2010年10月5日火曜日

ブルーム日本人墓の破壊と捕鯨



年間250万人の観光客で賑わい、日本人にも人気のあるブルーム。
目線を変えれば 別のブルームが現れる。
1942年、3月3日 この港に日本軍が爆弾を落として70人あまりの人々が亡くなった。
日本軍は ダーウィンを空襲して243人死亡者を出し、ブルームでは70人、シドニーにも特殊潜水艇が侵入して 魚雷でフェリーを攻撃して21人死なせ ニューカッスルにも潜水艦が市内を砲撃して 建物や住居に被害を出している。タウンズビルにも ラバウルを基地とする飛行艇が空軍基地を爆撃している。こういう事実は 攻撃した方は忘れているし、今の日本の若い人は知らない人のほうがずっと多い。
しかし 日豪間に起こった歴史の中で 本当に起こったことは 知っていれば知っているほど良い。決して無視してはいけないのだ。なぜなら戦争は過去に起こったことでも、現在に通じている道だからだ。

たとえば ブルームには日本人墓がある。
昨年8月に映画「COVE」(邦題「入り江」)が上映された直後、ブルーム市議会は 姉妹都市だった和歌山県との姉妹都市関係を継続しない決議がなされた。それと同時に、この日本人墓が荒らされて、墓石が割られ、破壊された。
映画は和歌山県大地町の イルカ追い込み漁のドキュメンタリー作品で、アカデミードキュメンタリー賞を受賞した。この映画については 何度も言及してきたが、またアタッチする。
http://dogloverakiko.blogspot.com/2009/08/blog-post_25.html

映画は、ブルーム市議会の決議、日本人墓の破壊と いろいろな波紋を投げかけた。いかに、オーストラリアでは海洋保護の立場から 日本の捕鯨、イルカ漁に否定的な立場に立っているかがわかるだろう。墓荒らしというのは、西洋では死体を焼かずに そのまま埋葬するだけに、とても重い罪になる。にも関わらず ブルームに貢献して亡くなった何の罪もない日本人の墓を荒らすということが起きた。簡単には犯せない罪なのに それが行われた ということを日本人は深刻に捉えなければならない。
墓荒らしは、大地町でイルカをつきん棒で殴り殺す日本人、世界中の批判をあびながら なおも調査捕鯨という名の商業捕鯨を続けている日本に対する「報復」なのだ。野生動物保護の立場から いま、沿岸イルカ漁も 調査捕鯨も中止するべきだ。

707基、919人の 日本人の墓が葬られている。
グループツアーから離れて、個人で日本人墓を訪ねる。ブルームの街から20分。バス停留所から10分歩いて、着いた墓は よく整備されていた。古いものは 1880年代から 130年も前から真珠業に携わっていた日本人の名と出身地が 墓石に彫ってある。沢山の人が溺れたり、潜水病やサイクロンで亡くなった。30代 40代で亡くなった人が多い。入り口にある記録によると もとは小さな墓地だったものを 1983年に 日本船舶振興会の笹川良一氏の基金と 参議院議員玉置和郎氏の努力によって、修復されて、現在の墓地になった と書いてある。事実、墓石は御影石が多く、日本風の石が使われて立派なものが多い。つい最近の真新しい墓もある。今年 亡くなった人の墓もあった。

一度 破壊され、割られた墓石を いくつもいくつも見る。無残だ。修復されているが、いったん割られた石だということが一目瞭然だ。哀しくて 写真にとることができない。日本とオーストラリアの交流に貢献し、この地で真珠業を助け、命を落とした人々を、せめて、静かに休ませてあげられないものだろうか。
国と国の摩擦のために、亡くなって 土になってもまだ蹂躙される。もの言わぬ 707基の墓。
こんなときほど異国に暮らす者として、孤独感、寂寥感を感じることはない。

日本人にとっては 戦争も終わっていないし、捕鯨問第も解決していない。現在は過去に しっかりとつながっている ということを再認識させられて、ブルームの墓地で ひとり悄然とする。
ホテルに帰って ビールでも飲もう。