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2019年9月29日日曜日

映画「アド アストラ」


地球はソーラーシステム(太陽系)の惑星の一つで、太陽の重力に支配されて太陽の周りを24時間で1回転しながら公転している。地球のほかには、マーキュリー(水星)、ヴィナス(金星)、マーズ(火星)、ジュピター(木星)、サターン(土星)、ウラヌス(天王星)、ネプチューン(海王星)の7つの惑星が、ほぼ同じ平面状で、円形に近い円軌道にのって太陽の周りを公転している。学校の科学の時間に、太陽から近い順に、水、金、地、火、木、土、天、海、瞑、(スイキンチカモクドテンカイメイ)と記憶させられたが、最後のプルート(冥王星)は、サイズも質量もほかの惑星とは異なることが分かって、2006年に国際天文学連合会で、惑星の分類から外された。プルートは、アメリカで人気漫画の主人公の犬の名前になっているし、根強い人気のある惑星だったので、ソーラーシステムのプラネットの仲間ではなくなったことで随分と論争が続いた。
ウラヌス(天王星)も)、ネプチューン(海王星)も、氷でできた惑星だ。サターン(土星)には大きな輪が付いていて、輪の厚さは150メートル、小さなチリや岩石の混じった氷の粒子からできている。月は、地球のまわりを回る、唯一の衛星で、地球の3分の1の大きさだ。

この映画の時代背景は「近未来」。宇宙飛行士ブラッド ピットが月から火星へ、そして木星、土星を通り過ぎて、父を探して海王星まで旅行する。浮遊感のある宇宙で、音のない空間に浮かんでいる惑星の姿が、それぞれとても美しい。赤い火星、輪のある土星、青い海王星がことさら美しく感動的だ。

原題:「AD ASTRA」(TO THE STAR)
監督:ジェームス グレイ
キャスト
ブラッド ピット  :ロイ マクブライド少佐
トミーリージョーンズ:マクブライド司令官
ドナルド サザランド:ブルイット大佐
ルス ネッガ    :ヘレン ラントス
リブ テイラー   :エバ マクブライド

ストーリーは
30年前、マクブライト司令官はクルーを率いて宇宙に生命体を探索に出たまま帰らなかった。16年前に彼らが海王星に到着したことまではわかっているが、その後消息が絶えてしまった。リマ計画とよばれるこのプロジェクトは、何かの事故で宇宙船乗務員は全員死亡したものと判断され、マクブライト司令官は国民的ヒーローとして尊敬され人々に記憶された。当時幼かった息子のロイは、父親のあとを追って自分も宇宙飛行士になった。

ある日、ロイが宇宙基地で訓練中、突然原因不明の電流(セージ)が襲い犠牲者が多数出たが、ロイは九死に一生を得る。怪我が癒えたころロイは、米軍本部に召還され、大佐から意外な命令を受ける。リマ計画の責任者だった父親は、16年前に姿を消し死亡したものと思われていたが、海王星で生きているらしい。突然地球を襲った殺人的セージは、海王星に居る父親が意図的に地球に送信しているらしい。それは宇宙に残っていた反物質(anti matter)のパワーを利用したもので、このエネルギーは途方もない破壊力をもち、制御不能な連鎖反応は、ソーラーシステムを全部破壊する恐れがある。ロイは火星まで行って、父親とコンタクトを取って欲しい、という命令だった。米軍首脳部は、マクブライト司令官が意図的に反物質を使って地球を攻撃していると考え、ロイを火星に派遣して父親をおびき出して殺して、彼のもくろみを破壊しようと考えていた。ロイは、亡くなったと思い込んでいた父親が生きていると言われて、半信半疑で命令されるまま父親探しに宇宙船、ケフェウス号に乗る。

ロイはかつての父親の親友だったというブルイット大佐とともに月の宇宙基地に行くが、月の資源を奪おうとする盗賊団に襲われてクルーのほとんどを殺される。ブルイット大佐も怪我をして一緒に火星まで行けなくなった。ロイは一人で火星に到着、軍に命令されるまま父のいる基地と交信し、軍に与えられたメッセージを読んだ。毎日それを繰り返されて、ロイは、とうとう自分が父親に向かって話しかけていると思うと、感情が勝って子供だった自分が父親にしてもらった思い出などを語り掛けることを止められなかった。それがもとでロイは軍の任務から解任される。ロイは基地の中でヘレンと言う娘に出会って、父親が写っている秘密のヴィデオをみせてもらう。彼女は父親が司令官だった隊員を両親のもった、火星生まれの女性だった。彼女の助けを借りて海王星に向かうケフェウス号に忍び込むが、船内でロイを排除しようとする3人のクルーを揉み合いになって、3人は死んでしまう。ロイは一人で海王星に行く。

海王星でロイを待っていたのは父親ただ一人だった。クルーは、司令官と意見の違いから反乱をおこして全員死亡していた。この争いのために損傷をうけた基地に反物質装置が発動して、地球にサージを引き起こしたのだった。宇宙に生命体は居ないことがわかった。ロイは父親を説得し宇宙服を着せて、海王星基地を脱出し、ケフェウス号に乗船しようとする。しかし父親は自ら命綱を絶ち宇宙空間に去っていく。
というおはなし。

ストーリーはメロドラマ。浪花節っぽい。息子が父の汚名を晴らそうと、父親探しの旅に出て一緒に帰ろうとするが、それがかなわない。哀しい息子の、父を慕う気持ちと、立派になった息子を見て、もう思い残すことはないと自ら去っていく父親。
ブラピが万感の思いで、口を閉ざしうつむく父に宇宙服を着せるシーンには泣ける。ブラピファンはここで号泣する。お父さん、あなたを尊敬していました。お父さんに誇ってもらいたくて今まで頑張ってきました。そう訴える息子の悲しみに満ちた目。ピットの感情を極力抑えた哀しい顔って、世界一哀しい顔だ。

それにしてもストーリーが、つっこみどころ満載。
宇宙船が損傷をうけたために反物質が発動して、海王星発、地球行きの、太陽系をまるごと破壊するほどのセージが襲う、それで人類全滅って、ちょっと無理な科学論理かもしれない。また最後にロイは、空気の無い宇宙なのに、宇宙に浮かんでいるケフェウス号で搭載していた原子爆弾の爆発波で、海王星から地球まで帰って来るって、いうのもちょっと無理っぽい。また、16年間たった一人で海王星で壊れた宇宙船で生き残っていた父親は、何を飲んで何を食べていたのだろうか。帰り、ロイは海王星から直接地球に帰って来たのに、行きは月に途中下車してクルー全員盗賊団に襲われて死んだりしたのは、まったく無駄な寄り道だったのか。月で襲った盗賊団はクルーを殺しただけで何も奪うものなど無かったうえ、自分達も全滅したが、それもただの無駄死になのか。なにか意味があったのか。また月に行く宇宙船で、殺人ゴリラが、飛行士の柔らかい体でなく宇宙服の強力なヘルメットを食い破り、顔を攻撃して殺しているがそこに意味があったのか。また殺人ゴリラ2頭は、なにを食べて宇宙船の中で生き残っていたのだろうか。それにしても殺人ゴリラの登場は、「エイリアン」の怖さに比べたら、全然まったく怖くなかった。

それと後ろ姿と横顔しか画面に出てこないロイの妻は、映画の初めのシーンで鍵を置いて出ていくところで始まって、映画の最後で戻って来るが、どうして? 別れようとしたり、もどってきたり、もうどっちでもいいからはっきりしなさい。
総じて、ストーリーに筋が通っていなくて、子供っぽくで、宇宙科学の知識に乏しい。役者は良い役者を使っている。しかし、84歳のドナルドサザランド、73歳のトミーリー、55歳のブラッド ピット、この映画の主役3人の平均年齢が70歳って、どうなんだろう。映画界は本気で若い優秀な役者を育てようとしていないのではないか。困ったことだ。

宇宙の画像は、「ゼロ グラビテイー」(2013)よりも、CGやモーションピクチャーの技術が進んでいるから、ずっと良い。でも同じように命綱で結びあってるブラピの鎖を自ら外して宇宙の藻屑として消えていくトミーリーよりも、「ゼロ グラフィテイ」で同じようにサンドラ ブロックの命綱を自ら切って、宇宙の闇に消えていったジョージ クルーニーを見る方が、はるかに悲しい。
この映画を「宇宙の旅」(2001)と「アポロ13号」(1995)と「インターステラ―」を足して割ったような映画だという人が居たが、私の目には、この映画は、人情っぽい中村宙哉の漫画「宇宙兄弟」と、ひとりきり宇宙で危機に立ち向かうサンドラ ブロックの名作「ゼロ グラビテイー」に限りなく近い。漫画「宇宙兄弟」も今や佳境に入って、太陽の異常フレアで、月に取り残されたNASAのムっちゃんを、ロシアクルーの弟ヒビトが救えるか、救えないのか、、、とても大事なところで、とてもわくわくして次作を待っているところだ。

空は無限に高い。宇宙は広くて大きい。宇宙の写真や画面を眺めるのが大好きな人、宇宙遊泳をしてみたい人は、この映画見逃してはいけない。月から眺めるブルーマーブル(地球)の美しさ。赤い火星、輪のある土星、巨大な木星。音の無い世界で確かに浮かんでいる蒼い海王星の美しさは、言葉に変えられない。美しい惑星の横で宇宙を浮遊するを飛行士の姿を映す映像で、ベートーベンの「月光」が静かに奏でられている。感動的だ。