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2011年12月22日木曜日
映画「ミッション インポッシブル ゴーストプロトコル」
クリスマス正月休みは、家族や親しい友達と映画でも観て ゆっくりしたいと思う人は多いだろう。そんなときに観る映画は 豪華にたっぷりお金や人手をかけて作られた大型映画に限る。
トム クルーズの新作「ミッション インポッシブル ゴースト プロトコル」は それにうってつけのゴージャスな映画だ。トム クルーズって50になる、おじさんでしょう、1980年代の映画の人じゃない、などと言うなかれ。実はわたしも この人のことはすっかり忘れかけていたが、この映画を観て すっかり見直した。
やっぱりトム クルーズは ハリウッドの中心、メジャーなスターなのでした。たまたま2,3本主役をやって ちょっとの間 持てはやされて消えていく小粒のスターとは ひと味もふた味も違う。
彼は 単なる役者ではなく、主演もプロデュースも行う。普通、映画界では監督は神様のように偉くて、役者をオーデイションで選んだり、テストをして落としたりするが、トム クルーズの場合は自分が監督を選ぶ立場にある。
というわけで、第4作目のミッション インポッシブルは監督ブラッド バードがトム クルーズによって選ばれた。
ピクサー映画の「ミスターインクレデイブル」(2004)と「レミーのおいしいレストラン」(2007)で2度もアカデミー賞長編アニメ賞を受賞した監督。受賞作は二つともデイズニーアニメと違っておもしろかった。「レミーのおいしいレストラン」では、レストラン街に住みついていて、すっかりグルメの舌をもったネズミと おちこぼれシェフとの友情物語で、笑わせてホロリと泣かせもする よく出来た映画だった。
ミッション インポッシブルは 米国極秘スパイ組織IMFのエージェント、イサン ハンド(トム クルーズ)のスパイ映画。前作2つはシドニーで撮影された。ラペローズという美しい岬の近くに16年前は住んでいたが、そこが撮影舞台になって 自分が毎日 車を転がしているところを、トム クルーズが大真面目な顔でバイクで疾走するシーンなど、ちょっと笑ったけれど、興味深かった。シリーズ4作の中で、これが一番良い。
今回の「ゴースト プロトコール」では 一番の悪役、核兵器テロリストを、スウェーデンの高倉健というか、渡辺謙のマイケル ニクビストが 演じた。スウェーデン映画で大人気を得た「ミレニアム ドラゴンタットーの女」、「火と戯れる女」、「眠れる女と狂卓の騎士」3部作で、主役のジャーナリストを演じた人だ。さすがスウェーデン映画を代表する主演男優、ハリウッド映画に出てきても堂々として立派だ。
ストーリーは
ブタペストの刑務所に潜伏、服役していたイサン ハントがIMFの仲間のよって脱獄に成功。次の新しい仕事は クレムリンに潜入して核兵器に関する最新の情報を盗み出して破壊することだった。
3人のチームを組んで、首尾よくクレムリンの情報室に侵入するが、すでに破壊すべき情報は 何物かによって盗まれていて、作戦は失敗。辛うじてチームは追手の逃れてクレムリンから脱出するが、その瞬間、クレムリンが爆破される。おびただしい死傷者が出て、ハント自身も大怪我を負い病院に収容される。IMFは自分達がクレムリンの爆破犯人にされることを恐れて、ハントたちのチームを「ゴーストプロトコール」によって、IMFとは全然関係がないとして、抹消する。ハントたちは 爆破犯人を捕らえて、自分達の容疑を晴らさなければ、生き延びることができなくなった。
ハントはクレムリンを脱出する直前に爆破犯人とすれ違っていた。彼は核兵器テロリストだった。ロシア警察の追手から逃げながら、ハントのチームは真犯人を追って、モスクワ、ドバイ、ムンバイと移動する。次の 核兵器テロリストのターゲット、米国への核弾頭発射を阻止すべく チームは奔走する。
というお話。
ナポレオン ソロが同じテーマソングでテレビシリーズのミッション インポッシブルを放映していた頃から このシリーズの面白さは スパイの使う武器や小道具の数々だった。
ハントがクレムリンに忍び込むときは ロシア軍将校の制服だが、逃げる時は 制服を裏返すと みごとにフードつきのジャンパーに取って代わる。世界一高い ドバイのビルデイングの130階から 外のガラスの壁に手袋だけで吸い付いて、ぶら下がったりするハイテク手袋。走っている車のフロントグラスに、手をかざすと携帯電話から地図が移ってきて、それを見ながら敵を追うことができたり、さびれた街角の壊れた電話器とか、貨物列車が IMFの司令塔だったり、コンタクトレンズを装着すると 変装していても人を見分けることが出来たりする。コンタクトレンズが、コピーマシンになっていて、文書を読むそばから コピーが送られて行くハイテクコンタクトレンズは 意表をついていておもしろかった。
スパイの使う武器や道具類を軽快な音楽と共に、トム クルーズが、息もつかずにものすごい速さで使いこなすところが、見ていてハラハラドキドキ おもしろい。スパイが使う、こうしたハイテクな道具類を 思わせぶりに じっくり見せながらスローテンポでやって見せたら 嫌味なミスタービーンみたいで、ただの喜劇になってしまう。
追われながら、一刻の猶予もないところで トム クルーズがボールペンで 手のひらにササッと 男の似顔絵を描いてみせ「これ 誰だ?」と聞くと、即座にどこそこの核兵器研究所の誰とかで、その人の経歴までスラスラと 仲間のメンバーが答えてくれる。そんなことは、あり得ないと思うが、映画を見ている時は 完全にスパイ映画の興奮とテンポの早さに巻き込まれているから 疑問に思う暇などない。何でも信じてしまう。
トムが100メートル以上ある高さのカーパークから 車ごとしたに飛び降りたり、大怪我をした身でビルから走っているトラックの屋根に飛び降りたり、川に車ごと落ちて銃弾を浴びせられても 長い間息をせずに潜っていられたり、もう、普通の人だったら20回くらい死んでいるところが、しかし、なんと言ってもトム クルーズだ。絶対に死なない。頭脳明晰で強い男も代表。核弾頭もいったん発射されたが、阻止ボタンを押した為、大事に至らずに済んだ。核爆発は防げてもシェルだけでもハドソン河に落ちたのだったら それなりに結構な被害が出ていたはずなのに、これも、何といってもトム クルーズだ。彼が作戦を成功に導いて 被害など、なかったことになってしまう。そしてそれを皆が信じてしまう。大した娯楽作品なのだ。
昔はスパイものというと、悪人はいつもロシアで、正義はアメリカだった。今回、悪い核兵器テロリストというのが、ロシア人でもアメリカ人でもアラビア人でもパキスタン人でもなく、アルカイダでもヒズボラでもない。資本主義の物質至上主義の社会で、欲にかられた大富豪の資金をもとに、個人が仕掛けたテロだった というところが この時代の世相を反映している。
何の役にも立たないのだけど、痛快で面白い。この映画、一見の価値がある。