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2007年3月14日水曜日

映画 「THE GOOD GERMAN」



アメリカ映画、「THE GOOD GERMAN」、(良きドイツ人)を観た。 クレモンオピアム、デンデイーなどで、上映中。 主演、ジョージ クルーニー(GEORGE CLOONEY)と、ケイト ブランシェット(CATE BLANCHETT)、監督STEVEN SODERBERGH.脚本でアカデミー賞にノミネイトされていた。色のない白黒映画、カラーで撮影した後 色をぬいて白黒フィルムとして完成させたそうだ。

舞台はベルリン。1945年ドイツが降伏し、日本の広島に原爆が落ちる直前、政治の裏で、アメリカとドイツが原爆の製造技術を競い合っていた。ロシアのスターリン、英国のチャーチル、アメリカのトルーマンが戦後処理について、会談をしている。 ベルリンで、ケイト ブランシェットは ナチ時代の科学者の夫を、かくまっていて、何とか国外脱出させようとしている。ベルリンの戦後処理オフィスはロシア側とアメリカ側勢力がこの科学者の隠し持っている書類を奪おうと スパイを送りあい薄氷の上を歩くような緊張のなかにある。 一方、アメリカから送られてきたばかりのジョージ、クローニーは、昔の恋人、ケイト ブランシェットを探している。一人の科学者をめぐって ロシアとアメリカの冷戦が始まる前の緊張のきわにある力関係に、ドイツ秘密警察や、政治に無頓着なジャーナリストが絡まりあいながら、科学者の妻の内に秘めた強さが描かれる。

日曜版へラルドの映画評では、こんな映画をお金払って見にいかないで、ビデオ屋に行って「カサブランカ」と、「第3の男」を観なさい、と親切にも忠告してくれている。 確かに、ラストシーンは ハンフリーボガードと、イグリットバーグマンの 「カサブランカ」そっくりで、この歴史に残る名作の最後の泣けるシーンは俳優ならば誰しもがやってみたかったんだろう と私は、好意的に解釈した。夫だけを国外脱出させて、自分は残ろうとするバーグマンに ボガードが、「君は行きたまえ。僕は大丈夫、君がいてくれたという記憶だけのために僕は 生きていける。」といって彼女に背をむける あの有名なシーンだ。

「カサブランカ」は俳優達も、音楽も、映像も、ストーリーも映画として完璧。子供のときから何十回見たか数えられないが、観るごとに映画っていいなーと思う。 オーソン ウェルズの「第3の男」も素晴らしい。チター演奏の物悲しいテーマ音楽と オーソン ウェルズの監督、カメラワークは歴史的芸術品といえる。ともに、互いに心惹かれながら 決して和解しない、情に流されず 強い意志で対立したまま別かれていく男女の姿に世界中の何億人の人々が涙を振り絞ったことだろう。 こうした映画史に残る名作は多くの人の胸の中で、大切にしまわれていて、せりふの一つ一つを覚えてしまっている人も多いのだから、それに似た作品を作ろうとすると 下手をすればパロデイーやコミカルになってしまう。白黒フイルムのなかでも、ブランシェットは十分美しいし、クロー二ーも確かにハンサムだが、やはり、あの時代のボガードと 一番輝いていた頃のバーグマンの絶頂期の美しさには勝てない。それはもう死んでしまった過去の人だからだ。過去は美化される。

この映画をクロー二ーとブランシェットのファンがみたら、がっかりするだろう。爆弾で破壊されたベルリンの街は、アメリカで作ったセットだったそうだ。なぜか、音楽もさえなく、画面がチープな気がしてならないのは、いまどきの映画監督、白黒フィルムの使い方になれてないのじゃないだろうか。 色を使わないからこそ際立つ 白の白、黒の黒、そしてさまざまな白でも黒でもない中間色を陰影で上手に映し出す技術に長けていないと 白黒映画は成功しないだろう。 「カサブランカ」の漆黒の夜、ほの暗い街灯に光にうつるバーグマンの思いつめたような表情、、、 「第3の男」で、パリの下水道で追い詰められて、殺される前のオーソンウェルズの月の光を地下から求める絶望の表情、、、みごとな映像が記憶に残っているだけに 色抜きしたカラーでとったこの映画は、映像効果が成功したとは思えない。

ヘラルド誌の映画評は 辛らつで、あまり好きでないけれど、この映画については、彼が言うように、これを観にいくより、ビデオ屋で、「カサブランカ」と、「第3の男」を観たほうが 賢いような気がする。 ついでに、ジャン ギヤバンと ミレーユ バランの、「望郷」原題「PEPERE MOCO」と、ビビアン リーと、ロバートテイラーの「哀愁」原題「THE WATERLOO BREDGE」も お勧めする。

2007年3月5日月曜日

映画 「パフューム」



映画「PERFUME」を観た。ドイツ、フランス、スペイン3カ国合作映画。 ホイッツにて 上映中。 17世紀に実際に起こった事件を題材にして作られた映画。 主演、ベンウイシャウ(BEN WHISHAW)女優に、レイチェルハートウッド(RACHEL HURD-WOOD)、助演にダウテイン ホフマン (DUSTIN HOFFMAN)。

ベン ウィシャウは、孤児院で育ったが、大人になると、皮なめし職人に売られて 働いている。特筆すべきは、彼は天才的に嗅覚が発達している。においで、隣のうちの中で何が起こっているのか かぎ分けられるほど 嗅覚に敏感だ。 ある町で、彼は美しい乙女のにおいに魅せられて、後を追い、吸いつけられるようにして その乙女のにおいをかいでいるうちに、怖がって逃げようとする その処女を殺してしまう。かぐわしい 処女のにおいを自分になすりつけて 満足するが、香りは時がたてば 失われてしまう。どのようにして、香りを保存するのか知りたくて、偶然、出会った香水調合師に拾われて、修行することになる。

トラックいっぱいのバラの花を、蒸留 抽出してやっと、小さな香水びんを満たすことができるというような 過程を経て、彼は一人前の香水調合師となる。そして、次々と処女を拉致して殺しては、体に獣の脂肪をぬりたくり、それをナイフでこそげ落とした処女の香りを 抽出して香水にする。素晴らしい香水を作るためなのだから、彼には、殺人の罪悪感はない。12人殺して、12本の香水ができあがったところで、一番初めから心惹かれ、ねらっていた検事総長の娘をとうとう手にかける。この娘の香水に 12本の香水を混ぜた、13番目の 究極の香水ができあがったところで、彼は、逮捕される。

話としては おもしろい。映画も前半は,ハラハラ ドキドキ、とてもおもしろかった。香水作りの親方にダステイン ホフマンが出てきて、彼が映画にでてくると、映画の味が 本物っぽくなる。彼が 自分で創作した香水を試すために、絹のハンカチに香水一滴たらし、香りのよしあしを彼の あの大きな鼻でかぐ しぐさがとっても良い。

でも、話の筋も映画の後半、どんどん現実離れしてきて、見ているのが ばかばかしくなった。主人公が死刑台に立たされ、何百人もの見物人が 死刑の様子を 固唾と見守っていると、この殺人鬼は 13番目の香水をひとふりしただけで、みんなヨレヨレ、ひゃらひゃらになって、服を脱ぎだし、セックスを始めるところなどは、全然納得できない。私は、話の筋はきちんと終わってもらいたい性格だから、13人の罪のない処女を殺した殺人鬼が 香水ひとふりで、罰せらずにすんでしまったことが許せない。

だいたい処女の体臭が甘い、素晴らしい においだなどと、誰が決めたのか?全く 科学的でない。女性ホルモン エストロジェンや 男性ホルモンを刺激するフェロモンは 15歳くらいの 処女からは しぼっても出ない。日本の根暗社会では、処女の女子中学生や高校生のパンテイーを売買したり、彼女達のオシッコを高く買いたがる おじさんが増えていて、その種の店が大繁盛だそうだ。それはとても、異常な文化だ。暗いよ おじさん!からだの処女など、なんの意味もない。貴重なのは、心の処女性だろう。 人は まじめに働き、まじめに食い、まじめにクソをして、真正面から女性を見つめ まじめに愛情を交換してもらいたい。

私は この映画の根暗な、不健康さが嫌いだ。この映画を観に行く人は、前半だけ見て 後半はしっかり眠って 音楽だけを楽しむという見方をお勧めする。

2007年3月4日日曜日

映画 「ラブソングができるまで」


イギリス映画「MUSIC AND LYRIC」を観た。邦題「ラブソングができるまで」。ホイッツにて、上映中の ラブコメデイー。主役は、ヒューーグラント(HUGH GRANT) 相手役は、ドレュー バリモア (DREW BARRYMORE)。 ヒューグラントが 歌がうまいのに 驚いた。ピアノを弾きながら、語るように歌うのが、とても自然で、この人、どんな映画にでていても、肩肘はったところがなくて、気取らず、自然体、だから、全然じゃまにならない、、、というか、さわやかで、好ましい。中年になっても、見かたによっては、少年のような、体をしていて、可愛い。

映画のなかで、彼は、1970年代のポップスターで、今は、世の中から、ほとんど忘れられている。でも、同じ年頃のおばさんたちからは、いまだに人気があって、遊園地とかスーパーマーケットの片隅で、ショーを続けていて、日銭を稼いでいる。本当は売れない、作曲家。 華々しくもなく、みじめでもない。本当に、中年さかりのこの人に ぴったりの役だ。 彼のショーを 観に来ている昔のテイーンだった、おばさんたちがおもしろい。彼が、腰をひねるたびに キャーキャーいうんだけど、後ろのほうで、全くげんなりした顔で、子供を遊ばせながら、ショーが終わるのを待っている、旦那さんたちの姿がおかしくて、笑い転げた。

ヒューグラントの相手役の、バリーモアは、今年で、32歳になったそうだ。彼女は映画俳優になったのは、7歳のとき。スピルバーグの名作「ET」だ。 その後、9歳でタバコ、酒を覚え、10歳でマリワナ、12歳でコカインを吸引、14歳で俳優引退宣言して 自伝「LITLLE GIRL LOST」を出版した。14歳で、自伝を書く人も珍しい。子役でデビューして、そのイメージから脱出できずに、役造りで苦労する役者の話は、よく聞くが、 この人も、大人になってから、雑誌プレイボーイでヌードになって、スピルバーグに 服を着なさい、としかられたりしながら、歌手兼俳優として、カンバックに苦労したようだ。
映画のなかで、彼女が恨みの昔の彼氏と、バーで鉢合わせになったとき、ヒューグラントに、「あんな奴 人前で恥をかかせてやる!」と、鼻息あらく、彼の前にでたくせに、急に赤ちゃんみたいな話し方しかできなくなってしまうシーンでは おなかを抱えて笑ってしまった。すごく こんな時の女の気持ちがよくわかる。

昔のポップスターで、今は名もない作曲家というヒューグラントと、さえない素人作詞家のバリーモア、彼らに、曲を依頼してくる、人気歌手のコーラというセクシーな歌い手、この珍コンビネーションがすごく面白い。 ラブコメデイーは、なにも考えずに、仲の良い人と、一緒に観にいって、ただ笑って気分よく 帰ってくるのが良い。 疲れている人は、疲労を忘れ、さした理由もなく、鬱気味だった中年の人は、気分を上向きにもち直すことができ、ちょっと虫歯の痛い人は、痛みをわすれ、つまらないことで けんかしたカップルは けんかの原因を忘れてしまって また仲良くなれる。