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2009年1月9日金曜日

映画「地球が静止する日」







映画「THE DAY THE EARTH STOOD STILL」邦題「地球が静止する日」を観た。1951年に、ロバート ワイズ監督が作った映画のリメイク。

50年以上前に作られたサイエンス フィクションが再び 21世紀に、映画化されるって、すごいことではないか。ラブロマンスや、三角関係が引き起こした殺人事件の映画が、50年後に、別の人気俳優によってリメイクされるのなら わかるが、SFのリメイクだ。 この50年の間に、科学技術は飛躍的に 発達発展した。50年前に わからなかったことが解明され、私達の生活様式も きわめて早い速度で近代化 便利化してきた。大学時代にプレハブの部活で、かじかんだ手指に息をはきかけながら鉄筆で書いたアジを、一枚一枚ガリ版印刷して、学内を配って回ったなどと、言ってもわかってくれる人は少ない。いまでは電車の中で、小型PCでタイプした文章を 簡単に印刷できる。楽譜も 昔は手書き。オーケストラの楽譜をコピーをするのは 大変な作業だったが、今ではコピーから 転調 編曲までコンピューターで自由自在だ。こんなに何もかも、進歩してしまった今、50年前に 人を感動させたSF映画のリメイクで、現代人を再びびっくりさせることができるのだろうか。

監督:スコット デリクソン
配役:クラトウ:キアノ リーブス    
    ヘレン:ジェニファー コネリー    
    息子:デイデイン スミス
ストーリーは、
地球に謎の物体が接近してきた。緊急事態に、大統領は全米の科学者をペンタゴンに召集する。その中に、細胞科学専門家のへレン(ジェニファー コネリー)もいる。しかし、対策を講じる前に、すでに、すさまじい速さで、謎の物体 宇宙船は、地球に達して、ニューヨークのセントラルパークに、着陸した。軍と警察が包囲する中を、宇宙船から出てきたのは、40メートルもの高さの大きなロボットだった。その中から、出てきたエイリアンにたいして、混乱して指揮統制が一致しない軍が、一方的に発砲してしまい、エイリアンは 傷ついて倒れる。直ちに エイリアンは病院に運ばれて、医師達によって治療が始まる。この未知の生物は、大きな 卵のようなジェルに包まれていた。医師達は傷を探してメスを使う。ドロドロの白いジェルを切り開いて 出てきたのは まさしく人間の姿をしたエイリアン、クラトウ(キアノ リーブス)だった。

彼は 傷口に救急処置だけされると 大統領と軍の指揮者に囲まれて、自由を拘束されて、電流を体につながれて、尋問される。しかし、エネルギーを自在に使うことができるクラトウは、逆に尋問官に、電流を逆流させて、情報を手に入れ、軍機関から脱出する。しかし、銃で撃たれた傷のために 宇宙船のあるところまで 弱ってたどり着けないでいる。そこを、科学者ヘレンに出合って 助けられる。ヘレンは やみ雲に発砲したり、暴力的に尋問する軍のやりかたに反感をもっていたので クラトウを 車に乗せ、5歳の息子と一緒に、軍の追跡を逃れる。ヘレンは 逃亡して、父のところに身をよせ かくまってもらう。父はノーベル賞受賞者の数学者だが、彼に解析できなかった数学理論を クラトウに教わったりして、心の交流をするが、軍の追跡から、安住できる場はなかった。

一方、息子は、クラトウがいったん死んだ人にエネルギーを注入して蘇生させることが出来るところを見て、ヘレンの目を盗んで、クラトウを死んだ父親の墓に連れてきて、父親を生き返らせて欲しいと、懇願する。
ヘレンは、クラトウが地球にやってきたのは、人類を救う為ではなくて、地球を人類から救う為に来たのだと言うことを知って、子供を殺さないで、と懇願する。そうしているうちにも、ロボットのパワーで、地球上の建物も人々も、次々を攻撃されて破壊されていく。そんななかで、クラトウの決断は、、、 というお話。

反抗期で なまいき盛り、5歳のくせに母親のヘレンにたてついてばかりいる息子が 母親からかくれてクラトウを墓地に連れて行って クラトウに 「ねえ、お願いお願いだから、、」といって、死んだ父親を生き返らせて欲しいと お願いする姿には、涙をさそわれる。子供の言葉に 意表をつかれて、「物質は時間の経過とともに変化するものだから」と説明するが、息子には全く理解できず、言葉を失うクラトウ。ただただ、懸命に 真剣な眼差しで、クラトウに懇願する子供と、そこにいて、ただ頭をたれることしかできない美形のキアノ、このシーンは、絵になる。

エイリアン役のキアノの感情に流されない、冷静沈着で、端整な顔がとても良い。とても美しい顔と姿が、人間離れした美しさで、エイリアン役が良く似合う。最初の 彼の出現が 衝撃的だ。ドロドロ、ぬるぬるのジェルの厚い中から出てきた 美しい少年のような全裸姿。ここで、キアノ リーブスのファンは、必ず「マトリックス」のネオの生誕シーンを思い起こすことだろう。不思議なドロドロ、ねばねば、グチャグチャの釜の中の繭から生まれ出てきた 生命体誕生のシーンだ。「マトリックス」の映画のために、キアノは 髪の毛から体毛から すべて剃りおとして全身ツルツルになって 繭から生まれ出るところを撮影したのだそうだ。俳優も大変な家業だ。

クラトウは 地球の人々より遥かに文化も科学水準も高い処からやってきた。彼は 地球の人々が 余りにも愚かで、争いを止めず、土壌を汚染し、自然を破壊し続けるので、地球という星を守る為には、下等な地球人類を全部滅ぼすしか方法はないと考えている。そのクラトウと直接 触れ合いコミュニケイトできたのは、ヘレンとその息子だけだ。クラトウが 地球の人々を絶滅させて地球を救うのか、このままにして人々が地球を破壊し続けることを許してしまうのか、判断は、クラトウ次第だ。人の生死をどう捉えるのか、世界をどう理解するのか、キアノ次第、というところも、「マトリックス」に似ている。ストーリーからいって、キアノ以外に 適役はなかっただろう。

完璧といってよい美しい容姿のキアノに対して、主演女優のジェニファー コネリーが全く美しくないのが残念。5歳児の子供をもった 第一線で働く科学者という設定、こんな眉毛ボサボサの痩せた女でなく もっと、きれいな女優を確保して欲しかった。 子役のデイデイン スミスは、ウィル スミスの息子、「幸せのちから」で、活躍し、実力を証明された。本当に可愛い。

映画で、クラトウが発する数少ない言葉が 興味深い。ヘレンがあなたは どうして地球に来たの?と聞くと彼は「TO SAVE THE EARTH」と答える。その言葉だけで、「私達を救いにきたんじゃないのね。」と、理解できるヘレンはさすが、頭が良い学者さんだ。   また、軍による暴力的な尋問で、「ARE YOU A HUMAN?」(おまえは人間か?)の質問に、「MY BODY IS」と答え、電流で拷問されながら「DO YOU FEEL A PAIN?」(痛いか?)と問われて、「MY BODY DOES」と答える会話も、人とエイリアンとの対話を 効果的に際立たせていて、おもしろかった。

このキアノ 日本に映画の宣伝のために来たらしい。記者会見で、地球最後の日に、あなただったら何を食べたいか、と聞かれて、ステーキ、シザースサラダ、ワインにチョレートケーキと答え、「できるだけ ゆっくり食べたいね。」といって会見者達を笑わせたそうだ。 ステーキ、サラダなど、最も一般的で アメリカ人が毎日食べている そんなものを キアノも食べているんだろうか。俳優家業も長く、34歳、少しも贅肉がついていない永遠の少年のような姿、、、立派です。
それを見るだけのために この映画、見る価値がある。