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2008年8月12日火曜日

映画 「ザ バンク ジョッブ」



実際に起こった事件をもとにして出来たイギリス映画。当時のことをよく憶えている私には すごくおもしろかった。

1971年、何者かが ロンドンの銀行の貸し金庫室に、となりのビルから地下にトンネルを掘って侵入して 大金が盗まれた。ビッグニュースは即時、世界中に報道されて、大胆不敵な銀行強盗の手口に びっくりした。被害金額は30億円とも言われていた。 そんなに簡単に盗めるほど銀行の警報システムが脆弱だったことが証明されて、ロンドン警察も銀行も面目まるつぶれになった。当時、イギリス政府による北アイルランド占領に真っ向から反対して 連日爆弾テロを繰り返していたIRAが、当然この事件を起こしたのだと人々は推測した。IRAのように、大きな軍事組織でないと とてもこんな大胆なまねはできないだろう と。

ロンドン警察は まもなく報道管制を布いた。事件に関する報道は一切止まり 犯人は誰だったのか、その後どうなったのか、わからないまま時が過ぎた。私は これはIRAの快挙だったと思い込んでいた。政府も警察も黙り込んだのは、IRAと、政府との間でなにか政治的な取引が行われたのだと思っていた。この映画をみるまでは。 その後 この事件が語られることはなかった。人々の記憶から完全に忘れられていた。ベトナム戦争の真っ只中、、アイルランドもパリも神田も火を噴いていた。学生達は街に出ていた。流動する世界の動きに気をとられていて ロンドンでひとつの銀行が襲われたことなど気をとられている暇もなかった。

30年たった今 迷宮いりしたはずの この事件が明るみにでる。どうして報道管制が布かれたのか。どうして銀行の警報は鳴らなかったのか。事実はこんなことだったのか と映画で知らされる。もちろん、これは事実を基にして 作られた映画だから、事実以上に 脚色されているだろう。真相暴露に映画のストーリーテラーとしての色付けが なされているに違いないが、それでもすごくおもしろい。

ストーリーは
モロッコから ドラッグを仕入れてロンドンに帰ってきた美女、マーテイン(サフロン バロウズ)は、空港で荷物検査で引っかかって逮捕される。5,6年の懲役を覚悟しなければならないところを、政府の秘密エージェントから 取引を持ち込まれる。もし、ある銀行の貸し金庫に預けてあるものを 無事に盗み出してくれれば 罪に問わないで自由にしてくれるという。銀行のアラームは、システム変更のために数日間電源が切られるので、容易に貸し金個室に侵入できると エージェントは保障する。

マーテインはさっそく 昔のボーイフレンドのテリー(ジェイソン ステイサム)を誘って、地下のトンネルを掘って 銀行の貸し金個室に侵入する計画を立てる。テリーは自動車修理工場をもっているが、やばい仕事にも手を出していて、資金繰りに困っている。テリーは仲間4人を引き入れて、地下を掘り始める。 貸し金庫に到達したグループ6人は 片端からボックスをこじ開けて現金や宝石などを袋につめて逃げる。当然これを政府の秘密エージェントは 監視していて、マーテインが、約束どうり 指定された番号のボックスを持ってくるのを待っている。しかし、テリーはマーテインが 何かを隠していて男と 秘密に連絡しあっているのに気がついていた。だから、当初予定していたのとは別の車で 別のところに逃げる。

逃げた先で盗んだものを見てみると ざくざく 宝物が出てくる。  マーテインが エイージェントに頼まれて渡さなければならなかったものは、エリザベス女王の娘、プリンセスが、ウェスト インデイーの独立運動家たちと乱交している写真だった。ウェスト インデイーの独立運動派は、この写真を 政府を脅迫するために大切に保存していたのだった。当時、カリブ海のイギリス領土だったウエスト インデイーでは、独立運動が起きていた。エージェントは 女性エージェントをウェスト インデイーに送り込んで 情報を得て、独立運動をけん制していたが、女王のスキャンダルは 早めに潰しておく必要があったのだ。

またテリーは 盗んだものの中に、ロンドン警察署署長が、当時は 違法だった売春宿で、サド マゾ プレイに興じている写真を見つける。売春宿のオーナーが 自分達の商売の存続に関わる問題が起きたときのために、いつでも警察署を告発できるように 写真を確保していたのだった。

さらに、ロンドンギャングの親玉が 警察署内部に 高額の賄賂を手渡して手なずけていた。ギャングの出納記録まで 出てきた。これが暴露されるとギャング団も 警察署の半数の役人の首が飛ぶ。

貸し金庫の中身をごっそり持ってきたために マーテインもテリーも予想外の宝物のために、政府のエージェントからも、警察からも、ギャングからも、汚職刑事からも 追われる身になる。 というお話。 同時進行で、警察の動きやギャングの動きをカメラが追うので、怖くておもしろくてゾクゾクする。動きの早い映画だ。

人々は貸し金庫に誰にも言えないような秘密を仕舞っていたり、闇で得た裏金を隠していたり、盗んだ宝石をかくしていたりする。だから、この事件で 盗まれたものの被害額は いちじ30億円位と、推定されたが、いまでも全くわからない。被害者が被害額を申請できない事情があるからだ。

それにしても、たったひとつの銀行の貸し金個室が襲われたくらいで イギリスの王室も警察も 根底から震かんさせられた、と言う話、実におもしろいではないか。 30年たってみて この映画はウソだ、王室にスキャンダルはなかった、警察に汚職はなかった、ウェスト インデイーに介入はしなかった、というのならば、イギリス政府はこの事件に報道管制を布いたのは どうしてだったのか。事件直後に迷宮入りを宣言して 一切の報道が止まったのは どうしてなのか。ちゃんと説明してくれなければならない。