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2010年2月20日土曜日
オペラ オーストラリア「椿姫」
今年のオペラ オーストラリアは「椿姫」(LA TRAVIATA)で開幕した。1853年、ヴェルデイ 作曲。オペラの中で 最も人気のあるオペラのひとつだ。
イタリア語で歌われ、オペラ オーストラリアでは 英語の字幕が舞台上につく。原作はアレクサンドラ デュマの小説で、この芝居を観て感激したヴェルデイが オペラにした と言われている。
原作の 「ラ トラヴィアータ」とは、「堕落した女」という意味。高級娼婦 ヴィオレッタが 純愛に苦しみながら死んでいくお話。ヴィオレッタが愛したのは、白い椿の花だ。マリア カラスが最も得意としたオペラなので、彼女が歌うヴィオレッタが、いくつもCDやDVDになっている。
映画「プリテイーウーマン」で、ジュリア ロバートが リチャード ギアと小型飛行機でサンフランシスコに飛んで このオペラを観て、感激きわまり つい自分を抑えられず「すっごく良かった 感激してオシッコちびっちゃうとこだったよ。」と言って、となりの席の上品なおばあさんが卒倒しそうになる。このおかしいシーンを 日本ではどんな風に日本語訳したのか 日本でこの映画を観ていないのでわからないのが残念。観客がどっと大笑いするところを 上手に日本語字幕つける人も プロながら、大変な仕事だと思う。
話はそれるが、ブラッド ピット主演、クエンテイン タランテイーノ監督の「イングロリアス バスターズ」も、原題「INGLOURIOUS BASTERS」で、本来 「ならずも」のという意味のBASTARSが、BASTERSになっていて、「不名誉」という意の INGROURIOUSも、はじめのころは、INGLORIUSになっていた。あきらかに、スペル ミスだが、わざと誤字をタイトルにする ひねこびたのタランテイーノの性格を よく表しているのだけど、ここのところは、気がつく人は気がつくが、わからない人はわからない。それだけに 気がついた人には おかしさが増すところだ。
ついでに言うと また話がそれるが ウィル スミス主演の「幸せのちから」も、原題は「PURSUIT HAPPYNESS」という。直訳だと 「幸せを買う」という意味だが、HAPPYの名詞は、HAPPINESS。ここでHAPPYNESSと、わざと ミス スペリングになっているのは 映画の中で、彼が住むスラムの壁に落書きしてあった 誤字をウィル スミスが見て、こんなところで息子を育てたくない と、肩を落とすシーンからきている。これも題名をみて わかる人にわかる おもしろさがある。
「椿姫」のストーリーは
第一幕
男爵をパトロンにもつ高級娼婦ヴィオレッタは パリ社交界で 男達からもてはやされる 美しい大輪の花だ。チヤホヤされて、有頂天のヴィオレッタ。そこに、若いアルフレッドが、やってきて真剣に愛を告白する。ヴィオレッタは笑って相手にしないが、それでいていつになく胸がときめく自分に気がついていた。
第2幕
パリから離れた田舎 秘密の隠れ家で アルフレッドとヴィオレッタは 二人仲むつまじく暮らしている。世間知らずのアルフレッドは 田舎暮らしをするためにヴィオレッタが宝石や家具を売ってお金を工面していることを知らなかったが 女中から知らされて あわてて金策のためにパリに向かう。
アルフレッドが留守のあいだにヴィオレッタの前に現れたのは、アルフレッドの父親だった。家を出て、娼婦だったヴィオレッタと秘密の愛の巣にいる息子が一家の恥だ。アルフレッドが今の生活を精算して家に戻らなければ 娘の縁談が壊れてしまう。若く将来のある息子を返して欲しい と父親はヴェオレッタに懇願する。ヴィオレッタは、初めて本当の愛を見つけたところなのに アルフレッドの為に別れなければならない。悲嘆にくれるが、アルフレッドのためにはどんな辛いことでも耐えようと決意する。
ヴィオレッタは手紙を残して 姿を消す。
パリの社交界に戻ったヴィオレッタは、パトロンの男爵とよりを戻して楽しくやっている。そこに、嫉妬に狂ったアルフレッドが乗り込んできて、ヴィオレッタを衆人の前で罵倒 愚弄する。怒った男爵は、アルフレッドに決闘を申し込む。
第3幕
すでに、結核に蝕まれたヴィオレッタの命は消えかかっている。死ぬ前に もう一度アルフレッドに会いたいと 望んではならぬ夢をみているヴィオレッタ。医師はもう数時間しかもたないだろう と言い渡すが 生きる希望を失ったヴィオレッタには、死など怖くない。
そこに、アルフレッドが父親とともにかけつける。父親の告白によって、ヴィオレッタが姿を消したのは、心変わりからではなかったことがわかったからだった。真実の愛を誓い合うヴィオレッタとアルフレッドの前で父親は深く頭をたれて謝罪する。しかし 時すでに遅く ヴィオレッタはアルフレッドに抱かれて死んでいく。
というおはなし。
私が一番好きなシーンは 父親に懇願されて ヴィオレッタがアルフレッドと別れる決意するところだ。初めて手にした真実の愛に自分から背を向けなければならないことがわかって、すすり泣き、嘆き、憎み、怒り、悲嘆にくれる。マリア カラスが歌う ここの 父親との長いシーンだけのCDがある。本当に悲しみをかかえて絶望の底に落ちる彼女の嘆息には、思わず泣かずにいられない。
今回の公演で、ヴィオレッタを歌ったのは、ELVIRA FATYKHOVA。ロシア人のソプラノ、なかなか良かった。
アルフレッドの ALDO DI TOROのテノールも良かった。しかし、この作品ではいつも、父親役のバリトンが勝つ。恋人に熱をあげ夢中になり 挙句の果てに恋人に養なってもらい、今度は父親に別れさせられて 怒りを恋人にぶつけて大騒ぎするアルフレッドに比べて 父親の感情を抑えた低音が よく響くのは 立場上 仕方がない。
パリ社交界のシーンで 50人の男女が踊り 歌う第2幕後半のシーンは 派手で華やかでみごとだった。男女コーラスも、ダンサーも美しい服を身に纏い 狭い舞台で生き生きとしていた。オペラがお金がかかって仕方がないのがよくわかる。
オペラ オーストラリアの「椿姫」を観るのはこれで3回目。
第一幕で はじめの「乾杯の歌」のあとのデュエットの音程が合わなかった。テノールが音程を外し 次いでソプラノも音程を外した。
オー!!!と思って、となりのオットの顔を見たら、オットが「デザスター!」(大災害!)と言ったので 笑ってしまった。素人にもはっきりわかるほど 二人の主役のデュエットで音が外れたのだ。まあ、プロでも 結構あることだ。これに懲りたのか、以降は二人とも慎重に歌っていて、よく調和していた。しかし、これも、余興のうち、といえるようになるには この二人まだ若すぎる。
しっかりしろよ。オペラ オーストラリア!