2008年11月8日土曜日

パリ ルーブル その3







絵画で 印象深かった絵のひとつに ジャン ルイ ダヴィッドによる「ナポレオンの戴冠式」(SACRE I’EMPEREUR NAPOLEON)がある。
1806年ー1807年。カンバス油彩 縦621CM 横979CM。ナポレオンの妻 皇后ジョセフィーヌの戴冠の様子を描いた大作。191人もの人物が描かれている。ジョセフィーヌが とても美しい。そのジョセフィーヌは ローマ法王からでなく、夫の手から冠を授けられている。絵の中に ローマ法王 ナポレオンの母、ルイ ボナパルトとその息子も描かれている。後に、この絵に ヒットラーが異常に関心を示し、執着したという話もうなずける。まさに権力と それの持つ甘美、自己陶酔が描かれていて、ナポレオンが この絵をどんなに誇らしく感じていたか 想像できる。

「メデイユーサ号の筏」(RADEAU DE LA MEDUSE)。1818年ー1819年。テオドール ジェリコ作。カンバス油彩。縦491CM 横716CM。 1816年アフリカで起こった実際の事件を題材にした絵。 フリゲート艦メデイユース号が難破して 筏の上に149人の遭難者が避難。救出されるまでに、大半が飢餓のために死亡。救出されたときは15人しか生存していなかった悲劇的事故。この絵は 救出船が到着する希望に満ちた瞬間を描いたもの。
昨日のニュースで11月7日に ドミニカから生活苦のため、プエルトリコにボートで越境しようとした たくさんの人々が ボートのエンジン故障のため 2週間あまり漂流したのち、4人の生存者が カニバリズムをして命ながらえ救助された と報道していた。 メディユーサ号でも同じことがあって、センセーショナルな事件として取り上げられたことが ジェリコに創造意欲をかき立てた と言われている。子供のとき、画集でこの絵を見て、カニバリズムの話も聞いて、しばらく怖くて眠れなかったのを憶えている。今考えてみると、そんな話を小学生の子供に平気でしてくれたシュールでリアルな家庭で育てられたことに感謝しなければならない。

「モナ リザ」(JOCONDE)。レオナルド ダ ビンチ作。
1503年ー1506年 油彩。縦77CM,横53CM。 リザ ゲラルデイの微笑の絵。ルーブルの話をしていて、モナリザに触れないで居ると偏屈物と思われかねない。一番人気で 誰もがモナリザを見にルーブルに来る。防弾ガラスのケースに入って 近つけないような柵で守られているのに 人々はモナリザと一緒に居る写真を撮るために 押し合っている。これも子供のときに日本に来て、母に連れられて見にいった。画集で見るより小さくて 暗い絵のタッチに なんだ と拍子抜けしたのを憶えている。 ダ ビンチは偉大だが、彼の絵は好きになれない。

数少ないルーブルのダ ビンチの作品のひとつに「聖アンナと聖母子」がある。 聖アンナは 聖母マリアの母。この絵では3世代、アンナとマリアとイエスが描かれている。アンナの膝に イエスを抱いたマリアが座っている。まるまる太ったイエスを抱いたマリアを膝の乗せているのだから、アンナは、さぞ重かろう。しかしアンナもマリアも幸せで恍惚の表情をしている。解説によると 聖アンナは安定の化身で、イエスは自ら十字架に犠牲になる象徴として子羊に足をかけている のだそうだ。 彼の絵には、象徴、謎とき、秘密 クイズ、アイロニー、と彼自身の自己満足が多すぎる。難解すぎて、ダン ブラウンを読みながら 画集を見るなら面白いかもしれないが、それ以外の目的のためでは、おもしろくない。

写真1:ナポレオンの戴冠式
写真2:メデゥーサ号の筏
写真3:聖アンナと聖母子