ページ

2011年2月9日水曜日

ラリアは夏のまっさかり




エルニーニョではなくて、ラニーニャ現象なのだという。
このひと月 オーストラリア大陸の東部と南部が 大規模な豪雨と洪水とサイクロンに見舞われた。
そのために 面積でいうと、クイーンズランド州の4分の3、ヴィクトリア州の3分の1が水に浸かった。石炭、農業、牧畜などの産業に被害が出ただけでなく 電気電話網 水道下水道、ガスなどすべての生活のための基盤が破壊された。

被害総額が この国のGDPの半分に当たる というのだから 国民が1年間で稼いだ分の半分を 雨でもっていかれてしまったことになる。国の基盤が そんなに脆弱なものだったのか と唖然とする。
ラリアは農業国として産業基盤ができていて、豊富な地下資源に恵まれて ラッキーカウントリーといわれ、中国インドという購買者にも恵まれて 景気も悪くなかった。失業者率も 5%代で先進国のなかでも最も低く保っている。
それが自然災害による被害額が大きすぎるので 政府の予算を切り詰めた上で、新しい「洪水税」を国民に強制することになりそうだ。洪水税:フラッド タックスという耳新しい税金。デザスター ファンド(災害基金)と言われれば、そんなもの どうして今まで ちゃんと積み上げていなかったのか、と怒る気にもなる。それでなくてもサラリーの30%余りを税金で持っていかれているのに、それが増えることになる。
なんか、割り切れないけど、批判すると 被害者に対して人でなしのようで、、、。

今回の洪水で大被害を被った 訳だけれど、つくずくこの国は 大きな国だ、と思えるのは、スーパーに行ったときだ。新鮮な野菜や夏の果物がどっさり陳列されている。クイーンズランドのオレンジがなくても他から調達できるので、スーパーにいると 洪水など まるでなかったよう。テレビニュースでクイーンズランドのバナナ園全滅の無残な様子を見ているのに、家から5分ほど行った店では バナナをキロ3ドルで買うことが出来る。全く値上がりしていない。

今の時期、ラリアの夏の果物は 最高の時期だ。白桃、黄桃、サクランボ、白ネクタリン、黄ネクタリン、西瓜、赤葡萄、マスカット、マンゴー、オレンジ、メロン パパイヤ、アボガド どれも陽をあびて とても甘くなる時期。今年は冬と春に雨に恵まれて、陽に恵まれて 白桃と白ネクタリンがとびきり美味しい。

オージーのオットと暮らすようになって、驚ろかされることが多かったが、オットが美味しそうに 皮のまま白桃にかぶりついているのを初めて見たときは びっくりした。皮のままのほうが 果物はなんでも美味しいそうだ。オットばかりでなく オージーはみな 桃を食べるのに皮など剥かない。いまでもわたしは白桃を皮つきで食べられないが ネクタリンなら皮つきのほうが美味しいと思えるようになった。葡萄も勿論 粒の大きさに限らず皮のままで、美味しい。
オットにとっては パパイヤが日常不可欠。1年365日 365個のパパイヤを朝食で食べる。オットと暮らして15年、5475個のパパイヤが消費されるところを 目撃したことになる。一年中ラリアのどこかしらでパパイヤが収穫され 価格も低いこの国だからこそ出来ることだろう。夏の短いヨーロッパなどだったら破産している。

今年のサクランボは 甘みがあって、大粒でとても美味しい。今朝食べたのは 直系3センチもあった。気を許して食べ過ぎると 舌だけでなく歯まで赤く染まってしまう深紅のサクランボだ。

三島由紀夫の「午後の曳航」という耽美的な小説がある。
神戸で貿易商を営む美しい未亡人に 粗野で男気のある航海士が恋をする。未亡人が 男の前でアイスクリームを食べ、添えてあるサクランボを口に含み、タネをそっと器の隅に出すと 男は突拍子もなく それをわし摑みして飲み込んでしまう。美しい女に対して どんな言葉で せつない恋心を伝えてよいかわからない男の激情が なせる業だった。びっくりして無邪気に笑う女を見て 男は前にも増して 女を愛してしまう。
とても美しいシーンだ。

サクランボは 空輸されて いまごろ日本のスーパーでも売っているはず。ことしのサクランボは大粒で実が柔らかくて甘いので 試して食べてみて欲しい。日本の上品なサクランボと違って、すぐ悪くなってしまうので、今日食べる分だけを どうぞ。

写真は
キロ$13.96のサクランボ
キロ$3.96の白桃
キロ$3.96の黄桃