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2010年12月2日木曜日
2010年 読んだ漫画のベストテン
今年の5月に 2010年上半期に読んだ 「漫画のベスト10」を書いた。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1493916928&owner_id=5059993
今年も、もうお仕舞いに近付いたので、今年読んだ漫画190冊余りのうちの ベストテンをあげてみたい。
ちばてつやの「明日のジョー」で育った。日本を離れて長いので、日本の本が なかなか手に入らない。しばらく漫画から遠のいていたが、「デスノート」と「20世紀少年」、「モンスター」で、漫画の世界に戻ってきた。人間が描かれている。日本の漫画は世界に誇る文化だと思う。
第1位:バガボンド 1-33巻 継続中 井上雄彦
第2位:リアル 1-4巻 継続中 井上雄彦
第3位:聖おにいさん1-5巻 継続中 中村光
第4位:竹光侍 1-8巻 完結 松本大洋
第5位:宇宙兄弟 1-11巻 継続中 小山宙哉
第6位:神の雫 1-25巻 継続中 オキモトシュウ
第7位:ちはやふる1-10巻 継続中 末次由紀
第8位:リアルクローズ1-10巻 槙村さとる
第9位:きのう何食べた 1-3巻 継続中よしながふみ
第10位:海猿 1-12巻 完結 佐藤秀峰
第1位:バガボンドと 第2位:リアル
何が何でも 漫画では井上雄彦の絵が好きだ。「スラムダンク」、「BUZZER BEATER」のあと、 「バガボンド」を読んできたが、絵の美しさ、線のシャープな鋭さ、会話の間の取り方のうまさ、ストーリーの展開の広げ方、そして内容、すべてが好きだ。
宮本武蔵をとりまく人々まで、ひとりひとりが人間として描かれていて、いとしくなる。登場人物すべてが 正しい道を探し求めて生きる 求道者のような 真摯な態度が心を打つ。技術や小手先で 絵を描いていない。全身全霊をこめて描いている井上の姿が 作品を通して見えてくる。本当に得がたい作者だと思う。
第3位:中村光の「聖おにいさん」は おかしさで秀逸。仏教開祖のゴーダマシッダルタと、キリスト教のイエスとが 下界に降誕して日本文化の中で共同生活するから、やることなすことが すべて笑えて仕方がない。その笑いに 皮肉や悪意が全くない。邪気もない毒もない、無邪気な笑いだけがあって、それが心地良い。今までにない とてもすぐれた漫画だ。
第4位:松本大洋の「竹光侍」は 竹ペンで描かれたそうだが、線がシャープで美しい。他の松本大洋の作品のような ペシミズムもニヒリズムも痛みもなくて、安心して楽しめる。ストーリーも好きだ。
第5位:小山宙哉の「宇宙兄弟」は 優秀な弟をもった おちこぼれ兄が いろんな事を考えながら 試練にたち向かっていくところが良い。兄は 間違いなくヒーローではないから 読者は自分自身を投影して見ることができるし 共感しながら読める。多少、日本人的センチメンタリズムに陥りすぎて、浪花節お涙頂戴が 目につき始めた。アメリカのNASAでは通じないと思う。これからはもっとドライに話を進めてもらいたい。
第6位:「神の雫」では、神咲雫の性格が好きだ。心が真っ直ぐで 親に死なれ 家を失い 仕事で苦労しても 心が折れない。子供の時にしっかり 豊かな愛情をもって育てられた子供は 大人になって多少試練にあっても真っ直ぐ前を歩んでいくことが出来る ということを実証しているようだ。ひとつのことに夢中になれることの 素晴らしさを教えてくれる。ワインのひとつひとつの味わいの表現が 多様でおもしろい。新しい味覚の発見をした。同じワインを飲んでみても、全然 神咲雫の表現に共感できなかったのが 残念なのだけれども。
第7位:末次由紀の「ちはやふる」では、綾瀬千早の かるたへの熱中ぶりが可愛い。小学校6年で会った初恋の 綿矢新に言われた「かるたで日本一になるということは世界一になることだ」という言葉に誘われて かるた一筋に前に進んでいく。一生懸命の姿が 美しい。
第8位:「リアルクローズ」では デパートマンの仕事ぶり、服を売るということの 知らなかった世界ばかりを見せてくれて とてもおもしろかった。物を買い付けて 付加価値をつけて売るという社会のしくみに、自分がいかに無知だったか 思い知らされた。
「つまらないものを着ていると つまらない一生になるわよ。」とか、「中身が見た目ににじみ出ちゃうの。だから人は見た目でわかるの。」とか、「洋服は本来オーダーメイドのものです。レデイーメイドの服とはつまり誰にもフィットしない服です。」などという台詞で 天野絹江と一緒に 服について学ぶことが多かった。
第9位:よしながふみの「きのう何食べた」は、二人の男の関係の優しさと、料理の多様さがおもしろい。お母さんが作ると当たり前の きんぴらごぼうや胡麻和えが イケメンの弁護士が、背広にエプロンかけて料理する意外性がうまい。
第10位:佐藤秀峰の「海猿」は海上保安庁という 全然知らない世界を見せてくれた。巡視船での救命活動、マラッカ海峡での海賊退治、飛行機の海上着陸 60メートルの海底探索などなど。ストーリーがおもしろいが この人の描く絵が 大嫌いだ。この漫画が人気になって、映画化されたが、映画のほうが100倍も良かった。
今年も漫画をたくさん読んだ。
今年のベストテンに、浦沢直樹の漫画が出てこない。去年と一昨年は「マスターキートン」、「20世紀少年」で、感心して、「モンスター」で 心を奪われた。それで、彼の作品を全部読んでみたくなって、集めた。「ハッピー」全12巻、「YAWARA」残29巻、「プルート」も、読んだが やはり、彼の作品では 去年読んだ「モンスター」が 一番好きだ。それに勝るものがない。なので、今年のベストテンに彼の漫画がない。
2010年の漫画大賞を受賞した「テルマエ ロマエ」が とびぬけておもしろかったので 上半期のベストテンの第3位にしたが、2巻は おもしろくなかった。残念だ。
大畑健の「BAKUMAN」を読んだ。漫画が大好きで高校生のうちから漫画家をめざす二人の男の子のお話だ。しかし、ストーリーのおもしろさよりも、こんなに若い人たちが 競って 漫画界でしのぎを削っていることに 目が行ってしまった。人生経験の浅い若い人が 小手先の技術と、ちょっとしたセンスで漫画を描いて売る姿は 健康的ではない。
それと若い女性の漫画家が テレビタレントのように人気ランク化されていることも初めて知って驚いた。漫画家の外見やタレント性よりも、作品が大事だと思うが。
「リアルクローズ」や、「働きマン」で、女性が なりふりかまわず社会で活躍する漫画が増えてきた。にも拘らず、女性の活躍する様子に現実感がない。女性首相、女性州知事、女性市長の組織の中で当たり前に生活していると、日本の女性は まだ立ち遅れていると感じる。
可愛いぶる女には もう飽き飽きしている。日本でも 漫画より現実の方が、先を行っているのかもしれない。もっと現実の競争社会で働いて 生き抜いてきた女性のタフネスと優しさを描いた漫画が 出てきても良いころではないだろうか。