2009年2月16日月曜日

映画「レボルーション ロード」


映画 「レボリューション ロード」(原題REVOLUTION ROAD)を観た。 原作 リチャード イエッツ。

監督:サム メンデス
俳優:ケイト ウィンスレット(エイプリル)                          レオナルド デ カプリォ(フランク)
これで、ケイト ウィンスレットは ゴールデングローブ主演女優賞を取った。受賞の挨拶で壇上から レオナルド デ カプリォに、13年間ずっーと愛してきたわ、と言って、投げキスを送り 彼からもキスを返されるという微笑ましいシーンがあった。 二人は 「タイタニック」から11年目のコンビ。「タイタニック」は空前のヒットで、ハリウッドに最大収益をもたらせたのに、何の賞をもらえなかった。ケイトは以降 5回も賞にノミネイトされながら これが初めての受賞となった。レオナルドも5回 主演男優賞にノミネイトされながら、いまだ、何の賞も受けていない。ユダヤ人が 力を持っているアカデミーなどの諸賞では、左翼的アイリッシュは不利なのかもしれない。

ストーリーは
1950年代のアメリカ コネチカット。 フランクとエイプリルは 誰もがうらやむ美男美女の若いカップル。自分達は 何にも縛られない 自由で他の人たちとは全然ちがう 特別なカップルだと思っていた。女優のエイプリルは 女優として努力すれば 何にでもなれる自信を持ち、フランクもエイプリルに自由にさせてやれる度量をもっていた。フランクは兵役をしていたとき、ヨーロッパの各地を巡ってきていて、アメリカ以外の国を知っていただけに 自分が 生きているという実感を得られる生き方を いつもしたいと思っている。 そして、自分もエイプリルも 普通とは違ういつも、時代を先取りした特別な存在だと思っていた。そんな二人に 将来に不安のかげりもなかった。

しかし、二人がレボリューション通りに、家を買ったとこから、事態は変わってくる。フランクは定職に就き 車で駅まで、駅からシテイーまでの長い通勤時間に耐えなければならず、エイプリルは 子供を産み、専業主婦になった。輝いていた将来は、色あせ、日々退屈で平凡な生活が繰り返される。エイプリルは子供の世話に明け暮れ、近所とのうわべだけのお付き合いに無駄な時間を費やさなければならない。

エイプリルは むかしフランクがパリの話をしたとき 眼を輝かせて夢のようなところだと言っていたことが忘れられない。現状を打開するために 自分がパリのアメリカ大使館ではたらけるように、準備を始める。今からでも遅くない。家族でパリに移住して再び新しい 既成に捉われない自由な生き方の挑戦したい、とエイプリルは言って、フランクを説得する。フランクも賛成して、仕事を辞めて家をたたんでパリに行く と、同僚や友人達に言っても、夢物語だと、笑われるだけだ。

そんなある日、フランクは職場の上司から 高級と高いポジションの提供を申し出られる。「男なら 一流のビジネスマンとして、男を上げろ」、とはっぱをかけられ、フランクは自分が本当になりたいのは そんな一流の男であって、パリで夢を追いかけるような男ではなかった、ということに気がつく。しかし、エイプリルはもう主婦から抜け出してパリに行くことしか 頭にない。どうやって、妻の決意を返させるか、、、。

彼らには 精神病を患っている数学者の友人がいる。意表をつくことを遠慮なく言うこの友人に エイプリルは好感を持っていた。しかし、ある日、この男にフランクの心の中を、すっかり暴かれてしまって フランクは怒りを爆発させて、、、。

というお話。
この夫婦の特異なところは 何でも言語化して表現し、とことん話し合うところだ。問題を二人でつきつめて、ここまで言うか? というくらい 互いの言葉で互いを裸にし合う。理屈っぽくて 言い合いが辛らつで 激しい。 普通の夫婦では、ここまでは言わない。言わないことが沈黙のルールだし、言っても仕方がない。所詮相手は他人で 言ったからといって 自分の思うようには 相手は変わってくれない。しかし、フランクとエイプリルはとことん言い争う。もう、、、だから、この映画 とても疲れる。夫婦喧嘩は犬も食わない というけれど、全く食えない。 でも、この夫婦が 必死で、まじめに生きていて まじめに互いに向き合っていることはよくわかる。互いに傷を深め合うところも。

1950年のアメリカ。まだ、大半の女性は 高校時代に結婚相手を決めていて、すこしでも、将来性のあるハズバンドを獲得することが一生で一番大事なことだった。結婚、専業主婦が当たり前の閉鎖社会。エイプリルはすこし、早く生まれすぎたのだ。女が 大手をふって外に出て 好きな相手と同棲したり別れたりできる時代が もう、目前に来ている。自立と解放のためのうめき声が この映画を観ていて聴こえてくる。

「タイタニック」から 11年ぶりのケイトとレオナルドの俳優としての 成長ぶりが よくわかる。また 作家、イエッツの好きな人、またこの時代の女性史や社会の変化に関心のある人にとっては、この映画も良い映画だ。これを観て 夫婦喧嘩に強くなるコツがわかるかもしれない。