢堂々とした王と姫の前で、背の高くない かなり太めのアイーダとラダメスが愛を誓い合う という構図が ちょうど記念写真を取るみたいに よく収まって マッチしている。

舞台に花を添える オーストラリアバレエのダンサー達も、兵士になったり、ファラオの御付になったり、ナイル川の妖精になったりして 忙しくも しっかり舞台回しをしていた。舞台と観客席との間の突き出しのところに、2メートル位で、舞台の端から端まで 浅いプールが造ってあって、これが、ナイル川、ということになっている。ここを、アイーダが 素足で浮かれて水と戯れながら 愛の歌を歌ったり、エチオピアから捕らえられてきた捕虜が水を求めたりする。ナイルの妖精たちが 泳いで遊ぶシーンでは バレリーナたちは 上半身何も身に着けていなかった。どうせ、クラシックバレエの踊り子達は 胸はぺっちゃんこだから、それで踊る姿も可愛らしくて良いのだけど、 ウーン バレエもここまで見せるか、、、と ため息 ひとつ。

総じて、声も良く、舞台もきれいで、本当に楽しめるオペラだった。こんなに楽しいオペラは久しぶり、とても満足。