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2008年11月8日土曜日

パリ ルーブル その2







ルーブルで見たものの内、絵画より彫刻が素晴らしい。
絵に比べて より立体的で、紀元前3000年のものであっても 全く古びていなくて新しい。 躍動感があって、ダイナミックだ。  「サモトラケのニケ」(勝利の女神)が一番好きだが、ルーブルの彫像といったら、まず「ミロのヴィーナス」だろう。

ミロのヴィーナスは 紀元前2世紀後半 130年頃の作とされている。1820年 オスマントルコの統制化にあったエーゲ海のミロス島で 見つかった。大理石ででき、高さ、204CM.王冠を被り イヤリングをした愛と美の女神像だ。「サモトラケのニケ」を動の美としたら、「ミロのヴィーナス」は静の美だろう。女神の均整の取れた体 成熟した女性の知性と気品に満ちている。

この像は、1964年に日本に来て、一般公開された。場所は覚えていないが 子供だった私は母に連れられて、見にいったのを憶えている。母は、79歳で死ぬまで フランス語を勉強していた。子供達が独立し家を出てしまったあと 二回ほどツアーで フランスを旅行した。旅行中、言葉に困ることはなかっただろう。
大正生まれのモガ:モダンガールで、屋根のないオープンカーで銀座を走り回ったり スカート姿でスキーをしていたり、テニスに興じていた若い頃の写真がある。料理しながら、いつもシャンソンを歌っていた。 しかし、母は 一度目のフランス行きで ツアーは、ルーブルを何故か素通りし、二度目のフランス旅行でルーブルを見ることを 楽しみにしていたのに、当日、テロの恫喝電話があったため、ルーブルが閉鎖されていて、このときも見ることが出来なかった。悲しかっただろう。どんなに中に入りたかったことだろうか。門の前で悄然としている 母の姿が目に浮かんできて、たまらない気持ちになった。

「タニスの大スフィンクス」 これもすごい。紀元前2620年ー2500年の作品。花崗岩で出来ていている。縦183CM、横480CM,高さ154CM。
エジプトのスフィンクスはライオンの体と王の頭を持った「生きる王の像」だ。紀元前2620年にピラミッドやスフィンクスを作った人々の洗練された美意識の高さ 文化の高さ、これを見ると人の歴史の素晴らしさ、美を求める人の真摯な姿に泣きそうになる。キリストが生まれる何千年も前に、人々が完全な美と強さを求めて スフィンクスなどの作品を製作し、その人々の生きてきた延長線上に 私も居るのだと思う。いずれ、人は死に絶え、いずれ地球は滅びる。しかし 生きてきた人々は 紀元前何千年も前から 芸術を愛し、美を追求し、美しいものを紡ぎ出してきたのだと思うと、生きていることを無駄にしてはいけないと思う。

「瀕死の奴隷」(ESCLAUES) 1513年ー1515年、ミケランジェロの作品。 イタリアのフロレンス、アカデミア美術館で ミケランジェロの 未完の4体の奴隷の像をみて、印象深かった。それぞれが未完ながら 力強い生命力や 人の苦悩、怒りそして嘆きに満ちていて、忘れがたい像だった。ここルーブルでも彼の奴隷の作品を見ることになった。どうして、ミケランジェロは奴隷の姿を執拗に描いたのだろう。どうして貴族でなく、女でなく。ミケランジェロの生涯を書いたものを 読んでみよう。

写真1:タニスの大スフィンクス
写真2:瀕死の奴隷
写真3:ミロのヴィーナス