8月11日
3時間ほど父のそばを離れる。そんなときほど 何かあるのではないか、いやな予感に脅えながら 父のホームに向かう。
帰国して、成田から病院に直行したので 父が住んでいたホームから 自分の着替えや 読むものを持ってきたい。病室に父を残して 病院発の船橋法典行きのバスに乗る。イトーヨーカ堂で買い物をしてホームに着いたとたんに 父の急変の連絡が入る、逸る気持ちでタクシーに飛び乗って病院にもどる。
モニターをつけているが、血中酸素量が下降したので、婦長が家族全員を呼んだ。見たところ 呼吸状態も意識状態も2日前と変わらない。
しかし肺のエックスレイ写真を 2日前のものと比べて見ると歴然たる違い。肺葉のすべてに白い影が広がっており、ほんのわずかの隙間しか 残っていない。医師に改めて「危篤状態です」と言われる。
呼びかければ父は返事をし、笑顔を見せ、強く手を握りかえしてくれる。兄夫婦は夕方帰宅するが、姉夫婦は病院近くの父のホームに泊まることにする。
父の横で眠るようになって3晩目。食事は兄や姉が来る途中、コンビにで買ってきてくれるおにぎりや果物など。それが食べきれず たまっていく。
昼間は良いが、夜間、痰がたくさん出て 吸引してもらわなければ窒息してしまうので、夜が父にとって とても辛い。鎮痛剤を入れてもらって 父の眠りが少しだけ深くなり 多少心が休まる。
父と同じ呼吸をする。父が吸い。父が吐く空気を 吸って吐く。父の匂いのする枕に ほほをつけて、まどろむ。強く厳しかった父が こうして年をとり、弱くなって優しくなる。 そんな「お父さんをひとりじめ」