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2009年8月25日火曜日

映画 「COVE」(入り江)




映画「THE COVE 」を観た。
シドニーでは8月22日から 二つの劇場で公開が始まった。ニュータウンのデンディと、ダーリンハーストのシェベル劇場だ。全米でも7月から 公開された模様。
日本で公開されることを 切に願う。
2009年 ロバート レッドフォードのサンダース映画祭でオーデイエンス賞、カナダ(HOT DOGS)ドキュメンタリー最優秀賞、シドニー映画祭オーデイエンス賞、ブルーオーシャンフィルム最優秀賞受賞作。

和歌山県太地町のイルカ追い込み漁で 年2300頭のイルカが捕獲され、水族館に売られる一部を除いては、殺されて鯨肉として市場に出回るという。その様子をフィルムに納めたもの。

製作者は、リチャード オーバリー(RICHARD O"BARRY)。
1970年代に米国TV番組「フリッパー」(邦題「わんぱくフリッパー」)で主演したイルカ達の捕獲と調教をした人。マイアミの水族館で たくさんのイルカを調教して イルカショーを主催して人気を呼んだ張本人。テレビ局の思惑どうりにイルカを調教することに何の疑問も感じていなかったが、「フリッパー」の主役だったイルカが ストレスで弱り果てて リチャードの腕の中で息を引き取ったことで、考えを改める。以降、私財をなげうって、捕獲されたイルカを海に戻してやる活動に打ち込む。ハイチ、コロンビア、グアテマラ、ブラジルなどで水族館や劣悪な環境で見世物になっていたイルカを 大海に返す運動をしてきた。1991年には 国連の環境プログラムから、業績を表彰されている。著書に、「BEHIND THE DOLPHIN SMILE」1989年、「TO FREE A DOLPHIN」2000年がある。
WWW SAVEJAPANDOLPHINS.ORG

監督は ロイ シホイヨス(LOUIE PSIHOYOS)。ナショナルジェオグラフィック誌のカメラマン。優秀なダイバーでもある。「フューチュン」、「デイスカバー」、「GEO]、「タイム」、「ニューズウィーク」、ニューヨークタイムズ誌などの表紙カバーの写真を撮っている人。2005年に海洋保護協会を設立。

カメラクルーは 世界最高のフリーダイバーと言われる マンデイー ロー クラックシャンク(MANDY RAE CRUICKSHANK)。彼女は水深90Mまで 6分間息を止めて自力で潜って 上ってこられるそうだ。彼女とカーク クラツク(KIRK KRACK)が、ダイバーとして水中カメラをもって撮影に参加。

これに ハリウッドの特殊撮影グループ カーナーオプテイカル社(KERNER OPTICAL)が加わり 岩に埋め込んだ高解像度ビデオカメラで、崖の上から 追い込まれるイルカ漁の様子を撮影した。また、鯨の形をした飛行船を造り 遠隔操作で上空から イルカ漁の様子を撮影することに成功。一連の撮影を 特殊カメラのセンサーで 警備員達の妨害を 避けながらゲリラ的に撮影が行われた。

2007年に 環境保護団体「シーシェパード」に 太地町のイルカ漁が撮影され 世界に紹介されて以来 太地町では環境保護団体や外国人やフイルムクルーに神経を尖らせている。警備員を沢山雇い、撮影や見学にも介入して 妨害をしている。
撮影には大掛かりな撮影機具が要る。「オーシャンイレブン」ならぬ、かくし撮影チームが太地町に入ったとたんに、24時間の尾行、警備官による嫌がらせ、執拗な追跡と一挙一動への介入が入る。ものすごく人相の悪い私服警官ともヤクザともいえない男達。

イルカを追い込む入り江には、高い崖に囲まれた 小さな入り江で、トンネルを越えないと たどり着けない。イルカの追い込み漁が始まると、トンネルが閉鎖され、崖の上の公園も立ち入り禁止になり、人一人追い込み漁の様子を見ることが出来ない。
イルカ漁を 空から、崖の上から、海底からと、3方向から撮影する為に部隊が秘密行動を開始する。明かりもない深夜 岩に埋め込んだカメラを設置するために崖をよじ登るクルー、囲い込まれたイルカ達を海底から撮影する潜水クルー。そして、空から飛行船を飛ばすクルー。執拗に監視する警備員達から逃れながら行動する。

そして、撮れたフイルムは 血、血、血 の海だ。人と同じ 家族とそれの属するコミュニテイーを持って暮らしていたイルカが群れごと捕獲され 人と同じ豊かな感情を持ったイルカが 身動きできない狭い網に1昼夜囲われた末 一頭一頭 刺し殺されていく。水中カメラで捉えた赤ちゃんイルカ達の絶叫ともいうべき叫び声。親達を求めて泣き叫ぶ幼いイルカの声、、、とても、正視できない。
リチャード オーバリーが言う。日本には立派な環境保護団体や、科学者、良心的な海洋学者、グリーンピース、それを支持する人々がたくさんいる。WHERE ARE THEY?どこに行ってしまったんだ、と。
彼は何人もの日本人にインタビューする。毎年9月になると2300頭ものイルカが 殺されて食肉にされることを知っていますか?道行く人々、誰もが答えはNONだ。
IWCで、日本代表が 写真を見せながら ミンク鯨は年々増えています、、、と説明している。そのフィルムの前で、太地町のイルカの血に染まった海で男達がイルカを突き刺して殺しているフイルムを映し出したコンピューターを腹にくくって 躍り出るリチャード。これを即座に激写するニュースマンたち。
くりかえして言う。この映画の日本での上映を切に願う。


日本がクジラとイルカを捕獲していることについて 世界中から批判されて、孤立している状況を認識すべきだ。現状では、IWCで、日本は商業捕鯨を中止させられ 調査捕鯨についても 厳しく中止を求められている。しかし日本は札束にものをいわせて IWCの票を買って アジアやバハマ島などの小さな国から日本支持票を買い、辛うじて調査捕鯨を続けている。このことについて、先進諸国からは、厳しい糾弾を受けている。南極海での捕鯨については ワシントン条約にも違反するということで、毎年国際法に訴えるとの諸国からの圧力がかかっている。

西オーストラリアのブルーン市は イルカ漁に抗議して、太地町と姉妹都市であることを中止した。この8月 市議会が全会一致で 太地町がイルカ漁を続けるかぎり交流を中止することに決定。
ブルームは戦前から日本から潜水夫がきて真珠を取って地域の産業に貢献してきたが 日本の鯨とイルカ漁が問題になって以来 日本人墓が荒らされたり、日本人アタックが起きて問題になっている。日本人は 日本にいるかぎり何をやっても何を言っても安全と思っているかもしれないが 海外に住む日本人が 襲われたり 嫌がらせを受けるなど、被害が出ていることについて無視してもらいたくない。

南極海での日本の調査捕鯨にも、日本近海のイルカ追い込み漁にも反対する。

IWCでは一定程度の大きさの鯨を対象に保護基準を設定していて、大きさが違うだけで イルカは保護から外されている。イルカも鯨も鯨類(クジラ目)で、同じ大型野生動物だ。イルカは、社会のなかで、社会的役割をもち集団行動をとる 高度な知性を持つ。その生態や生息範囲など、まだわかっていないことも多い。
鯨もイルカも 高い知能と社会性をもった野生動物だ。人とともに生きてきた家畜とも ペットとも異なる。自由に大海に生きる 大型野生動物は 保護の対象であって、殺して食うものではない。
鯨とイルカの捕獲、食肉することに反対する理由は以下の通り。

1)他に蛋白源となる食品が豊富な日本で鯨肉を食べ続けなければならない理由がない。鯨肉を食べるのは日本の伝統文化だ というのはウソだ。都市に住む多くの日本人が鯨肉を食べ始めたのは戦後であり、鯨肉が日本人の蛋白源だったという歴史はない。

2)海は誰のものでもない。そこに生息する野生動物を 世界中のひんしゅくをかいながら捕獲 食肉すべきではない。鯨は家畜ではない。

3)殺生方法が残酷きわまる。日本側はIWCで 瞬時に殺しているというが、逃げ回る野生動物にモリで突き 力尽きるまで泳がせて引き上げて殺す鯨、岸に追い込んで一昼夜網で囲み、突き棒で一頭一頭突き刺して殺すイルカ。自由に大海を泳ぎまわっていた動物を瞬時に殺す方法があるわけがない。

4)調査捕鯨に毎年5億円の調査費が税金から仕払われているが それに見合う調査のフィードバックがない。 調査捕鯨の結果が国際的に権威ある英語論文雑誌に まったく成果が発表されていない。科学研究のために億単位の国庫補助を受けて調査捕鯨していながら 何ら研究発表が行われていない このことについて、IWCからも、先進諸国からも激しく批判されている。

5)調査捕鯨予算の多くは 捕獲した鯨を売りさばいた利益でまかなっていることが明らかになっている。これでは公正な調査ができるわけがない。賄賂を取り締まる警察部署で、その予算が賄賂をもらった金で運営しているようなもので 取り締まろうとすればするほど、賄賂をもらわなければならない という滑稽な図式になっている。

6)鯨やイルカなど大型海洋動物の肉は水銀汚染されていて、小児、妊婦などは 食べるべきではない。政府、厚生労働省でさえ、週40グラム以下に抑えるべきとしている。一食分の鯨肉カツレツで 約100グラム。危険とわかっている食べ物を、食べ物の選択肢のない子供に食べさせてはいけない。
以上。

重ねていうが、この映画、日本での上映を切に願う。