2010年12月4日土曜日

2010年 観た映画のベストテン




今年 劇場で観た新作映画は 全部で50本。それに加えて数本のビデオを観た。
どの作品も それぞれの良さをもっていて、忘れがたい。5月に 2010年上半期に観た映画のベストテンを書いたので、一年を通して観た映画のベストテンをあげてみる。
ベストテンのそれぞれに 映画評を書いた月日を記した。ふりかえって それを見れば 作品の製作者や ストーリーや キャストなど映画の詳細がわかる。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1496597511&owner_id=5059993

第1位:「終着駅トルストイ謎の死」:マイケル ホフマン監督
    3月29日 映画評
第2位:「剣岳 点の記」:木村大介監督
    4月24日 映画評
第3位:「アバター」:ジェームス キャメロン監督
    12月26日(2009) 映画評
第4位:「インセプション」:クリストファー ノーラン
    8月1日 映画評
第5位:「シャッターアイランド」:マーチン スコセッシ
    3月15日 映画評
第6位:「ゴーストライター」:ロマン ポランスキー
    8月17日 映画評
第7位:「ソーシャルネットワーク」:デヴィッド フィンチャー
    11月16日 映画評
第8位:「リミット」:ロドリゴ コルデス
    10月14日 映画評
第9位:「インヴィクタス負けざる者たち:クリント イーストウッド
    2月12日 映画評
第10位:「ドン ジョバンニ」:カルロス サウラ
    6月7日 映画評

第1位の「トルストイ死の謎」で、ヘレン ミレンがトルストイの妻を演じて今年のアカデミー主演女優賞を受賞した。彼女は トルストイ役のクリストファー プラマーとともに、素晴らしい夫婦を演じてくれた。死を迎えようとするトルストイと 世界3大悪妻の一人と言われる妻の愛憎のすさまじさと、彼を慕ってやってきた若いカップルの愛のはかなさの対比が 良かった。一年近く前に観た映画なのに、観た時の感動がそのまま残っていて、忘れられない。

第2位の「剣岳 点の記」は、この山が好きなので、山の映像が出てくるたびに、心が躍った。ヴィバルデイの「四季」が、春夏秋冬の剣岳の姿にぴったりマッチして、本当に良かった。

第3位の「アバター」は、技術面で、新しい映画の時代を切り開いた。映像革命といって良い。とても楽しめる映画だ。

第4位の「インセプション」では、夢の中で人の深層心理を操作する というヒトの脳にとって新しいテーマを扱っていて、興味深い。映画の作り方が凝っていて、一度観ただけでは見落としていることが多く、2度3度みるごとに新しい発見がある。映画として とてもよく出来ていて完成した作品になっている。

第5位の「シャッターアイランド」は「インセプション」と同様、ヒトの深層心理に迫る課題で 難解でおまけに どでんがえしもあって、おもしろい。どちらもレオナルド デカプリオ主演で 彼が永遠の少年のような甲高い声で 懸命になればなる程 ストーリーが複雑に絡み合い スリルに満ちている。

第6位の「ゴーストライター」では、トニー ブレアが好きな人も好きでない人もこの映画を見たら、ブレアを含めてすべての政治家が 嫌いになるかもしれない。大企業のスポンサーから資金を集めて政治家になり、一国の頂点に立って権力を手にしたと思ったら 何のことはない、自分よりもう一回り大きな頂点の繰り人形にすぎなかった と知らされる。むなしい現実。現状への告発、アイロニーと毒に満ちた作品。ズシン とこたえる。

第7位 「ソーシャルネットワーク」フェイスブックが マーク ザッカーベルグの思いつきでできたものではなく、はじめはハーバード大学の紳士録を発想して作られたものだった。そして また大学の仲間どうしの力によって 組織化されたものだったことがわかる。ザッカーベルグだけが 億万長者になろうがなるまいが、このネット社会では 新しいネットワークが生まれるのは必然だった。実名登録 ごまかしのないネットワークが 世界中5億人もの人たちによって支えられているという事実に、価値がある。ニックネーム登録によるMIXIが盛んな日本、外交してソーシャライズすることが世界一下手な日本人にこそ MIXIではなく フェイスブックが必要なのではないだろうか。

第8位、「リミット」は、映画史上 最低予算で作られた 最高に価値の高い反戦映画だ。メッセージがしっかり伝わった。とても良い映画だ。光が限られた棺桶の中で撮影するカメラワークも上手で 役者も良い。限られた予算、限られた舞台に登場人物一人きり という極限への挑戦と言う意味で全く新しい映画だ。

第9位、「インヴィクタス」、ネルソン マンデラは20世紀の希望の星だ。この人の人柄に魅せられない人はいないだろう。映画では アパルトヘイトからの解放が 白人側からも黒人側からも語られている。またマンデラの公的な顔だけでなく 私人としての顔もよく表現されている。洗練されたフイルムワーク。イーストウッドのような監督でなければ、ネルソン マンデラを映画化することはできなかっただろう。

第10位、「ドン ジョヴァンニ」イタリア映画。ドン ジョバンニ、モーツアルト、コンスタンチン、サリエリ、ロレンソ ダ ポンテなど実在した魅力ある人々が、イルミナリテイが跋扈する時代のヴェニスとウィーンを舞台に生きている。当時の人々の有り様が とてもよくわかる。モーツアルトが生き生きしていて 思わず胸があつくなる。こういう映画を簡単に作ってしまうイタリアの文化って すごいと思う。

この1年、良い映画がたくさんあった。内容がつまらなくても ワンシーンだけが 涙が出るほど美しくて忘れられなかったり、しゃれた台詞に感動したり、どんな映画もそれなりの良さがある。映像と音楽と演技の総合芸術としての映画も、技術の発達とともに益々洗練された作品が 増えてきた。
映画が与えてくれる享楽に実を浸し、娯楽を楽しみ、沢山の人とそれを分かち合えることが嬉しい。それらがすべて敵であるように考える学者の家で育った反動かもしれない。
何にも捕らわれず、美しい音楽に涙し、美しい映像に心を奪われ、美しい物語に心ゆすぶられる。芸術に触れ、5感を通じて心から感動できることが 嬉しい。その喜びに出会うため 今後もたくさんの映画を観ていきたいと思う。