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2010年11月16日火曜日

映画「ソーシャルネットワーク」 フェイスブック



ベン メズリックの「フェイスブック世界最大のSNSでビルゲイツに迫る男」という長いタイトルの ノンフィクション「THE ACCIDENTAL BILLIONAIRES」を映画化したもの。映画「ゾーデイヤック」、「ベンジャミンバトン数奇な人生」を作った フィンチャー監督による作品。
フェイスブックを創設したマーク ザッカーバーグが 19歳でソーシャルネットワークを作るところから、現在にいたるまでの道のりを映画化したもの。
弱冠26歳の現在活躍している青年が、わずか6年のあいだに 史上最年少で億万長者になった過程を描いた作品。

アメリカ映画
監督:デヴィッド フィンチャー

キャスト
マーク ザッカーバーグ   :ジェシー アイゼンバーグ
エドワルド サリヴァン   :アンドリュー ガーフィールド
ショーン パーカー     :ジャステイン テインバーレイク
キャメロン ウィンクルボス :アーニー ハーマー
クリステイ リー      :ブレンダ ソング
マリリン デプリー     :ラシダ ジョンズ
ダステイン モスコヴィツ  :ジョセフ マゼロ
マーテイン ターナー    :マックス ミンゲラ

ハーバート大学の秀才達が 続々と出てきて みな早口でしゃべりまくる。言っていることの内容もすごいが、頭の回転が速いだけでなく そろってイケメン。この映画 ハーバードの回し者ではないかと思うほど「さすが ハーバード すごい!」と思わせる。優れた秀才のいるところには 秀才達が集まる。歴史のある古い校舎、立派な図書館、校内のパブ、質素な寄宿舎、レガッタ競技、ボールダンス、学長の権威主義と俗物性、学食、上級生の下級生いじめ、などなど大学生活の様子が次々と出てきて 興味深い。歴史ある大学の校風がとてもイギリス的だ。大学とは学問の府、若い人たちが 本気で学び生活する場なのだということがよくわかる。

出演者の全員が 並みの人の3倍の速さと 3倍のボキャブラリーの数々を駆使して会話しているので 大学生の雰囲気も本物っぽい。ちなみにマークが最後に自分のPCでポチンとキーをたたいて「友達」にする弁護士の女性ラシータ ジョーンズは 実際ハーバード出身だそうだ。
映画として、よくできている。映像は美しく、監督が自由自在に役者を動かし操作している。せりふが多いので どの役者もものすごい厚さの台本と格闘したことだろう。じつにハーバードっぽい雰囲気を 監督も役者たちも脚本家もこなしている。とても完成度の高い映画だ。

ラリアの国営ABCテレビで、新作映画を二人の評論家が紹介する番組がある。マーガレットとデヴィッドという年配の評論家が 互いの意見をぶつけ合う様子がおかしくて 何十年も続いている人気番組。辛口の批評が多く、新作で公開直前なのに「こんな映画は見るに値しない」と断じる作品も出てきて おもしろい。その二人が この映画に5点満点をつけたので、びっくりした。ミヤザキ ハヤオの「ポニョ」以来のことだ。めったにない。
実際、映画を観てみて、なるほど と思った。

ストーリーは
マーク ザッカーバーグと同級生の女の子は 学生ホールで話をしている。彼女は 話をきちんと聞こうとせず、自分の知識や考えを矢継ぎ早に披露するマークの態度に怒って 絶交を言い渡す。
そこで ひとり寮に戻ったマークは 腹いせに PCで彼女を始めとする同級の女子学生全員に関する個人情報を公表する。名前や出身、あだ名やサイズまで公表されて、女子学生たちは人気投票のえじきとなった。マークのやったことは男子学生たちを 大喜びさせ ハーバード校のなかで注目をあびることになる。
マークと親友のエドワルドは 双子のウィングルボス兄弟と出会う。兄弟はマークがやったような技術を使って 友達作りのネットワークを作る というアイデアを持っていた。メイルアドレスをもっている人同士が ネット上で次々と友達となり その環を広げていくことができる。そんなつながりをマークは エドワルドやウィンクルボスと 協力して 大学で組織作りしていく。そんなネットワークが大学の新聞で話題になったところで、マークとエドワルドに ナップスターの創始者 ショーン パーカーから招待状が届く。

マークとエドワルドが会いにいってみると、ショーン パーカーは 派手に女遊びをして、お金を湯水のように使いながら、PCの可能性について 次々と話を一方的にまくしたてる。エドワルドは ショーンを ただの誇大妄想の精神分裂症患者としか思えずに嫌悪するが、マークはショーンの生活態度や俗物性に、惹かれていた。
そしてマークは大学を離れ、エドワルドにもウィンクルボス兄弟にも言わずに フェイスブックをショーンの会社に売り渡し、その経営に関わっていく。裏切られたエドワルドは深く傷つき、双子のウィンクルボス兄弟もアイデアを盗まれた、として訴訟を起こす。訴えられたマークは、、、
というお話。

脚本を書いた49歳のアーロン ソーキンは この映画は 「友情と裏切り、嫉妬と忠誠心を描いた人間ドラマだ」 と言っている。
マークひとりが自分では予想も期待もしていなかったのに フェイスブックによって一挙に億万長者になって 現代のヒーローになったことを私たちは知っていたが、実はこんなアイデアや そこに至る道でハーバードの学生達が知恵を出し合い 友情や信頼がフェイスブックを育ててきたのだ、ということがわかる。利益を独り占めしたマークは後に エドワルドやウィンクルボス兄弟に 和解金を払うが、彼にはハーバード精神や その中で培われてきた友情や信頼は失われ、2度と回復することはできなかった。映画では、一人の天才の孤独な姿が その無表情の裏に、よく表されている。現役で活躍する26歳の青年を通じてハーバード大学の校風や青年達の姿が生き生きとと描かれている。優れた人間ドラマだ。映画としてとても完成度の高い よく出来た映画だ。

ハーバードの生徒会長に立候補するウィンクルボスは マークの裏切りにあって 兄弟や他の友人達が訴訟を起こそうとしても、断固として反対して「否、ハーバードの学生はハーバードの身内を訴えたりしない。」と言い切る。選ばれた紳士の模範、ここにあり という感じで ほれぼれする。一人で双子役を演じ、立派な好青年の代表選手をそつなく演じている。実際のウィンクルボス兄弟は ボート競技で北京オリンピックに、アメリカを代表して出場した。頭が良く スポーツも出来る立派な青年紳士達だ。

ナップスターの創始者、ショーン パーカーを演じたジャステイン テインバーレイクは 6つのグラミー賞やエミー賞をとった 有名なシンガーソングライターだったと、娘から後から聞いて知った。映画では憎まれ役だが、頭が良いのがよくわかる。そんな人とは知らなかった。若い人とは話をするものだ。年寄りは知らずに通り過ぎ、知らずに老いて行く。若い人たちから学ぶことは無限にある。PCもフェイスブックもツイッターもIPADも、、、限りない。

フェイスブック加入者は5億人を軽く突破した。
毎日何気ない会話をフェイスブックで様々な人たちと交し合う。権威ある親がいて兄弟 親戚 祖父母かいるといった大家族を中心にした社会は崩壊した。子供を中心とした核家族さえ もう確かではない。家族のない社会で 何かを書き込めば 必ずどこかの誰かがPCで読んでいて 返事や答えを書きこんでくれるフェイスブックは 現代の人々を孤独を救う家族の代理のようなものだろう。
東京生まれの娘達は 沖縄、レイテ島、マニラ、シドニーと移動して生活してきた。インターナショナルスクールで育ったので 友達は世界中に広がって散らばっている。フェイスブックは そんな彼女達にとって、なくてなならないネットワークだ。

ネットワークは 最新医療の知識を僻地で受け取ることもできる。
ロシアで またジャーナリストが殺された。政府の汚職とチェチェン反政府運動に関わっていたジャーナリストだった。中国では ノーベル文学賞を受賞した作家が拘束 収監されて、その妻の自宅拘禁になっている。フェイスブックや ツイッターは こういった人権に関わる運動に 今後大きく貢献することになるだろう。
とても良い映画だ。観る価値はある。