2008年7月23日水曜日

映画 バットマン 「ザ ダーク ナイト」



映画「THE DARK KNIGHT 」を観た。
クリスチャン ベール主演の「バットマン ビギンズ」の続編。前作と同じく、クリストファー ノーラン監督。150分。コミックの映画化だ。全米で、封切りされた最初の週のうちに 1億6千万ドルというハリウッドの新しい売り上げレコードを 更新した。一日で 売れたチケットでも 最高金額を記録したそうだ。

オーストラリアでも上映開始と同時にスクールホリデイにも重なり、大人気だ。私のいつも行く映画館では、同時に2つの館で1時間ごとに 上映して、客を捌いていた。こんなに人気なのは、オーストラリアが誇る男優、ヒース レジャーが出演した最後の映画、遺作でもあるからだろう。映画を観た誰もが ヒース レジャーが良かったと言い、28歳というあまりに早すぎた死を惜しんでいる。 私は過去10年来 ヒース レジャーが好き、この俳優は とんでもなく本物だ、と言ってきたが、同調したり 同感と言ってくれる人は全く いなかった。今年になって、彼が事故死してやっと 人々が彼の役者としての価値に気ずいてくれた感がある。どうして、「ブロークバックマウンテン」のとき、アカデミーをあげなかったのか。もう遅いのに。 バリウム(鎮静剤)と一緒に テマゼパン(睡眠剤)と、エンドン(鎮痛剤)を飲んで 副作用で呼吸が抑制されて そのまま眠ったまま亡くなってしまった。余程 頭が痛かったんだろう、疲れて眠りたかったんだろう、と思い、また 翌朝 起きて役者としてやりたいことが沢山あっただろうに、と思う。

ヒース レジャーのジョーカー役はぴかいちで、冴えている。精神分裂症で人を殺したい、出来うる限り悪事を働いて人々を苦しめたいという欲望だけで生きているジョーカーの姿は本当に恐ろしい。どんどん殺して、燃やして 破壊する。頭が良くて、ゴッサムシテイーの警察や市長などより 頭脳ゲームでも勝っている。みんなが束になってかかっていっても 相手にならない。互角に戦えるのは、バットマンだけだ。それでいて、ジョーカーは後姿がやけに悲しい。激しく市長やッ警察を笑い飛ばしながらも 虚無的な目をしている。以前の ジャック ニコルソンのジョーカーよりも 私はヒース レジャーのジョーカーが怖くて良いと思う。

遺作なのでヒース レジャーのことばかり語っているが、この映画の主役は 勿論 クリスチャン ベールだ。彼の美しい顔が、バットマンの仮面にこんなによく似合うとは思ってもみなかったので前作「バットマン ビギンズ」では、ショックを受けた。クリスチャン ベイルも 役者魂のかたまりのような すごい俳優だ。2004年の不眠症の男の話「マシニスト」では、体重を35キロ落として、文字どうり骨と皮になって、熱演していた。ボブデイランの役を、「アイアム ノット ゼア」でしたときは、ギターを抱えて、ゴスペルを熱唱して、本物よりも感動的だった。カンボジアの捕虜になった兵士を演じたときは 20キロ体重を落とし、飢餓を生き抜くシーンで本当に カメラを前に蛆を食べたそうだ。バットマン、ヒーローでは、しっかり筋肉のついた立派な体をみせてくれる。役のために これほど体を作ることから こだわって徹底する役者は 彼の他にいそうにない。

クリスチャン ベイル演ずる ブルース ウェインは、大富豪、ハンサムで独身。パーテイーに 自家用飛行機を操縦して ロシアのプリマドンナや 売れっ子モデルを飾りに引き連れて、にやけている。だが、本当は仮面を被って 悪を退治する正義の味方。執事(マイケル ケイン)と、忠実なメカニック(モーガン フリーマン)の力を得て、地下に バットマンとして戦う為の兵器工場をもっている。幼くて両親を目の前で強盗に殺された彼にとっては、 一緒に育った従兄弟のレイチェルだけが 彼の心を潤してくれる存在だ。

マイケルケーンの執事がとても良い。こんな品格のある人に子供のときから見守ってもらってきたブルース ウェインは幸せだ。メカニックのモーガンフリーマンも はまり役。こんな 名優二人に がっちり脇を固められたクリスチャン ベールのバットマン、、、 これ以上の配役は考えられない。前回のレイチェルは ケイト ホームズだったが、今彼女は トム クルーズの奥さんになって二人の子供のお母さんになってしまったので、今回はちょっと彼女に似ている マギー ジーレンホールがレイチェルをやっている。
バットマンの バズーカ砲が当たっても壊れない車体の低い車や、車から分離して走り出すバイクや、コンクリートも透視できる眼鏡や 様々な武器や、さらにパワーアップしたバットマンスーツも健在、そうしたものの宝庫の地下室には わくわくする。

でも今回のヒーローは 初出場の ゴッサムシテイーの地方検事、アーロン エッカートだ。「ノーリザベーション」で、キャサリン ゼタジョーンズ共演の姿を初めてみて、若いロバート レッドフォードそっくりな姿に目が離せなくなったが、良い俳優だ。検事はゴッサムシテイーを悪から守ると、真正面からジョーカーに宣戦布告したため、ジョーカーから徹底して痛めつけられる。愛しているレイチェルと共に誘拐され、レイチェルを失うことによって 狂ってしまう。半身 焼け爛れて鬼のようになった アーロン エッカートの迫真の演技も、すごい。夢に出てきて うなされそう。こわい。 一方、バットマンはレイチェルが当然、自分のたった一人の理解者で自分の妻になるべき人だと思っていたが、、、というお話。

バットマンのクリスチャン ベール、ジョーカーのヒース レジャー、執事のマイケル ケイン、メカニックのモーガン フリーマン、警察署長のゲイリー オールドマン、地方検事のアーロン エッカート、、、これだけの豪華俳優をそろえたバットマンはもう二度と作れない。

ストーリーでは、まだジョーカーは健在で、今のところ、バットマンに勝利はない。でも、ヒース レジャーなしで、この続きが 作れるだろうか。そう思うと、空前の売れ行き、ハリウッドで売り上げ最高記録というニュースが 悲しく聞こえる。