2008年7月28日月曜日

和太鼓 「TAO」



九州から 和太鼓パフォーマンスグループ「TAO」がやってきて、太鼓を叩いて見せてくれた。
パフォーマンスのタイトルは、「マーシャルアート オブ ザ ドラム」。ステイトシアター A席 $80.

和太鼓を叩いている若い人たちが 九州で共同生活をしながら 体を鍛えて技を磨いているが、ヨーロッパ公演で非常に高い評価を受けている、という話は聞いていた。いつか聴きに行ってみたいと思っていたが初めて その機会に恵まれた。

会場に行ってみると、3分の1は子供なので、驚いた。スクールホリデイも終わったのに、土曜とはいえ真冬の夜の劇場に 親に連れられて きちんとした服を着た子供が沢山 集まってきているなんて。みな、空手キッズだったのだろうか。 シドニー大学で柔道を教えている人がいて一般の人も入会できて流行っている、とか、シテイーに空手の道場ができたとか、日本人会でボランテイアで剣道を教えている人がいるとか 聞いていたが、それ以外にも中国人や韓国人が武道を教え始めて、ハリウッド映画の影響もあって東洋のマーシャルアートは 知らないうちにかなり広く深く浸透しているのかもしれない。

でもそんな シドニーの古武道ファンにも 和太鼓を打つ大変さまでは あまり わかっていないのではないだろうか。 和弓をやっている 友達のことを 話していたら、「あー知ってる。アーチェリーね。高校のときやったわ。楽しいよね。」とか言われてしまって拍子抜けしたことがある。和弓はアーチェリーとは 材質も大きさも全然異なる。スポーツというよりも、精神鍛錬がメインで、もう ほとんど哲学の世界なのを、西洋人に理解させることは難しい。 和太鼓も、見てきたよ、と言うと、「あー 僕は去年アフリカの太鼓とダンスのショーをカジノで観たよ。」とか、「ウン、私はリオのカーニバルで太鼓とダンス見た。」とか言われて、こういった 世界の叩けば簡単に音がでる太鼓と 和太鼓とは全然違うのだと 自分が叩いたことがないので ちゃんと説明できなくて、もどかしい。

それにしても、力強いパフォーマンスだった。8人の男性と5人の女性、みな はつらつとして エネルギーの塊のような若い人たちが 自分の体よりも大きな太鼓を飛び上がって全身を使って叩く姿や、13人が 音も大きさも違う太鼓を 一斉に叩くと地響きがするほどで 大変な迫力だ。女性たちの横笛も、上手だったし、琴も弾いていた。踊りながらシンバルやタンバリンまで出てきたが、その上 全員が太鼓を叩くのだ。男性陣も 時には笑わせたりしながら 力強く太鼓を叩いてくれた。

最初の出しもので、もう13人全員がエネルギーを使い果たしてしまっって、こんなで、最後までみんな体がもつだろうか、と心配してしまった。本当に力強い。それと、いかにも日本人だと思ったのは、一糸乱れず 全員がよく統制がとれて、小さな間違いひとつない、完璧なパフォーマンスだったところ。すみずみまで訓練が行き届いていて、気持ちが良い。プロフェッショナルに徹したショーマンシップが、潔い。

ヨーロッパ、アメリカ公演で 高く評価されたわけが良くわかる。 最後の方で、一人のパフォーマーが、マイクを持ってジャパニーズイングリッシュで挨拶したが、「みなさんに拍手され、喜んでいただける限り 太鼓を続けていきます。」という意味のことを言ったんだけど、言葉が足りなくて、観客は、拍手をすれば いつまでもアンコールに応えて太鼓を叩いてくれるのかと誤解して、最後、アンコールのあとも、拍手が止まなくて、舞台の人たちは、ちょっと困ってしまう というシーンもあった。あとになってみれば これもご愛嬌。

若い、立派なミュージシャンたちだった。
貴重な日本の文化遺産 後継者達ともいえる。