2009年11月4日水曜日

映画 「ベートーベンを求めて」




映画「IN SEARCH OF BEETHOVEN」、邦題「ベートーヴェンを求めて」を観た。
英国ドキュメンタリーフィルム。2時間40分。
監督:フィル グラビスキー(PHIL GRABSKY) 

日本ではクラシックといえば、何といってもべートーヴェンが一番人気があるが、これは、ベトーヴェンの生涯を映像で追ったドキュメンタリーフィルム。彼が作曲した作品を 若いときから作られた順に ベートーヴェンの奏者として名高い演奏家に演奏させながら ナレーターが 曲のいわくや そのときのベートーベンの心象風景を浮き彫りにしていく。そして時代背景、家族間の軋轢、深刻な貧困、難聴や体調不全などのなかで 彼が どんな状態で 何を考えて作曲したのかを読み解いていく。フィルムは ベートーヴェンの生まれたボンから ヨーロッパ各地、米国まで歴史家や音楽家のインタビューをする為に旅をしながら ベートーヴェンの真の姿を追う。

映画のなかで演奏される曲は、55曲。
演奏者や指揮者は「ベートーベンならば この人」という定評のある演奏家ばかりだ。それらすべてのCDを買って聴くことはできない。そんな演奏家達が、リハーサル風景を見せてくれて 生き生きとベートーヴェンを語って、そして演奏してくれる。こんな贅沢なフィルムは他にない。音楽家達のエッセンスを詰めた 貴重なフィルムだ。

ベートーヴェンは1770年12月にドイツのボンで ケルンの宮廷歌手であった父ヨハンと母マリアの間に生まれた。長男だったルドウィク バン ベートーヴェンは、アルコール中毒で、収入の少ないの父親代わりに 早いうちから音楽的才能で家計を助けることを期待された。7歳でピアニストとして舞台デビュー。16歳で 心酔していたモーツアルトの弟子入りを許され ウィーンに行くが、母親の死によって呼び戻されて父や幼い兄弟の世話を強いられる。
22歳でハイドンの弟子となり ピアノ奏者として生計を立てながら作曲をした。20歳代後半から 早くも難聴となり 絶望し自殺を思いつめたが、強靭な意志の力で 作曲を続ける。このころの ピアノコンチェルトや弦楽四重奏曲の強固な構造、古典的音楽様式を明確に構築してのちのワーグナー、ブラームス、ドボルザーク、チャイコフスキーに影響を与えることになる。

このドキュメンタリーフィルムで検証された証言によると、彼は実にたくさんの恋をした。若く、美しい貴族の娘に結婚を申し込んでは 身分の違いゆえに恋を成就することができない。それでも晩年まで恋を繰り返すところが、頑固で自由な彼らしい。

カトリックだったが、教会の権威主義を憎み、熱心な信徒ではなかった。ゲーテと親交を結び、ゲーテ、シラーの文学を愛した。リベラルな自由主義で 「神は死んだ」の哲学者カントの思想に深く理解を示していた。

演奏された55曲のうち、有名な曲だけをあげてみる。

ピアノコンチェルト4番
  ピアノ:ロナルド ブラウテイガン(RONALD BRAUTIGAM)
  ノルコピン シンフォニーオーケストラ
  指揮:アンドリューパロット
ピアノコンチェルト2番
  ピアノ:ジョナサン ビス(JONATHAN BISS)
  ザウスブルグ カメラッタ
  指揮:サー ロジャー ノーリントン
ピアノコンチェルト
  ピアノ:ラス ヴォグト(LARS VOGT)
  バーミンガム シテイー オーケストラ
  指揮:サー、サイモン ラットル
チェロ ソナタ
  チェロ:アルバン ゲルハート(ALBAN GERHART)
  ピアノ:セシル リカド(CECILE LICAD)
「春」バイオリン ソナタ5番
  バイオリン:アレクサンダー シコブスキー(SITKOVETSKY)
  ピアノ:ジュリア フェドスイーバ(FEDOSEEVA)
「月光」ピアノソナタ14番
  ピアノ:ラアーズ ボグト(LARS VOGT)
「クロイツエル」バイオリン ソナタ作品47
  バイオリン:ジャニン ジャンセン(JANINE JANSEN )
「英雄」交響曲第3番 エロイカ
  フィルハモニカ デラ スカラ
  指揮;ギアナンドレア ノセダ(GIANANDREA NOSEDA)
「フェデリオ」オペラ
  マーラー チェンバー オ-ケストラ
  指揮:クラウデイオ アバド (CLAUDIO ABBADO)
「エリーザのために」ピアノ曲
  ピアノ:ロナルド ブラデイガン
交響曲第8番
  イル オーケストラ ナショナル デ フランス
  指揮:カート マスール (KURT MASUR)
ピアノ ソナタ28番
  ピアノ:ヘレン グリモー(HELENE GRIMOUD)
「合唱」交響曲第9番
  18センチュリー オーケストラ
  指揮:フラン ブリューゲン(FRANS BRUGGEN)
弦楽四重奏 グロッソ フーガ 作品133番
  エンデリオン弦楽四重奏団

ピアニスト ロナルド ブラデイガンは べートーヴェンが13歳のときに作曲したピアノコンチェルトが、いかに技術的に難しい曲であるかをを ベートーヴェンが使っていた古楽器のピアノを使って 自分が1音落としたり何度も失敗して、弾いて見せてくれる。他の作曲家ならば「ターララー」で澄む所を、ベートーヴェンは「タリレリラルトル タリレリラルトル タタリ タララ ルララ ツララ リラルラレルー」という具合に弾かせるわけだ。音符の多いこと! 弾き手は極度の集中力と技術と、音楽の総合的な理解力をもっていなければこなせない。
彼、ブラデイガンだけでなく 他の多くのピアニストも 「ベートーヴェンは 難曲をたくさん作曲して自ら演奏してみせてくれた。それはその時代ほかの誰にもまねて演奏することができなかったからだ。」と言っていた。「どうだ、まねできないだろう。くやしかったらやってみろー」と胸を張ってみせる おちゃめなベートーヴェンが目に浮かぶようではないか。

エンデリオン弦楽四重奏団はイギリスで活躍しているグループで結成25年という歴史を持つ人々だ。リラックスした雰囲気のなかで ものすごく難解で重い四重奏曲を統制のとれた実にシャープな音で演奏している。すごい実力だ。

ヘレン グリモーは稀に見る美女で日本でも人気のあるピアニストだ。美しい彼女が 目をつぶって 完全にベートーヴェンに浸りきって弾いている姿など神々しいほどだ。

ベートーヴェンの作品のなかで 一番すきなのは「春」バイオリンソナタ5番だ。それと「クロイチェル」バイオリンソナタ。ピアノでは、「舞踏会への誘い」。交響曲では「田園」第5番だ。
2時間40分 とても長いフィルムだけれど 仮に ベートーヴェンが嫌いな人でも 観れば好きになると思う。
でも、肩がこらないように カウチでポテチ 家でヴィデオで見ることを お勧めする。