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2008年4月24日木曜日

アイマックスで U23Dを



世界最大の大型映像アイマックスで、U2のコンサートを観た。$18なり。

U2は アイルランド ダブリン出身のボノを中心とする4人のロックグループ。1976年から活動を始めて 30年あまりたった今も現役で ワールドコンサートを続けている。バンド結成当初から、政治的メッセージを歌にこめて歌い、ベトナム戦争終結当時の騒然とした社会をよく反映していたが、時代とともに、成長し続けてきた。ボノの のびやかで、豊かな声量と、THE EDGE のギター、キーボードと声のコンビネーションのよさは絶妙だし、ADAM CLAYTONのベースで、がんがん パワー全開、LARRY MULLERJRのドラムでビートを効かせる。U2の どの曲も好き。聴いていて、ロックっていいなあと素直に思う。

彼らのアムネステイインターナショナル、THE ONE CAMPAIN、BONO'S DATA(DEPT,AIDS,TRADE,IN AFRICA)など キャンペーンも援助の仕方にいやみがなくて、理にかなっている。 フィルムは、HANNAH MONTANA コンサートや、マデイソンスクエアガーデンでのコンサートなど、最近のワールドツアーのいくつかを ひとつのフィルムに編集したもの。曲目は、SUNDAY BLOODY SUNDAY, BEAUTIFUL DAY など代表作含めて、15曲。88分のフィルムで、ボノは 休みなしで歌い続けて、途中、解説もおしゃべりもなし、文字どうりのコンサートパフォーマンスの中継になっている。9本ものカメラで、立体的に肉薄した映像を作っている。

受付で、プラスチックでできた3Dの眼鏡をもらって、中にはいって、大型画面にむかって、急傾斜の階段椅子にすわる。 アイマックスを観るのは二度目、松下電器パナソニックのテクニックで、シドニーに初めてこれが作られたのは、10年前。出来たばかりの頃、3Dではないが、野生動物のフィルムを初めて見た。その頃は $18がとても高く感じられて、映像を見ていて、何もかも大きすぎて、眩暈がして、見終わった後 吐きそうになった。それから10年、普通の映画でも$13.50に値上がりして、アイマックスの$18が安く感じられるようになった。それに、ロックを たまには がんがん聴いてみたい。

期待わくわく、3Dでみたコンサートは 確かに自分がコンサート会場にいるような錯覚がする。ボノが自分の横で歌ってくれたり、アダムクレイトンのギターが手で触れられそうに思える。すごく ドキドキする。

どうやると3D画面がこんなに身近に見えるのか、説明書を読んでみた。 人は右目と左目でものを見ていてそれぞれ多少違って見えているのが、脳の中で左右を統合してひとつの実体を見ている。同じ原理で右からと左からと 二つのカメラでフィルムを回して 巻きもどして同時に2方向から投射すると奥行きのある平面でない実物のような立体的な映像ができる、らしい。

アイマックスのフィルムの大きさは35ミリの普通の映画の10倍以上、70ミリのシネマスコープの3倍以上の大きさのフィルムを使っている。座って映像を見ている位置から 8階のビルデイングを見上げている高さということになる。普通映画のフィルムは縦に巻いてあるのを画面に映し出すが、アイマックスは フィルムを横(水平)にして、横から波の動きのように滑らかにフィルムを送るそうだ。そして、フィルムはカメラの後部にぴったりくっつくように、陰圧になっていて、しわもなく、完璧な映像が送り出されるようになっている。 フィルムのコマが大きくなればなるほど、画質が良くなるので、普通の映画で観られない 鮮鋭な映像が観られるということだ。

アイマックス3Dのような大型画面を見せるために、強力なプロジェクターが必要になるわけで、普通のプロジェクターは2000から4000ワットで済むのが、15000ワットの強力プロジェクターを使っていて、これを稼動させるために、1分間に1600メートル四方の冷風と、36リットルの冷水で 冷やしながらプロジェクターを回しているんだって。
裏方さんたち、ご苦労様です。

日本でもアイマックスは、東京、品川のプリンスホテルに あったのに、コクドの経営不振で 去年の3月に、閉館営業停止になったそうで残念。名古屋港水族館では 健全だそう。 コンサートをアイマックスで3Dで見せるというのは、とっても良いことだと思う。コンサートには行けなくても その場にいるような感じになれる。大きな音で 音の渦のなかですっかり浸りきれる。

今度は、ベートーベンの第9か、やっぱりパンクが良いかな。

2008年4月17日木曜日

映画「幸せの1ページ」



新作映画「NIM"S ISLAND」を観た。子供向けファンタジー映画ということになっている。
原作 WENDY ORR, 映画監督MARK LEVINとJENNIFER FLACKETT夫婦、 配役、NIMにABIGAIL BRESLIN, 作家にJODIE FOSTER,海洋学者にGERARD BULTER.

ニム(ABIGAIL BRESLIN)は、11歳、海洋生物学者のお父さん(GERARD BUTLER) と二人きりで活火山がある南太平洋の無人島に住んでいる。お母さんは 海で事故に合い 亡くなった。 ニムはお母さんが大きな鯨のおなかの中で今でも元気に暮らしていると思っている。

二ムの親友はアシカ、大トカゲ、亀、ペリカンなどだ。アシカとヒップッホップを踊るし、彼の体につかまって海で泳いだり潜ったりして遊ぶ。大トカゲはいつもニムの体のどこかしらにくっついていつも一緒だ。

月に一度は軽飛行機が 島に荷物を落としてくれる。中にはニムの大好きな作家、アレックス ローバーの書いた冒険小説が入っている。彼の書いた冒険小説に出てくる主人公がニムのヒーローだ。ヒーローは 砂漠で死にかけたり、山で遭難しかけたり、山賊に殺されかけたりしながら世界中を旅する いつも強くて大活躍の冒険家だ。

作家アレックス ローバーは 自分の小説の中で、主人公に冒険をさせるため 必要な科学的な知識をコンピューターを通じて ニムのお父さんの知恵をかりている。お父さんは、ナショナルジェオグラフィックでも紹介されている有名な研究者だ。しかし、アレックス ローバーは著者名で、本当の名は、アレクサンドラ。女性で、冒険どころか、小さな虫にも恐怖の悲鳴をあげる、自分の家から出て、外気に触れるのも怖くて 人と接触することもできない、神経症の閉じこもり作家だ。

そんなある日、お父さんは ボートで研究のために外洋に出たまま、嵐にあって帰ってこられなくなる。荒れる海で ボートのマストが折れて、ボートは水びたし。たった一人 島に残されたニムは、途方にくれる。そんな時に、観光旅行者が、突然ボートで島にピクニックにやってくることになった。二ムはお父さんと二人だけの秘密の場所を守るために どうしてよいかわからない。 何日たっても、お父さんが帰ってこないので、遂に、インターネットで二ムのヒーロー 作家のアレックスローバーに助けを求める。

アレックスは 自分の熱狂的ファンの11歳の女の子の窮地を知って、助けに行ってやりたいが、本当の自分は家の外の郵便ポストまで行くにも、勇気を奮い立たせて、何日もかかって、郵便を取りに行くような状態。しかし とうとう作家は自分が書いた冒険小説のヒーローに背中を押されて 決死の覚悟で飛行機に乗り、沢山の乗客や 周りの人々に迷惑をかけながら、サンフランシスコから、トンガまでたどり着き、その後は 暴風雨の中を ボートで半分死んだ体で ニムの島に漂着する。

ニムはアレックスが冒険小説のヒーローとは似ても似つかない か弱い女性だったことに 心からがっかりする。が、たった一人の保護者だったお父さんが行方不明で、途方にくれて泣いているニムにとって アレックスは必要な存在だった。苦労してサンフランシスコから 自分に会うだけのためにやってきてくれたアレックスに ニムは心を開く。 そうしているうちに お父さんが壊れたボートの破片で組み立てたウィンドサーフィンで帰ってきて、、、 というお話し。

子供のとき 誰もが学校に行かないで 南の島で毎日 動物達に囲まれて 好き放題に暮らす夢を見たのではないだろうか。そんな夢、そのままの映像、、アシカにつかまって海に潜って魚達とたわむれる、やしの樹に登って 実を取ってジュースを飲む、亀の出産を手伝って、赤ちゃん亀達が海に帰っていくのを助けてやる、その肩にはいつもペットの大トカゲ、はだしで駆け回る密林、ターザンのように樹のツルにつかまって山から海辺まで下りてくる、どこまでも青い海と空、、、 子供だけの夢ではない。現代社会に疲れ、複雑な人間関係に辟易としている大人たちのドリームであるだろう。

そのうらやましい11歳の女の子をいとも自然に演じているアビゲール ブレスリンは、確かに天才子役と言えるだろう。 ジュデイー フォスターも、子役からきた俳優。デニーロの「タクシードライバー」(1976年)で13歳の娼婦役をやって、世界から注目されアカデミー賞をノミネートされた。1988年「アキューズド」で アカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞、1991年「羊達の沈黙」で 再びアカデミー主演女優賞と、ゴールデングローブ賞を取った イエール大学卒のインテリ女優。彼女のアレックス ローバーの役が、とても良かった。滑稽な弱虫 腰抜けぶりが、わざとらしくなくて気持ちよく笑わせてくれる。どんな役でもできる、知的で美しい女優だ。

この映画、子供のためのファンタジーにしておくのはもったいない。大人にこそ、こんなファンタジーが必要なのだから。さあ、仕事をやめて、休暇をとって、、、海にでかけようぜい!!!

2008年4月13日日曜日

映画「BEFORE THE DEVIL KNOWS  YOU'RE DEAD 」




映画「BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU’RE DEAD 」を観た。今年の映画の中で最高によくできた映画のひとつ、といううたい文句につられていってみた。

題名は、「May you in heaven half an hour before the Devil knows you 're dead」という アイルランドの ことわざというか、慣用句からとったもの。おまえが死んだことを 悪魔が知る30分前に天国に もう着いていますように、、、と言う意味。

不動産会社のマネージャー、アンデイ(PHILIP SEYMOUR HOFFMAN)と、仕事にあぶれて定職のない弟、ハンク(ETHAN HAUKE)は もういい年なのに二人とも生活に四苦八苦している。アンデイーは、仕事の重圧と、愛人関係に行き詰まっており、ストレスから麻薬に手を出して中毒になっている。お金がいくらあっても足りない。

弟ハンクは別居している妻から娘の養育費を厳しく取り立てられていて慢性的金欠病に悩まされている。もともとこの弟、自立心がなくいつも立派な兄に頼っていて、まともに家庭を築いたり ひとつの仕事に就いてしっかり責任を果たすことが出来ない半人前の人間だ。卑劣なこに、兄の愛人と隠れて関係をもっている。

ある日、兄は弟を呼び出して、ショッピングセンターにある 小さな宝石店を襲って売上金と宝石を強奪する計画をもちかける。この店をアンデイーもハンクも良く知っている。なぜなら、彼らの両親が経営する宝石店だからだ。両親は子供達とは離れて 郊外に住んでいるが 二人とも仲がよく、絵に描いたような良い老夫婦だ。

毎朝、決まった時間に店を開け、母親がしばらく一人きりでいる時間に、覆面をして、母親をちょっと脅かせば難なく現金と宝石が手に入るはずだった。 でも、弟はそれを一人きりでやる勇気がない。悪い友達を誘って 彼に強盗をさせて、その間 自分は店の前で車のドアを開けて待っている。しかし、予想外に、母親は襲われても 銃で強盗を撃ち殺す勇気ある宝石店経営者だった。銃の撃ち合いになって 強盗も母親も命を落とすことになる。腰抜けの弟と 強盗を計画してやらせた兄は 母を間接的に殺す役割を果たしたことになる。二人は 突然の母の死に狂乱する父親と向かい合わなければならないことになった。

父親は 妻を殺した憎い犯人を探し出すよう警察に期待するが、小さな宝石店強盗など日常茶飯事のアメリカでは警察はまともに取り合ってくれない。父親は執念で犯人探しをはじめる。そしてとうとう宝石を質入れしたルートを探し当て たどり着いた先は長男アンデイーだったことに驚愕する。

しかしその頃にはもうアンデイーもハンクも自滅 崩壊寸前の体。アンデイーは麻薬のトラブルで瀕死の重傷で病院に担ぎ込まれる。駆けつけた父親にアンデイーは すべてを告白する。父親は いいんだ、気にするなよ、と言いながら、、、、。

ストーリーはたいしたことのないのだが 画面は緊張感が張り詰められていて すごく引き込まれる。上映の2時間を、全然長く感じない。さすが老練監督のこなれた技術。上手な人が作ると こんなに完璧な面白い映画が仕上がるのだということがよくわかる。 監督、SYDNEY LUMET.84歳の老練監督。「12ANGRY MEN 」、「DOG DAY AFTERNOON 」、「SERPICO」などなど。

俳優;アンデイーにPHILIP SEYMOUR HOFFMAN。2005年、「カポーテ」で、オスカーで主演男優賞を取った名優。弟ハンクにETHAN HAWKE、第一線で活躍する俳優さんだ。でもこのイサン ホークが好きな人はこの映画観ない方が良い。本当に小心で卑劣で情けないほどどうしようもない男を演じている。アンデイーのエリートマネージャーがいったん道を外れると加速度のつく早さで凋落していく様子も、腰抜けの弟の落伍者ぶりも とてもリアルに演じていた。 どうしようもない社会のくずのような兄弟に対して 母親と父親の毅然とした生きる態度ががとても好ましい。

金、ドラッグ、セックス、暴力にまみれて、身を持ち崩し、救いようのない兄弟に対して誠実、堅実で、互いにしっかりした信頼で結びついている老夫婦、特に年老いたお父さんがこの映画では唯一、かっこいい。

現代の家族の崩壊を描いた映画、と言うことがいえるが、今のアメリカの姿を端的に表しているのかも知れない。
映画のタイトルは、父親の祈りの言葉のようなものだろう。 観て損はない映画だ。

北京オリンピック



大昔から スポーツ音痴で運動神経ゼロ、オリンピックが大嫌いで こんなものやってもらいたくないと思い その時々でオリンピックのありかたを批判してきたが、今回の北京オリンピックは、どうだ? 右も左もオリンピック開催に大反対、、一体 これほどまで多くの人々に 開催を反対されたオリンピックもほかになかったのではないかしら。 人々の心の底に 中国に対する強烈な差別意識と、このまま中国を叩かずに野放しにしておくと いずれ戦車で攻めてきて、国を侵略されるのではないか という恐怖感でもあるみたい。

日本の新右翼と呼ばれる人たちが チベットの民主化を求める人民が苦しんでいる、、とか、中国当局による人権無視を許さないなどと言っているのを 目にすると、ええっ?ほんとかよ? と、不思議な気分。 私はオリンピックなどなくなっても 全然オッケーだけど、最低限の改良案を言って見ると、オリンピックは企業からの資金提供をやめ、今のように大規模になってしまった姿をシェイプアップするべきだと思う。

1)企業からのスポンサーシップをすべて中止する。オリンピック開催の必要な資金は 各国拠出の運営金だけでやる。

2)4年ごとに ギリシャのアテネで行い 競技場の新設などしない。今のように開催国が 持ち回りで決められ、莫大な浪費をして自然を破壊しながら新しくオリンピック施設を作ったりしない。

3)競技ごとのメダルは国でなく、個人に渡されるべきだ。

4)野球、サッカー、アイススケート、テニスなど プロスポーツのある種目は、オリンピック種目として認めない。 アマチュアリズムを徹底すべき。

5)オリンピックとパラリンピックを分けずに一緒にやるべきだ。ハンデイーキャップを持った人とそうでない人が 別れて暮らしているわけではない。障害者を隔離せず一緒に生きているのに どうしてオリンピックでは 分けなければならないのか。 以上。

写真はエッフェル塔と、ノートルダム寺院。

2008年4月9日水曜日

また、鯨とドルフィンを食べないで


オーストラリアが 日本の捕鯨に強硬に反対しているのは 絶滅危惧種に指定されている鯨を調査目的といいながら捕獲して食肉として流通させているからだが、オーストラリアの観光産業の目玉であるホエールウォッチングを侵害し、また、南極のオーストラリア領を日本船が侵入して捕鯨を続けているからでもある。 野生動物はいったん絶滅すると回復することができない。人間社会は人口を増やし続け、たくさんの貴重な野生動物を絶滅に追い込んできた。

日本では 捕鯨を批判されたお返しに、オーストラリア政府が400頭のカンガルーを処分することについて オ-ストラリアのやっていることの方が残酷ではないか、という人たちがいる。 それはちがう。人間社会と動物が互いに協調しあって生きていくためにはある程度の動物の処分は止むを得ない。私達のペットの犬や猫も大切に飼うためには避妊手術をしなければならない。放っておけば1年に10匹以上子供を産むことになリ、そのまま全部を繁殖させるなどできない事情は、人間の避妊同様だ。 北海道の熊も保護動物に指定されているが 山から下りてきて人を襲うようになったら処分する。野性のねずみや兎は放っておけば畑を荒らすので駆逐しなければならない。

オーストラリアは日本国土の22倍の大きさに日本の6分の1の人口しかなくて、国の大半は砂漠大陸だ。人の数に比べて圧倒的に野生動物が多い。一度でもオーストラリアの国道を車で走ってみた人ならば 道路に小型カンガルーが車にひき殺された死体を あちこちに見たことだろう。カンガルーは繁殖力が強い。また 光に向かって走ってくるから 300キロも体重のある大きなカンガルーが車のヘッドライトに向かって走ってきて正面衝突すると、車は大破、命に関わる。カンガルーは羊や牛の牧草を荒らす害畜でもある。彼らの肉は寄生虫が多く食肉にも ペット用の肉にもならない。観光客が食べるのは食用に特別に繁殖されたものだ。今年に限らずカンガルーはプロのハンターによって、定期的に処分されてきた。従って400頭の処分に異論はない。

数年前、野生犬のデインゴが 観光客を襲い乳幼児が殺される事件がおきて百頭のデインゴが銃殺されたことがある。観光客が増え 自然の海辺でかもめなど襲って食べていたデインゴが 食べ物を確保できなくなって人を襲うようになった不幸な例だ。

これもちょっと前、クイーンズランドの国立公園で野生馬が増えすぎて 群れで走り回る野生馬に踏み潰されて、羊や牛の牧草地や水源が破壊されるので、やむなくヘリコプターで野生馬を撃ち殺したこともある。野山を駆け巡る野生馬の躍動感は言い様もない美しさだが、ヘリコプターから狙われて 撃たれても1発で死に切れない馬たちの様子はあわれだった。 悲しいことだが、人と動物が共に生きていくためには、ある程度の処分は止むを得ない。

しかし鯨やドルフィンは違う。鯨もドルフィンも一箇所に定住する動物ではなく 暖かい海で出産して 冷たい海で子育てをする移動性の動物だ。鯨とドルフィンが増えすぎて 魚がいなくなって漁師が干上がるということはない。ザトウクジラやナガスクジラが絶滅危惧種に指定されたのは 科学的な根拠があってのことだ。日本の捕鯨船に捕獲されなくても間違って漁師の網にかかって命を落とす鯨もドルフィンも少なくない。プラスチックごみ投棄の犠牲になって死ぬ個体も多い。環境汚染によって、かれらの体内水銀蓄積量は、格段に増えている。保護されるべき動物なのだ。

また、クジラ肉を食べることは、韓国人が犬を食べるのと同じで伝統だから 牛を食べる欧米人が鯨を食べる日本人を批判することも 鯨を食べる日本人が犬を食べる韓国人を批判することもしてはならない、と言う人もいる。 それはちがう。欧米人が食べる牛も、残念ながら韓国人が食べる犬も食肉であり、ペットでも野生のものでもない。食べるために繁殖されたものだ。それに反して、日本人は 野生動物を 日本だけのものではない海から勝手に取って食べているのだ。

オーストラリアが日本の捕鯨を批判することが白豪主義の人種差別だ、と言う人がいる。それはちがう。オーストラリアに限らず世界の目は、クジラを食べる日本人ではなく、それを奨励している日本政府のありかたを批判しているのだ。 オーストラリア人のなかに白豪主義者がいる、って日本の捕鯨推進団体のおっさんなんかにいわれたくねーよ。おっと、失礼!

水産庁のおじさんたち。そんなに鯨を食べるのが伝統だと信じるのなら、試験管ベビーから国内で育てて 養殖池で大きくして、養殖クジラを食べなさい。それができないなら、日本だけのものではない公海で日本人だけのために生まれてきた訳じゃない鯨とドルフィンをもう食べるな。もう食べるのを止してくれ。

2008年4月7日月曜日

再び再びドルフィンを食べないで


去年9月22日の「ドルフィンを食べないで」と、今年2月21日の「再びドルフィンを食べないで」の記事に続いて 3たび「ドルフィンを食べないで」を続ける。

アメリカの海洋保護協会という団体が 和歌山県太地町の追い込み漁 突きん棒で数百頭のドルフィンが叩き殺される姿を撮影し、長編ドキュメンタリーフィルムとして完成 発表することになった。地元にわからないように隠密に潜入、プロの潜水カメラマンが長時間潜ったまま ドルフィンが惨殺される姿をフィルムに納め、これがドキュメンタリーフィルムとして編集された。フィルムが世界をかけめぐり、ドルフィンを殺して食べる日本の伝統の良し悪しが世界で問われようとしている。発表はこの6月。

女優のヘイデン バネッチアが、テレビで、「日本のタイチから帰ってきたところよ。イルカ漁を止めさせるためなら、何度でも行くわよ。人間として当たり前のことでしょう?」と発言していたのを聞いて、ふーん こんなきれいな人がドルフィンを守るために危ないところに行ってきて、えらいなーと思ったが、このとき、フィルムを回していたのか と、あとで納得がいった。

ドルフィンを 21世紀の今、経済大国で食べ物の有り余っている日本人が毎年何百頭も叩き殺して食べている。エスキモーだってアボリジニーだって食べたりしなかった人間の友達ドルフィン、人間の幼児なみの知能を持つ野生動物を 日本人が食べている。このことを、日本人は知らなさ過ぎる。無知は犯罪を助長する。日本のメデイアは どうして報道しないのか?

このフィルムが発表されたら在外日本人に、いっせいに日本バッシングの嵐が襲い掛かってくるだろう。私には 世界中からの厳しい批判に抗して足を踏み固めて立っていられるかどうかわからない。今でさえ、日本人とわかると、振り向きざま、クジラ食うなよ、と言われ、唾を吐きかれられそうになっているのが現状だ。私はひどい目にあっていない、と言う人は 自分に向けられた軽蔑と非難を英語がよくわからなくて何を言われているのか知らずにすませているか、外国にいても日本人としか付き合いがなく、狭い日本人社会を作ってコップになかで暮らしているかだ。

日本の水産庁では 南極海における捕鯨で、ミンククジラ900頭、ナガスクジラ50頭 調査捕鯨のために捕獲、肉を市場に流通させている。 一方、国内では沿岸捕鯨についても 捕獲粋を、例えば和歌山の太地町には小型鯨類のマゴンドウ300頭、バンドウイルカ990頭,ハナゴンドウ550頭などと、細かく頭数を指定して日本沿岸での捕鯨を許可している。同じ静岡県伊豆でも、追い込み漁で小型捕鯨捕獲粋が認められているが全く捕獲が行われなくなっている。イルカが余り来なくなった上 経済的に出漁しても採算が合わなくなったためだと言う。

太地町で捕鯨が今でも続けられているのは 400年の歴史を誇る伝統だからという。しかし伝統、文化をささえる下部構造、経済流通基礎がなくなれば 伝統などただの メルヘンだ。良い伝統もあれば、悪い伝統もある。世界のモラルに抵触するような伝統は廃棄しなければならない。

日本以外、世界の国々から批判されながら 南極海で捕鯨を続けている水産庁の日新丸から何千トンもの鯨肉が洋上で パナマ船籍オリエンタルブルーバードという船に移されて、日本に到着しつつある。新鮮な 取れたての鯨肉が 市場に出回るだろう。この肉の中には 母親と共に殺された赤ちゃんのミンククジラの肉も含まれている。血にまみれて母と子が一緒に海中から日本船に引き上げられるときのフィルムは 日本以外の国では毎日報道されニュースに取り上げられた。

調査捕鯨の運営は日本鯨類研究所が水産庁から研究委託されているが 財源は国庫補助だけでは足りず、鯨肉の売り上げでまかなわれている。従って、調査捕鯨と言いながら、商業取引が前提の調査捕鯨であって、科学調査など、現実にやっていない。そのことで、IWC (国際捕鯨委員会)からも批判されている。さらに、日本は国際法に違反して、絶滅危惧種のザトウクジラやナガスクジラを捕獲して、肉を食卓に運んでいる。恥ずべき国だ。

1)ドルフィンを小型鯨類として殺して鯨肉として流通させていることに反対する。ドルフィンを食べていることを知らずにいる消費者をだまし、またどうしても、鯨肉を食べなければならない理由も消費者にはない。

2)沿岸捕鯨は船でドルフィンを岸に追い込み1頭1頭 棒で叩き殺すという方法、このような残酷な方法で幼児並みの知能を持った 群れで生きる野生動物を殺して食べることは、倫理的にも許されない。
3)加えて、南極海で行っている調査捕鯨と言う名の商業捕鯨は、世界的な野生動物保護と言う観点から大きく外れ、国際法違反を犯してまでも、絶滅危惧種にある大型動物を殺すことは許されない。

以上に観点から、すべての捕鯨に反対する。また、アメリカの海洋保護協会によるドキュメンタリーフィルム作成の勇気と努力を讃えたい。

2008年4月2日水曜日

映画 「ノー カントリー」




2008年のアカデミー賞を4部門で受賞した作品、「NO COUNTRY FOR OLD MEN」を観た。受賞は、最優秀監督賞、作品賞、男優賞、脚本賞だ。監督コーエン兄弟も、鼻が高いだろう。

メキシコ国境に近いテキサスで、ベトナム戦争帰りのカウボーイ モス(JOSH BROLIN)は、妻と二人で暮らしている。ある日、砂漠で、何人もの死体と車と麻薬が 取り残されている犯罪現場に 偶然 居合わせる。さらに、すこし離れた木の下に 現金の詰まった鞄を抱えて死んでいるメキシコ人を見つけて、彼は、この鞄を持って帰って来る。 不審がる妻をせきたてて実家に帰し 疎開させ、自分はこの大金を持って逃亡の旅に出る。しかし、鞄の中の現金には発信機が取り付けられていた。この現金を取り戻すために 殺人マシン殺人狂のアントン(JAVIER BARDENS)が、追ってくる。

この男は雇い主や、麻薬取引には関心がない。ただ、現金をとりもどすことだけに、執着している。そのためには 最終的には雇い主を殺すことも、善良を絵に書いたような何の罪もないテキサス人を何人殺すことになってもおかまいなしだ。酸素ボンベを取り付けたエアガンを武器に徹底的に追い詰める。

モスに:JOSH BROLIN
殺人鬼アントンに:JAVIER  BARDEN
それを追うテキサス警官に:TOMMY LEE JONES

どこまでも執拗にモスを追い詰め その過程で全く何の罪もない善良のかたまりのような人々を いとも簡単に次々と、殺しまくるJAVIER BARDENが 本当に怖い。サイコ映画やミステリー、ホラー映画などより ずっと怖い。

この俳優ジャビエル バーデンは 「BEFORE NIGHT FALLS」2000年で、アカデミー候補、その後、「THE SEA INSIDE 」でゴールデングローブ才優勝男優賞を獲っている。

「BEFORE NIGHT FALLS」は、キューバ革命後、新政府からホモセクシャルという理由で弾圧を受けた、実在の作家、REINALDO ARENASを演じた。アルコール、ドラッグ、セックスなどの享楽を糧に作家生活してきた青年が厳しい弾圧を生き抜き、アメリカに亡命してから、エイズで亡くなるまでの姿を演じた。低予算のローカルな映画だったのに、主役JAVIER BARDENよりもずっとネイムバリューのある「カリビアンの海賊」の、ジョニーデップが脇役で出ているので 話題になった作品だ。

「THE SEA INSIDE」は 「潜水服は蝶の夢を見る」にすごく似た作品。全身麻痺でベッドから起き上がることが出来なくなった男が 30年間 安楽死できる権利を求めて 社会に訴え続けて死んでいった実在の人、SPANIARD RAMON SAMPREDOのお話。若くてピチピチだったころから、ベッドに縛り付けられ、30年のあいだにやせ細り、顔つきもかわっていく姿を演じていた。麻痺で動けない人の映画は、最も難しい演技に違いない。

この俳優本当にどんな役でも演じられる。この人 主演の「BEFORE NIGHT FALL 」でも「THE SEA INSIDE」でも彼のワンマンショーと言った感じだったので 気がつかなかったのだけれど なんか他の俳優に比べると飛びぬけてせ背が高く 図体も大きくあくの強い個性的な顔をしていたことに改めて気ずいた。 異様に大きな男で奇妙なヘアスタイル、独特の雰囲気をもったJAVIERが 人の良いJOSH BROLIN やTOMMY LEE を追い詰めていく姿は もう逃げられないという強迫感いっぱいで 本当に怖い。性格異常者というか、人間を超えた何か、人間とは違った別の生き物と言う感じがする。それに比べて、彼に殺されていった人々は、善良そのものの、、、テキサスの雑貨屋のオヤジ、農夫、主人公のモスだって目の前にあった現金を盗んだだけで、それほどワルではない。それに何もしらない純真な妻まで、何の罪もないのに巻き込まれて殺されていった。

ただただ無残だ。たまらない。タイトルのように NO COUNTRY 善良で正直な年寄りが住めるところなどもうないのならば、 新しい社会がこの男のような異常者ばかりならば、このまま生き続けることなど、願い下げだ。