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2009年6月30日火曜日

映画 「恥辱」




映画「ディスグレイス」(恥辱)を観た。
原作:南アフリカ人作家でノーベル文学賞受賞者 クツツエー(J M COETZEE’S)。
監督:ステーブ ヤコブ。
脚本:アンナ マリア モンティセりー(監督の妻)
キャスト:ジョン マルコビッチ (デビッド ローリー教授)      
    ジェシカ ハインツ (娘ルーシー)

ストーリーは
アパルトヘイトが撤廃された 南アフリカが舞台だ。
ケイプタウンで イギリス人大学教授デビッド ローリー52歳は 古典文学を教えている。詩人バイロン 後期の生き方に共鳴していて 自堕落でデカダンな日々に自分の晩年の日々を重ね合わせている。2度の離婚を経て 愛を求める心に変わりはないが 退屈で満たされることのない生活。家に帰れば 趣味の作曲など、嗜んでいる。

ある日、教え子のなかで ひときわ目立つ生徒メラニーを、半ば強引に誘って関係を持つ。メラニーは同僚の大学教授の娘だった。デビッドは関係を継続させようとして、メラニーが授業に出てこなくなっても、来ている様に 出席簿を改ざんする。事態が表面化してきて、当然ながら、学生達からバッシングされる。ついに、大学管理委員会から 召喚されて事情説明を求められるが、バイロン信奉者のデビッドにとっては、ラブ スキャンダルも 姦通罪も 懲戒免職もこわくない。何の未練も 反省も後悔もなく サッサと潔く大学を立ち去ってしまう。

おさまらない学生達からのバッシングに ちょっとだけ傷ついて、デビッドは イースタンケープの田舎で 友達と暮らしているという娘に会いに行く。
行ってみると、予想外に 都会から離れた田舎で 娘のルーシーは たった一人で犬たちと生活していた。ナチュラリストのルーシーは 堆肥を作り、野菜と花を栽培して市場で売って、細々と生計を立てていた。若い娘が一人、無用心な家に、犬の世話をしているアフロアフリカンのぺトラを自由に出入りさせている娘の様子に驚愕したデビッドは、娘が心配で仕方がない。アパルトヘイト撤廃後 南アフリカは無秩序、無警察社会になっていて、田舎でも危険極まりない。にも拘らず、この田舎の人々は 昔のままの生活を維持しているのだった。

そしてデビッドの悪い予感が的中して ある日、3人のアフリカーナのギャングに襲わて暴行される。ルーシーは3人のギャングに輪姦され、デビッドは石油を浴びせられ 火をつけられて半死状態で助けられる。圧倒的多数のアフリカンの国で 僅かに生き残る白人社会。長いアパルトヘイトの歴史の抑圧がなくなったばかりの時期に 白人社会が無事でいることは、難しい。デビッドは必死でルーシーに、離婚して別れたルーシの母親が暮らしているオランダに 行くように忠告する。 しかし、ルーシーは 暴力を受けても、暴力で跳ね返すことも、警察など第3者の介入を求めることも、外国に逃亡することも 拒否する。デビッドの助言や忠告や懇願に、聞く耳をもたず、ナチュラリストとして 自分に与えられた土地で大地を母として、生きていく という。

デビッドは娘が性的に辱められ 自分も暴行されて 初めて、自分が学生に関係を強要したことの罪を知る。そして、心から謝罪するために かつての同僚の家に行き ひざまずいて許しを請う。
ルーシーは 3人のギャングによる輪姦の結果、妊娠する。彼女は それが何の結果だったにしろ、母として命を受けたものを産み育てて その土地で生きて死んで生きたいと言う。
そんな娘を 自分とは考えが違っても、デビッドは父親としてささえて生きていく決意をする。
というストーリー。

テーマは、人種差別、男女間の性暴力、女の自立 など、重い現実の課題すべてを含んでいる。 まず、南アフリカが アパルトヘイトがなくなって、民主化したというきれいごとと同時に 大量の教育を受ける機会のなかったアフリカーナが抑圧から解放され自由になったことによって、力と武器が支配する暴力社会に 一挙に後退したこと。今まで搾取してきた白人大規模農園主が追われたあと、土地問題を政府がコントロールできていないこと。くい止めることの出来ない ジンバブエや 他の内戦から逃れてきた難民、貧困の蔓延、アフリカーナの中での貧富格差の拡大、労働人口の30%がエイズ感染者という現状、こうした中で、南アフリカは 世界一治安の悪い国になった。

力と武器が支配する暴力社会で、人が人たる生き方をするために 何を犠牲にしなければならないのか。 ルーシーは 何年も苦労して作ってきた 唯一の生計である菜園をつぶされ 可愛がってきた人生の伴侶の犬たちを殺され、輪姦され、妊娠させられ、自分を守ろうとした父親を半死の目にあわされた。長年信頼していた作男のぺトラが 3人のギャングを誘導した共犯だった ということも知った。過疎地では警察の力もあてにできない。 それでも 四面楚歌のなかで女ひとり 大地を母として、自分の足で自然とともに生きて行こうとしている。 ものすごいパワー。頑固者、自己満足にもほどがある。 しかし、考えみれば、女にとって安全な場はあるだろうか。あると思うのは幻想にすぎないのではないか。 ルーシーの頑固なまでの自立は、南アフリカの白人の姿そのものではないか。貧しいオランダで食うに食えず アフリカに入植して根っこを張った南アフリカの白人のパワーそのものなのかもしれない。

ルーシーが イングリッシュ テイーを飲みながら 読んでいるのは ディケンズ。それをみて笑うデイビッドは バイロンの詩集を肌身離さず持っている。デイビッドが運転する車では 最大ボリュームの音響で オペラ「ナブコ」のコワイヤーが鳴り響いている。彼もまた自己耽美派の個の強い 南アフリカの白人なのだ。

ルーシー役のジェシカ ハインズも良いが、やはり この映画はジョン マルコビッチのテイストでこそ 成功している。マルコビッチの ひとり舞台のようなものだ。 気の進まないワインの相手をして はっきりと嫌がっている女学生を高級レストランに誘い バイロンを口ずさんで ベッドの強引に引きずり込む嫌味な男の役も マルコビッチがやると 本当にムシズがはしる。大自然の中で 娘の強い生き方に啓発される気の弱い男の役を マルコビッチがやると 本当に哀れで 寂しげで消え入りそうだ。でも娘の生きかたにすこしでも寄り添って生きたいと 心に決めるマルコビッチは 最後には抱きしめてやりたくなる。気弱な男から、極悪人まで 上手に演じ分けることの出来る 稀な 立派な役者だ。
見ごたえのある映画だった。 

2009年6月28日日曜日

映画「サンシャイン クリーニング」


映画「SUNSHINE CLEANING」を観た。
サンダース映画祭でグランドジュリー賞にノミネイトされた映画。 サンダース映画祭は俳優で監督の ロバート レッドフォードによって、若い独立プロの映画人を育成する為の教育の一環として開かれている映画祭。

監督:クリステイン ジェフ
キャスト: エイミー アダムス(ローズ役)      
エミリー ブラント(ノーラ役)       
          アラン アーキン (父)
ストーリーは
高校時代は チアガールのキャプテン 人気者だったローズ ローコフスキーは、いまや30代のシングルマザー。小学生の息子をかかえて、掃除婦として生活に四苦八苦している。 妹のノーラも 30近くなっても、ウェイトレスや様々な仕事が身に付かず、いまだ父の家から 自立できずに居候している。男やもめの父は、いつも新事業の成功を夢みて 試みるが うまくいかず失敗ばかりしている。そろいもそろって、人生負け組家族の面々だ。 ローズとノーラが まだ幼かった頃に 女優だった母親が自殺してしまって、母を失くした事で 3人は3様の心の傷をかかえている。

ある日、掃除婦ローズは 自殺した人の家の掃除 後片付けを頼まれて、いやいや血の飛び散った家を掃除した後、それが法外な収入になることを知らされる。その経験に触発されて、犯罪現場の清掃業をはじめることにする。妹を誘って 必要道具をそろえ、車を買って プロの清掃業社 その名を、サンシャイン クリーニング。

ローズもノーラも はじめは鮮血の飛び散る部屋や、たっぷり血のしみこんだベッドなどにひるんでいたが、度胸もついてきて、身内の死なれて、残された人々を慰めてあげられるだけの度量もついてくる。また犯罪に巻き込まれたり、自殺した人々の姿を 想像することで、死んでいった人々の心のありようも 見つめることができるようになっていくのだった。新しい仕事について、様々な人と出会い 失敗も重ねていって、、、。 というおはなし。

コメデイーということになっている。 たしかに 新事業を思いついて即、のめりこんでは 失敗ばかりしている懲りない父親は笑わせる。またシングルマザーのローズと 落ちこぼれノーラが おどろおどろしい犯罪現場で格闘すればするほど おかしくてすごく笑える。

しかし本当の映画のテーマは「心の癒し」だ。3人は3人とも 自殺してしまった母親が恋しくて 悲しくて仕方がない。母親を失った心の傷を 犯罪現場で死んでいった人々の心に共感して、死者の心に寄り添うことによって 埋めようとしている。死者が残していったものをきれいにして、処分することによって 死者の尊厳をとりもどしてやっている。残された家族のとなりに座ってあげることによって 家族だけでなく自分の心もまた なぐさめているのだ。

そうったヒーリングプロセスが 笑いながらも心に響く。

人はみな心に見えない傷をもっている。年をとるということは 小さいときに作った傷に 傷を重ねて大きくしていくことにすぎない と言うことも出来るし、傷を自ら癒し 治していくことが人生だ ということもできる。癒す、治す と簡単に言うが 傷から自らを解放してやることが どんなに大変なことか、、。

ローズ役のエミー アダムスが、裕福な暮らしをしていることが一目瞭然の昔のハイスクールクラスメイトたちに会って、自分の職業が掃除婦だと言えずにいる時や 怒ったり泣きたくても 笑顔をみせる様子が けなげで泣かせる。シングルマザーのがむしゃらぶりが とても良い。

ノーラ役のエミリー ブラントイギリス女優だが、「プラダを着た魔女」でデビュー、演技派若手女優の注目株だ。こんどは、「ヤング ビクトリア」という新作で ビクトリア女王の大役を演じる。ビクトリア女王は シドニーの街の中央 タウンホールの横に数百トンの銅像になって鎮座しているが、彼女のイギリスの歴史になくてはならないドラマチックな人生を演じることになって、俳優としては、とても嬉しいだろう。この映画では いくつになっても母親が、恋しくて母親が身に着けていた羽毛で頬をなで、母親が吸っていたタバコの吸殻を口にして、自分の弱気に耐えているノーラの姿に しんみりさせられる。

総じてコメデイーだが二人の娘達のがんばりがおかしくて、哀しくて ほろ苦い。
小作品だが、心に訴える力をもっている。

2009年6月20日土曜日

映画「カチン」


ポーランドの巨匠 アンジェイ ワイダ監督による 2007年制作 映画「KATYN」を観た。
1939年に起きた「カチンの森 虐殺事件」を描いた作品。
ポーランド軍の大尉だった ワイダの父親も この事件で虐殺されている。ワイダは 長い監督生活のなかで沢山の作品を紡ぎ出したが 彼がずっと溜め込んでいた、一番言いたかったことを この映画で 全部吐露した感がある。

カチンの森の事件が明るみに出たのは 虐殺60年後、21世紀にはいるころだ。真実を語ったものは KGBによって、命を奪われ 監禁され、口を閉じさせられてきたからだ。

第二次世界大戦が始まると、独ソ不可侵条約を結んだ ナチスドイツと、ソビエト連邦は 1939年8月 ポーランドを侵略占領し 分割統治した。1万2千人もの ポーランド軍将校達と、その家族は、ソ連軍の手に引き渡されて ソ連領カチンの森で 秘密警察KGBによって殺された。
しかし、1943年に、ナチスドイツが ソ連に侵攻すると、ソ連はポーランド軍将校達虐殺跡を掘り返し、 これがナチスドイツによる犯罪だ、と報道して 反独のプロパガンダに利用した。生き残った現場の証人や、事実を知るものたちは ソ連の秘密警察によって徹底的に弾圧され、口を封じられてきた。 したがってポーランド人や大多数の人々はカチンの森の大量虐殺事件は、ナチスドイツによる戦争犯罪のひとつとして理解されてきた。クレムリンが 責任はすべて当時のスターリンとKGB秘密警察にあることを認めたのは 最近のことだ。それまで ワイダ監督の父親は「行方不明者」だったわけだ。

映画は、1939年 秋に始まる。 前方からは ドイツ軍による攻撃で追われ、後方からは ソ連軍の侵攻に追われ、市民は大混乱に陥っている。 包囲されたポーランド軍は 武装解除され、1万2千人もの将校などの上級兵だけが集められて、列車でソ連に連行されていく。
次々と占領された建物に翻る紅白のポーランド国旗は 切り裂かれ、半分に残った赤旗だけを 建物に取り付けていくロシア兵たち。野蛮な顔つきのソ連兵達が 旗から取り去った白地の布で靴を磨いているシーンを カメラは淡々と写していく。
映画では架空の2組のポーランド家族を通して ストーリーが進められていく。一組は 父親を連れて行かれた妻と幼い娘。もう一組は 息子を連行された母と幼い妹だ。
映画はドキュメンタリータッチだが 画面が美しい。残された女達、妻、母、娘が みな毅然としている。戦争中でも ワルシャワの町は風格のある かつての古いポーランド王国のたたずまいを残している。女達は きちんとした装いをして 姿勢正しく 決意を表すかのように 硬い音をたてて石畳の街を歩く。毅然とした姿が 貴族達の肖像画を観るように 堂々として輝いている。
二度と帰ってこない父、夫、息子たちを待つ女達が 鋼のような強さで ソ連進駐軍下にあるワルシャワで 真実を追究していく。逮捕されても脅されても 全くひるまない。 スターリン主義に反旗を翻すレジスタンスの青年も まっすぐ前に向かって走っていく。追われて レジスタンスをかくまう 女子高校生の澄んだ目。つかぬ間の淡い恋。若い命が飛び跳ねるような 躍動感。

暗い事件を扱っているのに 画面が暗くない。将校達も一人一人 残酷なやり方で殺されていくのに ただ悲惨なだけではない。最後の最後まで 妻に残すための日記を書き続ける青年将校も 惨めではない。画面が色であふれている。 映画全体に漂う気品。上品で貴族的な空気。かつてのポーランド王国の誇りとヨーロッパの乾いた空気が感じられる。これがワイダの映画なのだろう。抵抗の芸術家、ポーランドの英雄。
ポーランドは 戦争中ドイツ、ソ連、スロバキア、リトアニアの4国に分割占領されていた。1945年にヤルタ会議で かつての領土を取りもどしたが、ソ連による実質支配が 続いた。個人財産はすべて没収され、国有化されて 人々の民主化 自由が日の目をみるには1989年まで 長いこと待たなければならなかった。 ポーランドは何と悲しい国だろう。大国に侵略されてばかり。

ショパンは 愛国者だったが 戦乱のため39歳で亡くなるまで 二度と母国に帰ることができなかった。死後、彼の心臓だけが遺言どおり 故郷に帰って 教会に埋葬された。 ジェイ チョウの、「十一月のショパン」なんという曲もあるけど、、、。 私は ショパンの「軍隊ポロネーズ」が大好き。ちょっと 大仕事をする前、ひるみそうになったり、引っ込み思案になりそうなとき この曲は勇気を奮い立たせてくれる。ショパンの繊細だが しなやかで強い。古典的だが華麗で新しい。気品があって 美しい。

そんな ポーランドのことを考えながら ニュースを見ていたら、6月18日、北アイルランドで ルーマニア人20家族が 人種差別極右グループに襲撃され、警察の保護のもと、長年住んでいた家を捨て 避難地に移住した と報じられた。極右に つけ狙われているので 避難先は極秘だそうだ。そもそも 地元のサッカーゲームで ポーランドがアイルランドに勝ったことが、反ポーリッシュの暴動を起こす契機になったらしい。ポーランド人もルーマニア人も見分けがつかない脳の足りない極右サッカー狂が ポーランド移民やルーマニア移民を襲撃したようだ。警察のものものしい警備のなかで、20家族の脅えた移民たちが 大型バスに乗り込んでいく様子をニュースで見て 言いようのない怒りを感じた。

もとにもどるけど、抵抗の芸術家、ポーランドの英雄、アンジェイ ワイダ。世界中で存命する映画監督のなかで 最も尊敬すべき巨人。1926年生まれ。 1954年作品「世代」、1956年「地下水道」、1958年「灰とダイヤモンド」以上を抵抗の3部作といわれる。

ワイダは、第二次世界大戦では 反独レジスタンス活動家、戦後のソ連進駐下で、反ソレジスタンス活動家、1981年の戒厳令で職を奪われ国外脱出して、映画制作を続けた。 2000年、民主主義と自由を求め続けた芸術家としてアカデミー特別賞を受賞した。現在もまだ現役。
印象に残る「大理石の男」1976年、「鉄の男」1981年など 多いが、やはり 最初にもどって「地下水道」と 「灰とダイヤモンド」が忘れられない。白黒画面が、強烈なインパクトで 人の命の強さと弱さを訴えかけてくる。すごい迫力。

生涯を通じて 権力を恐れず 映画という武器をもって その力と戦い 権力者を糾弾することを止めなかった 孤高の巨人。心から 敬意をこめて この美しい映画「カチン」に拍手を送りたい。

2009年6月11日木曜日

映画「ターミネーター4 サルべーション」







映画「TERMINATOR4 SALVATION 」を観た。
日米豪とも同時公開だったようだ。 「天使と悪魔」も、この「ターミナーター」も、日本と ここラリアと同時公開だったが、作品によっては随分と公開日が ずれる映画もある。「グラントリノ」、「愛を読む人」、「レボリューショナリーロード」など、みな1月末に観たが、日本では公開が遅れたみたい。今年に入って観た映画のなかで、私は「グラントリノ」が 一番好き。何度観ても、泣けて泣けて仕方がない。
日本では ハリウッドものと同時に他の外国映画も入ってきて より多様で幅の広い分野の映画が楽しめるのが うらやましい。日本映画、韓国映画など 年一度のシドニー映画祭で1-2度 上映されるだけで 一般の映画館で公開されることはない。6月のシドニー映画祭で、話題の中国映画 三国志を描いた「レッドクルフ」が来るらしい。

「ターミナーター」は、アーノルド シュワルツネッガーを一躍有名にした 現カルフォルニア州知事にとって、記念的な作品だ。この映画無しに 彼の今の地位はなかっただろう。

1984年、「ターミネーター第一作」では、稲妻とともに タイムマシーンに乗って 地球に送り込まれた カイル リースは サラ コナーと出会う。人よりも優れた人口脳を持った機械軍が 地球に侵入を始めていて 地球をターミネートさせるためのサイボーグ:シュワルツネッガーがサラを殺す目的で 地球にやってくる。カイルとサラとの間に生まれるはずの子供が 将来 機械軍に抵抗するレジスタント リーダーになるので、彼が生まれる前に始末しようとする。そしてカイルはサラを守る為に命を落とす。

1991年、「ターミネーター第二作」では、カイル亡き後 サラが産んだ子供 ジョン コナーはまだ小学生だ。執拗に 送り込まれてくるターミネーターから逃れて、サラは ジョンを守りきる。
ここではシュワルツネッガーは、サラの味方のロボットとして 次々と攻撃をしかけてくるターミネーターと戦って 破壊される。

2003年;「ターミネーター第3作」は スカイネットと呼ばれる軍事コンピューターの機械軍に、サラと少年ジョン コナーは立ち向かうが 人類は壊滅的打撃をうけ、サラは殺される。

どうして「ターミネーター」第一作と第二作が 爆発的にヒットしたのかというと、シュワルツネッガーの ちょっと人間離れした機械的で四角い顔と巨体、ドイツ語なまりの変な英語を話す役者が いかにも未来から地球を滅ぼすためにやってきたサイボーグ役に よくハマっていたからではないだろうか。それが ごく普通の生活をしている女性を襲って殺そうとするのが 限りなく恐ろしかった。サイボーグだから血も涙もない。矢継ぎ早にサラを殺そうと 冷酷無比に攻撃してくる。逃げる方が 必死で逃げれば逃げるほど 怖さが増してくる。そこに地球の将来がかかっている、というストーリーの展開がおもしろい。 サラは 天使ガブリエルに啓示をうけて 処女懐妊してキリストを産むマリアのようだ。

そして、遂に、「ターミネーター第4作 サルべーション」だ。
ジョン コナーはやっと大人になった。抵抗軍のリーダーとして たくさんの世界に散らばるレジスタンスの希望の星として、活躍している。
監督: マックG 配役 
ジョンコナー:クリスチャン ベール   
機械人間マーカス:サム ワーシングトン

ストーリーは
地球は スカイネットによる最終戦争で破れ、壊滅的な被害を受けた。わずかな生存者は、地下に潜伏して 機械軍によるパトロールから逃れ、武器をもって抵抗している。生存者 レジスタンスにとって 指導者ジョン コナーの 電波を通じて 送信されてくる指令は 何よりも勇気を鼓吹してくれる 唯一の励ましだ。抵抗軍の中枢司令部は 海底深く沈んだ潜水艦だ。
サンフランシスコは今や、機械軍スカイネットの中心で、機械工場では ロボットが大量生産されている。次々と生産された ターミネーターたちは、パトロールで人を捕まえては 捕虜にして人質として利用している。

ある日 死刑囚マーカスは 自分の体を人体実験に使われて 体は機械になるが頭脳までは従来の洗脳方法で洗脳されず 人の心をもって再生されてしまった。記憶を喪失していて、地球を彷徨っているところを レジスタンスに拾われる。レジスタンスの様々な人々と出会い、体は機械でも、心は人間のマーカスは ゲリラの女性に恋をする。 ジョン コナーは マーカスが サイボーグであることを知ったが、敵として断定できないまま、スカイネットを破壊する為に 機械軍中枢に侵入するマーカスを 見放すことが出来ない。 そのマーカスは、スカイネットに帰って、自分が何者であるかを知って、、、 というお話。

体は機械なのに 自分では人間だと思っている優しい男、マーカスを演じたのは 新人サム ワーシングトン、33才のオージーだ。
ニコル キッドマンや メル ギブソンや、故ヒース レジャー同様 ラリアで唯一の俳優養成所NIDA出身。 メデイアでは この映画をもって、久々の大型新人登場、、、といっているが ラリアでは 10年前からあちこちで見かける。私が初めて彼を見て 注目するようになったのは、10年前の映画「BOOTS MAN」だ。ニューカッスル炭鉱の街で タップダンスを踊りまくる男達の映画だった。このローカル映画で彼は 主役のハンサム男をだしぬいて、演技で賞賛された。
このとき、どうして役者になったのか、と メデイアに問われて、パースからガールフレンドが俳優になりたくてNIDAの入学オーデイションを受けるので ついてきたが、時間つぶしのために 自分もオーデイションを受けてみたら ガールフレンドは落ちたのに、自分は合格して ふられてしまったので役者の道を歩むことになった と飾りも気負いもなく 言っていた。体ばかり大きくて、田舎っぽくて どこといって特徴のない好青年といったところか。ヒュー ジャックマンのように、洗練されていくかどか 疑問だけど 良い役者ではある。

この映画、主役、ジョン コナーをやっているクリスチャン べイルのアクションがすごい。
もう息をつく暇もなく 人と機械との戦争だ。敵は 巨大ターミネーターになったり、水中タ-ミネーターになったり、バイクターミネーターになったりして、次々と攻撃してくる。

そして、最後の方では、「で で でたーーー!!!」と言う感じで、アーノルド シュワルツネッガーのロボット登場。クリスチャン ベールが 破壊しても破壊しても 再生して攻撃してくる。迫力満々だ。 アクションの好きな男の子にとっては 最高の映画だろう。男の子でもアクション好きでもないが、怖くて思わず キャーキャー言いながら すごく楽しんで観た。

律儀にこの20年間 「ターミネーター」を第一作から 続けて見てきた。昔の作品を観てない若い人たちでも、わかる内容になっている。この4作目から、5,6と、続いて3部作になるのだそうだ。このさき10年かかって、完結するというのなら、もう、乗りかかった船だから、ずっと最後まで 観て応援してあげようじゃないか と思う。

 

2009年6月8日月曜日

映画 「天使と悪魔」







超一流 第一級のスリラーというのは こういう作品のことを言うのだと思う
ダン ブラウン原作、ロン ハワード監督によるアメリカ映画 「天使と悪魔」130分を観た。
2006年「ダ ビンチ コード」に続いて ダン ブラウンによる作品の映画化。作品としては 「天使と悪魔」の方が 2000年に 「ダ ビンチ コード」が2003年に刊行されて 全世界でベストセラーとなった。

主人公は ロバート ラングトン教授。二つの作品を読み比べてみると「天使と悪魔」のときは まだ若かったからか ヘリコプターから飛び降り 空から落ちてきたり、水底に潜って溺れる人を救ったり、何度も全力疾走したり 007並みの大活躍だが、「ダ ビンチ コード」になると 少しだけ肉体派から脱却して 知性の塊となって中年教授の渋みが出てきている。それにしても、ラングトン教授の博識には いつもながら感心、感動、私は大ファン。

監督:ロン ハワード
製作総指揮:ダン ブラウン
音楽:ハンス ジマー
キャスト
ラングトン教授:トム ハンクス
カルメンゴ:ユアン マクレガー
ヴィットリア:アヤレト ズーラー

ストーリーは
ハーバート大学象徴学者のロバート ラングトン教授のところに 突然 スイスにあるヨーロッパ原子核研究所機構から 使いが派遣されて、スイスに招聘される。世界で初めて生成に成功した「反物質」が盗まれ、その「反物質」を作り出した学者が殺された。
無残にも学者の胸にはイルミナテイの紋章が焼印されていた。反物質とは 新しいエネルギーで 放射線の100倍のエネルギー効率を持つ。原子核研究所機構のセットから外されて 盗まれた反物質は 24時間以内に 研究所のセットに返さない限り 爆発する。24時間以内に回収できなかったら 爆発をくい止める方法はない。

時を同じくして バチカンに イルミナテイから脅迫状が届く。「反物質」をバチカンに仕掛けたという。何世紀も前に絶滅したはずの イルミナテイという秘密結社が ヴァチカンのローマ法王の突然死した直後に バチカンを一瞬の内に 跡形もなく吹き飛ばすほどの威力のある新型爆弾を仕掛けた。おまけに 次期ローマ法王候補のうち、もっとも有力候補だった4人の枢機卿が誘拐されており、イルミナテイはその一人一人を一時間ごとに公開処刑する という。
イルミナテイは カトリック教会に身代金を要求しているわけではない。脅迫でもなく、これは宣言であり、何世紀ものあいだ イルミナテイを迫害してきた教会にたいする復讐なのだった。

イルミナテイとは17世紀にできた哲学、科学者の間で作られた組織で、彼らは カトリック教会から迫害されて 地下で秘密組織化されたが、すでに消滅したと考えられてきた。ラングトン教授は イルミナテイの主要メンバーだった 科学者ガリレオが残した著書にヒントを得て 4人の枢機卿が公開処刑される場所を同定して、救助しようとする。反物質の生成を成功させ殺された学者の娘 ヴィットリアも一緒だ。

ガリレオは科学者だったが 敬虔なカトリック教徒でもあった。科学は神の存在を脅かすものではなく むしろそれに説得力を与えるものだと考えていたが 時の権力者 カトリック教会は ガリレオを異端者として裁き 迫害した。イルミナテイの会員のうち4人の科学者は 生きながら胸に十字の紋章を焼印されて公開処刑された。何世紀もたった今、イルミナテイは この恨みを晴らそうと、復讐にでた。

ガリレオは 沢山の著書を残しているが 科学的事実で公表を許されなかった論文や出版社に焚書されたものが多い。ラングトン教授は ガリレオの出版を禁止された著書に、ガリレオの友人で同じくイルミナテイの会員だった 作家ジョン ミルトンの4行詩が書き込みされているのを見つける。 

悪魔の穴開く サンテイの土の墓より
ローマに縦横に現る神秘の元素
光の道が敷かれ 聖なる試練あり
気高き探求 天使の導きあらん

この詩に 誘拐された4人の枢機卿が公開処刑される場所が 隠されている。イルミナテイは 科学の4大元素を 一つずつ4人の枢機卿の胸に 生きたまま焼印を押されて殺す予定だ。4大元素とは 土、空気、火、水。イルミナテイは 午後8時から1時間ごとに 4人の法王候補者を公開処刑して、深夜12時には 反物質が爆発をしてバチカンが跡形もなく爆破される。ラングトン教授とヴィットリア、バチカン警察、スイス警備隊は 猛烈なプレッシャーのなかで 爆弾の発見と 枢機卿の救出に走り回る。

とびきり頭の良いイルミナテイと、時間の限界のなかで これまた天才的な頭脳と行動力を持ったラングトン教授の対決と知恵比べが ものすごくスリリングでおもしろい。時限爆弾が仕掛けられているので 刻一刻、爆発の時が迫っている。もう、気は気ではない。  

法王の死去にともない 新しい法王を選出するコンクラーベ(選挙)までの間 死去した法王の秘書だった若い牧師、カメルレンゴの肩にのしかかった 重大責任と苦悩。カメルレンゴの複雑に 絡み合って解けない 法王への絶対的な愛情と憎しみ。この作品のラングトンに次ぐ 主人公カメルレンゴも、魅力的に描かれている。

読者または観客は 時限爆弾を抱えたまま 暗号を読み解きながら ローマ市内をラングトン教授とともに 走り回る。土、空気、火、水のヒントを探して 意外にもイルミナテイの会員だったベルニーニが彫刻や教会に残した意味を説き解いていく。ローマの地図を頭に描きながら 一通り市内観光をしてしまう。スリル満点。映画の完成度は、「ダ ビンチ コード」より この作品のほうが 高い。
映画を観た人は 本を読むことをお勧めする。本を読んだ人には映画を観ることをお勧めする。とにかくおもしろい。

ダン ブラウンという人、1964年ニューハンプシャー生まれで、45歳。父は数学者、母は宗教音楽家、妻は美術史研究家だそうだ。
「天使と悪魔」、「ダ ビンチ コード」に続く第3弾「THE LOST SYMBOL」が脱稿され、ことしの9月に出版される。
ワシントンを舞台に、フリーメイソンをテーマにした作品らしい。
フリーメイソンは 中世のヨーロッパでギルト社会を守る為に作られた組織だった。それが今でも続いている。チャーチルも ケネデイーも会員だった。入りたくて入れる組織ではない。世界で一番 入会審査の厳しい 今も現存する組織だ。この組織をラングトン教授が どう暴いて解き解いてくれるのか。またまた教授が どう活躍してくれるのか 楽しみだ。出版される日が 待ち望まれる。

2009年6月3日水曜日

娘が結婚したー!


















次女が結婚した。
5月31日 クイーンズランドのハミルトン島で。

娘が もう長いこと この相手と一緒に暮らしていて、彼のいびきがうるさいことも、ちょっと厳しいことを言うと すぐに すねることも、必要なときにフラッと出て行って居なくなることも よくわかっていた。

背ばかりが 高くて ヒョロっとした こんな無知で無教養で、碌な仕事に就いているわけでもなく 金もない 図体ばかりの男のどこが良いのかわからないが、

いつなんどき 瀕死の患者が飛び込んでくるか わからない救急動物病院の救急医を勤める娘には 居心地の良い大きな枕が必要なのか と思い、

ああ、娘はそんなにもストレスにまみれて働いているのか と、不憫に思っていた。

初めて 娘の口から 結婚の言葉が出たときは、腰をぬかして、あせりながら、「あんな奴でいいのか?」と、思わず 男の悪口を100以上並べ立てたが、

後日 再び 娘から 話題が出たときには 覚悟ができていた。

まあ、教養の塊で、責任感があり、立派な仕事を持ち コツコツ貯めた貯金額が高いからといって、必ずしも娘がくたびれているときに 疲れを癒してくれるわけではない。
娘のように スポーツも一通りやり、絵を描き、ヴァイオリンやチェロを弾き、オペラや芝居をよく理解し、詩とたしなみ、様々な芸術作品を紡ぎ出す そんな男が居たとしても、それで、娘をウマが合うとは 限らない。

気が付かないうちに 私も このウドの大木を愛しているみたい。可愛い奴。

そうこれでいい。

結婚おめでとう。