2008年3月9日日曜日

映画 「THE BUCKET LIST」


映画「THE BUCKET LIST 」を観た。監督ロブ レイナー(ROB REINER)、90分のアメリカ映画。主演 JACK NICHOLSON と、MORGAN FREEMAN.

この映画は ジャック ニコルソンと、モーガン フリーマン 二人の為に作られた映画のようなものだ。芸達者な二人の男がいれば 他に誰も登場人物がいなくても 観客は物語にひきつけられて 画面から目を外すことができない。余命半年と宣告された末期のがん患者 二人の男の友情物語。

カーター(MORGAN FREEMAN)は、自動車整備工で、3人の子供と妻を何より大切にして 家庭と仕事の為に1日1日と、日々を重ねてきた実直 誠実を絵に描いたような男だ。しかし、彼は引退間際になって、末期がんに侵されていることを知らされる。

エドワード(JACK NICHOLSON)は、億万長者の実業家だが、ある日、税金査定で、裁判所に呼び出され、富裕層のためでなく、社会に還元できる社会事業を始めなければならないことになり、やむなく 個室なしというポリシーをもった 病院を建設、経営することになる。病院建設当初は予想もしなかったことに、エドワード本人に癌がみつかり、その病院に入院することになる。

末期がんを宣告されたカーターとエドワードが、個室なし、一部屋2ベッドポリシーの病院で 同室をすることになる。二人を待ち構えていたのは、二人部屋で、プライバシー皆無の病院生活、しかし、激しい副作用を伴う化学療法を共に受けるうち、次第にふたりには絶ち難い運命共同体のような 互いの支えあう友情が芽生えてくる。

そんなある日、化学療法を終えたカーターは、死ぬまでに自分がしたくて出来なかった事を 紙にリストアップする。それを見たエドワードは自分の分も書き加えて 二人で今まで出来なかった事を 今やってみようと提案する。二人は 喜々として スカイダイビング、スポーツカーレース、アフリカ サファリ旅行、インド体験、アジアの国々めぐり、ヨーロッパ旅行、家族が心配するのを尻目に、二人して散々遊び狂った末、アメリカの戻ってくる。

エドワードには離縁した娘がいて、そのことを罪に思っている。それを知ったカーターは ひそかにエドワードが娘に偶然のように出会える場を作ってやる。
カーターは 妻以外の女性と接したことがない。それを知ったプレイボーイだったエドワードは、ひそかに カーターが美しく若い女性を出会える場を作ってやる。しかし、どちらの画策も、相手は余計なおせっかいと、激怒して失敗。
そうしているうちに、カーターは、二人で作ったリストを一人きりになっても、エドワードがやり終えて欲しい といって、死んでいく。
そして、残ったエドワードは、カーターの望みどうりに、娘に許しを求めて会いに行く。という、物語。

末期がんという悲しく暗い話題を 二人の熟練俳優が おもしろくおかしく描いている。二人とも 本当に良くて 笑って泣ける。

ジャック ニコルソンは、アカデミー賞に12回もノミネートされてる。主演男優賞8回、助演男優賞に4回、そのうち、受賞が主演2回、助演が1回。

私が始めてジャックニコルソンを見たのは、1969年、「イージーライダー 」だった。ベトナム戦争反対の騒然とした反逆の時代に、ヌーベルバーグのなかでアメリカ映画もまた 新しい波を作り出していた。アメリカの暗部ともいうべき、北部アメリカ人と南部アメリカ人との敵対心、文明と保守との対立を これほど明確に社会に提示して見せた映画は他になかった。

そして、1975年の、「カッコーの巣の上で」。これで彼は初めてのオスカーを獲得した。今、観ても 常に新しい、アメリカ社会への激しい怒り、憤怒が湧き上がる。アメリカ国家への批判と怒りと憎しみを 精神病院に置き換えて、作られた作品だ。カッコーの巣の中から、1羽だけ、飛び立っていった、インデアンの青年の 力強い 土を蹴るリズムで始まり終わるシーンは、本当に印象的で忘れられない。

1980年の「シャイニング」、スタンリー キューブリック監督による恐怖映画。ジャック ニコルソンが、風呂場で亡霊とヒソヒソ語り合うシーンと、斧をもって妻と息子を追い詰めるシーンで、歯をむき出しにして笑う顔が怖くて 夢でまでうなされた。どうやったら、こんなに心底人を震え上がらせるような演技ができるのだろう。 1989年の「バットマン」の、ジョーカー役も怖かった。

俳優と言わないで、怪優 と言うのだそうだ。本当に一度観たら忘れられない アクの強い顔をしていて、他の俳優を食ってしまうので 主演しか出来ない俳優でもある。若いときのショーン コネリーとか、古くは、クラーク ゲーブルも。 アクが強いので、どんな役をやっても、ジャック ニコルソンは、ジャック ニコルソンにしか なれない。でも、ショーンコネリーも、007に出ていた頃の 強烈な個性が、年をとって、良い男の風味がでてきた。ジャックニコルソンも、毛が薄くなり、アクの強さが薄まって、味わい良い俳優になってきた。本人は、自分は70過ぎた ただのデブでしかない、と言っているそうだ。そういいながら、いつまで、演じるのだろう。