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2012年7月27日金曜日

オペラオーストラリア公演「アイーダ」

                                   
オペラオーストラリア定期公演の「アイーダ」を観た。

1870年 ヴェルデイ作曲
初演;1871年 カイロ オペラ座
4幕 2時間30分 イタリア語
演奏;オーストラリアオペラ バレエオーケストラ
指揮:アルボ ヴォルマー
監督:グレイム マーフイー

キャスト
アイーダエチオピア王女:  ラトニア モーア 
ラダミスエジプト軍将軍:  ロザリオ ラ スピナ
アムネリスエジプト王女:  ミリアナ ニコルフ
アイーダ父エチオピア王:  ワーリック ファイファ
アムネリス父エジプト王:  ジェド アーサー

「アイーダ」はオペラの中でも 豪華絢爛、派手で立派でスペクタキュラー。堂々とした凱旋の歌が 劇中、何度も何度も繰り返されるので、勇ましくて、最も好きなオペラだ。エジプトでは、新年のお祝いに、ピラミッドの前で公演が行われたりしてきた。
ヴェルデイは、「リゴレット」、「椿姫」、「トロバトーレ」、「ドンカルロ」、「オテロ」などを作曲したが、このオペラはイタリアオペラの良さを存分にて味わうことができる。
5年前にオペラオーストラリアで観たが、再演されることになって、どうしても観たいと思ってきた。長いことオーストラリアで たくさんのオペラを観てきたが、印象的で いつまでたっても、どうしても忘れられないオペラは、そう多くない。この「アイーダ」と、「真夏の世の夢」くらいだ。どちらも 意表をつく舞台の作り方をしていて 舞台美術のお手本のような素晴らしい作品だった。

「アイーダ」では、舞台の前に、端から端まで細長いプールが出来ていて、これがナイル川。登場人物たちが咽喉の渇きを癒したり、バレエ団が泳いで渡って見せたり 川べりでニンフ達が遊び呆ける姿を見せてくれて とても楽しい。
物語は三角関係の末に 愛し合う二人が悲劇の死を迎える悲劇だが、ファンファーレが鳴り響き 凱旋の行進とともに50人を越える男性コーラスが力強い合唱をする。その立派な行進とそれを取り囲む豪華な衣装の王族達、バレエ団の踊りなど 華やかな明るさに満ちている。舞台一杯に すべての登場人物がそろうと100人ちかい人々が 晴れやかに歌う。観ていてオペラって何て素敵なのだろう、と心から思う。

ストーリーは
エジプトの若き将軍、ラダミスは 将来エジプト国王の一人娘アムネリスの夫に選ばれることになっている。アムネリスは心から 勇敢なラダミスを慕っていた。ラダミスが戦勝っをあげて帰国し次第 王女と結婚して、国王は引退して王座をラダミスに譲るつもりでいた。

ところが、実はラダミスは エチオピアから連れて来られて奴隷になっているアイーダと 密かに愛し合っていた。
エジプト国王はラダミスを、エチオピア討伐に行かせる。アイーダは愛する人の安全を願いながらも、祖国への愛と父親の安全を危惧して、苦しむ。アムネリス王女は かねてからアイーダが誰かを愛しているのではないか と思っていた。ラダミスの留守中に、試してアイーダに、「ラダミスが闘いで殺された」と言って見る。それを聞いて 取り乱すアイーダの様子を目にして、王女は アイーダが間違いなく自分の恋敵であったことを知ってしまう。

ラダミス将軍は、勝利の歌とともに凱旋する。強国エチオピアを打ち破り、国王達王族を捕虜として辱めるために引き連れてきた。アイーダは愛する人が無事で帰ってきてくれて、嬉しいが、自分の父親や兄弟の変わり果てた捕虜姿を見て悲嘆にくれる。

捕虜となったエチオピア国王は、悲しむ娘アイーダに巧みに近付き、その夜、監視のない逃げ道を聞き出そうとする。父に祖国への愛と忠誠を迫られ、拒みきれなくなったアイーダは ラミダスに 逃げ道を聞いて、父親に伝えてしまう。捕虜達は逃亡し、追っ手が出され、国王は捕獲されて殺される。しかし、結果的にエジプトに裏切りを働くことになってしまったラダミスは 謀反人として審判にかけられ、死刑を言い渡される。刑罰は生き埋めの刑。
ラダミスが、砂漠に埋められた石棺の中に入っていくと、そこには、逃げたはずのアイーダが待っていた。二人は再会を喜び合い、ともに抱き合って、息絶える。地上では 愛する人を失ったアムネリスがラダミスの冥福を、一心に祈っている。
というお話。

今回の主役 ラダミスは オーストラリア生まれのイタリア人、ロザリオ ラ スピナだった。大好きな歌い手。すばらしく甘い、伸びのあるテノールを聞かせてくれる。6年くらい前、イタリアから帰国したばかりで新人として「リゴレット」を演じた。美しい声に感激したが、オペラが終わってオットと劇場を出たところで、たった今 感激させてくれたこの青年が、ひとりきり ひょいと舞台裏から出てきて、歩いて帰るところだった。思わず、バイバーイと、手を振ると、にっこり笑って手を振ってくれた。何の飾りもないブーツにジーパン姿の好青年の後姿に、思わず見惚れてしまった。
その時から何年もたったが、彼は二倍の大きさになっていた。しばらく見ないうちに、しっかり太って貫禄がついていたのには驚いた。スパゲテイの食べすぎか、、。アンドレア ボッチエリのような声の輝きはない。ホセ カレラスや パバロテイのような強靭さはない。プラシド ドミンゴのような明るい、伸びやかなう美しい声だ。ヨーロッパで活躍しているらしく、オーストラリアにあまり帰ってきてくれないが 今後もここで歌って欲しい。

ソプラノのラトニア モーアはアフリカンアメリカン。声につやと輝きがあって、キャサリン バトルのような声に清らかな美しさがある。彼女も太っていて、彼女とロザリオ ラ スピナが抱き合ってアイの歌を歌っていると、互いの腕が腰まで回らないみたい。二人のウェストを合計すると3メートルくらいか、、。
でも二人とも声が素晴らしい。

アルトのアムネリス役は背が高く舞台栄えのする人だった。登場人物すべての衣装が とにかく秀逸。白地の長いガウンに金色をたっぷり使った冠や衣装はとても豪華で美しい。
とてもとても豪華で晴れやかで素晴らしい舞台だった。忘れられない。いつまでたっても、凱旋の歌が頭の中で鳴り響いている。

2012年7月25日水曜日

映画 「ダークナイト ライジング」

                             
ワーナーブラザーズ アメリカ映画

原題:「DARK KNIGHT RISES」
原作:ボブ ケイン 1939年 
上映時間:2時間45分
監督:クリストファー ノーラン

キャスト
ブルース ウェイン  :クリスチャン ベール
執事アルフレッド   :マイケル ケイン
ウェイン財閥代表   :モーガン フリーマン
キャットウーマン   :アン ハサウェイ
ジョン ブレイク刑事 :ジョセフ ゴードン レビット
ジム ゴードン刑事局長:ゲイリー オールドマン
殺し屋べイン     :トム ハーデイ
ミランダ       :マリオン コーテイヤル

ストーリーは
ゴッサムシテイー市長、ハービー デントが死んで8年が経った。彼の捨て身のギャング団、壊滅作戦の功績によって、街に平和が戻った。と、市民は信じている。実際にはハービー デントは、刑事局長ジム ゴードンの家族を人質にとって、レイチェルを失った仕返しに、ゴードンを襲って殺そうとしたところを、バットマンとゴードンの力によって葬り去られたのだった。事実を知っているのは、ゴードン刑事局長とバットマンだけだ。このために、バットマンはハービー デント殺しの容疑者として警察に追われている。

このジョーカーとの闘いで、全身に傷を負ったバットマンこと ブルース ウェインは、この8年間 治療に努めてきたが、杖をついて歩く身となっていて、人前に出ることを避け、隠遁生活をしていた。
にも関わらず、謎の女、セリーナ カイル(キャットウーマン)が介入してくる。折りしも、ロシアの核物質物理学者のカーボ博士が誘拐され、凶悪犯テロリスト、べインが現れて、ゴッサムシテイーを破壊しようと企てていた。

ゴードン刑事局長が、誘拐され瀕死の重傷を負って助け出された。彼は、部下の新人刑事ジョン ブレイクに、この窮状を救えるのはバットマンだけだ、と漏らす。ブレイク刑事は ブルース ウェインを訪ねる。
彼は8年前、バットマンがゴードン刑事局長の家族を助けるために戦っている時に殉死した警官の子供だった。孤児となった彼は ウェイン財団の経営する孤児院に保護されて育った。孤児たちにとってバットマンは英雄だったが、ウェイン財団のブルース ウェインも 自分達と同じ孤児だったという意味で英雄だった。みなは、孤児だったウェインが仮面を被り、悪人をやっつけてくれるバットマン、その人ではないかと、いつも語り合っていたのだ。彼は、バットマンに帰ってきて欲しいと、ブルース ウェインに懇願する。

体中に傷を負い 心の支えだった恋人レイチェルを失ったブルース ウェインは、もう引退するつもりで居た。しかし、この新人刑事ブレイクの言葉に励まされ、今がバッドマンの再稼動の時期だ、と思い定める。それを観ていたアルフレッド執事は、怒る。両親を失ったブルースを親代わりになって世話してきて いつか彼が妻と子供をもち、静かな生活をする姿を夢見て生きてきたが、傷だらけになりながら 命を惜しもうとしないバットマンを、もう世話することに耐えられない。何世代も前から家族のためにつくしてきた執事は去っていった。しかしブルース ウェインは執事の忠告など聞いていない。ゴッサムシテイーに 凶悪テロリストのべインがやってきたのだ。

極悪者べインは株式市場を占拠する。市場操作で、一夜のうちにウェイン財閥は破産させられた。経営権は クリーンエネルジーの会社を経営するミランダの手に渡った。市のフットボール会場で爆弾が破裂して何千人もの被害者が出る。ゴッサム市に渡るための橋は すべて破壊され、たったひとつ残った橋は封鎖され、全米本土と隔離される。警察官たちは そろって地下に封じ込められた。べインの暴力は街中でほしいまま荒れ狂う。

8年間姿を消していたバットマンが登場する。しかし罠にはまってべインに攻撃され瀕死の重傷を負って 砂漠のなかの地下深く、二度と外に出ることが出来ない牢獄に監禁される。二度と立つことが出来ないと思われるブルースに 食べ物を与え、傷に治療を施してくれたのは 生まれたときからその地下牢にる老人達だった。辛うじて立つことができるようになったブルースは、自己訓練を重ね、遂に深い井戸から脱出する。

バットマンが ゴッサムシテイーに戻ってきた。
ウェイン財閥が開発してきた新エネルギーの核が、べインたちによって盗み出され、カーボ博士によって核兵器に作りかえられてしまった。取り戻してリアクターの中に戻さないと 爆発してゴッサムシテイーが吹き飛んでしまう。原子爆弾の奪い合いのなかで、バットマンはウェイン財閥を買収したクリーンエネルギーのミランダが、実は世界の破壊を目論む本当の敵であったことがわかる。べインはミランダの番犬でしかなかったのだ。ミランダの父親ヘンリー デュカードは、バットマンの宿敵で世界の破滅だけを望んでいる男だった。
バットマンは敵の手に渡り、安全スウィッチを解除され、爆発まであと数分という段階の原子爆弾を、自分の空飛ぶ自家用車にくくりつけ、できるだけゴッサムシテイーから離れた海上に飛んで行き、、、。
というお話。

これでバットマンが 完結して終わった。
第一作「バットマン ビギンズ」2005年と、第二作「ダークナイト」2008年に続いて、これが第3作目で完結した。監督クリストファー ノーランの作品のなかで最もヒットした作品だろう。
主演のクリスチャン ベールを、執事役のマイケル ケインと、ウェイン財閥のモーガン フリーマンが しっかり支えるという芸達者3者3様のコンビネーションが絶妙だ。単純なアメリカンコミックを、ノーラン監督が バットマンという理不尽にも両親を暴漢に殺された青年が、正義とは何か、警察や社会のルールに正義はあるのか、思い悩むひとりの青年の姿を描くことによって、命を吹き込むことに成功した。悪と戦う暴力シーンが多いが、それ以上に、最新式メカニックマシンや 多機能の車や、飛行する車の登場に目を奪われる。そして、どんな苦境に陥っても、人を信頼することを止めないバットマンの強さと弱さが描かれている。

とてもよくできた映画で、3時間近く画面から目が離せない。場面展開が速く、ストーリー展開も速いので、ひとつひとつのデテイルを追うのが大変だが、笑えるシーンもたくさんある。
隠遁していたブルース ウェインが母親の大切にしていた真珠の首飾りをキャッツウーマンに盗まれて、取り返しにパーテイー会場にいく。何年ぶりかに初めて外出したブルースが、車から杖と不自由な足を出したとたんに、マスコミの記者達が、一斉にカメラを向けてフラッシュを焚く。でもブルースがカチリと足につけたスイッチを押したとたんに フラッシュが消えカメラが作動しなくなって記者達があわてふためくシーンなど、映画の中では一瞬だが、 バットマン第一作でおなじみのテクを知っていて見逃さずに居ると、とても笑える。

娯楽映画だから、楽しい。しかし、公開されたばかりの7月20日に、コロラド州デンバー郊外の映画館で上映中に銃の乱射事件が起こり、6歳の女児をふくむ12人が亡くなり、58人の怪我人が出た。容疑者は自分がジョーカーだと名乗っており、自宅にバットマンマスクも持っていたと報道されている。銃がネットで買える国、アメリカで起きた悲しい事件だ。

好きな映画に好きな監督、好きな役者が演じた映画なので もんくは言いたくない。しかし、クリーンエネルギー研究をウェイン財閥がやっており、研究用の核が容易に原子爆弾になって、ゴッサムシテイーの海上に投棄されるというラストシーンは 変更されるべきだった。漫画なのだから、原子爆弾ししなくても 新種の液体爆弾とか、月からもってきた新種の黴菌爆弾とか、考えられるだろうに、、、。 4メガトンの原爆を、爆発数分前のところをバットマンが抱えて海上に持ち去る。4メガトンといえば 広島に投下された原爆の数千倍。新幹線並みの速さで、それを捨てに行っても 12ミリオンの市民の住む街から それほど遠くまで運べない。バットマンのおかげで市民は救われたことになったが、街から数キロ先の海上で爆発した原爆は 何千度もの熱さで煮えたぎり(広島では土壌の温度が6000度)、大津波が起きて、街を波で洗いさらうことだろう。ラストシーンで 海から湧き上がるキノコ雲を見ながら バットマンによって助かったと思い込んだ市民は みなことごとく被爆したのであって、助かったのではない。

2012年7月19日木曜日

映画 「星の旅人たち」


原題;「ザ ウェイ」(THE WAY)
監督:エミリオ エステべス
キャスト
息子ダニエル :エミリオ エステべス
父トーマス   :マーテン シーン
ジョ-スト   :ヨリック バン ワゲニング
サラ      :デボラ カラ ウンガー
ジャック    :ジェームス ネベスト

ストーリーは
ニューヨークで眼科医をしている初老のトーマスのところに 息子ダニエルがピレネー山脈で事故死した、という知らせが入る。トーマスは ずっと前に妻を亡くし 長いこと気心の知れた友人を持ち、一人で気楽な暮らしをしていた。一人息子のダニエルが どうして、そんな遠いところに、、、急遽トーマスは、フランスに飛んで、そこでダニエルの遺灰を受け取ることになる。息子は、スペインのサンチャゴ デ コンポステーラに向かう巡礼路の途中、ピレネー山脈で嵐に遭い、遭難したのだった。

たった一人の息子を失って呆然としているトーマスに向かって、息子の葬送に立ち会った牧師は 息子に代わって巡礼を続けてみたらどうか、と勧める。成人してから 教会に、縁が無かった。自立してからは、専門家として立派に仕事をしていた息子が、何故、突然巡礼の旅に出ることを思い立ったのか、わからない。そんな息子の魂の旅を見出そうと、トーマスは息子の遺灰を背負って、巡礼の旅を始める。 フランス、スペインを縦断する全長900キロの巡礼だ。少なくとも歩いて、ひと月はかかる。

 トーマスは、巡礼路の標識ごとに、息子の灰を撒きながら歩く。歩き疲れると、息子の元気だった時の姿が 行く手に見えて、息子と二人で歩いているような気持ちになる。 道行に ジョーストという若いオランダ人の若者が、加わる。彼は陽気でおしゃべりだ。巡礼で痩せて、別人のように立派な男になって帰国したいと、考えている。また、サラという カナダから来ている、やせぎすの女が加わる。粗暴な夫から逃れてきた、チェーンスモーカーだ。彼女は巡礼を契機にタバコを止めたいと願っている。そこに、さらに、アイルランドからきた小説家、ジャックが加わる。ジャックは、イエッツやジョイスのような文豪を夢みて物を書いてきたが、行き詰まって、巡礼することを契機に立派な小説を仕上げたいと考えている。

街道に沿って、歩き疲れると、教会に付属している簡易宿泊施設に世話になる。歓待して食事を出してくれるとことがあるかと思うと、うなぎの寝床で高額の宿泊費を請求されるところもある。世界中から沢山の人々が、巡礼に来ている。 息子と二人きりで対話しながら、静かな巡礼をしたかったトーマスに 若い同行者が加わると 小さなトラブルも喧嘩も起きる。息子の遺灰の入ったバッグを盗まれたり、争いが起きたり、様々な体験をしながらも、4人そろって、ついにスペインを横断、北部のサンチャゴ デ コンポステーラ大聖堂に到着。巡礼を終える。トーマスが 最後に残った遺灰を海に撒くシーンで この映画は終わる。

スペイン、ガルシア州、サンチャゴ デ コンポステーラへの巡礼は、ローマ、エルサレムと並んで、世界のキリスト教の三大巡礼地だ。 フランスからピレネー山脈を経由して バスク地方を通り、スペイン北部へと至る。最終地の大聖堂には イエスの12使徒の一人、聖ヤコブの遺骸が収められていると言われている。その手前には、モンテ デルゴソ「歓喜の丘」があり、これを含めた巡礼路は、ユネスコ世界遺産にもなっている。スペイン語では、巡礼路を「サンチャゴの道」と言い、フランス語では「サン ジャックの道」と呼ばれ、スペインとヨーロッパとを繋ぐ路でもある。 年間10万人が巡礼し、その巡礼路には無料の宿泊施設もあり、巡礼者手帳が発行される。距離にして900キロ、一日30キロ歩いても、ひと月かかる距離だ。

話では聞いていたが、そうした巡礼というものがどういうものか、この映画で、初めて体験できた。何といっても景色が素晴らしい。ピレネーの山々を黙々と歩く。山を越え、また山を越える道中だ。日暮れにたどり着いた古い教会で寝返りも、打てないような狭い施設に詰め込まれたり、寂れた教会に招き入れられると、牧師が狂人だったり、清潔なホテルのような所で食事を提供されたり、路で震えながら野宿したりする巡礼の旅が興味深い。
一番おもしろかったのは、4人が付かず離れずのグループになってから、些細なことでトーマスが怒りだし、暴れまくって地元の警察に逮捕、拘束されたのを、3人で身柄引き受けに行くところ。、、、で、 再び自由になって、巡礼に加わったトーマスが、一泊だけ高級ホテルにみんなを招待する。久しぶりに浴びられるシャワーに大はしゃぎする同行者たち。豪華なお風呂、清潔なシーツ、柔らかいベッドに暖かい食事。4人が4様に、のびのびと体を伸ばしてみたあと、夜が長い。それで、一人、また一人と、トーマスの部屋に何となく理由をつけて集まって来てしまう。みなが顔を合わせて、大笑いするところは、圧巻だ。この映画の見せ所だろう。
息子にために巡礼を始めたトーマスにとって、このような国籍も性格も年齢も巡礼にいたる理由も異なる雑多な4人が、共に歩いているうちに互いになくてはならない心の絆で結ばれるようになるなど、予想もしなかったことだったろう。

映画の中でトーマスを演じているマーテン シーンは71歳。誠実で責任感の強い年寄り。本人そのものの様な人柄で、この役を演じている。監督エミリオ エステべスは 実際にマーテン シーンの息子でもある。この映画は 息子が、心から尊敬する役者である父親のために作って、自らメガホンを握った作品なのだ。シーンは、過去30年間に出演した映画の中で最高の役を息子から贈られ、演じることが出来て幸せだ、と言っている。シーンの父親はスペイン人だというから、親子3世代で、スペインのルーツをこの映画でたどった、と言うことができる。

マーテン シーンは、「アメイジング スパイダーマン」で、スパイダーマンの心の支えである叔父さん役で、出演している。しかし、彼は何と言っても、「地獄の黙示録」の ウィラード大尉役が、印象に残っている。オバマ大統領の熱烈支持者で、死刑廃止論者。人権、社会運動活動家で、67回逮捕される経験を持つ。反捕鯨団体、シーシェファードの支持者でもある。独特のインパクトのある良い役者だ。

巡礼の旅をテーマにした映画だが、宗教くさくない。とても人間的な映画だ。
一番私が好きなところは、行き着いたサンチャゴ デ コンポテーラ大聖堂に感動して涙を流し、「これで生まれ変わってきっぱりタバコを止める」と決意したはずのサラが 最後の場面で、ひょいと、ポケットに手をやり、タバコを口にくわえるところだ。とても、笑える。

そう、そうなのだ。苦行難行の巡礼をして心を清め、惰性を改め、新たな決意をしてみても、痩せて男前になってオランダに帰りたいジョーストは、旅の間もいぎたなく食べてばかりいて、永遠に痩せて男前になることはないだろうし、書くことに行き詰まった小説家ジャックは 巡礼後も、スラスラと文章が泉のようにわいて出るわけはないのだ。トーマスにしても、息子が何故、ニューヨークで成功していたのに 突然巡礼の旅に出て死んでしまったのか 巡礼をしてみても、わからないままだ。 巡礼のあとで、サラがひょいと、タバコをくわえるように、人はどれだけ決意してみても、 自分は自分でしかないことを知ることが出来るだけだ。 この映画の、なかなか ひねりの効いた というか、自然体の、最後のユーモアが気に入った。小さな作品だが、観た後で じわじわと味が出てくる、良い映画だ。

2012年7月10日火曜日

映画「アメイジング スパイダーマン」

      
原作:スタン リー&ステイーブ デイッコ
 監督:マ-ク ウェブ

キャスト
ピーター パーカー :アンドリュー ガーフィールド
グウェン ステイシー:エマ ストーン
べン叔父さん    :マーテイーン シーン
メイ叔母さん    :サリー フイールド
カート コナス博士 :リス エバンズ

ストーリーは
ピーター パーカーは、4歳のときに両親が失踪し、叔父叔母に預けられて育った。父親は科学者で、同僚のカート コナス博士と異種間遺伝子交配に関する研究をしていたが、何者かから逃れるようにして姿を隠して、そのまま二度とピーターの前には現れなかった。何も知らされないまま、ピーターは高校生となったが、血は争えないもので科学に強い興味を持ち、学生らしからぬ豊富な知識を持っていた。しかし学校では、華奢な体つきから、正義感は強いが、どちらかと言えばいじめられっ子の立場だった。

ある日、ピーターは叔父さんの家の地下を修理する為に下りていって、父親の鞄を発見する。そして、底に隠してあった父親の科学の数式を見つける。叔父さんから 父の同僚だったカート コナス博士がオズコープ社で研究していることを知らされて、ピーターは コナス博士に会いに行って、研修生に混じって実験室に紛れ込み、毒蜘蛛に咬まれる。
父のことで必死になっているピーターは、叔父さんと些細なことで争い、家を飛び出すが 夜半ピーターを探して街に出た叔父は 強盗の逃亡を食い止めようとして撃ち殺されてしまう。

幼くして両親に去られたピーターは その15年後には 親代わりでピーターの心の支えだった叔父さんまで失ってしまった。復讐を誓ったピーターの体に異変が起きる。手から蜘蛛の糸が出て、この糸は 柔らかく弾力があるのに鉄鋼よりも強い。糸を柱に取り付けて、ターザンのように ビルからビルへと移動することが出来る。両手は吸盤のように吸い付いて、ビルをよじ登ることも、天井に張り付くこともできる。
ピーターはこの蜘蛛の糸を 手動で出せるウェブシューターという リストバンドを作って取り付けて、蜘蛛のようなスーツとマスクを作って身に着け、夜になると、叔父さんを殺した犯人を探し、悪人を捕らえるために出動するようになった。警察が取り締まれない、極悪犯人を次々と捕らえて、警察に突き出す。ビルからビルを蜘蛛のように動き回り、悪人を捕らえるスパイダーマンは、いつのまにか市民のヒーローになってしまった。しかし、ニューヨーク市警の ステイシー警部は、スパイダーマンの逮捕状を出す。

ステイシー警部の娘、グエンはピーターのクラスメイトで、オズコープ社の研修生でもある。ピーターとグエンは互いに魅かれあっていた。そして、グエンはピーターが、警察が追っているスパイダーマンだということを知ってしまう。

オズコープ社のスポンサーは、異種間遺伝子交配の研究成果を早く出すようにカート コナス博士を急き立てている。しかし、まだ実験段階で、それを人間に試してみる段階には至っていない。博士は この遺伝子工学の成果によって、アルツハイマー氏病や黄班部変性や、事故で体の一部を失った人を救うことができると信じている。まだ時間が必要だ。しかし、酷にもスポンサーは一方的に 資金打ち切りを宣言する。

思い余った博士は ついに自分の失った片手に、実験段階のトカゲの遺伝子を注射して、自ら人体実験をする。
トカゲと異種間遺伝子交配された博士は、攻撃的な大トカゲとなって、人を襲う。彼は、地下の下水道に自分の実験室を持ち、夜になると人を襲う狂った化け物になってしまった。遂に、ニューヨークの人類全体にトカゲの遺伝子を撒いて、その恩恵を分け与えようとして、タワーから遺伝子ガスを噴射させようと目論む。
スパイダーマンは それを止めようと、、、。
という、お話。

3Dテクニックが、ここまでくれば、満足だ。
観ているものは、スパイダーマンと一緒に、高層ビルの頂上から飛び、急落下して、別のビルに飛び移り、ニューヨークの摩天楼を駆け巡る体験ができる。夜空を蜘蛛の糸で、スウィングすることが出来る。バンジージャンプとジェットコースターとプラネタリウムを同時に 映画の間中 何度何度も体験できる。超高層ビルから飛び降りる時の、恐怖感と爽快さ、ニューヨークの摩天楼を 蜘蛛の糸を頼りに飛び回る愉快さ、風を切る冷たさまで体感できる。摩天楼の美しさが眩しい。
夜空を飛ぶだけのスーパーマンや、ロボテイックなスーツに身を固めたアイアンマンには、これだけの臨場感は望めない。星と一緒に、3Dで空を飛べるとは思っていなかったので、とても嬉しい。 今回のスパイダーマンはとても良い。3Dで観る価値がある。

それと、スパイダーマンの映画の成功の鍵は、ピーターがどこまで人間として魅力的に描かれているかにかかっている。その点でアンドリュー ガーフィルドは成功だ。19歳のピーターの怒り、悔しさ、孤独、哀しみがよく描かれていて、初恋への戸惑いや甘えも、よく表現されていた。
前作の トビー マクガイヤーと キスリン ダントスの冷ややかなカップルにくらべて、100倍くらい新カップルは よくできている。役者として、比べ物にならない。

印象的な場面がいくつかある。
スケボーを持ち歩く孤独な高校生が 自分の体の変化に気がつくところ。港の倉庫で蜘蛛の糸を使いながら スケボーで飛んだり跳ねたり 天井の梁に飛び移ったり いろんなことができることを知って前進で歓びを現すシーン。これが とても可愛い。

そして、最後にトカゲ男との対決で、スパイダーマンは大怪我をしていて ビルからビルに飛び移る余力がなくなっている。そこを自分の子供をスパイダーマンに救われた工事責任者が 巨大クレーンを、いくつも渡して、トカゲ男が 毒を噴射しようとしているタワーまでスパイダーマンが、飛び移る手助けをするシーンだ。市民立ち上がる、、、である。

最後に、亡くなった叔父さんが、ピーターの携帯電話に残したメッセージが泣かせる。
そう、、、親が居なくたって、叔父さんが居なくたって、自分を理解しようとしてくれた警部が居なくたって、大丈夫。 自分の信じる道を前に進むんだよ。
ピーター。

2012年7月6日金曜日

オットを殺すところでしたー!

       
仲の良い友達の、新しいボーイフレンドが、実は彼女に隠れて昔のガールフレンドを会っていたと言う。友達達はみんな、激しく怒り、口を揃えて、そんな男、汚れた新聞紙に包んでサッサと捨てるべし、と説いた。
しかし私は どうせ男なんて、そんなもの。馬鹿なのさ。オットだって 私に隠れて、昔のガールフレンドに会っている。17年、努力してきたが、馬鹿さ加減を減らすことが出来ない。男などに何も期待せずに、100%の誠実さなど、漫画の世界と思い定めて、一緒にやっていくことができないのかね、と彼女に問うた。
それを聞いた彼女、、、自分のボーイフレンドの行状よりも、すっかり信頼、尊敬していた私のオットが、そんなことをしていたことの方がショックだと言う。

これを聞いて、私も段々腹がたってきた。
最初の 死んだ夫は私の14歳年上だったが、今のオットは18歳年上。オットは、若くて、美しく、現役で働いていていて、教養ある私という過ぎた妻を持ちつつ、なお、オットと同じ年の充分しなびた、無職で年金で生きている教養のない女に 頼まれると時々会っている。どうでも良いことと、今まで放っておいたが、これは倫理上、許されないことではないか。

久しぶりに怒り狂って、家を飛び出し、実はこれは計画的だったんだけれども深夜映画に行ってきた。何も知らないオットはオロオロしながら深夜まで 私の帰りを待っていた。帰ってきてくれて ありがとう、と言われても だんまり、、。
会話なしの2日目。
青い顔をして 「胸が痛い」と言う。そういわれると もっと腹がたってきて、それみたことか、良心が痛むんだろう。「あなたは自分がヤバくなったら いつも病気に逃げるのよね。」と。
実際オットは、病気の見本市みたいな人だ。上からいくと、脳卒中で、2日間言葉を失ったことがある。目は両目とも白内障で、黄班部変性で、片目は失明に近い。喘息もちで吸入器なしで歩くことも出来ない。胃炎で何度か出血し、腎臓からはいつも蛋白が出て、膀胱に腫瘍があり経過観察中、前立腺肥大もある。脊椎骨折2回、関節炎で手指、肩、腰痛をもち、100メートル歩くのが限界。重度の肥満体。しっかりしているのは脳みそだけだ。
今までも ささいなことで私が怒ると オットは「耐え難い頭痛」で寝込んだり、「ひどい喘息発作」を起こしたり、、、こんなヤツ やってらんないよ。

新しいブラウスと、花柄のベッドカバーやら 無駄使い、衝動買いの大袋を抱えて お昼に帰宅すると、仕事に出かけたオットが しょんぼりソファーに座っている。救急病院に行かなければならないが、付いていってくれる?と、頼りない 懇願の顔。
聞くと、仕事中、胸痛が止まないので職場のクリニックに行って、ECGと血液検査を受けたあと帰宅して休んでいたら、血液検査の結果が出て、ただちに救急病院に行くようにと、電話があった、と言う。

胸痛は本当だったのだ。大変、、、ハートアタックだ。血液検査の結果が悪いということは、トロポネンTという 心臓の筋肉がダメージを受けているときに 血液内にしみ出てくる酵素が検出されたということだ。放っておくと心筋が死んでしまう。大変。車に飛び乗り 救急病院に向かう。
救急病院はいつものことながら、ごったがえしの混沌、無秩序のカオス。1000ベッドの、北部最大にして唯一の救急病院の待合室は、転んで骨を折った年寄りも、切迫早産の妊婦も、子供の喘息も、交通事故も、ゲイどうしの喧嘩も、精神病患者の症状悪化も、みんな一緒に血を流しながら、痛みに耐えながら、ひとつ部屋で待たされる。待っている間に人、一人や二人死んでいても驚かない。
オットが 再度の血液検査の結果、入院が決まったのは、もう夜中だった。

翌日 心臓血管造影検査で心筋梗塞で、二つある冠状動脈のうち、ひとつが詰まって血液が循環しない状態だったことがわかって、急遽ステント挿入する手術をして、命がつながった。危なかったね。
やれやれ、、、気の弱いオットとは 夫婦喧嘩できないなー!
はい、ちゃんと反省しています。
ごめんね。

2012年7月5日木曜日

バットマン ムービーナイトの夜

バットマンシリーズ最後の「ダークナイト ライジング」が、じきに公開される。 第一作「バットマン ビギンズ」2005年と、第二作「ダークナイト」2008年に続いて この第3作「ダークナイト ライジング」2012年が 最終作になる。 3作とも同じ、クリストファー ノーラン監督、脚本。主演バットマンをクリスチャン ベール、彼を執事マイケル ケインと、モーガン フリーマンの名優達が支える。

 「ダークナイト」でアカデミー主演男優賞を授与されたヒース レジャーのジョーカーは、残念ながら、もうこの最終作に出演することができない。 第三作目の公開に先立って 前作の2作品を復習しておくために ナイトムービーが企画された。日曜の夜6時に始まり、深夜12時に終了する。これに 初めて行ってみて、とてもおもしろかった。 日本に居た時、オールナイトと称する映画5本立てを 新宿で観たのは大昔。朝6時に終わると、赤い目をして電車の始発で家に帰ったりしたものだ。

ナイトムービーに、やってきていたのは、家族連れや中年夫婦も居たが、圧倒的にテイーンの男の子グループが多かった。それぞれがバットマンスーツを着たり、自作のマントを背中に張り付けてきたり、ジョーカー風の化粧をしてきたりして、勝手に盛り上がっていた。誰もが大きな袋を抱えていて、長時間の映画見物に備えて、超大型ポップコーンやチップスや飲み物を持参。おにぎり持参で ひとり若い人たちに混じって、映画の名場面には拍手をしたり声援を送り みんなと一緒に楽しんだが、まわりの青少年達は 私のことを、変なおばさんと、思っていたかもしれない。普段 映画は一人きりで観て 誰にも邪魔されずにじっくり味わうが、こんな風に、手をたたいたり 口笛を吹いたり足を踏み鳴らしたり 画面と一体になって映画を沢山の若い人たちと、共有して観るのも、実に楽しい経験だった。

 ゴッサムシテイーの教会の尖塔の頂上に黒い影、、、やがて月に照らされて蝙蝠の姿が浮かび上がる、その美しいシルエットに、ヒエーイとばかり観客が手をたたく。あるいは、戦車のようなバットマンの車がブレイクダウンして もう追跡が出来ないかと思うと 車がバイクに変わって疾走するシーンなど観客は、ヤンヤの歓びようだ。また、みんなのヒーローバットマンだけでなく、ジョーカーも人気があって、彼のジョークに笑い転げ、みんながヒース レジャーに好感をもっていることが、観ていてよくわかった。観客達の呼吸が伝わってくるようだ。ヒース レジャーは、この映画で真に迫る名演技を見せたが、映画完成前に たった25歳で事故で亡くなってしまった。このパース出身のオーストラリア人俳優を、みんなとっても好きなんだ、という心情が伝わってきて切ない。私だけでなく、みんなみんな ヒースの死を惜しんでいるんだな、、、。

でも、この映画が若い男の子達を夢中にさせる理由は、やはりメカにある。
ウェイン財閥の尽きることの無い豊富な資本で、専門の科学者を抱えて、ものすごい多機能をもった車や、バイクや 空を飛ぶ羽のついたガウンや、100メートル直下に落ちても怪我をしないバットマンスーツなどが、次々と出てきて魅力満載だ。007の特殊スパイ装置を上回る。アイアンマンよりも優れていて格好が良い。 悪を征伐して、一晩暴れまわってバットマンは、傷だらけで、家に帰ってきてベッドに倒れこみ、親代わりの執事に介抱される。そんなとき、無垢な坊ちゃんブルースは 傷ついたヒヨドリのように頼りない。この強いヒーロ-と 現実のブルース ウェインとのアンバランスが、また一層魅力だ。バットマンを主演するクリスチャン ベールは実にハンサム、全然年をとらない。メカに夢中な永遠の少年の横顔を持った役者。若い俳優の中で 最も実力のある良い役者だ。

バットマン ビギンズ 2005年
ストーリーは
ウェイン財閥の一人息子ブルース(クリスチャン ベール)は、広大な敷地をもつ屋敷で子供時代を過ごす。ある日、従兄弟のレイチェル(ケイテイ ホームズ)と庭で遊んでいて、古井戸に落ちる。井戸の底は地下につながっていて、落下したブルースに驚いた蝙蝠の群集が 羽ばたいてブルースを怖がらせた。このとき、たった一人で暗い古井戸の底で 父親が助けに来てくれるまでの間、恐怖に脅かされたトラウマから 助け出された後も、ブルースは 時々恐怖感から、身動きが出来なくなる発作が起きて両親を心配させる。

ある夜 ブルースは、正装した両親に連れられてオペラに、連れて行かれる。観賞していて、舞台に蝙蝠が出てきたとたんにブルースは、観ているのに耐えられなくなって両親に伴われて劇場を出る。悪い運が重なって、両親は強盗に会って無慈悲にも、犯人に銃で撃ち殺されてしまう。残ったブルースは たったひとり屋敷で執事(マイケル ケイン)に世話をされながら成長する。ブルースにとって、古井戸に落ちた時の恐怖に立ち向かうこと、そして死ぬ間際の父の言葉「怖がらずに勇気をもって生きなさい。」という言葉に従って生きることが、自分の課題となる。

大人になったブルースは 両親を殺した強盗犯を殺そうとするが、強盗犯が軽い刑期を言い渡された直後に、何物かによって殺される現場を目撃し、復讐が正しいことなのか 正義とは何か、という葛藤に苦しむ。彼は、人間の本当の強さを求めて ヒマラヤの奥地にまで放浪の旅に出て、体を鍛え 秘密の武等組織に入りヘンリー デュカード(リーアム ニーソン)から闘いを伝授される。 訓練を経て、ゴッサムシテイーに戻ったブルースは ウェイン財閥の跡継ぎとして会社の経営にかかわりながら、科学研究者のフォックス(モーガン フリーマン)の力を得て、犯罪の蔓延するシテイーから、市民を守るための方法を考える。そして、犯罪者に恐怖感を与えるために蝙蝠になって、悪者を取り締まり、警察に突き出して、街を浄化することにした。バットマンの活躍の始まりだ。

幼友達だったレイチェルは 成長し弁護士になっている。彼女は法によって善者を守り悪を防止することに使命を感じているから、バットマンのように直接犯罪者を取り締まり、罰を与えることには批判的だ。しかし、ヒマラヤで厳しい戒律をもった武闘組織を抜け出してきたブルースに、制裁を与えるためにヘンリー デュカードらがやってきてブルースを攻撃し始め、、、。
というお話。

ダークナイト 2008年作
ストーリーは
ブルースはウェイン財閥の会社経営を続けながら、夜になるとバットマン服に身を包み。悪のはびこるゴッサムシテイーで、市民を守るために活躍していた。いまやバットマンは、街の英雄だった。 新しくシテイーにやってきた地方検事ハービー デント(アーロン エカット)は、腐敗し汚職と暴力など諸悪のもとであるマフィアと、正面から闘うことを約束し、マフィアの資金源を断つ。ブルースが恋心を抱いているレイチェル(マギー ギレンホール)は ハービーの恋人で右腕として共に働いている。ブルースはそれを知って、ハービーに多大の支援を申し出て、ゴッサム市の市長として推薦する。

ときに、極悪犯ジョーカーが出現して銀行を襲い、マフィアと手を組んで次々と警官を襲って殺害する。ジョーカーは人殺しをゲームとして楽しんでいた。彼の悪行にルールはない。徹底して人を苦しめて罪の無い人々を殺す事が楽しい、精神分裂症患者だった。彼は 人々の英雄バットマンを殺すことが自分の最大の目的だと考えて、バットマンをおびき寄せる為に ハービー市長とレイチェルを拘束する。そして、どちらかがバットマンによって助けられた時に、どちらかが爆破して死ぬことになるという残酷な罠を仕掛ける。何も知らないバットマンは、最初に目に付いたハービー市長を救助する。と同時にレイチェルは爆破されて命を失う。瀕死状態で救出されたハービーが、手当てを受けている病院に、ジョーカーが現れて病院は爆破され、犯罪者に爆弾を仕掛けられて警察署は爆破され、次々とジョーカーは、バットマンに挑戦をつきつけてくる。

レイチェルと結婚してバットマンを引退するつもりでいたブルースは レイチェルを失い、茫然自失の状態に陥る。しかしレイチェルは、ジョーカーに拉致される前に、執事にブルースあての手紙を託していた。そこには、レイチェルが、ハービーと結婚するつもりでいることや、バットマンの生き方は間違っているというレイチェルの率直な意見が書かれていた。何も知らないブルースを、これ以上傷つけないために執事は密かにその手紙を燃やして、、、。
というお話。

第一作で、レイチェルを、ケイテイ ホームズガ演じたが彼女はトム クルーズと結婚して女優を引退してしまったので第二作では 顔の似ているマギー ギレンホールが演じている。 また第二作で 極悪人のジョーカーを、バットマンに殺させなかったのは、第三作で続けて ジョーカーを活躍させる予定だったのだろうが、ヒースが亡くなってしまったので、ジョーカーはもう居ない。他の役者にジヨーカーを演じさせても ヒース以上に、血も涙もない異常犯罪者の役をこなせる役者が他に居ないので、あきらめたのかも知れない。 バットマンでは、本当にクリスチャン ベールが輝いている。バットマンを支える執事マイケル ケインとウェイン財閥責任者のモーガン フリーマンも とても良い。この3人の役者が演じなかったらバットマンの良い味は出てこなかっただろう。第3作が楽しみだ。