ページ

2007年10月22日月曜日

洞窟のなかのコンサート

どうしても行きたかったブルーマウンテン ジェノランケイブのコンサートに 遂に行くことになって、嬉しくて思わずふるえた。二年がかりで、念願のコンサート。

ブルーマウンテンの数々の洞窟は、何千年もの時間をかけて形造られたられてきた。なかで、ジェノランケイブが一番有名。近くに山小屋が出来てから旅行者でいつも、いっぱい。なかで、ルカスケイブから、54メートルほど中に入った洞窟に、自然が形作った小さな部屋があり、教会になっている。そこが、コンサート会場。

洞窟のなかは、一年を通じて気温15度、人工的な音のない 風の音さえない、静寂そのもの。ひとつの音が8秒鳴り響く、自然のエコー。沈黙の深さ、音の増幅、拡大が、強力で豊か、より純粋な音が 自然の音響効果で、聴くことが出来る。 そこで長いこと ドイツ人のチェリストが 定期コンサートを催しているのを知って、いつか聴きに行きたいとずっと思っていた。

コンサートは 土曜の夜。洞窟まで 4-5時間、昼間なら慎重に運転すれば運転できないことはないが、コンサート後、夜道を、切り立った岸壁、厳しい山道をヘッドライトの明かりだけで山から 下りてシドニーに帰れる自信は全くない。無謀というものだ。シャトルバスで行き帰りを 頼むことにした。仕事を一日休暇とって、長距離電車のチケットを予約し、シャトルバスの運転手と打ち合わせして、やっと、やっと、夢にまでみた念願のコンサートにいける!

夫はケンタッキーフライドチキンの店に立ってるおじいさんの体型。腹の出ぐあいサンタクロース型、甘いものが大好きで、喘息もちなのに、タバコを止められない。そんな夫をつれていったのが間違いだった。洞窟のなかのコンサートに向かう途中、洞窟までの階段が、狭いうえに 急で 手すりをつかまえてやっと 体をもちあげて先に進む冒険旅行。私でも、息があがって、やっとのことで、前に進む。さあ、コンサート会場までもう一歩、、、 ふと後ろも見ると、夫が、真っ青な顔で、喘息発作をおこして、アップアップ、、、水のない金魚のような、苦しみ方。吸入器を ポケットから出す力も残ってない。あわてて駆け寄り、救命。「一人で、コンサートを聴いてきなさい」、と、背中を押してくれるが、誰もいない洞窟の真ん中で、こいつ、置いていけるか?

というわけで、チェロを聴くことが出来ずに シャトルバスで帰ってきた。予定外に、2時間早く帰る事になったシャトルバスの運転手さん、私の肩に手を置いて、「またくればいいよ、ね。」と。 ボロッと、おおきな涙が私の目から落ちた。