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2021年10月8日金曜日

「You raise me up」とケルト文化

「ユーレイズミ―アップ」を歌ってみた。
ノルウェーアイリッシュ人のブレダングラハム作詞、ロルフラブランド作曲、この二人組デイユオ「シークレットガーデン」によって2002年に発表された。
 落ち込んで心が疲れてしまった時 
 何もかもうまくいかなくて 心に 重荷を背負ってしまった時  
 ここであなたを待つ あなたが横に座ってくれるまで
 あなたがいるから 山の頂まで登って行かれる
 あなたに寄りかかっているから 嵐の海にむかっていける 
 飢えるって命があるからでしょう
 心臓は休むことなくうち続けてくれる あなたが居てくれて永 
 遠を見ているような気がする
 あなたが居るから 山の頂に行ける 
 あなたの力を借りて嵐の海に向かっていける
 あなたが居るから 今以上のわたしになれる

この歌がディュオによって曲を発表された時は、注目されずにいたが、ダニエルオドネルや、ケルテイックウーマンなどに歌われて、徐々にポピュラーになった。それは、「消滅」されたケルテイック文化への再認識、ブリテンからのスコットランド独立への動きに伴って、ケルトの血をひくもののアイデンテイテイが大きく取り上げられるようになったのも一因だろう。この曲で歌われている「あなた」とは全知全能の神様とか、あまり頼りにならない夫のことではない。歌詞にゴー マウンテンと、聖書の言葉があるが、ジーザスのことではなく「あなた」とは個人のアイデンティティのことだと考える。自分が育った土地、言語、文化すべてによって培われた自分の信条のことを指している。
紀元前1500-400年青銅器の時代に中央アジアの草原からヨーロッパに渡来したインドヨーロッパ語族、ケルト語派と呼ばれる人々を古代ローマ人は「未知の人」ケルトと呼んでいた。ギリシャとエトルリアから学び鋭利な鉄でできた武器を持ち、馬に引かれた戦車に乗っていた。ケルト戦士は剣と槍で戦い、その勇猛さは、戦闘は始まるや否や衣類を脱ぎ捨て金の首輪や腕輪だけの姿で戦ったという。討ち取った敵兵の首を自分の馬にぶら下げて自慢する狂暴な獣だった、とローマ人は伝えている。
「ルビコン」をこえたジュリアスシーザーによってケルトは侵略され500年もの長い間強力な支配下に置かれるが、じつはシーザーが生まれるずっと前、BC390年、ローマはケルトに7か月間のあいだ 侵略された。そのころローマは、すでに下水道完備、法が整備された共和制の布かれた文化都市だったが、蛮族ケルトに侵略され食糧庫を焼き壊されたため食料が無くなり、水道に死体を投げ込まれ飲料水がなくなり、そのため疫病が蔓延して自分達も含めて飢餓に苦しんだ。そのためローマ人は7か月後に300キログラムの金を引き換えにケルトの撤兵を願い出た。ケルトが引き上げた後、完全に破壊された文化都市を取り戻すのに、ローマ人は40年かけて再建したという。この間のことは塩野七生の「ローマ人の物語」全43巻(新潮文庫43巻!!!)に詳しい。
その後ジュリアスシーザーによってBC50 年代に、フランス、スペイン、ドイツ、ブリテン諸島などに広がっていたケルト族もローマ軍に占領される。ここはシーザー著による「ガリア戦記」に詳しい。
その後500年経って、ローマ帝国の衰退にともない、アングロサクソンによってイングランドが侵略され、ケルト語がゲルマン語にとってかわられる。しかし同じブリテン島でもスコットランドやアイルランドはアングロサクソンの支配が充分に及ばず、ケルト語は生き残った。現在でもケルト語を話せる人は、アイルランド、スコットランド、ウェールズで何万人もいる。
基本的に文字を持たない文化は消滅することを免れないが、ケルト文化の復権運動が起きて、言語がいまでも大切に伝承されていることは嬉しいことだ。この歌もケルト語で、ケルトの血を引く人たちによって歌われることに価値がある。
[ You Raise me up]
I am singing this song written by Brendan Graham, composed by Rolf Lovland in 2002, and recorded by Norwegian-Irish Duo: Secret Garden.