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2022年10月17日月曜日

反政府運動と危機意識

ロシア国内でも、イランでも、レバノンでも、チュニジアでも人々の反政府プロテストが火を噴いている。侵略戦争、前時代的宗教警察の横暴、ガソリン、食料の値上がりのために生活が圧迫された人々の怒りは、簡単には収まらない。

中国では全国人民代表大会が行われ、320人の代表らがシャンシャン拍手喝采する中で、習近平は、3度目の国家主席に「選出」された。彼は演説の中で、香港と台湾の SEPARATIST(国家分離分裂主義者)を激しく攻撃した。香港の人々も、台湾の人々も自分たちが中国における分離主義者などという認識は全く持っていないだろう。大陸の漢民族と香港の広州人とは言語も文化も歴史も全く異なる。

4年前、香港に戻り反政府運動に身を投じていた親友の身が心配で仕方がなかった。彼女が仕事を辞めて香港に向かう4年前、私が遺言状を作ってもらった弁護士を紹介してほしいと言うので教えた。どれだけの覚悟で香港に向かうのかと思うと、ずっと気が気ではなかった。彼女は香港で国家安全法に抗議する若い人々を救援する活動をしていた。そして口を封じられ傷ついて、香港のパスポートを更新せずにオーストラリアに戻ってきた。彼女は2重国籍だったが、香港のパスポートを捨てると言うことは、自分が生まれ育った国にはもう帰らない、という意思表示であり、自分のアイデンテイテイを捨てるということだ。
彼女が香港に居た間、彼女の身が心配でラインもワッツアップもなるべく送らずにいた。デモ参加者を警察が顔認識のカメラでとらえて後で逮捕に来ると聞いていたが、携帯の情報はどれだけ警察に探られるのか分からなかったからだ。
でも今年の6月4日にキャンドルに火を灯して写真に撮り、彼女に送った。せめても1989年6月4日の天安門で殺された人たちを思い、忘れない、という気持ちだった。それでそのあと10月に彼女が帰ってきたので聴いてみて、驚愕した。大学の寮で友人たちがキャンドルを灯していたら、窓からのぞかれて、通報された学生たちが拘束されたというのだ。権力によって殺された学生たちを追悼することが、国家への反逆であり国家安全法違反になるというのだ。私が送ったキャンドルの映像も誰か他の人に見つかっていたら拘束されたのかもしれなかった。「反政府運動に連帯を」と簡単に言うが、それがどんな危険を冒すことになるのかを知らされて頭を抱えた。


竹田の子守歌を歌ってみた。京都府伏見区竹田地区に伝わる民謡。1965年東京芸術座が、住井すゑの「橋のない川」を上演するとき音楽を担当した尾上和彦が、部落解放同盟の合唱団のメンバーの母親から教わって採集された曲。この曲が京都府竹田部落で伝わってきた民謡で、歌詞に「在所」という部落を表す言葉と、「もんば飯」という言葉が出てくるので、公営放送の自主規制で放送禁止となった。「在所」とは家のことだが部落を指す差別用語で、「もんば飯」とはオカラのことで部落の貧しさを表す差別語だという理由だった。この曲は長いこと放送禁止になり、歌ったグループ「赤い鳥」の後藤悦治郎などは、メデイアから締め出された。しかし実際に後でわかったことは、部落解放同盟京都府連は、竹田地区の歌も、それが放送禁止になっていたことも知らなかった。部落差別を恐れるあまり、歌を歌うことも自主規制したメデイアの愚かしさを物語るエピソードだ。
これは笑っていられるが、いま香港で「GLORIA HONGKONG」を歌うと、香港独立の言葉が出てくるので、国家安全法で拘束される。権力者は、歌の持つパワーを知っているから、ひとつの歌でも見逃さない。私たちは、常に危機感をもち続けなければならない。