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2012年6月26日火曜日

映画 「スノーホワイト」

映画「スノーホワイト」原題「SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN」を観た。

1800年にグリム兄弟によって書かれた童話「白雪姫」のハリウッド バージョン。
「アリス イン ワンダーランド」を監督したルパード サンダースの作品。イギリスで撮影されたアメリカ映画、2時間10分の長編、アクションドラマ。「アリス イン ワンダーランド」と同じスタッフによって作られたそうだが、アリスのときは、アリスに、当時の結婚がすべてだった女の生き方を拒否させて、冒険魂をもった仕事する女として描いたところが とても斬新だった。今回も、同様、現代版白雪姫は 男には目もくれず、敵と戦い、自分の城と領地を守る戦う女として描かれている。肌の色が雪のように白いかどうかは、あまり問題ではないみたい。

キャスト
スノーホワイト :クリステイン スチュワート
悪の女王ラベンナ:シャーリーズ セロン
狩人エリック  :クリス ヘムズワース
ウィリアム   :サム クラフリン

ストーリーは
スノーホワイトは、王と王女に可愛がられて姫として育った。しかし王が病死した妻に代わって、ラベンナという女と再婚すると、ラベンナは王を殺し、城や領地を奪い、幼いスノーホワイトを城の牢獄に幽閉した。悪の女王ラベンナは 魔法の鏡を持っている。そしてこの鏡が宣言するこの世で一番美しい女王でありたいと、願っていた。牢獄につながれたスノーホワイトは冷たい石の監獄のなかでも日々、成長し美しくなっていた。ある日、魔法の鏡はこの世で一番美しいのはスノーホワイトだと言う。怒った女王は弟に スノーホワイトを連れてきて殺すように命令する。

スノーホワイトは 女王の弟が油断した隙を見て逃亡する。追っ手から逃れ、暗黒の森を彷徨ううち、スノーホワイトは、悪の女王がよこした狩人エリックに出会う。もともとエリックは自分の妻を悪の女王に殺されている。スノーホワイトを殺さなければならない理由はない。エリックは、スノーホワイトが持つ 邪悪な怪物を手なずけてしまう不思議な力に魅了されていた。追っ手から逃れながら、狩人エリックとスノーホワイトは、森の7人の小人の力を借りながら、暗黒の森を脱出する。遂に、殺された王の家臣たちが避難している城に到着。スノーホワイトは 騎士たちを組織化する。そして、戦士の先頭に立って、悪の女王が立て篭もる城を攻めて、落城させ、ついに女王ラベンナとスノーホワイトとの一騎打ちとなって、、、。
というお話。

ここでは、スノーホワイトは、父の仇を討つ戦う女で、全然色っぽくない。王の腹心の息子だったウィリアムとは幼馴染で、互いに魅かれあっていたが、スノーホワイトはウィリアムなしで成長し、再び出会った後は共に闘い、自力で女王の地位を奪取する。
追っ手だった狩人エリックとは、暗黒の森を脱出するための協力相手で、妻を失ったエリックに心を寄せるが、しょせん彼は狩人。スノーホワイトは、男に頼らない。最後にケリをつけるのは、スノーホワイト自身だ。
現代版白雪姫では、女の価値は 顔の美しさや若さからくる華やかさではない。信念を貫く、自分を曲げない強さが女の美しさだ、と映画は語っている。と思う。

大流行した「トワイライト」シリーズで、ずっと吸血鬼に恋をした女を演じた、クリステイン スチュワートは、確かにこの世で一番美しい女ではないが、戦う女の役を好演している。
さて、この世で一番美しくなくては気の済まないシャーリー セロンの怪演、、これはピカイチだ。36歳。この世で一番美しいモデルだ。そして、この人の演技力は秀逸だ。悪の女王が 若い女の首根っこを押さえて口を開けさせる。そして、自分もアゴが外れるほど口をシャー、、と開け、若さを吸い取るシーンなど、おばけの映画よりも怖い。ボロボロの肌が ツルツルとして若い女の肌になり、一方、見る見るうちに若い女が老女になっていく。CG技術もここまでできるようになった。迫力がある。

ところで、シャーリー セロンが主演した2本の映画が どちらも素晴らしく良くて忘れられない。ひとつは 「スタンドアップ」2006年、原作「NORTH COUNTRY」、ゴールデン グローブ賞受賞作で、全米で話題になった、実際にあった訴訟事件。
シャーリー セロンの美しい顔が 酔って暴力をふるう夫のために、見るも無残なアザだらけの変形した顔になったところから映画が始まる。女が夫の暴行に耐えられなくなって、16歳の息子を連れてミネソタの炭鉱の街にある実家にたどり着く。やっと見つかった仕事は炭鉱現場。男と肩を並べて働こうとすると、仕事を女なんかに奪われたくない男達が、徹底して嫌がらせをする。ここまで卑劣なことをやるか、と信じられないほどの暴力とえげつない虐め。しかし、彼女は訴訟を起こして 会社と組合員を相手に闘い勝利する。男の職場、炭鉱で女が働ける場を確保した と言う意味で画期的な事件で、実際にあったことを映画化したもの。もう彼女のいじめられ方がものすごくて、観ていて 何度も悲鳴をあげそうになった。

もうひとつの映画は、「モンスター」。これでシャーリー セロンは、2004年のアカデミー主演女優賞を受賞した。2002年に、実際あった連続殺人事件、アイリーン ロノスという娼婦が7人の男を殺した事件を映画化したもの。セロンは10数キロ体重を増やして、入れ歯を入れて、顔にシミを沢山つけて連続殺人犯を熱演した。これも、男の暴力に耐えかねて、まともに生きようとしても どんなにあがいても暴力から逃れられない。殺すことによってしか生き延びられない哀れな女の役で、私をたっぷり泣かせてくれた。本当に良い映画だった。

「スタンドアップ」も、「モンスター」も、「スノーホワイト」でも、セロンは、ものすごく壊れた怖い顔になったが、実際の顔が ゆがみひとつ無い完璧に美しい人だから ひどい顔になる役ばかり楽々とできるのだろう。南アフリカ生まれ。16歳のとき、アル中だった実父を実母が銃で撃ち殺す。自己防衛で無罪になった母親の力で バレエダンサーを夢見てニューヨークに出てくるが、膝の故障で断念。このころ母親の細々とした仕送りで生活していた彼女が、銀行でお金を引き出せない と言われ泣き喚いているところを、映画人に認められて、ハリウッドで成功することになったという。
実生活の様々な体験が、自分を捨てて役になりきることを求められる役者の実力をつけるための栄養素になっているに違いない。自由自在に変化する美しい顔の中にも 物語がたくさん秘められている、魅力のある女優だ。