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2007年10月19日金曜日

映画 「THE BRAVE ONE」


アメリカ映画「THE BRAVE ONE 」を観た。各ホイッツ映画館で封切りされたばかり。邦題未定。「勇気ある女」または「ブレイブワン」か。アイルランド人二ール ジョーダン(NEIL JORDAN)監督。「THE CRYING GAME 」の監督。

久々の お母さんになった、オスカー受賞女優ジュデイ フォスターが(JODIE FOSTER)主演。男優に、テレンス ハワード(TERRENCE HOWARD)。この人、アカデミー作品賞を取った映画「クラッシュ」にも出ていた 今や アフリカンアメリカ人のなかで一番ハンサムな男優かも。

ストーリーは、 エリカ(ジュデイ フォスター)は 放送局でデスクジョッキーというか、放送パーソナリテイーとして、自分の番組をもっている。マイクロホンを前に、詩を読んだり、インタビューをしたり、音楽を流したりしている。病院に勤務する恋人と一緒に住んでいて、結婚する予定だ。しかし、ある夜、二人で犬を散歩させていたとき ギャングにアタックされる。不運な時に、不運な場所に 居合わせたというだけの理由で、恋人は撲殺され、彼女は3週間 昏睡状態で生死の間を彷徨った末 生還する。しばらくして、職場復帰するが、恋人を失った衝撃から立ち直ることが出来ない。警察に 犯人逮捕の手がかりを問い合わせても、暴力事件が日常茶飯事のニューヨークで、警察の態度は、冷たく、何の希望も見出せない。湧き上がる怒りと、身を守るのは自分しかないという絶望感から、護身用の銃を手に入れる。

そんな、一人きりになって 希望をなくしたある晩、エリカは偶然、家庭内暴力で夫が妻を殺す現場に居合わせてしまい 自分を守るために、やむなく男を撃ち殺す。それ以来、銃を持ち歩き、あえて、夜 出かけては、地下鉄に乗って、ギャングを撃ち殺し、小児虐待の男を待ち構えて、処刑し、また、ポン引きを処分する。そんな行為でしか怒りを静められなくなって殺人がやめられなくなっていく。

捜査を担当する刑事は エリカの不審な行動に、疑問をもち、彼女にはギャングを処刑するだけの動機があることを 突き止める。ギャングに襲われ、辛うじて生き残ったエリカの傷ついた心に共鳴しながらも、刑事はエリカが一連のギャングアタックに関わっているならば それを止めさせなければならない と考えている。知り合い、話をすればするほど、エリカと刑事は心が通い合い 惹かれ合っていくが、エリカは 悪への怒りを押さえつけることが出来ない。最終的に、自分の恋人を殺した3人組のギャングを遂に突き止めて、復讐するための道に突き進んでいく、のだけど、その先は、これからこの映画をこれから観る人のために、言えない。

ジュデイーフォスターが とても良い。やせて小柄な彼女が 思いのほか筋肉質で、泣かずにいられないときでも 歯を食いしばって涙をこらえて、絶対に怒りを忘れず 怒りを生きる糧にして、前に突き進んでいく姿が、とても良い。小さくて可愛いくせに 気味悪いほどグラマーで そこそこ仕事もできるカマトト女が 男にもてる世俗社会ではあるけれど、ジュデイーフォスターの 人工授精で赤ちゃんを産みシングルマザーとして生きる潔さが、今の女性の行き方の最先端を行っているのではないか。

エール大学卒業のインテリ女優、出演作をすごく選んでいる。 彼女のデビュー作が ロバート デ ニーロの、「タクシードライバー」。 これで彼女は14歳で娼婦役、衝撃の登場だった。これで、オスカーにノミネイトされた。その後の「アキューズド」では、 ゴールデングローブ賞と、オスカーを取った。パブで輪姦されて、犯人達が法で罰されるまであきらめずに戦う女の勇気に圧倒された。 「羊達の沈黙」では、彼女以外の女優にできないような難しい役をやって、アカデミー主演女優賞を取った。2作目の、「ハンニバル」を、他の女優が演じたため、アンソニー ホプキンスのレクター博士も、二度目はちょっと冴えなかったが、彼女がやっていたら、もっとずっと、違う作品になっていただろう。

この映画、ジュデイー フォスターと、ハンサムなテレンス ハワードを画面で観ているだけで、私は嬉しかったが、映画の ストーリーに賛成できるわけではない。リベンジは、リベンジでしかない。復讐は なにも、生み出さない。 いつのころからか、9ー11の直後からだろうか、アメリカ人はリベンジを正当化するようになった。イラク攻撃も、グアンタナモ刑務所も、アフガン攻撃も 9-11のリベンジだ。いまだ、アメリカ人の半数以上がジョージブッシュを支持している。 リベンジを、正義 と認めてしまったら、人は人の道を外れる。