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2011年5月20日金曜日

映画 「恋人たちのパレード」




アメリカ映画「WATER FOR ELEPHANTS」、邦題「恋人たちのパレード」を観た。
原作サラ グルエンによる小説「サーカス象に水を」を映画化したもの。アメリカ映画。
監督:フランシス ローレンス
キャスト
サーカス団長 オーグスト:クリストフ ワルツ
サーカスの花形 マレーナ:リース ウィザスプーン
獣医学部学生 ヤコブ    :ロバート パテインソン

ストーリーは
1931年、アメリカは 未曾有の不景気に見舞われていた。
ヤコブは 実業家の一人息子で 大学で獣医学を学んでいる。東欧からの移民だったヤコブの父親は 自分の事業を起こして大恐慌の中でも、なんとか中流の生活を維持していた。
ところが ある日突然 両親が車の事故で亡くなる。担保に入っていた会社は銀行に取られ、住んでいた家からもヤコブは追われる。大学卒業を目前にしながら ヤコブは文字通り 路頭に迷うことになる。突然、両親を失った悲しみに浸る余裕もないまま、土地を追われ、ヤコブは仕事を探しに街に出ようと決意する。

ヤコブが飛び乗った貨物列車は、サーカス一座が移動する列車だった。一文無しのヤコブは 雇ってもらいたいばかりに、サーカス団員に混ざって動物達の世話をさせてもらう。動物の糞尿にまみれて 団員達と一緒に働くうち、ヤコブは すぐに美しいサーカスの花形マレーナに 心を奪われる。彼女は 団長の妻だった。
しばらくして ヤコブはやっと団長、オーグストの目にとまり 紹介されることになった。ヤコブは 自分は獣医だと名乗り 正式に雇ってもらうことになった。
しかし団長は酒癖が悪く、飲みだすと冷酷なサデイストになる。芸を教えても なかなか思い通りにならない動物に対して 厳しく鞭で芸を強制する。芸をする動物達と 心を通わせているヤコブには それはつらいことだった。マレーナは夫が暴力を振るうようになると、じっと夫の嵐が過ぎるまで待っている。しかし、ヤコブは団長がマレーネにまで暴力的になるのが許せなかった。ヤコブは益々、マレーネを慕うようになる。

サーカス団に新しい動物、象が加わることになった。ヤコブは、この象を飼いならして マレーネが象使いとしてステージにたてるように調教する役を命じられる。象を扱いながら ヤコブとマレーネの間には特別な感情が芽生え始める。

ある日 団長に逆らったヤコブは 団長の怒りを買い殺されそうになる。マレーネは機転をきかせてヤコブを走る列車から逃がそうとする。その土壇場でヤコブはマレーネに 愛を告白してマレーネを抱いたまま 列車から飛び降りて、サーカス団から逃亡する。しかし、団長と彼のお抱えガードマン達は二人を追って、、、。
というお話。

これはラブストーリーだから、ロバート パテインソンとリーズ ウィザスプーンの二人が主役だが、三角関係で捨てられる方のサデイストのクリスト ワルツが断然輝いている。役者としての格がちがう。実に演技が上手で この人、とくに冷酷で血も涙もない男の役をやると輝きが増す。キラリと目が光り サドになる瞬間の表情など迫力があって他の人にまねできない。切れ味の良いナイフのようだ。
この役者、ブラッド ピットの「イングロリアス バスタード」でもサデイストのナチの将校をやって 82回 アカデミー助演男優賞を取った。この人が 普通の顔で日常会話をしている時が とても怖い。笑いながら どんなことでも冷酷なことができるからだ。ナチの将校役で英語もドイツ語もイタリア語も使っていたが、このオーストリア人役者は 実際5ヶ国語を自由自在に使えるそうだ。53歳。とても良い役者だ。若いときのピーター オツールのように見えるときがある。

主役のロバート パデインソンは 吸血鬼なのに人間を愛してしまう映画「トワイライト」シリーズで人気者になった。それなりに役をやっているが、どうしてもこの人の顔が好きになれない。だから「トワイライト」は どれも見なかった。

リース ウィザスプーンが、とても可愛い。サーカスの花形で、走る馬の上で立ったり、馬を 床に寝そべらせて その上に乗ったり、象に乗って行進したり 二本足で立たせたり 芸をさせて、本当のサーカス団員のようだ。本人も動物が大好きだそうだ。そうでなければ とてもできない役だ。シャープなアゴの線と大きな目、、、いくつになってもとても美しい女優だ。ロバート パデンソンと10歳くらい年が違うが、そんなに見えない。気が強くて気性が激しいが、案外もろいところのある女の役のぴったり。

話の筋は単純。
総じて役者では クリスト ワルツとリース ウィザスプーンが良かったが、しかし、何と言っても一番素晴らしい役者だったのは、42歳の象TAIだ。打たれて、うちしおれて哀しがったり、2本足でらくらく立ってみたり、音楽に合わせてステップを踏んだり、とてもよく訓練されている。鼻でコミュニケーションをとったりするところも 可愛くて微笑ましい。

野生動物を群れから離して、芸を憶えさせることは 動物の意志に反しているから 動物虐待ともいえる。サーカスではもう動物を使わなくなった。それでもなお、TAIは素晴らしい。畑正憲 ムツゴロウ先生も言っているが、象は最も知恵の高い動物だそうだ。
象が主役のラブストーリー。象が好きな人は 観て楽しい。