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2008年8月11日月曜日

ステブン イスラレスのチェロを聴く


ACO(オーストラリア チャンバー オーケストラ)の定期公演会に行ってきた。
エンジェルプレイス シテイー リサイタルホール。
ゲストは イギリスから、チェリストのステブン イスラレス。
監督:リチャード トンゲッテイ
曲は

1)CPE バッハ チェロコンチェルト 作品172番
2)バージル 弦楽8重奏曲 作品15番

3)ラベル  二つのヘブライのメロデイー
4)バルトーク 弦楽変奏曲

リチャード トンゲッテイを含めて、第一バイオリン5人、第二バイオリン5人、ビオラ3人、チェロ3人、コントラバス1人の計17人。これにコンサート チェリストのステブン イスラレスが加わった。 演奏会に先立って、世界的に名前のあるステブン イスラレスのチェロという宣伝文句に期待をして行った。
が、みごとに裏切られた。
というか、世界で高い評価を受けているチェリストが かすんでしまうほど、リチャード トンゲッテイ率いる室内楽団がのレベルが高い と言うことかもしれない。だから、このゲストチェリストが下手だったと言うわけでは決してない。
肩までのカーリーヘアを振り乱して、バロックを演奏するハンサムなイスラリスは、なかなかビジュアル的に見ごたえがあったし、軽々とテクニックを披露してくれて 簡単にはマネできない実に優れたテクニックをもっていた。でも心に染み入るようなチェロの音を聞くことが出来なかったのは、残念だった。

なかでは 弦楽8重奏が良かった。弦楽4重奏は、何度も二人の娘達と演奏したことがあるが 8重奏はない。複雑な構想、曲そのものの難解さ。8人のうち、一人が1拍 早まっただけで、綿密に組み立てられている曲そのものが、がらがら音をたてて壊れてしまう。とてもアマチュアには演奏できない。それを互いの音を聴きながら、実にみな楽しそうに演奏していた。

むかし、オーストラリアに来たばかりの頃は NSW大学を拠点において活動しているオーストラリア アンサンブルの音に魅了された。デイーン オールデイングの率いる室内管弦楽団だ。オールデイングの繊細なバイオリンの音は なにか特別な、取って置きの音と言う感じで 聞いていると泣きたくなるような音だった。若くてシドニーシンフォニーオーケストラのコンサートマスターだったが、大所帯を飛び出して、自分の仲間だけで演奏を始めた。彼らの室内楽を3年くらい 熱心に聴いていたが ある日突然 禅問答のような現代音楽ばかりに挑戦しているオールデイングの音が嫌になった。

その頃には リチャード トンゲッテイは 自分の仲間とともに、オペラハウスで定期公演会をもてるほどに 実力をつけていた。かれは 間違いなくオーストラリアでナンバーワンの演奏家だ。ソロイストとしての名声がついていると、えてしてわがまま坊主になりがち。世界のソロイストは皆そうだ。出来る人はわがままでいい、一人のソロイストを100人の演奏家達が支えてやればいいというのが常識の世界。しかし、リチャード トンゲッテイは あくまで謙虚でソロイストとしても 楽団のリーダーとしても きちんと立派に仕事をしている。この10年間、定期コンサートで、同じ曲をやったことがない。常に新しい曲に取り組んでいる。 毎回 世界からピアニストや、ハーピストや歌手やリュート奏者などを招いて、一緒に様々な曲を演奏している。毎年1ヶ月は、ヨーロッパなどに演奏旅行にでかけて、世界の演奏家達と交流をしている。 小さなグループだから 資金繰りは大変だと思う。10年間 彼らのコンサートを聴いてきて、スポンサーシップも続けているが 今後も期待して見守っていきたいと思っている。