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2009年6月28日日曜日

映画「サンシャイン クリーニング」


映画「SUNSHINE CLEANING」を観た。
サンダース映画祭でグランドジュリー賞にノミネイトされた映画。 サンダース映画祭は俳優で監督の ロバート レッドフォードによって、若い独立プロの映画人を育成する為の教育の一環として開かれている映画祭。

監督:クリステイン ジェフ
キャスト: エイミー アダムス(ローズ役)      
エミリー ブラント(ノーラ役)       
          アラン アーキン (父)
ストーリーは
高校時代は チアガールのキャプテン 人気者だったローズ ローコフスキーは、いまや30代のシングルマザー。小学生の息子をかかえて、掃除婦として生活に四苦八苦している。 妹のノーラも 30近くなっても、ウェイトレスや様々な仕事が身に付かず、いまだ父の家から 自立できずに居候している。男やもめの父は、いつも新事業の成功を夢みて 試みるが うまくいかず失敗ばかりしている。そろいもそろって、人生負け組家族の面々だ。 ローズとノーラが まだ幼かった頃に 女優だった母親が自殺してしまって、母を失くした事で 3人は3様の心の傷をかかえている。

ある日、掃除婦ローズは 自殺した人の家の掃除 後片付けを頼まれて、いやいや血の飛び散った家を掃除した後、それが法外な収入になることを知らされる。その経験に触発されて、犯罪現場の清掃業をはじめることにする。妹を誘って 必要道具をそろえ、車を買って プロの清掃業社 その名を、サンシャイン クリーニング。

ローズもノーラも はじめは鮮血の飛び散る部屋や、たっぷり血のしみこんだベッドなどにひるんでいたが、度胸もついてきて、身内の死なれて、残された人々を慰めてあげられるだけの度量もついてくる。また犯罪に巻き込まれたり、自殺した人々の姿を 想像することで、死んでいった人々の心のありようも 見つめることができるようになっていくのだった。新しい仕事について、様々な人と出会い 失敗も重ねていって、、、。 というおはなし。

コメデイーということになっている。 たしかに 新事業を思いついて即、のめりこんでは 失敗ばかりしている懲りない父親は笑わせる。またシングルマザーのローズと 落ちこぼれノーラが おどろおどろしい犯罪現場で格闘すればするほど おかしくてすごく笑える。

しかし本当の映画のテーマは「心の癒し」だ。3人は3人とも 自殺してしまった母親が恋しくて 悲しくて仕方がない。母親を失った心の傷を 犯罪現場で死んでいった人々の心に共感して、死者の心に寄り添うことによって 埋めようとしている。死者が残していったものをきれいにして、処分することによって 死者の尊厳をとりもどしてやっている。残された家族のとなりに座ってあげることによって 家族だけでなく自分の心もまた なぐさめているのだ。

そうったヒーリングプロセスが 笑いながらも心に響く。

人はみな心に見えない傷をもっている。年をとるということは 小さいときに作った傷に 傷を重ねて大きくしていくことにすぎない と言うことも出来るし、傷を自ら癒し 治していくことが人生だ ということもできる。癒す、治す と簡単に言うが 傷から自らを解放してやることが どんなに大変なことか、、。

ローズ役のエミー アダムスが、裕福な暮らしをしていることが一目瞭然の昔のハイスクールクラスメイトたちに会って、自分の職業が掃除婦だと言えずにいる時や 怒ったり泣きたくても 笑顔をみせる様子が けなげで泣かせる。シングルマザーのがむしゃらぶりが とても良い。

ノーラ役のエミリー ブラントイギリス女優だが、「プラダを着た魔女」でデビュー、演技派若手女優の注目株だ。こんどは、「ヤング ビクトリア」という新作で ビクトリア女王の大役を演じる。ビクトリア女王は シドニーの街の中央 タウンホールの横に数百トンの銅像になって鎮座しているが、彼女のイギリスの歴史になくてはならないドラマチックな人生を演じることになって、俳優としては、とても嬉しいだろう。この映画では いくつになっても母親が、恋しくて母親が身に着けていた羽毛で頬をなで、母親が吸っていたタバコの吸殻を口にして、自分の弱気に耐えているノーラの姿に しんみりさせられる。

総じてコメデイーだが二人の娘達のがんばりがおかしくて、哀しくて ほろ苦い。
小作品だが、心に訴える力をもっている。