2013年10月27日日曜日

上野でオットと国立西洋美術館へ

    


山から帰ってきて、上野のサードニックスホテルでくつろぐ。駅から歩いて5分、昭和通り沿いにあるホテルで、無料の朝食がつく。トースト、ゆで卵、スープとコーヒーまたは、ホットケーキ、またはベーグルかホットドッグとスープ。ホテルで朝食が付くのはありがたい。起きて、食べてからゆっくり身支度をして外出ができる。それができないところでは 起きてカフェまでオットを歩かせて、食後、重くなったオットを椅子から引きはがし、ホテルまで歩かせると、もうオットはベッドに横になってしまう。トドのように横に伸びたオットを一休みさせてから外出するまで、冷えたエンジンをまたかけ直すのに、とても時間がかかるのだ。
日本では名が通っているかどうか解らないが、外国ではこのサードニックスホテル、結構、人気がある。ネットを通じてずっと先の予約まで入れられるし、予約日直前までキャンセル料を取らずに、安くて良い部屋が予約できるからだ。WIFIも、自由に使えるインターネットもある。バックパッカーでなくても長い滞在に、安くて便利なホテルはありがたい。

今日は上野の西洋美術館に行く。普通の人にとっては ホテルから美術館まで歩いて20分だが、オットを連れていくと、タクシーで30分かかる。上野動物園、不忍池、上野国立博物館、科学博物館あたりは、「うちの庭」だった。私は勤めていた新聞社を辞め、専門学校に行き、都立駒込病院に勤め出したので、病院から歩いて通える千駄木2丁目に一軒家を借りていた。二人の娘たちは、そこで生まれた。
休日には自転車で、前に次女、後に長女を乗せて、不忍池のカモにエサをあげに行ったり、東大の三四郎池に釣りに行ったり、上野動物園で一日中動物と遊んだりして過ごした。都心なのに 根津神社や須藤公園など、子供が走り回れるところがいくらもあり、夏目漱石図書館など、教育施設も豊富だった。二階家の屋上の物干し台から晴れた日には 富士山も見えた。西洋美術館は、よく子供たちを連れて来た。入館しなくても建物の前にオーギュスト ロダンの彫刻、「考える人」、「カレーの市民」、「地獄の門」のレプリカがあって、よじ登ったり、まわりを走り回ってよく遊んだ。

館内には松下幸次郎がヨーロッパで収集したドラクロア、クールベ、ミレー、マネ、モネ、ピサロ、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホ、シニャック、などフランスを代表する画家たちの作品が常設されている。20世紀の作品では、マルケ、ピカソ、スーチン、レジェ、エルンストの作品もある。
行ったときは、「ミケランジェロ展」特別展をやっていて、システイン教会の天井画など、彼の代表作をフィルムでみせていて、自筆の手紙などが展示されていた。NHKが作ったフィルム以外に見るべきもののない、何か内容の貧しい展示だった。これで特別料金をとるなんて。

入口で、支えないと歩けないオットと二人して、エスカレーターは?エレベーターは?と 大騒ぎして入館する私たちを見ている係り員が、私たちから入館料とミケランジェロ特別展示入室料、2000円をむしり取ってくれたが、いま、このときにもらったパンフレットを見たら65歳以上は無料と書いてあるではないか。オットは65歳以下に見えるわけがない。どうなんだよ!!!
展示室ごとに、係員が一人ずつ座っていて来館者を監視している。グループできている高校生がちょっと絵に近付いただけで 飛んできて注意している。エレベーターを探して重い足を引きずっているオットに平気で、「まっすぐ50メートル行って右です。」とか言って、自分が座っている横の従業員通路のドアさえ開けてくれればエレベーターの入り口なのに、知らん顔をしている。人は職業を選べる。こういう仕事につかなくて良かったと思う。

作品の数は多いかもしれない。しかし、市民の憩いの場所になっているシドニーのNSW州立美術館の雰囲気とは天と地の違いがある。シドニーでは、子供たちが館内で床に寝そべったり、走り回ったり、ソファで熟睡している人もいれば、画の前に座り込んで模写している人もいる。フラッシュをたかなければ絵の写真も撮れる。
芸術は決して特別なものではない。人は誰もが描きたい欲求を持っていて、訴え、表現したい欲求を何かの形にしたいと思っている。出来上がった作品に、自由に触れ、味わい、感じることができないならば、何のための美術館か。

スペインからやってきた版画を特別に展示していたが、これだけが、ちょっと良かった。16世紀のイタリア、フィレンツェの版画家たちによるエッチングだ。オラツィオ スカラッぺリとか、バルトロメオ コルオラーとかの聞き覚えのない人や、ジョバンニ べネト カスとリーネとか、ジョバンニ バテイスタ テイアポロとか、聞き覚えのありそうな人たちの美しいエッチングに感心した。精密画でサンタクローチェ広場や、フィレンツェの街の様子が描かれていて美しい。

タクシーで上野の山を下りて、カフェでケーキとコーヒーを。カフェでタバコを吸っている人がいて、びっくりする。禁煙コーナーがあるようだが、煙は広がる。幼稚園くらいの子供を連れたお母さんが二組、二人ともお母さんがケーキを前にしてタバコを吸っている。欧米でもオーストラリアでも絶対見られない風景だ。新宿では、こんな光景は見なかった。上野だけか?
ホテルでオットを寝かせて、一人で街に出てみる。上野は、とてもとても下町だ。ごたごたしていて、人が多い。そしてファッショナブルな店が一軒としてない。ユニクロさえ、上野のユニクロに置いてあるものは田舎っぽい。20年前の昭和の時代に戻ったようなセンスだ。レトロで良いかもしれないが、買い物したいものがない。みつはしであんみつを食べ、下町の熱気にあてられて、何も買わずにすごすごホテルに戻る。

夜はホテルでサンドイッチを食べれば良い、というオットを叱咤激励して、焼き鳥屋に食べに出る。威勢の良いお兄さんがカウンターのうしろで 手際よく焼き鳥を焼いている。生ビール、おでん、焼き鳥、から揚げ、刺身、焼き野菜、銀杏、冷奴をたて続けに食べて、満腹してベッドへ。
この動けないオットを連れて、明日はどうするか、気になって一日旅行のパンフレットを検討する。もういちど山に行けるチャンスはあるだろうか。「日帰り上高地のバスの旅」というのが、素敵すぎる。朝はやく新宿からバスで、上高地まで行き、上高地帝国ホテルで昼食を食べて、そのへんを散策して、深夜帰ってくるという。そのためには、新宿のホテルに動かないといけないが、どうしよう、、。上高地から穂高を見上げる瞬間を想像するだけで、ドキドキしてきて眠れなーい!