2009年8月7日金曜日

ガールズコミック「そんなんじゃねえよ」和泉かねよし


顔が良いと 得をする。顔が良いと人から大切にされる。困っていると誰でも助けようとするし、自分から求めなくても友達がたくさんできる。面接で 高感度の高い印象を与えるから 思いどうりの就学も、就職もできる。職場でも優遇される。特に客扱いの営業などでは 引く手あまただ。顔がアトラクテイブだと 異性パートナーを選ぶにも無限のチョイスを与えられて 欲しい相手が手に入る。銀行から信頼され 融資設も受けやすいから 家などの財産も手に入れやすい。仮に 犯罪に手を染めても 顔が良くて 印象が良いと有罪になるかどうかで 極悪人の容貌を持った人に比べると はるかに軽い刑で済む。
従って 顔が良く生まれた人はそうでない人に比べると すべての面で優遇されて得をする。

というのは 私の考えではなく、「常識」なのでもなく、アメリカで 科学的に秩序立てて行われた社会学者たちによる調査結果だ。私は自分の体験から このような調査結果が 全く正しいと、確信する。

私の顔が良いのではない。
死んだ私の 最初のオットが顔が良かった。
若い人は知らないだろうが 岡田真澄と高倉健を足して二で割ったような顔だった。身長183センチ、一流国立大学卒、シャープな頭脳、洗練された動作、独特なオシャレなセンス。天はニ物を与えず というが、天からは何もかも もらって生まれて来ていた。これでチヤホヤされないわけがない。

電車に乗っていて、ジャイアンツの投手とまちがえられて、サインを求められたことが 一回2回ではない。初めて飲みに行ったバーから ほろ酔いで帰って ポケットを見たら ママのマンションの鍵と住所を書いた紙がでてきたこともある。結構有名なママだったが、、。道を歩くと必ず人々の目はオットに。これがオットですというと、大抵の女性はポッと顔を赤らめて俄然 目を輝かせたり、急にハイになって はしゃぎだす人が多かった。おもしろいのは、この男前のツマが それにつりあうほどの美貌ではなくて フツーの女だ、というのがわかると まわりの女達が 俄然がんばりだすことだ。こういう場面はどこにいっても 起こった。だから、私は 人々が とびぬけて顔の良い男に会ったときの対応をよく知っている。

顔の良い男に会ったとき、人の態度が変わる というとそんな馬鹿な。人は外見より 中身じゃないですか というへそ曲がりが必ずいる。でも それはウソだ。その人がとびぬけて美しい 超のつくハンサムな男に出会ったことがないから そんなことを言っていられるのだ。体験から断言できる。

例えば私の女友達が沢山居る。そこにオットを連れて行き 紹介するとたちまち女達は するすると服を脱ぎ捨ててオットの前で思い思いのポーズを取り始めるので困ってしまった、、、ということはなかったが、そんな感じに100%ちかい奇妙なフェロモンな空気になるのが常だった。また、例えば オットの職場の人や オットの友達が集まっているところに行って ツマが 初めて紹介される。で、皆がツマを見ると え???という顔になり、こんなツマなら自分は勝てる とばかり急に肉食獣になってオットに襲い掛かるのだった。
そんなだったから、年をとっても オットは女には困らなかった、というか、全く ホトホト女に 困りきりだった。

ところで、そんな奇妙な体験を持つ私が おもしろいガールズコミックを見つけてしまった。
「そんなじゃねえよ」和泉かねよし作、1-9巻、フラワーコミックス小学館出版。

これが顔の良い 二人のお兄ちゃんを持つ フツーの顔でどちらかというと地味な女の子の話だ。読んでいて 身につまされるというか、あ、そうそう こんなこともあった などと昔のことを思いだした。

背が高くて 頭が良くて 力が強くて けんかも強い スポーツもできて、とにかく顔が良い 真宮家の二卵性双生児、烈と哲。シングルマザーで看護婦の母は 美貌の女王様。そんな中で妹の静ちゃんだけは みにくいアヒルの子ばりに ごく普通のめだたない女の子だ。この静ちゃんから見た まわりの人々の兄達への態度 狂騒ぶりがおかしくて、静ちゃんに すごく共感してしまった。
軽快なしゃれたジョークがとびかう、的を得た会話。すっかり気に入って2回も読み返してしまった。

例えば 美貌の母に片思いして食事に誘う高校生に向かって 母は言う。
「あなた 女の口説き方わかってないのね。」
「そう、どうすればいいの?」
「簡単よ。20こえて 年収1千万以上になったら同じセルフを言うの。」

そんな母が 寝起きの悪い息子を見て
「寝起きの悪い哲ちゃん。顔がキレイに整ってる分 マネキンみたいね。こいつ裸にムイて紳士服のコナガにおいてきちゃおか。」

かと思うと長男の烈が
「俺にもしものことがあったら 誰が静を守るんだ」
「あんたの保険金じゃない?死ぬならくれぐれも わかりやすい事故死ね。不審死だと保険金おりにくいんだ。コレが。」
などと言う。

静が 好きな子に家に来られて
「しまった、、、この気合の抜けたリラックスウェア。トータルコーデイネイトで1万円以下。これでは彼氏を前に勝負服どころか試合放棄同然。たしかあたしの部屋には友達から押し付けられたレデイコミが、、この地雷地帯に踏み込まれたら、、、」
などと、悩む娘にたいして 冷酷にも母は、
「うるさい。ガキはガキらしく 小さな恋のメロデイ奏でてろ!」などと言う。母は強い。
とにかく愉快なコミックだ。

子供の頃は 少女漫画をおもしろいと思ったことがなかった。継母にいじめられる 可愛そうな少女だの 恨みを持った怨霊みたいな漫画ばかりでじめじめして気持ちが悪かったからだ。
ちばてつやの「明日のジョー」で育った世代だから、漫画といえば スポーツ少年ものばかり。
そんなだったのに、急にガールズコミックがおもしろくなった。
さあー 今日は、これから古本屋にガールズコミックをあさりに行ってこよう!