2008年12月29日月曜日

OFFな私


DINTAI FUNG ディンタイフォンという台湾で有名なレストランが シドニーシテイーの中心 ワールドスクエアにオープンしたのが この5月。ニューヨークタイムズで絶賛されて 広まって日本にもチェーン店ができているらしい。 ジューシーな小龍包が、売りで 本当に美味しい。椅子に座ってから 結構待たされるのは、注文を聞いてから コックさんが具を丸めて包んで蒸すので、時間がかかるからだそうだ。ウェイターでなく、白い服を着たコックが、熱々の蒸篭をテーブルまで持ってきてくれる。

この店が出来た頃、同じ系列の経営の、ケーキ屋「85度」も開店した。
日本のケーキ屋さんにとても近い。きれいなケーキがずらりと並んだウィンドーを見ているだけで、幸せな気分だ。買わずに いつまでも嬉しそうに 見ているだけのわたしを いつも店の人は 変に思うだろうが、かまわない。 何故って 家に持って帰ることが出来ない。生クリームをふんだんに使ったババロア、プデイングなどは、日持ちしないので その日のうちに食べなければならない。10個以上買わないと 箱に入れてくれないので、それ以下では、持ち運ぶことができない。店のなかに、腰掛けて、食べて行けるスペースもない。
それに、夫は、伝統的な 固いパンのようなケーキしか食べないので、家に持って帰っても私しか食べる人がいない。大体、私が シテイーの人ごみに出かけていくのは 2ヶ月に一度くらい 古本屋「ほんだらけ」に行くときくらい。おのぼりさんのように シテイーに出れば 古本で重くなったバッグを抱えて 電車の乗り降りだけで ふうふう言って ケーキ持ち帰り どころではない。

その憧れのケーキ屋さん「85度」が、近所のチャッツウッドに 昨日オープンした。わーい、ばんざい。チャッツウッドの一番人通りの多いビクトリア通りの真ん中。昨日は すごい人だった。85%OF という 赤い広告の紙を 30人くらいの赤いシャツのお兄さんが 駅の前から配っている。85%OFって!!! 私はといえば、夢にまで出てきたケーキ屋さん、幻のババロア、コーヒーゼリー、憧れのクリームブリュレ、100%栗でできたモンブラン。それが85%のお値段ですか? 夢ではないかしら。
人ごみをかき分けて中に入るとパンも売っている。まあ、パンならば 生クリームやババロアが苦手な夫でも食べるし、冷凍保存しておくことも出来ると思い、トレイいっぱいのパンを持って、長い列のレジに。で、支払いのほうは、普通??? え? え?「85%OFF」ではなくて、「85%OF THE PRICE」だったのです。ということは、85%割引ではなくて、15%割引だったのでした。 当たり前か。考えてみれば。
見ていると、英語に弱い私だけでなく、買っている人 みんなみんな、支払いの段で、え? という顔になって、レシートを見ている。「OFF」と、「OF」を間違えるなんて。なんだ、赤ちゃんのころから英語で育った皆さん、あなた方が、夢中になってお店に押しかけて 狂ったように買いあさっているものだから、私まで、、、。
おい、オージー、 君の英語は大丈夫か? しっかりしろ。


家に帰って、顛末を話したら、「同じような 失敗をしたことがあるじゃない。」と夫に言われてしまって、思い出した。
毎週土曜日に 一週間分の食料を買いにショッピングセンターに行くが、その途中、ペルシャンカーペット屋さんがある。機械織りの大量生産した絨毯から、本物の手織りの家宝にするような 芸術品というようなじゅうたんまで、いろんなものを置いている。とても車の行き来の多い場所で駐車場がない。その店に行くためには 横に路上駐車するしかないが、2台分しかスペースがなく、いつもそこには車が駐車している。2台停まっている内 どれかが出て行きそうなとき、停まって それが出て行くまで待つと、両車線の沢山の車の流れを止めてしまうことになるので、心臓の弱い私には なかなかできない。

車の中からいつも 店先につるしてある絨毯をながめていた。ひとつは赤い機械織りの絨毯で、$50と大きく値札がついている。家では、同じような絨毯を テレビとソファーの間に敷いている。ねこが遊ぶので、端がほつれてきている。
すると、そのとなりに同じサイズで、白地にくすんだブルーと灰色の上品な とても手の込んだ模様の絨毯が70という値札をつけている。初めて店の前をと通ったときは、え? $70、、、と通りすがりに見て驚いた。次の週に前を通る時は、ゆっくり運転して 値段を確かめる。欲しい。どうしても買いたい。でも、車を停めることができない。ショッピングセンターに車を停めて 歩くには遠すぎる。 家に帰ると リビングルームに そのブルーの絨毯が広がっている様子が目に浮かぶ。来週こそは、どうしても、買わなければ、と心に決める。

そして、遂に その日がきた。テクテク歩いて、息をきらして、$70握り締め、とうとうやってきましたペルシャン絨毯屋さん。腹の出た店主、ニコニコして「マダム、あなたはラッキーね。70%OFFだから、たった$890だよ」と。 返す言葉もない。
となりの赤い絨毯は50の札がついて、$50だけれども、ブルーの絨毯は70の札がついて、70%値引きしても$890の代物だったのだ。

「OFF」 と「OF 」との歴然たる違い!
何度失敗したら、賢くなれるのかしら。